転移ゲート同時多発テロ。魔法世界・旧世界間における物流と人員輸送を一手に担う『転移ゲート』を襲った未曾有の事態。両世界間をつなぐ現在稼働中のゲートが前後数時間以内にすべて爆破され、ゲートの管理を担っていた各国家の警備・軍にも甚大な被害をもたらした大事件。それの実行犯とされたのが、ネギたち麻帆良から渡航した少年少女であった――。
「――なんて、納得いくとでも思ってんのか!?」
ヘラス帝国に設けられた離宮の一角。その場に設えられた王侯貴族が用いる調度品の文机を、盛大な音を立てて叩く少女がいた。旧世界は日本からの外交特使団の一人、
「……まあ君らが納得いかないのは目に見えていたけれど、どうやら先日の転移ゲート同時多発テロの後、ネギ少年たち一行が
事態の詳細な説明をしていたのは、この外交特使団の代表でもある菊岡。その声色にはいささか疲れの色も見える。
そもそもこうなった経緯としては、日本の外交特使団が旧世界のイスタンブールを経由してヘラス帝国入りしてからわずか五日後のこと。丁度ネギ先生一行がイギリス経由でメガロメセンブリアに入国する予定日に、同時多発テロが起こったのだ。
立場の違いから最近は疎遠だったとは言え、仮にもクラスメートである。なんとか消息を探れないかと方法を考えていたところ、寝耳に水の国際指名手配。それを聞いて、思わず全員が呆然となった。
「……ネギ先生たちは、仮にも麻帆良のコネも使って
「あー……どうにもあの転移ゲートは、旧世界と連絡を取るためのポートにもなっていたみたいで、あれが壊れると向こうの情報が一切入ってこないらしいんだ」
「……こっちの文化水準って、地方によってかなり差があるよね?」
「帝国と連合の境界線とかだと、完全に古代ローマとかその辺りみたいだしね。奴隷制度も存在するみたいだし」
奴隷制度。それ自体は旧世界でも途上国などには存在する場合がある。問題なのは、そういった制度に慣れてもいなければ親しみもない日本人がそこに叩き込まれた可能性があること。クラスメートがそんなことになっていないか、
「……流石にお嬢様が奴隷とかに落ちとったら、関西呪術協会としても生半可な抗議やら賠償ではすまさへんで? 最悪、連合だかメガロだかを向こうに回しての、全面戦争も有り得るわ」
そう口を挟むのは、今回に限り関西呪術協会からの意向を伝える役目も負っている天ヶ崎。ここ数ヶ月、陰陽道と呪術を教える講師としてこのかと関わったこともあり、少しばかり過激な発言だった。ただしこのかが身分的にはVIPであることも考えれば何もおかしくはない。外国の王子や王女が暗殺されて始まる戦争だって、過去には存在した。
「……まあ、色々と言いましたが。日本側の要望としましては、ネギ少年一行の可及的速やかな保護。国際指名手配の即時取り下げ。それに伴い、万が一奴隷身分や非人道的取り扱いを受けた場合の賠償ですね。その点よろしくお願いいたします」
「…………分かっておる」
答えたのは、彼らの対面に座った女性。肌は褐色で頭の両脇から角が生えている亜人の女性。この離宮の主であり、ヘラス帝国第三皇女でもあるテオドラだ。
「第一、先程のお話では、証拠映像があったそうなのですが、それはどこで撮影された物なのでしょうか?」
「メガロの転移ゲート内の監視装置の映像らしい。ネギがゲートの要石を砕く映像が映っていたと、メガロ上層部は公式発表しておる」
「帝国側のゲートでは、要石が設置されたポートはおろか、半径百メートル近くのありとあらゆる物品がランダムに世界中に転移されたそうですね? メガロ側のゲートでは違うと? そもそもその映像はあくまでメガロのゲートのみで、帝国を含む他のゲートを破壊した証拠にはなり得ないはずですが」
「まったくもって、その通りじゃ……」
そう返してテオドラは軽く溜息を吐く。彼女にも分かっているのだ。今回の指名手配は、余りにもおかしい。ゲートが吹き飛んでいるのに証拠が残っていたこともそうだが、手配までの手回しが早すぎる。恐らくあらかじめ彼らを陥れるために用意していたと考えるべきだろう。
「正式な国交正常化前に、このような事態……誠に遺憾ではあります」
「そう言いながら、追及の手は緩めるつもりはないのであろ? 少しは譲歩してほしいものじゃが……」
そう嘆息するテオドラに対し、あくまで菊岡は毅然とした態度で臨む。専守防衛の国、敵に手出しができない国と言われながらも、国際社会を生き抜いてきた日本国の姿がそこにはあった。
「申し訳ありませんが、わが国にとって、国民は何にも勝る財産であり、それを何が何でも守ることこそ国是です。日本で生まれ、育った若人が危機に瀕している時に、譲歩など有り得ませんよ」
「下手にメガロとの国交を悪化させれば、ぬしらの国とて被害を被ることもあろうに……真、難儀じゃな」
こうして外交特使団はヘラス帝国との国交正常化に臨みつつ、行方不明となったネギ先生一行の保護に向けて動き出した。しかしながらメガロ側は国際指名手配を取り下げず、行方不明のクラスメートの行方は杳として知れなかった。
事態が動き出したのは、メガロとの国交正常化に向け、テオドラとともに、国境沿いの古き国を訪れた時。すべての始まりの土地、『オスティア』で動き出そうとしていた……。
帝国での日常、終了。正直、国交正常化もまともになっていない外国で、勝手気ままに人探しなんかできません。やるにしても相手の行政府を通す形になります。そのためチウたちの動きは全然ないという事態に。
次回以降は一気にオスティアへ。修行が終わっててラカン絡みが無いと、一気に進むんですよね。ネギ組との接触は次回以降です!