【うちの弟は転生者らしい】原作知識を呟いただけなのに、世界は3日で 姉 の手に落ちた   作:私貴方私(Y-ou@so-soなフリー)

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第二部 世界が救われたことを俺だけは知らない
1話 原作


"太陽" というものを知っているだろうか?

 

知っているなら、その人も俺と同じ "転生者" なのだろう。

俺が前世の記憶を持ったまま、食って寝てクソするループを始めた全盛期。

転生という特別な現象に心が躍ったものだ。

ここがどんな世界で、どんな冒険が待っており、どんなチートを持っていて、可愛いヒロインがいっぱいいたら良いなぁ。

そんな妄想を繰り返しながら、オムツの交換をされていた無垢な時代が俺にもあったんだ。

 

そんな希望に満ちた時代も実家から始めて、外へお出かけした時に崩壊した。

期間にして僅か1日、短い幼年期である。

 

俺は『空(・)を(・)見(・)上(・)げ(・)る(・)こ(・)と(・)』で、この世界がどんな世界か全て悟った。

 

『破滅のロンド 〜魔王は狂い、勇者は踊る〜 』

 

それがこの世界の名だ。断言できる。

空を見上げれば誰だって気づける。

そこには『魔法陣』が浮かんでいる。

それだけでは、数あるファンタジー世界と区別が付かないだろう。

ファンタジーなんだから、月が三つあったり、太陽がない世界もあるだろう。

だが、この "空" と呼ばれるにはあまりにも冒涜的な

 

『魔(・)法(・)陣(・)が(・)描(・)か(・)れ(・)た(・)真(・)っ(・)黒(・)な(・)天(・)井(・)』

 

を見れば嫌でも悟ってしまうだろう。

 

この世界に『宇宙は存在しない』。

太陽も月も星も雲も存在しない。

そんな物理法則どころか人の住める惑星の条件すら整っていない世界でも、 "人" が生活できている。

 

その原因もこの天井にある。

 

"天空紋(てんくうもん)" と呼ばれている大昔から存在する空に浮かんだ謎の魔法陣には特殊な役割が存在する。

ただ、光っているだけの存在ではない。

 

俺たちの上に広がる天井からは、空がないのに "太陽光" "雨" "風" といったものが降り注いでおり、現実世界に限りなく近い環境をこの世界に再現している。

 

"天空紋" は巨大な転移門なのである。

 

異なる世界を何重にも展開している世界規模の転移門。

つまり、太陽光や雨は "異世界転移" してきており、それがこの世界の生態系として組み込まれているのだ。

 

ここまでがこの世界の人(・)間(・)側(・)が知っている情報である。

 

しかし、俺は転生者だ。

『破滅のロンド』という鬱ゲーをクリアしたプレイヤーだ。

異世界転移は "天空紋" が担う真の役割から漏れ出した副産物に過ぎない。

 

【破壊神マギアナギアの封印】

 

"天空紋" と呼ばれる世界を覆う規模の魔法陣は、マギアナギアがこの世界へ落ちてくることを防ぐための障壁なのだ。

 

逆説的に "天空紋" の向こう側には、マギアナギアの本体が存在していることになる。

コイツが存在してる限り、この世界は常に破滅の危機に瀕しており、人々は生まれてから死ぬまで一度も本当の青空を見ることは叶わない。

この世界の絶望、それが【破壊神マギアナギア】だ。

 

そこで疑問が出てくる。

封印が目的なら、なぜ異世界転移という機能があるのか?

それは破壊神の力とそれを受け流す仕組みに関係してくる。

 

破壊神は触れたものを "物質的" "概念的" "霊的" に分化して "カオス" に変換する。

つまり、人、物、時間、場所、概念などあらゆるものを "カオス" という1つのナニカへ変えてしまう。

もちろん、ただの防御魔法や封印魔法であれば、触れられた瞬間 "カオス" に変換されてしまい、障壁として意味をなさない。

 

絶対条件として、

・ 触れられてはならない(不干渉)

・ 認識されてはならない(タゲ分散)

この二つの機能が必要になる。

 

"天空紋" はこの世界とマギアナギアの間に、異なる世界への転移門を多重かつランダムに展開している。

ターゲットを高速で切り替えることにより、破壊神の注意を他世界へ逸らしているのだ。

マギアナギアにはフラッシュ暗算のように一瞬でさまざまな世界が見えていることだろう。

破壊の神にみ(・)ら(・)れ(・)た(・)世界がどうなるかは……原作でも言及がない。

この結界を作った人物も相当性格が悪いと思う。

 

"天空紋" のおかげで、この世界にマギアナギアが到達することはなかった。

『破滅のロンド』という物語が始まるまでは。

 

"天空紋" がもたらす影響は、からなずしもこの世界に良い影響を与えるわけではない。

転移門からは様々なものが落ちてくる。

この世界の天敵たる "魔物" も空から降ってくる。

 

破滅のロンドは、この "天空紋" に関する正しい知識が人類側になかったため、始まった物語だ。

 

破壊神を解放して世界を終わらせたい魔王の思惑。

魔物の存在しない平和な世界にしたい勇者の思惑。

この二つがたまたま合致してしまい、 "天空紋" が消失。

そして、あらわになる空(・)を(・)覆(・)う(・)巨(・)大(・)な(・)口(・)。

そんな『オープニングムービー』からこのゲームは始まる。

 

つまり、このゲームは始まった瞬間からバッドエンドが確定しているのである。

 


 

『破滅のロンド 〜魔王は狂い、勇者は踊る〜 』

 

■ タグ:RPG,DARK Fantasy,Si...

■ レーティング:Z

■ ゲーム紹介文

「ありがとう、勇者。君のおかげで願いは叶った」

そう言い残し、魔王は命を絶った。

世界が滅ぶまで残り100日。

勇者は生き残った仲間達と共に世界を救う手段を探して旅に出る。

レベル999から始まる無双勇者の物語。

逆らう "敵" を全て倒して、世界を延命しよう。

 


 

このクソみたいなゲーム紹介から分かる通り、魔王に嵌められ "天空紋" を破壊してしまい、世界崩壊の片棒を担がされた勇者の贖罪がテーマとなっている。

 

破壊神マギアナギアがこの世界へ到達するまでの100日間をあなたはどう過ごす?

 

そんなクソみたいな状況の中でようやく見つけた

破(・)壊(・)神(・)の(・)到(・)達(・)を(・)遅(・)ら(・)せ(・)る(・)方法。

それは『魔力量の大きいモンスターを倒すこと』。

破壊神の目的は魔力を喰らうことだ。

だから、モンスターを先に倒すことで、魔力が破壊神へ捧げられて世界を少し延命できる。

 

勇者達は世界を1日でも延命させるため、最初からレベル999の状態で無双して行く。

そして、どんどん最強装備が更新されて行く。

しかし、魔物を刈り尽くしても破壊神の落下は阻止できない。

 

そんな折、『邪教によるテロ』や『政治不安による内戦』『厄災魔獣による数カ国の崩壊』というイベントが勃発。

人類の内部分裂という絶望的な状況で、プレイヤーは『制(・)限(・)時(・)間(・)が(・)大(・)幅(・)に(・)伸(・)び(・)た(・)こ(・)と(・)』を確認してしまう。

 

これ以降、プレイヤーの選択肢に『〇〇村を攻略する』『英雄〇〇を討伐する』という選択肢が追加される。

もちろん善良なプレイヤーはそんな選択肢を取れない。

制限時間が来ることを受け入れる。

すると、翌日に再び制限時間が伸びていることに気付く。

そして、交流不可能にな(・)っ(・)て(・)い(・)く(・)NPCや仲間たち。

さらに、拠点としている街中で仲間のHPが減ったり、宿屋で襲撃に遭うようになる。

 

魔力をたくさん持つものを殺せば、破壊神の落下を遅くできるという情報が広まってしまったことで、自分達が今まで命懸けで守っていた者たちに襲われる勇者達。

 

残り時間が減っていくごとに、多くの英雄が守るべき人々に殺され、王国軍によって街や村が滅ぼされる。

勇者の仲間達も世界に絶望して自ら終わらせた者や隣人に毒殺される者が現れる。

 

そして、誰も居なくなった世界で勇者はたった一人、破壊神へ挑む。

これがたった一つのトゥルーエンド。

 

マルチエンドはなく、世界が滅ぶまでの期間で色々な人々と交流し、犠牲とする命の選別を行うことで様々なイベントが進行するマルチルートのゲーム。

コアなファン達は、なんとかハッピーエンドがないか血眼になってこのゲームを周回したものだ。

たくさんあるスチルやNPCイベント、仲間との会話テキスト、トロフィーをコンプリートし、解析ツールまで使用して。

 

そうして見つけたのが通称『漬物エンド』。

はじまりの村にある漬物石にトゥルーエンドで聞ける魔王最後の言葉を入力するとチート武器に変形し、一撃で破壊神を倒して強制ハッピーエンドになる。

 

デバックモードとして残されていたアイテムがキーとなり、没案となっていた雑なハッピーエンドへ到達できるのである。

 

だから、俺はこのエンドを狙うしかない。

 

漬物石だ。

 

世界の破滅を止めるためには漬物石が必要だ。

漬物石がこの絶望的な状況を全て解決してくれる。

だから、死ぬ気で漬物石を探す。

俺が転生した意味は漬物石を探すことにあったのかもしれない。

この世界の人間では絶対に辿り着けない未来だ。

原作開始まで後10年。

俺では間に合わないかもしれない。

それでも、

 

『ヒゲが鬱陶しい過保護な父』

『たくさん遊んでくれる優しい姉』

 

まだ短い今世だが……大切な、大好きな家族ができてしまった。

未だ赤子の身だが、こんな優しい人達を悲しい目に合わせたくない。

せめて、うちがサイショ村に近ければ良いんだけどなぁ。

 

「弟、帰った」

「ダァ《おかえり姉ちゃん》」

 

姉が帰ってきたらしい。

そして、何故かデカい石ころを渡してくる。

 

「お土産」

「ダァ《なぜに石?確かに子供って綺麗な石見つけると拾って帰ってくる習性あるけどさぁ》」

 

俺は姉ちゃんもまだまだ子供だなぁと生暖かい視線を向けながら、ため息を吐く。

こんな優しい姉ちゃんの悲しい顔は見たくない。

いつも無表情過ぎて真顔以外見たことないけど。

 

姉ちゃんは魔法でお土産のツルツル石を部屋に飾ってくれたようだ。

俺が『漬物石欲しい』って考えていたのが伝わったのだろうか?

 

姉ちゃんは "破滅のロンド" 世界では存在しなかった魔法を使える貴重な魔法少女だ。

過保護な父も魔法が使える魔法中年らしい。

もしかしたら、俺も使えるようになるかもしれない。

そしたら、なんとかこの世界を救えるかも?

 

「ダァ《姉ちゃんは俺が守る》」

 

そのためにも早く力を付けて、サイショ村へいかな……

 

むにゃむにゃ

 

「ねるこは育つらしい」

 

ポンポン

 

俺は姉ちゃんに抱えられて寝落ちした。

 




■ あとがき

今も評価や感想を投稿してくださる方々がいらっしゃったり、スコッパーの方々が紹介文を書いてくださったりでテンション上がって1話書き上げちゃいました。

2章は『弟視点で姉が裏から手を回す無双物語』になります。
弟くん自体は一般的なチートなし転生者?ですが、1章主人公であるお姉ちゃんが何もしないわけがなく……という流れになっていきます。
とはいえ、弟くんも出自がかなり特殊。
いつまでもただの転生者ではいられない。

ぼちぼち更新していきますのでよろしくです。

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