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人が歩くべきではない不安定な道を、波に打たれながら人影が通る。
凪いだ夜の海の上、ゆらゆら揺れる線路の上。
少年のかげかたちをしたそれが、濡れることも厭わずに進む。
線路の伸びる先は水の都。
虚ろな瞳をした少年は歩く。
希薄で強固なたった一つの目的を、胸に抱えて。
──────…………
「は、」
────息を、呑む。
吸い込んだ空気が喉に引っかかる。目に映ったのは意識が冴えるほど青い空。
気が付けばそこは知らない場所だった、などと。まるで使い古された三文小説の一行目のような状況か。ベタだな、なんて皮肉の混じった突飛な思考は、間違いなく混乱と現実逃避の成れの果て。
「どこだ、ここは」
知らぬ街並みにぶつけるように、意味も宛ても無い呟きを零す。己の口から発された声ばかりは、聞き馴染みのあるおれ自身の──ロブ・ルッチの声だ、と確認のように認識した。だからなんだという話だが。
おれの通う
それがどうだ? 今眼前に広がっているものは。
見渡す限りレンガ造りの路地裏で、鼻先を掠めた風の香りは潮風と木屑のもの。通りの横でさらさらと水の流れる路は大通りへと続き、そして枝分かれしているのが見える。ブレた眼球が捉える全て、どこをどう見てもグランドシティではない。
……そこまで考え、はあ、と肺から息を吐き出す。
混乱するのはこれくらいにして、兎にも角にも現状を把握しなければ始まらない。となればここは何処なのか、何故おれがここにいるのかが重要だ。
考えられる可能性──何者かに遠くまで移動させられた、等だろうか。ならば新世界中学校の敵対勢力による仕業、拉致か誘拐? いや、否。脳裏に過ぎった可能性を即座に排除する。周囲に気を張り巡らせても、悪意どころか人の視線、気配すらもこの路地のどこにもないからだ。それがより、不可解さを増長しているのだが。
そもそも。
先程までの間に何があった、おれは何をしていたんだった? 眉根に力を入れ、寝起きにも似た頭の重さで記憶の空白を追って思い返せば───。
「チッ」
そうだ、と記憶とともに忌々しさまでも浮上して、舌を打つ。
あれは放課後のゲームセンターでのこと、生徒会の責務である校則違反者取り締まりの最中だった。麦わらを被った一年、モンキー・D・ルフィを筆頭とした不良共を罠に掛け、相対し、……結果は敗北。気を失ったのが最後の記憶だ。まさか気を失った後にあの不良共に遠くへ放り出されでも? いや、違うだろう。いくらなんでもそんなこと、生徒会のメンバーが揃っていたあの場で許される事態ではない。
思い出した途端にふつふつと湧き上がってくる苛立ちを鎮め、何かがあったときのための保険であるプランBは成功しただろうかと思案する。まず大丈夫だろうが……麦わらの味方として
そうして一度
「………………?」
おかしい。
己の体の違和感に、眉が自然と寄る。──未だ処理しきれてはいない事ばかりだが、思わず見下ろした手のひら伝いに異常の正体だけは掴んだ。
「傷が、ない?……そんな筈は」
傷も痛みも確かにあった、記憶違いなどではない。散々殴り殴られの攻防を繰り広げ、それに加えて身を削るような砂嵐に巻かれ、とどめに決して脆くはない建物の天井を生身で突き破ったのだから。上空から拳で叩き付けられた自分の今の体はびくとも動かなかろうとおかしくはないのに、可笑しなことにダメージの残滓すらないのはどういう訳だ? 額に手を当てれば滲むはずの血液も、アドレナリンの分泌などとうに切れ痛むはずの細かな切り傷も、今の自分にはない。
目が覚めたら見知らぬ場所で、あるであろう傷がなく、そして何より最後の記憶は気を失ったこと。一つ一つの情報を束ね、結論を出す。
──ならば、これは夢か?
目覚めてからの意識はいたって鮮明、無意識の中だと断言するには首を傾げてしまいはするが、状況を考えれば明晰夢辺りが一番納得のいく話。
……そうか、夢。地面をしっかりと踏みしめ立っているにも関わらず、どこかふわふわと……文字通り浮足立つような心地がするのも、体を動かせば微かに覚えるぎこちなさも、納得してみればつまりはそういうことなのだろう。
思えば今立っているこの見知らぬ土地、水路の張り巡らされた石畳の街は何処かで……いつかのテレビ番組ででも見たことのあるような観光名所とそっくりである、ような。特別記憶に引っかかることもないと思っていたが、夢の舞台にするほどに存外自分でも興味を持っていたのだろうか。
敵か、何らかの能力者の仕業か、などと警戒していたのが馬鹿らしくなり溜め息を吐く。気を失っておいて呑気な夢を見ているのもそれはそれで我ながら恥ずべきことではあるが。
目が覚めるまでずっとここ……人通りのない路地裏に留まっていてもいいけれど、折角だ。しばらくはおれの想像上の街を見て回るとしよう。
後ろに流していた前髪を下ろすことで張り詰めていた空気を意図的に解す。気付けば背中にあった、背負った覚えのないバッグを探れば出てきた野暮ったい眼鏡とマスクを引っ掛ければそれで十分、特徴的なパーツは全て隠れる。
頬を撫で、表情筋が思い通りに動くことを確認すれば変装は完了。何の意味が、とも過ぎったが……まァ、念の為。
グランドシティを象徴するマンモス校、新世界中学校。そこにはどこを切り取っても問題児ばかりの生徒達を仕切る、学校の頂点たる組織が存在する。
治安維持の為ならば手段を選ばぬ生徒会と恐れられる彼彼女ら、そしてそのリーダーである生徒会長。潜入に長けたかの才能人にはいくつかの顔がある。その中でも、人当たりが良くとりわけ穏当な顔が一つ。
思考を放棄してもなお深層心理に残った一抹の警戒心により、彼は──ロブ・ルッチは、
【ワンピース学園】
言わずもがなONEPIECEのスピンオフ。世界観が現代なので人死が出ず、能力はそのままなのでバトルの迫力もある両得な作品。読もう。読んでくれ。
【新世界中学校】
通称新セカ中。グランド市を牛耳っているといってもいい規模のマンモス校。なおグランド市の勢力は他の校種や企業を抑えて中学校が一番大きいらしい。何を言っているんです?
教師陣は大体海軍、生徒は海賊中心、時々若めの海軍や一般市民。生徒の年齢は十代になってたり72歳だったり90歳だったりとバラバラ。本当に何を言っているんです?
【生徒会】
学内での権力を以て新セカ中の治安維持に奔走しているグループ。構成メンバーは原作のCP9。潜入捜査員としての性質を引き継いでおり、変装して様々な派閥を調査しているシーンが垣間見える。ヒョウ太くんとギャリファちゃん(ギャルのカリファ)は本当に傑作なので出来れば単行本も買ってほしい。
【七武生】
学校をシメる七人の番長格。平たく言うと七武海。原作と違って学校公認とかではないっぽい。
何故か他校の生徒もこの中に入っている。