【うちの弟は転生者らしい】原作知識を呟いただけなのに、世界は3日で 姉 の手に落ちた   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

1 / 24

【PDFで閲覧している "アナタ" へ】
PDFで最初に本作を読むと構造上ネタバレがございます。
そのため、最初は通常通りにハーメルン上で閲覧することを推奨いたします。







それでも良いのならお進みください。










犯人はヤス。





第一部 姉はすべての障害を破壊する
1話 うちの弟は転生者らしい


 

 

† 0話 【魔王の独白】 †

 

 

 

 

 

 

その女は人間だった。

唯の人間だった。

 

小さな辺境の村で生まれ、流されるように生き、死んでいく運命にあった。

しかし、そんな女の世界は脆く儚いものだった。

 

ある日、長年魔物の大繁殖を抑えていたダンジョンが人間によって攻略されたのだ。

溢れ出したモンスターが周辺地域へ壊滅的被害を与えた。

『財宝』と勘違いし、モンスターをダンジョン内へ誘引するための魔導具を地上へ持ち出したらしい。

 

とある国を半壊させた大事件。

慰霊碑にすら名を残さず、女の故郷は消え去った。

 

そんな女が生き残ったのはたまたまだった。

 

その日暇を持て余した俺は、現地の調査に参加していた。

モンスターは人間側だけでなく、魔族の領土側にも雪崩れ込んでいたのだ。

被害は最小限にとどめたが、失敗すればどうなっていたか。

その最悪のケースを調査するためにも、人間側の被害状況を把握するためにも、俺が直接現地へ赴く必要があった。

 

そんな中で出会ったのが、その女だった。

壊滅した村の中心で、魔物に囲まれている。

しかし、魔物は何故か女を攻撃せず、女も魔物を気にせず何か考え込んでいる。

 

正直、怪しさよりも好奇心が勝った。

俺は魔法で魔物を一掃し、人間の女に話しかけた。

まともな返事が返ってくるとは考えていない。

人間は魔族を嫌うが、魔族から人間への感情はフラットである。

これは歴代の魔王が誰一人欠けず、勇者を撃退した成果とも言える。

魔族が人間の実物と出会うことはまずない。

いくら相手が敵意を向けて来ても、国境には魔物の住む山々が存在する。

遠くの人間より身近な魔物の方がよっぽど怖い。

もちろん、魔族の住む地域でも一部人間による被害は報告されている。

ただ、それは災害のようなものだ。

滅多に起こることはないし、数年もすれば誰も覚えていない。

一市民としては、ただ遠くの出来事でしかないだろう。

 

 

 

女はペラペラ話し出した。

名前、年齢、身長、体重、好きな食べ物、趣味、生まれてからこれまでどう生きてきたか。

それに興味を示さない俺の様子を見て、彼女は話題の方向性を変えてきた。

 

 

馬よりも速く動き、多くの人々を運ぶ乗り物のお話。

竜よりも強く素早く飛ぶ兵器のお話。

空のその先にある無限に広がる闇と星々のお話。

剣と魔法を操り、魔王を倒す勇者達のお話。

魔王が勇者と料理バトルするお話。

魔王と勇者の精神が入れ替わり、四苦八苦するお話。

魔王が勇者と世界を半分こするお話。

魔王がツルハシを使って勇者を撃退するお話。

魔王が勇者になって魔王を倒す旅に出るお話。

魔王が……

 

 

そして、気付けば日が傾いていた。

彼女には不思議な魅力があった。

誰も知らないような物語をたくさん知っていた。

 

俺は暇が嫌いだ。

だから、そんな荒唐無稽の御伽噺をペラペラ話し続ける女を側におきたくなった。

ついでに部下達からのお見合い話が鬱陶しいため、偽の花嫁として迎え入れた。

反対する声も多いがそんなことより、暇を潰せることが大事だった。

『魔女と魔獣』の続きが気になって仕事に手が付かない。

 

 

そう

 

全ては偶然だ。

 

だから…

 

 

彼女が『 "神降しの魔法" 』を行ったことも偶然だった、そのはずだ。

"人間が魔法を使えるはずがない"。

ましてや魔王レベルの者が命を犠牲にしても成功するはずがない奇跡、それが『神降ろし』だ。

 

その日から彼女は変わった。

変化は劇的なものだった。

 

底の見えない膨大な魔力。

破壊神にはあったとされる漆黒の翼。

魂を引き寄せるようなオーラ。

俺とそっくりな赤い瞳。

 

それは既に俺の愛した妻の姿ではない。

彼女はもういないのかもしれない。

それでも、いつもと変わらず彼女は俺に物語を聞かせてくれる。

なんであんなことをしたのか、彼女は語らないし私も聞かない。

このままでいい、この日々が続くならそれで良い。

 

良い事もあった。

人間である彼女との婚姻に否定的だった者が皆、掌を返したのだ。

「破壊神の血統」「膨大な魔力」「魔族は安泰」「御美しい」「親族はいない」「御しやすい」「魔王に相応しい」

そんな心の声が聞こえてくるようだった。

人員整理は必要だろう。

俺は、俺達は短い期間で多くの出来事に出会いすぎた。

だから、少しのノイズもあって欲しくない。

ただ、安寧が欲しかった。

静かに彼女の物語が聴きたかった。

 

しかし、運命の神は小さな安らぎも赦しはしないらしい。

時々 "彼女が何もない場所へ話しかける" ようになったのだ。

そして、その頻度が増えていく。

しまいには、彼女とは明らかに異なる人格が表に出始めた。

 

俺は妻を問い詰め、彼女は答えた。

 

「この子は私達の娘よ」

 

彼女が使った『神降しの魔法』は文字通り神をその身に下ろす魔法である。

もちろん、そんな事をして下ろした側の身体が無事であるはずがない。

 

しかし、妻は魔法に手を加え、その問題を解決した。

自分の全てを対価にし、その身に下ろした神を自分の子として『再誕』させる。

 

正気の沙汰ではない。

魔法を司る一族の王 である俺が断言する。

 

『対価が見合っていない』

 

神に干渉出来るほどの "価値" がたった一人の人間にあるはずがない。

魔族にすらあるはずがない。

魔王である俺の全てを捧げても無理だ。

それこそ『 "同格である神" 』を対価にしなければ、神を改変するような魔法は発動しない。

 

しかし、現にこの魔法は発動してしまっている。

俺は400年生きた人生において、初めて無力感を味わった。

 

彼女はこれから徐々に失うだろう。

 

身体を。

記憶を。

魂を。

 

そして、それらはすべて娘となる破壊神のものになる。

 

「ふざけるな!!」

 

彼女の声も温もりも眼差しも俺のものだ。

いくら破壊神だろうと捧げねばならぬ謂れはない。

 

「これは必要な事だったの。それがこの世界を■■■■私の責任だからね。まあ、まだ残りの時間はあるから暫くよろしくね」

 

俺は仕事を全て投げ出した。

残り少ない妻との時間を無駄にしたくなかった。

 

最近生み出したダンジョンへ逢引きをし、たまに現れる赤子のような人格の妻をあやす。

 

娘の人格と話すと実感する。

この子は昔の私にそっくりだ。

なんでもできる故に、何に対しても価値を感じない。

暇を持て余すガキだった過去の自分を。

400年近くあった私の幼少期は、この数年のためにあったのだろう。

 

妻の好きだったこの世界物語を聞かせる。

妻の好きだった魔法を見せる。

私が好きな妻の物語を聞かせる。

娘の好きなヌイグルミを作る。

娘の好きな食べ物を作る。

 

どうかこの世界を好きになってくれ、パパも母さんもお前を愛している。

だから、笑っていてくれ。

 

私は初めてパパと呼ばれるようになり、新たに息子も生まれた。

 

 

 

そして、彼女はいなくなった。

 

 

最愛の娘と息子を残して。

 

 

 

 

 

†

 

 

いい、■■。貴方はとても強くて賢いわ。だから、脆弱な世界は貴方の目に無価値なものとして映るのでしょうね。

 

…。

 

でもね。それは貴方が『価値』を探す努力をしていないからよ

 

『価値』?『努力』?

 

この子を見てみなさい。

これが貴方の弟よ

 

?

 

今のこの子は貴方にとって何の "価値" もないかもしれない。

だから、試しにこの子に "価値" を見つけてみなさい。

 

…。

 

お姉ちゃんというのは弟の『お守り』をするものよ。

だから、これは約束。

この子をお願いね。それだけよ。

 

おかあさん

 

じゃあね

 

 

 

【-1話へ続く】

https://syosetu.org/novel/382119/6.html

 

 

きっかけは偶然だった。

 

最近、弟が産まれた。

すると母は自分に構ってくれなくなった。

弟は可愛いがそれとこれとは別だ。

 

つまり、少女は暇だったのだ。

 

今日は父も母もいない。

部屋の中で1人、手遊びをして時間を潰す。

 

ふぉわん

 

彼女の手から 淡い光 が溢れる。

 

『魔法』

 

それは暇つぶしの手遊びだった。

少女は輝く魔力をこねこね。

色々な形を作って暇を潰す。

 

彼女の手に触れた魔力はハト、カバ、イルカ、カメ、ミミズク……自在にその形を変えていく。

実物を見たことはない。

しかし、母は少女がぐずるとたくさんのものを見せてくれた。

これらの動物もその中のひとつだ。

 

カツッ

 

木材のかち合う音が部屋の中で響く。

それは少女が発した音ではない。

 

カツッ

 

『それ』は隣にいる彼女に目もくれず、何かを黙々と積み上げている。

少女はいつものように『それ』へ手を向ける。

 

べちょり

 

練りたてホヤホヤの『魔(・)法(・)』。

それを積み木に夢中な赤子(弟)へ擦りつける。

 

普段はあちこち元気に這いずり回る弟だが、たまに赤子言葉でぶつぶつ呟き、積み木を積んでは崩す遊びをする。

 

この状態であれば、コイツは何をしても無反応だ。

とても都合がいい。

そんな弟を少女はいつも魔法の実験台にしていた。

 

だから、弟がし(・)ゃ(・)べ(・)る(・)ようになったのはただの偶然だった。

 

【やべぇよやべぇこのままげんさくどおりものがたりがすすめばいせ界ハーレム作る前に世界滅ぶんですけど】

 

「ん。良い出来」

 

今回できた魔法は『翻訳魔法』だ。

ついでに他の試作魔法も塗り付けていく。

 

かくして少女の新しい魔法実験は興味深い結果をもたらした。

先ほどまで謎の言葉を呟いていた弟の口から、今では流暢なアリアス統一言語が聞こえる。

 

弟の様子を見る限り、『回転魔法』と『発光魔法』もうまく機能しているようだ。

 

【後10年で魔王が勇者を殺して破壊神マギアナギアが世界を崩壊させる世界に転生とか詰んでるんですけど、この積み木みたいにな!!10年ってなんやねん。こちとらまだ赤ちゃんやぞ。せめて20年とかにしてくれよ。10歳で主人公パーティに入って最終決戦に割り込むなんて流石に無理やぞ。いくらあのお節介アホ勇者でもそんな幼児を旅の仲間に入れてくれないだろうしな!】

「……」

 

弟によると、どうやらこの世界はあと10年で滅んでしまうらしい。

それは少し困る。

誕生日プレゼントがあと10個しかもらえない。

それは少女にとっては大きな問題だった。

 

【しかも、今世の父と姉はTOPオブ美形。将来は俺もモテモテライフのはずなのに!けどなぁ…けど、モテるような年齢まで生き残れる気がしねぇよ。なんとか家をこっそり抜け出して、サイショ村に隠されてる『チート武器』だけでも確保しないと……鍛えれば今からでもなんかなるか?あの村ってここからどれくらいだ?】

 

それはとても困る。

弟は『家出』をしたいらしい。

赤子が家出してしまえば、母から頼まれた『弟のおもり』という約(・)束(・)が守れない。

 

怠けるのは好き

でも、約束破りは大嫌い

約束は守られるべき、絶対に

 

【 10年で力をつけて、年齢を偽って主人公パーティに参加するか?いや、最終決戦のあの召喚儀式さえ阻止すれば勇者が勝てるかも?隠しチート武器回収しておけばいけるか?いやいや、厄災魔獣の対処も…】

「……」

 

【 なによりこの世界、娯楽が少な過ぎる!!ポテチもマックも漫画もゲームもねぇ。You◯ubeもガチャもない。まだ弱々赤ちゃんボディだが、退屈で発狂死しちまいそうだ。ファンタジーらしく魔法でもあれば試せるのに、主人公の周りだと誰も使ってないから、たぶんそれもない。ははっ、積み木たのちぃなぁ……】

「…げぇむ?…がちや?」

 

『翻訳魔法』は確かに機能している。

弟は少女のよく知る言語を話しているはずなのだが、その半分も彼女には理解できなかった。

 

それでも分かったことがある。

 

『弟は家出がしたい』

 

悩ましい。面倒くさい。動きたくない。

でも、約(・)束(・)は絶対だ。

『弟のおもり』は全力でやり遂げる必要がある。

 

家出の原因は6つある。

 

1.モテたい

2.世界滅亡の儀式を阻止する

3.厄災魔獣を討伐する

4.勇者の過去を助ける

5.ちぃと武器を手に入れる

6.娯楽が少な過ぎて暇

 

これは家族を捨てるほど楽しいことなのだろうか?

よく分からない。

でも、この問題が解決すれば弟も家出しなくなるはず。

少女は再び家で弟とゴロゴロできる。

やってみる価値はある。

少女は決心した。

 

赤子は話し疲れたのかウトウトし始めていた。

少女はそんな弟の頬を指の腹でつつく。

指が触れた途端、『回転魔法』と『発光魔法』がドロリと溶け、『安眠魔法』の優しい光が幼い身体をすっぽり包んだ。

 

ねむねむ

 

赤子はしばし眠気に抗った後、夢の世界へ旅立っていった。

少女はそれを見届け立ち上がる。

 

しかし、何かが引っ掛かり立ち上がれない。

 

少女は小さくため息をつき、ドレスの裾を掴む柔らかな手を優しく取り払う。

数歩歩いた後、少女は足を止める。

 

自分が離れている間に、弟が起きて脱走する可能性が残っている。

危険は少しでも避けたい。

今、この家には弟しかいないのだから。

 

「めんどう…でもやる」

 

お気に入りのヌイグルミをいくつか見繕い、『拘束魔法』をかける。

 

「かわいい」

 

ヌイグルミ達に抱きしめられた(拘束された)弟は、少し寝苦しそうに身をよじった。

 

そんな弟の顔を覗きながら、1つ目の願いをどう解決するか少女は考えた。

 

 

†

 

 


願望① モテたい


 

『魔法』とは願いだ。

 

しかし、『モテる魔法』は存在しない。

これは単純に相性の問題だと言える。

つまり、『モテる魔法』を作る才能がある者は元からモテるのだ。

既に満ち足りた者が生涯をかけて、それを願うかというと否である。

 

『想いの強さが魔法になる』

 

魔法を教えてくれた父はそう言っていた。

でも、それは間違っていると思う。

 

『想いの強さだけでは魔法は生まれない』

 

少女は既に知っていた。

一番欲しい魔法は、今もその手にはない。

それは魔法と出会ったあの日から何一つ変わらないのだから。

 

 

†

 

 

「マリ! 今日は久しぶりに天気がいいぞ。ウッドフォード庭園へピクニックでも……ああ、マギか」

 

「父、外行く?」

 

マギと呼ばれた少女の世界は小さい。

父と母、そしてこの部屋が彼女の全てだった。

 

「すまんな。まだお前には早い。母さんが元気になったらな」

 

「ん」

 

小さくても構わない。

少女にとって、母は大好きな存在であり、父はその次くらいの存在だった。

 

「まあ、マギも久しぶりの外(・)だ。ヌイグルミだけだとつまらないだろう。ひとつ面白いものを見せてやる」

 

そう言った父の身体が少し輝き、その手には『小さな花』が握られていた。

 

しかし、そんな筈はない。

父の手は先ほどまで少女の頭を撫でていたのだ。

その中に何もなかったことを彼女自身が一番よく知っている。

 

「父、これなに?」

 

「これはな、『魔法』だ」

 

そういうと父が少女の小さな手に『魔法』を与える。

 

「『魔法』……キレイ」

 

少女は父から手渡された『魔(・)法(・)』を握りしめる。

『魔法』は少女の手の中で揺れる。

 

「ん? ああ、これは『マリーナの花』だ。『魔法』と言うのは、この花を生み出した『光』のことだよ」

 

「ん?違うの?」

 

「はは、まだマギには難しかったかもな。お前はそれでいいんだ。お前の母さんも俺の魔法を見て唸ってたよ。本当にそっくりだ」

 

少女は花に目をやり、次いで父の手に目を向ける。

既にあの光は消えてしまっているが、何かが父の手と花の間に繋がっているように感じる。

父の大きな手を触ってみるが、彼女には何も分からない。

 

「マギ、魔法っていうのは『魔力』と呼ばれる力を呪文や魔導具と言った『型』に流し込んで、好きな事象を発現させる技術なんだ」

 

「ん?」

 

産まれたばかりの少女にとって、聞き慣れない単語の羅列が続く。

しばし魔法について語った後、父は自分の失態に気付く。

 

「あー、分からないよな。マギの知ってる物で説明するとだな。この粘土が『魔力』で、これをこうしてできたドラゴンが『魔法』だ」

 

「どら…ごん?」

 

「……まあ…父さんのセンスはおいておこう。魔力をこねて好きな形にする技術を私達は『魔法』と呼んでいるんだ。だが、実際に魔力というものは触れる物じゃない。呪文や魔導具を使わないと干渉できない非接触不変の物質だ。この『型』を新しく作るのはとても難しいんだ。生涯1つか2つ新しく作れたら凄いことなんだよ。でも父さんは天才だから5つも作ることができるんだ。どうだ見直したか?」

 

…。

 

「父、できた」

 

「……?」

 

普段表情に乏しい娘が満面の笑みを浮かべる。

魔法にそれだけ興味を持ってくれたのだろう。

父として、1人の魔法使いとして、嬉しいことだ。

しかし、娘の手から溢れ出る『マリーナの花(・)畑(・)』を見て、彼は固まってしまう。

室内にいるはずの彼の足元へたくさんの花弁が触れる。

 

「お花いっぱい」

 

「…やはり破壊神の力が

ckspBa

」

 

「?」

 

少女の高い感受性は父の感情を感じ取ってしまう。

それは『悲しみ』だった。

しかし、父はすぐにいつものように優しい笑みで彼女を褒め、花畑に埋もれた我が子を抱き上げる。

 

「ああ、すまない。それにしても初めてなのに凄いじゃないか。こんなにたくさんマリーナの花が咲くなんてな。マギはもう立派な魔法使いだ。マギなら直ぐにでも、新しい魔法を沢山作れるようになるな」

 

「もう、作った。でも失敗」

 

娘は先ほどの笑顔とは対照的に悲しい表情を浮かべて下を向く。

父はそんな娘が一層愛おしく感じた。

誰にでも失敗はある。ましてや今初めて魔法を知ったばかりの子供の失敗だ。

父の心の中には、いくらでもこの子を慰める言葉の準備があった。

 

「へぇ、どんな魔法なんだい?」

 

『魔法』とはつまるところ、『願い』である。

小さな少女が、小さな世界で叶えたい『魔法』は、子供が持つ当然の『願い』でもあった。

 

 

「母、父、もっと一緒、魔法」

 

 

小さな少女にとって、それは身の丈に合わない『大きな願い』だった。

 

 

 

「……そうだな」

 

父の大きな手が少女の頭を優しく撫でる。

 

「大丈夫、その魔法はもう叶っているよ」

 

 

†

 

 

「ぶっ!」

「これで良し、もてもて」

 

弟の鼻腔に指を突っ込み、そこへ『モテる魔法』を捩じ込む。

体外だと剥がれやすいが体内であれば長持ちするだろう。

これは良い『鼻』だ。

 

弟は身じろぎし、鼻をかく。

しかし、再び『安眠魔法』によって穏やかな寝息が聞こえ始めた。

 

魔法が安定する様子を確認し、少女はネバつく指をその生産者で拭うのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。