【うちの弟は転生者らしい】原作知識を呟いただけなのに、世界は3日で 姉 の手に落ちた 作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)
師匠との
知恵熱が原因だったらしい。
ああ、赤子ボディの貧弱さにはもううんざりだ。
しかし、あの日以来すこぶる身体の調子がいい。
なんだか力がみなぎる?気がする。
既に離乳食も卒業し、2歳になった俺は外の世界へ……行くことが
原因は "姉さん" だ。
あれから過保護具合に拍車がかかってしまった。
俺が玄関に触れるといついかなる時でも現れる。
確実に監視されてる。
まあ、2歳の幼児に対する扱いとしては妥当なのかもしれない。
しかし、俺は転生者。
既に精神は一人前の漢である。
だから、俺は『新しい魔法』を習得した。
その魔法はなんと『分身魔法』。
姉さんがどんな時もすぐにこちらへやってくるカラクリを考えた際、『転移魔法』とか言う伝説級の魔法をポンポン使っているとは考え辛い。
だってまだ10歳の女の子だぞ。
やはりどう考えてもおかしい。
こんな魔王や裏ボスだけしか使えそうにない魔法をただの少女が使えるもんか。
おそらく、『監視魔法』と『分身魔法』の組み合わせだろう。
仕組みは案外簡単だ。
『監視魔法』で得た情報を精霊?か何かに渡し、危険だと判断したら俺へ事前にかけられた『分身魔法』が発動する。
そして、姉さんの分身がその場に現れる。
壁をすり抜けたりするのは、おそらく半分実体がない幽霊みたいな存在だからだろう……たぶん。
これは全部俺の推測でしかない。
だが、かなり正解に近いと断言できる。
じゃないと、どう考えても姉さんが『魔王』か『厄災魔獣』になってしまう。
俺のゲーム知識には、魔法を使える奴らがこいつらしか存在していない。
根拠に乏しい推測になるのは仕方がないことだろう。
しかも、『転移魔法』なんてどんな物語でも大抵ヤバい存在が使ってくる代表例だ。
『分身魔法』も大概だが、俺すら使えるんだからそういうものなんだろう。
というわけで、留守番よろしく俺。
えー、俺も外の世界見てみたいよ俺。
『分身』
当然のことながら、分身体も俺自身である。
外の世界へ出てみたいと考えてるのは予想できた。
だから、俺たちはジャンケンで決着をつけることにしたのだか。
……つかなかった。
あっち向いてホイ、ドロー。
駆けっこ、ドロー。
いっせーのーで、ドロー。
指スマ、ドロー。
クイズ、ドロー。
叩いて被ってジャンケンポン、そもそもジャンケンが全部あいこ。
この実験から分かったことが一つある。
『分身は完全に俺と同じ』だ。
しかも、記憶をリアルタイムで共有できる。
これで勝つのは無理がある。
そして、そうなると問題自体の根底が変わってくる。
これならどっちが外へ出ても良くない?
それもそうだな。
勝敗はつかなかったが、決着はついた。
「バモ、外行くぞ。俺の足になってくれ」
《仕方ないにゃあ。若はまったくもお。バモ使いが荒いんだから》
「行ってらっしゃい」
俺はバモに跨り、窓から外へ飛び出した。
姉さんは
家にいる方を俺と誤認してくれたようだ。
やったぜ。
「待ってろよ。まだ見ぬファンタジー世界!!」
《若ぁ、どこ向かうの?》
「さあ?バモはなんかオススメある?」
バモの乗り心地はまあまあ良い。
フサフサな毛並みを撫でてやる。
《アタシこの辺の出じゃないから分かんない。それにこの体型になってから、外出たのも初めてだからね》
「体型?そんなに変わってないぞ。まあ取り敢えず、色々見たいから適当にぶらぶらしよう」
うちの家を出てからずいぶん時間が経った。
流石にお腹が減ってきたな。
疲労はあまりない。
主に歩いているのはバモであり、俺は跨り続けて股が痛いくらいだ。
ただ、お腹は空いてきた。
幸い乳歯はほぼ生えそろっている。
離乳食じゃなくても食べることが可能だ。
あまりにも硬いなら、魔法で強化したマジカル乳歯で噛み砕くしかないが。
「バモ、何か食べられるものない?」
《若、腹減ったのか?おっぱい飲む?》
バモの中では、俺はまだまだ乳飲子のままらしい。
果物か肉が食べたい。
ただし、生は無しだ。
幼児ボディには刺激物も辛い。
……これ詰んでるか?
《あ、若ぁ。人間の匂いがするぞ。こんな近くに生息してたんだなぁ》
バモは鼻がきく。
近くに村があるようだ。
変わった立地である。
近くに川もなければ、人が通る道もない。
森の中にひっそりと存在している村だった。
まるで何かから隠れるように。
「イ……た…ィ」
声が聞こえた。
続いて叫ぶような、怒鳴るような声が聞こえてくる。
「 忌々しい。人の皮を被った化け物め」
「あの子は死んだのになんでこいつだけ」
老若男女様々な人の叫びが聞こえる。
明らかにヤバい。
この世界で初めて感じる本物の殺意。
俺は身体がすくんでしまう。
しかし、バモは気にならないらしい。
お構いなしにどんどん声のする方向へ進んでいく。
木々を分けて進むとやはり村があった。
そして、十二、三人程度の人間が何かに向かって石を投げている。
「厄災の子め!」「この国が負けたのはおまえのせいだよ」「おまえが外に出てきたからうちの家畜が死んだ」「おまえさえいなければ!」「おまえが息をするから今年も不作なんだ」「おまえが」
怒声と石が何かにぶつかる。
俺は村人達が向ける視線の先に目を向けた。
そこには小さなボロ切れがあった。
泥に塗れ、所々赤黒い。
しかし、それは動いていた。
布の切れ端から見える赤く腫れ上がった腕を見るまで、それが生き物だと分からなかった。
気づいた瞬間、俺は……
『マジックハンド』
魔法を使ってその生き物を引き寄せた。
「なんだこいつは!」「あの化け物の仲間か!?」「これは魔法?魔族よ。こいつ魔族だわ」「殺せ、魔族だ逃すな」「やっぱり殺しておくんだった」「悪魔め、魔王の手下が!!」「ガキか?大した魔法じゃないな」「汚らしい」「魔族領から出てきたのか?これはいい儲けになりそうだ」
俺に気づいた村人達は即座に武器を構えた。
農作業の器具ではない、本格的な剣や槍である。
こいつらただの村人じゃないらしい。
魔法のことまで知ってるみたいだ。
「バモ、撤退だ。全速力で逃げろ」
《アイアイ、若ぁ!!》
俺は『マジックハンド』は空気抵抗を受けないが、掴んでいる "ボロ切れくん(仮)" にはしっかり物理法則が適用されるらしい。
爆走するバモに両手でしがみつつ、『マジックハンド』が解除されないように踏ん張る。
重い。耐えろ俺。男だろ俺。
永遠にも思えた逃走劇は、
「ねぇ、バモ」
《なぁに、若》
「おまえ迷っただろ」
…………。
《……てへっ⭐︎ぺろりんコ》
このクソビーバーがぁあああ!!