水の都で命は踊る   作:盆回

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今週のワンピース学園、ガチホラーで震えるなどした。深夜に読んだ。ゆるせない。
七不思議の異世界に通じる穴におお!ってなっちゃったのでゆるした。この時期に書き始めてたらもしかしたら旧校舎の穴に落ちるルートとかがあったのかもしれないと思ってしまった。ゆるすしかなかった。


人は盾となるために

 

 司法の塔の護衛共が追いすがる背後をパウリー達に任せ、先に進む。

 ソドムとゴモラ、二体の巨躯が暴れながら衛兵達を蹴散らしていく。その速度は中々のもの、ならばおれが徹するべきはサポートだ。時折ソドムやそれに乗るおれ達に向かって撃ち出される銃弾を跳ね返しながら、トナカイとブルが会話しているらしい内容を聞き流す。

 

 

「──『ところで、一緒にいた仮面の奴は乗って来なかったけどいいのか?』だって……え!?」

 聞き流せない話題が挙がった。

 

 

「ん? ……!!!」

「え゛えェ!?」

 次々に上がる声に釣られてあの特徴的な影を探すように座席をくまなく見る。けれども、長鼻は見える範囲のどこにもいない。

 

「いねェ!! 何で……!?あいつ落ちたのか!?」

「いやそういえば最初っからいねェ〜〜!!」

 

 

 

(天丼かな、これ?)

「天丼、だな」

 何回やるんだこの下り。この一味はひとところに纏まっていられないのだろうか、団体行動下手か?

 

 乗りそびれたか逃げたか分からないあの仮面の男に関しては、今更迎えには戻れないと結論付けられる。ここから1人の為だけに戻っては全て無駄になりかねないのだから当然の話。

 

 

「あいつも行く島々で毎度死線を越えて来てんだ、ちょっとやそっとで死ぬ様なタマはウチにゃいねェよ!!」

 

 ……そして、そこには仲間への信頼があった。置いていく言い訳や逃避などではない事実の羅列であることは、何も知らないおれにでさえ感じ取れる。

 

 

 

 

 

 二頭のキングブルが並んで駆ける。目の前に見えてきた目的地手前、聳え立った石の壁。

 

「見ろ、裁判所までもう一息だ!」

 

 

 

 

「──?」

 蹄が地面を蹴る音、衛兵の悲鳴や怒号。──それらに紛れて、ひゅるるる、と遠くから何かが空気を裂く唸りが聞こえた。

 

 見えたのは黒点。

 

 

 

 

「バル?」

「……ッ!! 嵐脚!!」

 

 

 脅威を確認すると同時にすぐさま座席から飛び立って、砲弾のまえへと躍り出る。ここで足となるキングブルが潰されれば、おれはともかくとして他の全員、敵に囲まれ身動きが取れなくなる!

 

 

 

 遠ざけなければという一心で蹴り返そうとして、……妙な感覚を返すそれに身を固める。

 

 

 衝撃のままに当たる端からばら、と自壊し爆散の予兆を浴びせてくるこれは。

 

 ただの砲弾ではない、まさか、炸裂弾!?

 

 

 

「しまっ、──!!」

「ヒョウ太くん!?」

 

 

 

 

 

 

 

「バギャア!!!」

 目を閉じた背後で悲鳴が上がる。仕留めたか、なんて歓声が下から聞こえてしくじったことを痛感し、額を冷や汗が伝った。

 

 

「おい、無事か!!?」

「──ッけほ、おれに怪我は無い!! それよりソドムは!?」

 金髪の慌てた声を受けて安否を返す。鉄が弾けた細かい塊の含まれた爆風をもろに浴びはしたが、直前で全身に鉄塊を掛けて事なきを得た。

 

 問題はブルだ。おれがクッションになったとはいえ、間近で爆風を浴びたのだから大怪我をしていてもおかしくない。空中を蹴りながら直ぐに振り返り確認をする。

 

 

「オオ゛ー……ッオオオオオ!!!」

 首元に血が流れ一瞬ぐらつきを見せたが、……まだ行けると、まだ走れると。

 おれには言葉こそ分からないが、確かに此奴はそう叫んでいる。

 

 

「……ソドム、まだ行けるな!?」

「バヒヒィィーーン!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああァァ!!!倒れてなかった!!」

「だが動きはニブくなったぞ!傷口を狙え!!」

 依然力の籠った嘶きを上げ、巨体は前進を再開した。先程まで後ろに着いていたもう一体と合流、並走し、地上の衛兵達を薙ぎ倒していく。

 

「迫撃砲だ! 避けろソドム、ゴモラァ!!」

「この中央の道はマズイな……! 準備万端で待ち伏せてやがる! 道を変えるぞ!!」

 フランキー一家の片ゴーグルの声に合わせ、二頭が首を急ぎ下げる。迫撃砲程大きな攻撃であれば避けることもできるのだが、地上から飛んでくる細かな銃弾はそうはいかない。それらの攻撃が傷付いたソドムの体からじりじりと体力を奪っていくのが見て取れた。

 

 

 

 

 ぷるるるる、ぷるるるる。

「……子電伝虫?」

 

 

 

 緊迫する状況の中に、気の抜けたコールが入る。

「はい、誰!?」

『アタシらよォ!』

 ウィー、と酒を含んだ息を吐く通話相手は間違いようもない、海列車の車掌である。何やら伝え忘れたことがあるらしい相手は前置きもそこそこに話を始めた。 

 

 

『地図じゃあ裁判所から司法の塔への道がねェらろ!』

「確かにそうだな……気になってたトコだ」

 脳内に列車内で確認した地図を思い描く。確かに海に浮いた孤島から塔へは道らしいものはなく、滝の黒い穴によって通り道などないようだった。同じことを考えているのであろう金髪が、煙草をふかしながら視線を上へと動かす。

 

 

『左右の塔それぞれの上階に一つずつレバーがあって、それを引くと裁判所から司法の塔へ跳ね橋がかかる仕組みら!』

「ばーさん何でそんなこと知ってんだ!?」

 子電伝虫からの大声は、並走するゴモラに乗った片ゴーグルにまで届いたらしい。思わずといった驚愕が上がる。

『昔トムさんと橋の修理に来たんらよ!! この恩知らずのバカ政府が!!』

「おれに当たるなよ!」

 

『それからチムニーが……』

『もしもしーっ!?海賊ねーちゃん聞こえるーっ!?』

 祖母を押し退けたらしい少女がぐわんと高い声で呼びかけてきた。オレンジ髪が取り落としそうになった電伝虫を抱え直す。

「わ!! 何チムニー!」

『あのねー! ゴムの海賊にーちゃんが裁判所の屋上に登ってったの見たよー! あと屋上で石が崩れるのも見えたから、なんだか暴れてるみたい!!』

「屋上で!? ……わかった、ありがと!」

 

 

 麦わらはもう既に戦闘に入っているらしい。建物の破壊を招くほどの暴れ様から考えるに、その戦いはCP9とのものだろうか。

 

 

「──だって!」

「これで目的地が決まったな」

 目標は二つ、麦わらへの助力。そして跳ね橋を下ろすことだ。

 

 

 

「頼むぞソドム、ゴモラ! 裁判所まで!!」

「バヒヒーン!!」

 どちらにせよ裁判所の前まで行かなければどうしようもない。主人の掛け声とともに咆哮を上げ、二頭のブルは速度を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 不意に、ちゃりり、と。

 動物系の耳に届いた、重い金属が擦れ合う音。

 

 

「──おい、どうした!?」

 反射的にゴンドラから降りて、文字通り身を固めながら音源とキングブルの間に飛び出した。ソドム達の負担を考えれば、大きな被害を通すような失敗を繰り返すわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 瞬間目の前に現れたのは、三個の巨大な鉄球だった。

 

 

 

 並んだ三つが大砲のように飛んでくる、が、あれらは鉄球。先程のようには炸裂しないだろう。ここは実弾の飛び交う戦場、命の取り合いを含む戦闘経験などないが、その程度は即席の学習能力で埋まる、問題は無い。

 

 

 

 

 真ん中の黒塊に足を向ける。まずは一つ。

 

「──ッらァ!!」

「!!?」

 ガキィッッ!!、と。

 金属と足がぶつかり、金切り声が上がる。反抗してくる鉄の塊を叩きつけるようにして、左側のもう一つの鉄球へ向かって蹴り落とす。

 

「うお、おおお!?」

「チェーンが絡まッ……!?」

 ギャリギャリと消魂(けたたま)しい音を立ててチェーン同士が絡まり合い、下手人の二人ごと薙ぎ倒されていった。これで二つ。

 

 

 地に足を着け、最後とばかりに隣を通り過ぎていくもう一本のチェーンを両腕で掴む。地面へと踵を突き立てるように踏ん張れば、おれの身長の数倍程の球が慣性に従って停止した。ぎりぎり、ブルには当たっていない。

 

 

「これでッ、三つ!!」

「ひッ!?」

 

 思い切りチェーンを引けば、根本にいた鉄球を投げた大男が眼前へと迫る。軌道上に構えるのは鉄塊を掛けた腕、避けようなどないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ウオオオオ!! スゲェぜ雑用ーーっ!!」

「油断するな! 地上はおれが片付ける、進め!! 迫撃砲はてめェらで避けろッ!!」

 傷こそないが皮膚が引き攣ったようにびりびりと痺れる腕を宥め、上がる歓声に振り返らず怒鳴りつける。

「え!? でもヒョウ太、敵は何千人もいるぞ!!」

「キリはねェが、途中で切り上げて追い付く!」

「でも!!」

 そこで初めて振り返れば、どうにも納得していない様子のトナカイが目に入る。どう説得したものかと思考を回そうとしたところで、その小さな肩を叩く手があった。

 

 

「チョッパー、見えた!ルフィはもうCP9と戦ってる!!」

「え!?」

 戦いを視認したらしい金髪が屋上に目を向けている。やはり相手はCP9、そしてそれが分かるということは、ウォーターセブンに潜入していた内の誰かなのだろう。

「……だそうだ、行け!」

「わ、かった!」

 

 

 

 

 

「バルルルァーー!!」

「バヒヒヒィーン!!」

 揃って嘶く二頭がまた裁判所へと向かって前進を始めたのを確認し、敵戦力を再度把握にかかるために周りを見渡した。

 

 

「もう逃げられないぞ、海賊!」

「……おれは海賊じゃあねェんだがな」

 いつの間にかおれの半径数メートルを覆うようにして、兵士たちが銃口を此方に向けているのに気付く。届かせるつもりもなく少々不満げにぼやいた言葉は、恐らく戦火に掻き消えていっただろう。

 

 

 

 正面の兵士がトリガーに指を掛ける。きっと輪になった奴等は全員同じ動作をしていることだろう。……そのどれも、おれ相手には無駄であるが。息を吐く。立ち回りは、決めている。

 

「剃」

 

 

 

 時間帯こそ夜間だが、エニエス・ロビーは不夜島であるという。燦々と照っている光の元では目立つ侵入者の一人など見失う筈ないというのに、一瞬で消えた姿にどよめきが沸く。

 

「どこにッ、ぐは!?」

「ここだ」

 きょろり首を回している衛兵の背後に回り、斬撃は伴わない蹴りを放つ。気絶した男の背を軽く踏めば、今まで以上のヘイトが此方に集まった気配を肌感で察した。それでいい、敵戦力が分散するに越したことはない。

 

 

 

 背後から撃鉄が起きる音がする。振り返ることはしない。

 

 

 だぁん、と銃声。

 

 

「鉄塊」

 

 

 そしてきぃん、と金属が擦れた声が。

 

 

 背中から弾丸がぽとり落ちる。狙撃手を意図的に見逃していたのはこの為だ。銃弾が効かない得体の知れない存在であるという畏怖と、銃は意味を成さないという先入観を植え付ける為。

 

 

 鉄塊を全身に掛けている際は動けないというのは六式の常識だ。動き回るには硬直を解く必要があるけれど、流石に生身で受ける銃弾は致命傷になりかねない。故にあまり使わせたくはないので。……鉄塊拳法はジャブラの十八番であるが、出来た方が何かと便利だとは常々思っている。ぶっつけ本番でやる程の余裕はないが、いずれ習得したいものだ。

 

 

「何をやっている!? 相手はたった一人だぞ!!」

「で、ですが! 一体どうなっているのやら! 彼奴、あまりにも早い上に、銃弾が効きません!!」

 

 なんて、たわいのない考えをつらつらとしているうちに想定通りの動揺が敵の中で広まっている。

 

 

 

 ──そして、その最中に聞こえた裁判所の方面からの倒壊音に、どうやら奴等が壁を突破したことを察して笑みを深めた。護衛の注目を集めた甲斐はあったらしい。後もう少し……跳ね橋が降りる頃にはおれもここから離脱し追いつかなければ。

 

 

 

 

 態とらしく口角を上げ、浮かべていた笑みに悪意を混ぜる。

「さァ。もう少し、付き合ってもらおうか」

 

 

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