【うちの弟は転生者らしい】原作知識を呟いただけなのに、世界は3日で 姉 の手に落ちた 作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)
【少女を庇って殺される英雄】
男の生き様としては、そこそこカッコいい分類じゃないだろうか?
庇った相手が好きな
思春期の男子なら一度は憧れるシチュエーションかもしれない。
……いや、今の流行りは無双系だったな。
少なくとも俺は憧れたことがあった。
ただし、『分身』という保険があったとはいえ、実際にやった人間の感想としては、
「二度とやりたくねぇ」
俺は知らない天井に向かって呟いた。
あの子をバモに任せ、俺は分身体に残った魔力の全てを使って暴れ回った。
勢いに任せて複数魔法の同時使用までできていた気がする。
ただし、本体でやったら分身同様に爆発四散しそうで試す気は起きない。
あの時、『分身魔法』は上手く機能していた。
だから、屋敷でゴロゴロ姉さんと遊んでいた本体の俺は無傷であるはず……だった。
結論としては、大失敗。
本分身が死ぬと同時に本体も家で気を失った。
『分身魔法』は
"動かせる身体が増える"
"リアルタイムで記憶を共有できる"
"姉の目を盗んで外出できる"
メリットだけ上げれば、最高の魔法と言えるかもしれない。
しかし今回、1日中使い続けたことでたくさんの問題が見つかった。
"腹がめちゃくちゃ減る"
"分身体は魔力を回復できない"
"本体のあらゆる機能や性能が半減する"
"ダメージのフィードバックがある"
『ダメージのフィードバック』、これが大問題だった。
俺は血を吹き出して意識を失ったのだ。
"姉さんが添い寝している時に"
姉さんは、それはもう大変な取り乱し様だったらしい。
……これは後から親父に聞いた話だが、親父を呼びに行く際、勢い余って家を全壊させたらしい。
姉さんは凄い。
でも、子供の魔法で壊れる家は流石に手抜き工事過ぎると思う。
現在は家の再建中らしい。
「ごめん、姉さん」
「ダメ、許さない」「そうだそうだ」
ダメらしい。
病室の入り口から姉さんと親父が入ってくる。
もう深夜だというのに申し訳ない。
そして、何故か姉さんの両脇には気絶したバモとあの時逃した少女が抱えられている。
あ、目を覚ました。
少女は辺りをキョロキョロ見渡した後、姉さんの顔を見て気を失った。
バモは寝たふりだな。
「ねえ、マギちゃんマギちゃん。さっきから気になってたんだけど、その子はどこから拾ってきたのかな?」
親父も見知らぬ少女の存在に気付いたらしい。
口調は軽いが少し表情が硬い。
他所様の子を拉致してきたのなら、焦るのも無理はない。
あまりにも姉さんが自然に少女を抱えていたので、人形か何かだと今まで勘違いしていたようだ。
「バモ、産んだ」
「えぇ!?でもどう見ても……いやありえるのか?」
親父もだいぶ混乱しているらしい。
しかし、少女の腰あたりからバモと同じフサフサの尻尾が生えている。
プルプル震えているので、起きてはいるようだ。
相変わらず『変身魔法』が暴発している。
ただ、そのせいで親父もバモの娘であると誤解してしまいそうだ。
「全部、話して」「そうだぞ」
姉さんの後ろで合いの手を入れる親父が鬱陶しい。
しかし、姉さんの圧には逆らえない。
俺は洗いざらい白状した。
外の世界を見てみたかったこと。
姉さんの魔法を参考に『分身魔法』を作ったこと。
人間の村で女の子が虐められていたこと。
助けたら追手に殺されたこと。
その反動で本体まで倒れたこと。
ここに至るまでの一切を全て話した。
姉さんも親父も、当然いい顔はしなかった。
話し終えた際、親父は俺の頭にポンと手を置き、落ち着いた声音で語りかけてきた。
「いやぁ、流石俺と母さんの子だな。2歳児の行動力じゃない。その胆力は母さんそっくりだ。だが、今回は流石に看過できん。次は大声で父さんの名を呼べ。何処に居てもお前を助けに駆けつけるから」
親父はそう言って俺を抱きしめた。
顰めっ面の姉さんも引っ張り、一緒に抱きしめる。
筋肉が硬くてゴツゴツしている。
暑苦しい。ちょっと臭い。
でも嫌じゃない。
なんというか、普段の親父からは考えられないが……俺って愛されてるんだな。
「親父、ひげ痛い」「父、クサイ」
「うそ……だろ……」
親父の抱擁から解放され、俺は再び不機嫌な姉さんと対峙する。
くずおれた親父は一旦部屋の脇に寄せる。
ここで対応を誤ると、これから一生姉さんの視界内でしか生きて行けなくなる。
かもしれない。
「『分身魔法』禁止」
「はい!」
元気に返事を返す。
少しでも反省してる感を出すんだ俺。
どのみち『分身魔法』は欠陥品だ。
今のままでは危な過ぎて使えない。
姉さんの表情が少し和らぐ。
素直に『分身魔法』の使用を諦めたからだろうか?
姉さんが俺の頭を軽く叩く。
……どうやら許されたらしい。
ちょろ過ぎる。姉さんちょろ過ぎる。
俺が守らないと。
将来本当に嘘つきな大人達に騙されそうだ。
「あのさ姉さん、一つだけお願いがあるんだ」
「なに?」
姉さんの機嫌が再び悪くなる。
これはダメかもしれない。
初めは気軽に口にした言葉だった。
でも、俺は
子供の俺だけでは、あの子を守り切れない。
家族ヒエラルキーの頂点は姉さんだ。
以前、親父が機嫌良く帰ってきた日に何かあったのだろう。
それ以来姉さんの言うことに親父が反対するところを見たことがない。
だからここで、なんとしてでも姉さんの協力を得る必要があった。
「その子をうちの子にしたい」
俺は姉さんの足元に目線を向ける。
寝たふりをやめ、こちらの様子を伺っている少女。
歳は俺と姉さんの間くらいだろう。
親の庇護がまだまだ必要な子供だ。
今も荷物の様に扱われたことを当然とし、受け入れている。
彼女の一挙手一投足にこれまでの境遇が伺える。
厄災魔獣の幼体。
しかし、彼女は確かに感情を持った1人の人間だ。
俺は成り行きとは言え、彼女を守ると約束した。
将来の戦力、美少女は目の保養、モフモフしたいetc.
保護したい理由は山ほどある。
それでも、一番の理由は『約束』したからだ。
自分で決めたことは最後までやり切る。
図らずも手に入れた二度目の人生。
後悔だけはしたくない。
力を持たず、意志も弱かった前世の自分。
どうせなら、なんとなく生きていたあの頃の俺とは違う選択をしたい。
「だから、姉さんお願い」
「わかった」
姉さんの表情が再び緩む。
俺は勝負に勝ったらしい。
姉さんの逆鱗はここじゃなかった。
「本当にいいの?」
「いい」
少女が姉さんに聞き返す。
まだ夢か何かだと思っているらしい。
「本当に本当?」
「ほんと」
姉さんが少し困っている。
俺も少し助け舟を出してやる。
「本当だぞ。姉さんは嘘を付かないからな。あれ?この場合、妹が増えるのか?姉なのか?」
まあ、なんでもいい。
俺は泣き虫娘の涙を袖で拭う。
それでも止まらない。
彼女を抱きしめてやる。
今は好きに泣いたらいい。
「ありが、どう。あり、がどう」
親元から連れ出されてから今までずっと、頼れる仲間も家族も友達もいなかっただろう。
5歳そこらの子供が経験していいものじゃない。
出来ることなら助けてやりたい。
この世界には理不尽が溢れている。
"破滅のロンド" では悲劇なんてあり触れた日常に過ぎない。
ありふれた悲劇だからって、見て見ぬふりをする人にはなりたくない。
俺は出来ることをやりきった。
今はそれで良い。
「私、ここにいて良いんだよね」
「いいよ。ここにいてくれ」
守ったからには最後まで面倒を見る。
世界の崩壊も阻止し、この子も幸せにしてやる。
親父も腕を組んでうんうん頷いている。
「ようこそ、我が家へ」
「君の名前を教えてくれ」
マギは新しく家族になった子供をぼんやりと眺めていた。
正直、あまり興味はない。
それでも、マギは初めて弟に頼られ、少し気分が良かった。
ただし、『分身魔法』だけはダメだ。
マギは一目見て気付いた。
あれは
彼女の弟が分身に使った半分の "命" は今もこの場に戻ってきていない。
こんなこと到底許容できない。
「名前……ない」
弟の問いに保護した少女が答えた。
彼女は名前がないらしい。
マギは名前に興味がない。
そんなものがなくても役割さえ分かっていれば十分だと考えていた。
しかし、彼女の弟は違うらしい。
「……そうか。じゃあ今考えよう。ちょうど家族全員で集まってるしな。家族会議しよう」
父もバーモットも話し合いに加わり、色んな名前が議論された。
「アナ」
当然、マギも意見を求められた。
興味のない彼女は適当な名前を答える。
マギの次にはアナが来るものだ。
「それが良い。私今日から『アナ』。ありがとうマギお姉ちゃん。大切にする」
「流石、姉さんネーミングセンスも抜群だな。アナ、姉さんからのプレゼント大事にしろよ。紙に書いて額縁に飾って部屋に飾っとけ」
マギは動揺した。
"プレゼント"
彼女は今まで誕生日プレゼントを貰ったことはあっても、あげたことはない。
プレゼントを受け取ったアナも、弟と父も嬉しそうだ。
マギはそれを見て気分が良くなった。
この日、マギは
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