【うちの弟は転生者らしい】原作知識を呟いただけなのに、世界は3日で 姉 の手に落ちた 作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)
「……あれ?私なんでここに来たんだっけ」
「エン。どこか痛むところはないか?あと、ここに来る前に何を見たか話せる範囲で教えてくれ」
エンが寄生されてることを確認し、すぐに『改変魔法』で彼女に寄生した魔物を分解する。
魔法を他人にかけるのは初めてだった。
「どこも痛むところないけど、なんで?」
魔法は問題なく発動したようだ。
彼女の様子を見る限りだと、寄生の後遺症は気にしなくて良いかもしれない。
ただ、ここに来る前後の記憶が曖昧らしい。
これは俺の寄生解除時とは違う症状だ。
彼女の覚えている最後の記憶は、俺の家へ向かっている最中に誰かとぶつかった所だった。
おそらくそこで寄生されたのだろう。
これはいよいよマズイかもしれない。
「エン。ちょっと留守番をお願いできないか?お小遣いは出すからさ。次の仕事の面接あったの忘れててな。今すぐ出ないといけないんだよ。じゃあ、そういう事だから」
俺は幾らか金を握らせ、適当な言い訳で彼女を安全な家の中に留めることにした。
今、外がどうなっているか分かったものではない。
俺は上着とカバンを掴んで外へ駆け出した。
「え、お小遣いって、私もうそんな子供じゃ無いんですけど……行っちゃった」
「あの、すみません。コマゴマ雑貨店ってどこにあるかご存知ですか?」
「え、ええ。あっちにありますよ」
黒
「こんにちは」
「ああ、ケンシャちゃん。もう体調良くなったの?」
白
「おじさん、調子どう?」
「あ?ケンシャか。店は見ての通り超ひまだぜ。ただ、あっちは絶好調だな。今夜もかみさんと一戦交えるぜ。最近冷え切ってたが、俺のカッ」
黒
「お、ケンシャじゃん。もう身体大丈夫か?」
「ああ、お前の方はどうだ?」
「オレ?オレは鍛えてるからいつでも絶好調だぜ。ケンシャ、お前ってよく見ると」
……白
家を飛び出し、目につく人々に声をかけて回る。
さりげなく触れることで、彼らの体調を確認していく。
寄生型魔物による寄生率は6,7割くらいだ。
既にかなりの人が寄生されている。
幸い今すぐに他者を襲うような様子では無い。
寄生された人達は、皆機嫌が良い。
こういう状態をなんと言えば良いだろうか、気持ちが大きくなっているというのか?
街中でいきなりハグされたり、果物を分けてもらったり、無料で酒を勧められたり、街全体がフワフワしている。
知らない人に迫られることも何度かあった。
そして、その誰もが『魔物寄生』の状態異常だ。
・ 危機感の低下
・ 積極的な行動
・ 繁殖行動の誘発
どれも魔王様が話していた特徴に一致する。
この街を静かに襲っている者の正体は『寄生型魔物タコゥ』で間違いないだろう。
「その内容ではクエスト化できませんね。創作にしてももうちょっと設定を練った方が面白いですよ。例えば」
最悪だ。顔中が痛む。
魔物退治と言えば『魔物討伐ギルド』。
俺は街に唯一存在する魔物討伐ギルドにたどり着き、『寄生型魔物タコゥ』について訴えたのだが、信じてもらえなかった。
ギルドの受付曰く、そんな魔物は存在しないらしい。
魔王様の呟きについても、子供の戯言だと
強引に『寄生魔法』の解除を試みたが、逆上したのだと勘違いされてしまった。
俺は護衛の冒険者にぶん殴られ、施設の外へ放り出されて今に至る。
もう、ボコボコである。
ただ、どさくさに紛れて触れた全員、魔法を解除しておいた。
『寄生魔法』はもちろん、『呪縛(会話)」も『身体強化』もだ。
もうあいつらは魔王様の声が聞こえない。
時代に取り残されるが良い。この馬鹿野郎!
「もう、俺がやるしか無いだろ」
専門家である魔物討伐ギルドは頼れない。
この街は俺が生まれ育った場所だ。
幸い『改変魔法』という切り札が俺にはある。
俺さえ頑張れば街を救えるかもしれない。
「いっちょやりますか!」
【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】【改変対象:寄生型魔物 → 栄養素へ変換】「おえええぇ!」
『寄生魔法』を俺は手当たり次第改変して行った。
流石に数が多過ぎたこともあり、時間が経つにつれて作業が雑になっていく。
酔っ払いだと勘違いした人にはホウキでしばかれ、セクハラと勘違いされては引っ叩かれること何十回。
怖そうなお兄さんに追いかけられること十数回。
遂に、俺は胃がひっくり返るよう気持ち悪さに耐えられなかった。
しかし、口から出るものは何もない。
当然だ。
昨日の夜から俺は何も食べてないのだから。
「なんかお腹いっぱい。動くの辛い」
昔、母さんが誕生日に作ってくれた好物。
それを腹がはち切れんばかりにかき込んだ子供の頃を思い出す。
気持ち悪い。吐いてもスッキリしない。
もう食えない。
……いやそれはおかしい。
俺は昨日の夜から飯を食べていない。
今はもう夕方だ。
普通なら腹が減ってさっさと家に帰っている頃だ。
俺は1つ、原因に心当たりがあった。
俺の使っている魔法はなんだ?
『
では、何を何に改変している?
【改変対象:寄生型魔物 →
「ハハ、一生飯には困らんかもな。これ」
『改変魔法』は
つまり、飯のために働く必要がなくなったわけだ。
ただ、デカいデメリットにも気付いた。
『改変魔法』は俺が食い切れなくなったら使えないらしい。
「おい、にいちゃん。大丈夫か?酔い潰れるには早過ぎる時間だぜ。ほれ、酔い覚ましの一杯だ」
先程
俺はよろめき、再度『改変魔法』をおじさんにかけてしまう。
個体名:オンジ
種族:人間
状態:
取得魔法:
……
「ハァ?」
彼の状態を目にした俺は愕然とした。
そこには『魔物寄生』と書かれている。
彼の状態は先程確かに治したはずだ。
しかし、現に再び彼は寄生されている。
「これじゃあ、無限ループじゃないか」
俺はその場にへたり込む。
今頃1日かけて助けた人達も再び寄生されているだろう。
「俺の『改変魔法』じゃあ。街のみんなを助けられないのか?」
「どうしたにいちゃん。話聞こか?」
発情したおじさんも俺の隣に座り込む。
おじさんに渡された酒を煽る。
酒が絶望を少し和らげてくれる気がした。
「おじさん。俺もうダメかもしれない」
「おじさんだってもうダメさ。娘には臭いと言われ、女房には掃除の邪魔だと追い出され、こんな所で酒飲んでる」
こんな状態だが、このおじさんは会話が成り立つらしい。
「何がダメなのかは知らんがな。ダメだったんならまたやり直せば良いんだ。おめぇは見た感じまだ若ぇじゃねえか。何度でもやり直せばいい。できるまでやり直せばできるんだよ。やり直せるってのは良いぞ。俺も女房とあのラブラブだった頃に戻りてぇよ」
「そんなやり直しができるような話じゃ……いや、やれるか?」
俺は寄生型魔物に取り憑かれ、飢餓状態で『改変魔法』を習得した。
おそらくその時に無意識に欲していたのが『栄養』だったのだろう。
そのまま習得してしまったから、『改変魔法』のイメージが変な形で固まってしまったんだ。
『魔法はイメージが全て』
魔王様もそう言っていた。
だから、俺はもう一度正しい形で『改変魔法』を習得する必要がある。
「おじさん」
「ん?」
俺はおじさんに触れる。
「イヤん」
個体名:ケンシャ
種族:人間
状態:
取得魔法:『改変魔法(栄養)』
……
予想通り、再び俺の状態に『魔物寄生』が追加される。
ここから再び始めよう。
失敗したって良い。
何度でもやり直してやる。
魔法は好きだ。
だから、何度だってイメージしてやる。
神様仏様魔王様、力をお貸しください!