インフィニット・ストラトス~漆黒の代替品~   作:保志白金

5 / 8
事前に言っておきますと、他ライダーのアドベントカードを使ったり、オリジナルカードを使うことがこれから出てくると思います。


初戦

オルタナティブーーこいつはIS擬きと呼ばれるだけあって、現代において唯一、ISに近づけた代物である。

 

ISのように宇宙、空中での活動も可能であれば、シールドエネルギーの概念も存在する。さらには、様々な武装を展開することだってできる。

 

男でも扱えるという点でISと決定的に差別化できることが、こいつの最大の特徴。

 

他の細かいところで差異を挙げるなら、意思の力だけで身に纏うことや武装を発動することができないこと。シールドエネルギーの最大値がISよりも若干少ないこと。シールドエネルギーなしでもスーツそのものが十分な強度をほこっていること。ーーと、あまり深く考えなくても、たくさん出てくる。

 

そして今、IS擬き(オルタナティブ)本物のIS(ブルー・ティアーズ)を相手にして、互角に渡り合っていた。火力や武装の手数ではこちらが劣るが、機動性と運動性能では勝っている。

 

「ーー20分。よくもまあ、それだけうまくかわすものですね」

 

「まぁ、逃げることは得意だからな」

 

オルタナティブのシールドエネルギーは未だに400近く残っている。

 

「このブルー・ティアーズを前にして、ほぼ無傷で耐えているのはあなたが初めてですわね」

 

さっきから放たれているレーザーやミサイルの雨あられの9割近くを俺は避けていた。

 

俺が防戦一方なのは、自律機動兵器を彼女は使っているからである。5方向からも連続で攻撃が来るんだから、たまったもんじゃない。

 

「では、どんどん推して参りますわ!」

 

……でも、彼女の攻めるパターンも読めてきたし、何よりもこいつ(オルタナティブ)の声が聞こえ始めた。そろそろ、攻めに転じようか。

 

彼女の命令を受けて、自律機動兵器ーーブルー・ティアーズ(以下、ビット)が2基、再び行動を開始した。ーーここだ。俺は左手でバックルから残ったカードを抜き取り、読み込ませた。

 

『アクセルベント』

 

俺はとりあえずビットを無視して、IS本体目掛けて向かっていく。そのスピードはさっきのオルタナティブとは比べ物にならないもので、一瞬の加速で自分の射程圏内にオルコットさんを捉える。

 

「これは……『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』!?」

 

イグニッション……なんだって?……まぁ、今はどうでもいいか。俺の作戦通り、相手の虚を突くことに成功したんだから。

 

俺は右手に持つ大剣を高速で振るい、ブルー・ティアーズのシールドエネルギーを削っていく。

 

「くっ!行きなさい、ブルー・ティアーズ!」

 

彼女が叫ぶように命令すると、脚部のアーマーが開き、中から大きめのミサイルが放たれる。

 

かわしきれないと思った俺はそれをすかさず斬り裂き、彼女にも爆風の衝撃を浴びせ、その場から離脱した。

 

エネルギー残量353。損傷は全然軽いし、これならまだ戦える。しかし、オルタナティブを高速移動させる効果は無くなった。制限時間がきたか。

 

「どうやら、『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』は打ち止めのようですわね」

 

たしかに、彼女の言う通りだ。カードはオルタナティブを一回身に纏うにつき、それぞれ発動が一回きりだ。無論、同じカードが2枚あれば2回使えるわけだが。

 

かといって、俺が不利になったわけではない。ーー俺は高速移動が切れる直前にビットを斬ったのだから。

 

「これは……いつの間に!」

 

宙に浮いていた4基のビットは、ピリッと稲妻を走らせて爆発した。これで残る砲台はひとつのみ。これなら奇襲する必要は無いし、通常のスピードでもやれる。

 

オルコットさんの顔には焦りの色が見える。よっぽどビットを撃墜されたことがショックだったのだろうか?

 

俺は両手で大剣を握り締め、再度ブルー・ティアーズに接近する。彼女はビーム砲を1、2発放ってくるが、俺はどれも楽々と避ける。そして、彼女の持つライフルを上に逸らして、連続で攻撃を加えた。

 

「きゃあぁぁぁぁっ!」

 

それを食らっても、シールドエネルギーは残っているはずなのに、ブルー・ティアーズは勝手に自由落下を始める。まさか制御を失った?

 

(今考えてる暇はないか。行くぞ、オルタナティブ!)

 

それを見た俺は剣を放り投げて、オルタナティブを一気に急降下させる。

 

いくらISに絶対防御があると言っても、この高さからの落下だ。さっきから俺の攻撃を受けていることもあるし、激突する際の衝撃でエネルギー切れでも起こしたら、彼女は大ケガをする。

 

(お前の加速なら地面ギリギリで追い付くはずだ。頼む、お前に魂があるのなら…………)

 

オルコットさんとの距離は手を伸ばせば届くほどの距離に近づけた。しかし、地面まではだいたい20メートル。

 

(応えろ!!)

 

地面までは残り約2メートル。そこで彼女をしっかりと受け止めた。

 

「なぜ、わたくしを助けてくれたのですか?」

 

「危なかったから助けた。そんなことに理由なんていらないだろ?ところで、エネルギーは残ってるみたいだし、勝敗は決してない。まだ、続けるかい?」

 

俺はオルコットさんに訊ねるが、返ってきた答えは意外なものだった。

 

「……わたくしの負けですわ」

 

『試合終了。勝者ーー神楽悟』

 

なんと、彼女はあっさり負けを認めたのだった。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

(なぜだろう?)

 

一試合目が終わり、俺の頭は疑問符だらけだった。どうして彼女は投了をしたのか?どうして俺の声も無視して、足早に去っていったのだろうか?

 

(う~ん、乗り物の気持ちならすぐわかるのになぁ)

 

俺は元いたピットに戻り休憩しながら、考え込んでいると、

 

「神楽君神楽君!」

 

山田先生が走ってこの場にやって来た。

 

「どうしましたか?そんなお急ぎで」

 

「織斑…君のISの…準備ができ…たので、……すぐアリーナに…出るようにだ…そうです」

 

息を切らしながら俺にそう言う山田先生。

 

「あっ、了解です。じゃあ行ってきます」

 

 

 

俺は再びオルタナティブを身に纏い、空へと昇っていった。空にはほぼ同じタイミングで白いISが上がってきた。あれが一夏の機体か。

 

「悟、……全力でやらせてもらうぜ!」

 

一夏にはさっきの試合を観らている以上、俺の手の内がバレている。……つまり、あのビックリ箱は通用しないものと考えていい。まぁ、一夏がもっと慎重な奴だったら、もっと苦戦を強いられるだろうけど。

 

(今日最後の仕事だ。行こうか、お前に生命(いのち)を吹き込んでやる!)

 

先に動いたのは白式(一夏のIS)だった。細長い剣を出現させ、俺の方へ真っ直ぐ向かってくる。

 

『ソードベント』

 

俺も対抗するように剣を右手に出現させ、剣戟を防いだ。しかし、パワーでは勝てないのか、ジリジリと圧されていく。

 

(なら……こうだ!)

 

俺は急降下させ一夏の攻撃をかわすと、地面すれすれの高度まで下げた。そして、その地面すれすれの高度を保ちながら飛んだ。

 

まだ、操縦に慣れていないからだろう。一夏は地面に脚部をぶつけながら、俺の後を追ってくる。

 

一夏が単純な奴でよかった。ーー俺は心の中でそう思いつつ、壁にぶつかる直前で直角に上へと方向転換、さらに急上昇させた。当然の出来事だったからだろう。一夏は旋回しきれず、壁に激突した。

 

「ちくしょう、まだだ!」

 

まぁ、あれぐらいで戦闘不能になったら、なんの苦労もいらないか。改めて剣を握り直し構えた。

 

一夏の機体は俺とほぼ同じタイプだな。おそらく、近接格闘用の武器しか持っていないのだろう。いや、もしくは一夏本人が射撃を苦手としているかのどちらか。

 

再び一夏は自ら突っ込んでくる。今度は紙一重でかわしつつ、反撃を加える。

 

(パワーに加えて、得物のリーチの差でもこちらが断然不利。ならこのまま攻撃を避けつつ、隙をついて削っていくしかないな)

 

ヒットアンドアウェイに近い戦法を俺はとり、戦闘を継続させた。

 

 

 

そして、戦闘開始から約15分が過ぎ、そろそろ一夏のシールドエネルギーも底を尽きそうになっていた時、戦況が一変した。

 

「なんだ?これは……変形?」

 

一夏のISが姿形を変え始めたのだ。金属的な装甲が所々スライドしていく。その間からは青白い光が放出され、それらがその間を埋めていく。そして、工業的な印象が強かったさっきよりも、シャープでとてもスマートなつくりとなっていた。

 

「これでやっと、この機体は俺専用になったわけか」

 

一夏はつぶやくように言葉をもらす。……なるほど、あれが初音の言ってた『最適化(フィッティング)』ってやつか。

 

「これなら、いける!」

 

一夏はまたさっきと同じように突っ込んでくる。……が今度は近付いてくる速度がさっきよりも一段と増していた。

 

俺は焦らずに距離をとろうと後退するが、一夏はなりふり構わず刀を振るってくる。その刀は刀身を展開させて、その中からエネルギー状の刃を作り出した。驚くべきはその長さだった。刃渡りはさっきの何倍だろうか?とにかくマズイ!

 

(かわしきれない!なら!)

 

『アクセルベント』

 

即時に判断して加速能力を底上げさせるが、かわすことだけで精一杯だった。

 

(頼む、オルタナティブ!)

 

強引に空中で姿勢を戻し、俺は反撃に転じようとするが、一夏はそのまま俺を追撃しようと上段に刀を構えて真正面から向かってくる。

 

「オオオオッ!」

 

俺と一夏の互いの得物がぶつかり合い、鍔迫り合いとなる。そして、俺の剣は一夏の刀に徐々に圧されていく。

 

(無理させてゴメン、オルタナティブ。でも、もう少しでいい。こらえてくれ!)

 

……が突如ブザーが鳴り響き、戦闘の終わりを告げた。

 

『試合終了。勝者ーー神楽悟』

 

「「えっ?」」

 

俺はもちろんのことだが、一夏も何が起こったのか全く理解していない様子だった。理由はわからないけど、俺は勝ったらしい。

 

 

 

 

 

◼◼◼

 

 

 

 

 

『どうだった?今日使ってみて』

 

「戦うことに関してはキツいかな。操作性や機動力は問題ないと思ったから別によかったけど」

 

試合を終えた俺は初音に報告をいれていた。オルタナティブを渡されたあの日、「試合終わったら連絡しろ」ってうるさかったからな。

 

『うん、それは私達も思っていたことだわ。むしろその少ない手札で勝てたあんた、すごいわね。いい勝負になるだろうと予想はしてたんだけど』

 

「う~ん、そうか?」

 

どっちの試合もよくわからない勝ち方だったから、なんとも言えないんだよなぁ。

 

『とりあえず、一週間後ぐらいにカードを2枚届けるようにするから、待ってて』

 

「了解了解。俺からの報告は以上だから、これで切るぞ」

 

俺は返事をして、電話を切った。

 

そういえば、2勝したってことは俺がクラス代表になるのか?そこは明日にでも先生に直談判してみようか。それでもダメなら諦めよう。

 

ちなみに、最後の試合は一夏の不戦勝で終わったらしい。オルコットさんのビットの修復が間に合わなくて、万全の態勢で望めなかったから棄権したとか。

 

うん、……次会ったら、謝ろう。俺はその話を聞いたとき、真っ先にそう思った。




他のライダーが出ることは考えてますが、今のところは一人だけの予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。