【うちの弟は転生者らしい】原作知識を呟いただけなのに、世界は3日で 姉 の手に落ちた   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

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3話 うちの〇〇〇は厄災魔獣らしい

 

この世界には『魔法』が存在し、人間の世界ではそれを操る生物全般を『魔物』と定義している。

 

つまり、『人間』からすると魔法が使える『魔族』もこの『魔物』の一種という認識が一般的であった。

 

もちろんそんな事実は存在しない。

『魔物』にとっては『人間』も『魔族』も皆すべからく食糧に過ぎなかった。

 

そんな中でも、大災厄として国をいくつも滅ぼしてきた四体の『魔物』が存在する。

 

それらはただの魔物と区別するために『厄災魔獣』と呼ばれ、絶望の象徴として恐れられていた。

 

 

 

 

「国王陛下、大変です!!」

「おい、今は会議中だぞ」

 

ここは勇者を何人も排出してきた歴史ある人間の国。

王国の方針を決める大事な会議の中、重厚な扉を破り、伝令役の兵士が血相を変えて乱入してくる。

あまりに全力だったためか、伝令は声を出せずその場でむせてしまう。

 

「おいおい、少し落ち着『ご、ご報告いたします。厄災魔獣バーモットが国境を超えて移動を始めました』なにぃ!?」

 

伝令は役目を終え、その場に崩れ落ちた。

 

「国家緊急事態宣言を発令しろ大臣。国中の英雄を集めよ。国庫も開けろ。出し惜しみしたところで、負ければなにも残らんからな。あと隣国へ伝令を走らせろ。対厄災条約に則り、全ての国へ警鐘を鳴らせ!!」

「ハッ!即時対応にあたらせます」

 

有史以来、人類共通の敵として存在する『厄災魔獣』。

それ故にその対処方法は()()()()()()()()()()()()()、確立されている。

 

()()()()()()()を集め、使い潰して()()()()()()ことだ。

 

もはや会議をしている時間も惜しい。

これは『国』を『英雄』を『全て』を使い潰し、一部の人類がなんとか生き残る敗戦処理だ。

 

「勇者様もいないこの時代になぜだ。次の勇者様をお迎えするまでこの国は保つのか……いや、保たせる。それがお祖父様との約束であり、この玉座の意味」

 

覚悟を決めた王は、王座に隠されていた宝剣を鞘ごと引き抜く。

 

都市を単身で滅ぼせる『魔物』を討伐した勇士を『英雄』と呼ぶ。

しかし、そんな英雄でも数合わせにしかならない『厄災』との戦い。

王は絶望に震える。

しかし、彼がその絶望に背を向けることはない。

 

 

 

 


願望③ 厄災魔獣を討伐する


 

「弟嫌がる。だから1000年、静かに」

 

「okボス。でもここまで移動するのに疲れたから、いつもの気持ち良くなるやつやってよ」

 

小さな少女と巨大な黒い毛玉。

美女?と野獣。

交わりようのない1人と1匹の物語。

 

2人の出会いは数年前に遡る。

 

少女は抱き枕を欲していた。

しかし、抱き心地のいいワタが見つからない。

父は部屋へ様々なものを持ってくるが、彼女にはどれもしっくりこなかった。

だから、思い切って外の世界へ冒険してみることにした。

何事も禁じられるとやってみたくなるものだ。

少女は反抗期だった。

 

もちろん、晩御飯までには毎回帰宅する。

反抗期だってご飯抜きは辛いのだ。

 

少女は山へ、谷へ、河へ、海へあちこち出向いた。

たくさんの魔物に出会い、その都度毛をむしっていった。

 

それは魔物たちの間で噂になる程だった。

いつしか彼女は魔物たちの間で『毛毟(ケムシ)』として恐れられるようになる。

しかし、どうしてか毛をむしられた魔物は皆口を揃えてこう答えた。

 

「気持ちよかったです」と。

 

そうして、様々な素材を集め回った末、出会ったのがこの全身高級羽毛?怪獣である。

近隣に住む魔物たちは震え上がった。

明日には寝床が文字通り無くなる(消滅)だろうと。

 

しかし、魔物たちの予想は大きく外れる。

その戦いは激戦などではなく、少女による一方的な蹂躙でしかなかった。

 

少女にとってこれは当然の結末だった。

彼女の目的は『最高の抱き枕』を作ることである。

戦闘で傷んだ毛などもってのほかだ。

 

素材は綺麗にして、筋肉をほぐし、不安を取り除き、脱力させることで、ようやく良い品質となる。

そして、これは採取する前に行わなければならない。

これは何十匹も魔物を追い回した成果の一つである。

 

『清潔魔法』

『休息魔法』

『満腹魔法』

『安寧魔法』

 

少女から魔力が消費され、毛玉は光に包まれる。

既に何十回と繰り返した容易い作業だ。

触れるだけでそれは完了する。

 

「あぁああ、これこれ。んんぉお、たまらん。もうこんなに安心できるなら昔に戻るの無理よ。ボスの『人をダメにする魔法』なしじゃあもうアタシ生きてけないわ」

 

この無駄に太った黒毛のマーモットはこうして懐柔され、容易にそのふかふかな毛を差し出す。

そうして、腹を見せながらその場で寝こけ始めた。

あまりの体たらくに少女も溜息を漏らす。

 

「はぁ、仕方ない」

 

『縮小魔法』 『ペット化魔法』

 

手乗りサイズに小さくなった()厄災魔獣は満腹になったお腹をポリポリとかく。

全く呑気なネズミである。

 

少女は小さな獣を懐にしまい、駆けつける多数の足音へ振り向く。

 

「魔王様、大丈夫ですか!!我が国に厄災魔獣が侵入してきています。ここは危険です。先代様に相談して城で対策を練りましょう」

 

魔王軍の将軍が血相を変えてやって来た。

足音の正体は部下たちだったようだ。

あまりに急いだためか、よろけて倒れている者までいる。

 

「いらない」

 

「えっ、どういう事でしょうか?先代様は確かにチャランポランでウスラトンカチの頼りない男ですが、意外に作戦立案と戦闘能力には長けておられます。まあ、親として見た時に頼りになるかというとなんとも言えませんが……」

 

将軍が必死に父のフォロー?をする。

この将軍は父の幼馴染という事で良く父のことを知っている。

少女は今でも良く遊んでもらっている。

 

「もう解決、した。次」

「えっ!?バーモット倒したんですかお嬢さ、いえ魔王様!」

 

将軍の頭は現実に追い付かなかった。

昔からこの少女に凄まじい才能があるとは理解していたが、友人である先代魔王より既に強いという発言は親バカの戯言だと思い聞き流していた。

それでも、将軍として彼女を守っていけばいいと 新しい魔王 をいち早く受け入れていた。

それがこの仕打ちである。

 

「ん。じゃあ」

「ちょっと魔王様!もう少し説明してくださいよ!!はぁ…」

 

話すことが得意ではない少女はもう何も話さない。

将軍はため息をつき、その場を軽く検分する。

 

「ふーむ、確か奴は四足歩行だったはず。身体を引き摺った痕かこれは?それがここで途切れている……おいお前たち、厄災調査団を呼んで来い。調査が終わり次第他国へ声明を発表する。そっちの準備も進めろ。あと大臣たちも集めておけ」

 

将軍が指示を出し、魔王軍が急いで調査に乗り出す。

忙しそうな大人たちを尻目に、少女はひっそり抜け出した。

 

 

 

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