モモンガさん、転生する   作:一人旅系亜種

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カルネ村

 デケムの死亡から二週間。俺はようやくエルフ国での後片付けも一旦終わり、カルネ村まで戻って来た。この二週間は非常に大変だった。一番大変だったのはルーギちゃんのメンタルケアだ。何せ見た目6歳で女王を任されるのだから、それはメンタルもやられるだろう。

 俺がゴーストで麻痺らせた子供が生き残っていたらルーギに代わりその子に次の王を任せていたが、あの子はデケムが召喚したベヒーモスに踏み潰されてしまったからどうしようもない。ルーギちゃんは自分が頑張れるか悩んでいたけど、これでもかと褒め倒したら最後には頑張ると意思表明をしてくれた。偉いぞ!

 

「モモン! お、おのれアンデッド共! モモンからすぐに離れるんだ!!」

「大丈夫だよ、父さん。こいつらはアンデッドに見えるけど、法国が産み出した新型ゴーレムなんだ」

「へ? そうなのか?」

「うん」

 

 俺が帰ってくると同時にアンデッドが湧いたとみたのか、父が怯えながらも鍬を構えていた。それで戦っても勝てないと思うけれど、心意気は立派だ。家族を守らんとするその姿、実に誉れ高き……ハムスケの思考だな、これは。

 両親も含めて、俺の背後にいる大量のアンデッド軍団を見て、ゴーレム? と疑問符を頭に浮かべている。誰が何を言おうとも、これはゴーレムだよ。ゴーレム。

 今の俺は、法国で魔法を学んで帰って来た……と言う設定になっている。このゴーレム達は、その成果と言う訳だ。

 

「サルマン卿からのプレゼントでね。こいつを使って、村の雑用をさせればいいんだって」

 

 これでようやく、俺のアンデッド軍団を表舞台に出せる。こいつらを使えば、農作業効率大幅アップに加えて、前々からやりたかったいくつかの計画を実行に移せる。

 次の日、俺は朝から作業に入った。まずはトブの大森林から木材を大量に村に運ばせる。木を切り倒す、木材を運ぶ。それらは従来であれば村人総出で行う大規模な重労働だが、村人の百倍以上の腕力を持つ中位アンデッドを大量に運用しているので何の問題もない。次々と村近くに運び込んでは、俺が直接見て原木を選別する。

 選別が終わればお次は皮むきだ。いらない樹皮を、アンデッドを駆使して取り除かせていく。これも普通なら重労働なのだが、中位アンデッドにとっては大した作業でもない。皮むきが終われば、お次は削って木材に加工していく。これも重労働だが……アンデッドを使えば大した問題でもない。

 木材に加工したら、あとは積み上げて自然乾燥を待つ。これでとりあえずの準備は完了。その間に、次は農地開拓の時間だ。

 

「すっげぇ……」

「凄いですよね」

 

 アンデッドを使った農地の整備事業。これは前々からやりたかったことの一つだ。カルネ村にも当然農地はあるのだが、それは村人120人で管理できる程度の広さしかない。村の人口を考えたらその広さでも十二分だが、農地を広げて、なおかつ人手を増やせれば当然農作物の収穫量を増やせる。

 

(連作障害とかもあるから、あんまり無茶は出来ないけどな)

 

 それでも農地の拡大は村の豊かさに繋がる。広げ過ぎるとモンスターの襲撃や野生動物の獣害も付きまとうが、モンスター襲撃の可能性が高いトブの大森林方面はリュラリュースの支配地域。獣害に関しても、24時間働けるアンデッドが使えるので何も問題はない。

 畑を耕すのはデスシリーズ達。特に活躍したのはデス・ナイト。巨大な大楯を鍬代わりに、土を柔らかくしていく。これと同時に、治水事業も始めたい。流石に川の流れを変える作業となると、この辺り一帯の領主であるエ・ランテルの都市長を説得する必要はあるが。

 

「モモン様。A地区の作業が完了しました。引き続き、C地区の作業を開始させます」

「頼んだぞ、ジェネラル」

「はっ!」

 

 と言って、元デケム現死の支配者の将軍(オーバーロード・ジェネラル)が陣頭指揮に戻っていく。ジェネラルは軍勢指揮に長けた力を持つアンデッド。デケムのレベルなら暗黒儀式を使った上位アンデッド創造にも耐えられると踏んでいた俺は、何にするか悩んだ末にジェネラルを創造した。個体としての強さよりも、大量のアンデッドを管理・指揮可能な能力を持つ能力持ちの方が俺には都合がいい。

 その目論見は当たっていて、ジェネラルであれば俺以上に全体の管理が可能だった。今はジェネラルと共に、アンデッド軍団の管理をしている。

 それから数日後、乾いた木材を使って俺はカルネ村の周囲を木壁で囲み、砦へと変貌させた。ちなみに砦を作るための木の組み方などの詳細設計図は、スレイン法国の職人さん制作だ。神官長を通して図面を起こして貰った。

 

「モモン殿は、なにゆえこのような城壁を築き上げたのでござるか?」

「そりゃ、勿論外敵に対する備えだ。ハムスケがいるとは言え、俺が不在の時は手が回らない可能性もあるだろ? その間、モンスターからの襲撃に備えられるだけの防衛設備は必須。いざと言う時は想定していないと」

「あのゴーレム達がいるのであれば、それで十分ではござらんか?」

「それでも、だ」

 

 今までと違い、法国のゴーレムと言う事になっているアンデッド軍団であれば、潜伏系だけに限らず多種多様な防衛戦力を築ける。それらであれば守るには十分な戦力にハムスケには思えるかもしれないが、残念ながら俺はそう思っていない。

 なにせ俺の仮想敵は、この辺りに出る弱い亜人やモンスターではない。評議国にいるらしい、ユグドラシル大嫌い竜王だ。神官長達の竜王に対する想定難度は俺と同じく300を遥かに上回り、名実ともにこの世界の頂に君臨する最強の一角。そいつ相手に木製の壁など薄紙かもしれないが、一秒でも時間が稼げるなら防御壁を築いておきたい。

 村長はなんとまぁ……モモンは凄いものを貰ったんじゃのと驚いていた。他にも見張り塔を立てたり、今までは小さかった村の倉庫などを拡張しておく。

 あとするべきは、リュラリュースに会いに行かないとな。俺はナーガの王に会いにいき、トブの大森林の一角を借り受けられないかを御願いしてみた。

 

「もちろん! もちろん貴方様の命とあらば、幾らでもお使いください!!」

 

 サンキューナーガ! というわけで、俺が次にするべきは法国のエルフ奴隷達を受け入れるための場所作りだ。神官長らは約束通り、法国内のまだ購入されていないエルフを一箇所に集め、俺の下に送り出せるよう準備を始めてくれている。その数は千人以上いるらしく、すぐには集まらないし、カルネ村も千人も増えるとなるとキャパオーバーだ。なので村から近いトブの大森林に、彼らの居住区を整備しておく。

 森妖精と書いてエルフと読む彼らは、エルフツリーなる木々を住居として暮らしている。その木はトブの大森林にも生えているのだが、カルネ村よりかなり遠い地帯にある。ではどうするかと言えば、ここでカルネ村の整備に使った木の伐採が役に立つ。

 木を切り倒したのだから、当然森の一部は禿山状態になる。そこの切り株に、生命力吸収能力を持つゴースト達を突撃させるとあら不思議。植物も生きているので、当然のように根っこが枯れていくのだ。全て枯れたら、力自慢の近接中位アンデッドで根っこごと切り株を全て引き抜いていく。

 

「ええと、何々。あとは植林していけばいいのか」

 

 法国から貰った技術資料を基に、エイヴァーシャー大森林から持ってきたエルフツリーを一本ずつ植えていく。本当はドルイドに土質に絡む魔法を使って貰う方が良いらしいが、俺の手持ちにいるのはデス・ドルイドをはじめとしたアンデッドだけ。それらは土質魔法なんて使えないので、この辺の土に馴染むかはエルフツリーの生命力に賭けるしかない……あ、こら。ゴーストは触らないように。枯れたらまた<転移門(ゲート)>で取りに行かないと駄目になってしまう。

 そんな作業をひたすら繰り返す。アンデッドが村の皆の前で使えるようになったとは言え、それでも作業量が膨大過ぎて恐ろしく時間を取られる。村に帰って来た時は季節はまだ夏だったのに、全ての作業が完了した頃には春の風音が聞こえるようになっていた

 

「おお……我ながら、半年以上かけて良く作ったもんだ」

 

 数万本以上のエルフツリーの植林。村の砦化。農地の拡大。俺……凄い頑張ったな。農地の拡大に関しては、村に来た徴税吏がはぁ? みたいな反応をしていた。そりゃそうか。流石にアンデッドは見せたくなかったので隠しておいたが、徴税吏にしてみれば木の城壁など含めて突っ込みたい点が多数あったのだろう。

 一応、俺が頑張りましたと言いながらその辺に落ちてた重さ1トンはありそうな岩を片手で持ち上げたら、腰を抜かしながらも納得してくれた。時折人間じゃねえとか言うの止めて欲しい。モモンガパワーはアンデッドの力だが、今の俺はれっきとした人間種なんだから。

 何はともあれ、これでエルフ受け入れ準備は完了だ。彼らの当面の食糧についても、法国が準備してくれた。ちなみにこの食糧の名目は神饌らしい。神様への供物と言う訳だ。

 受入日当日。俺はエンリと遊んであげてから、森に行き<転移門>を繋げる。そこからは次々とエルフが出てきて、最後に出てきたのは

 

「や、元気にしてた、モモン」

「お待ちしていました、アンティリーネさん。皆さんへの説明、本当にありがとうございます」

「いいよ別に。私もやりたくてやったことだから」

 

 今回エルフを法国からトブの大森林に移すにあたり、アンティリーネさんが手伝いを申し出てくれた。人間の俺だとエルフ達は怯えてしまうかもしれないので、デケムの子供でハーフエルフな自分の方が適任だと。

 俺のエルフ奴隷解放計画について、彼女なりに思うところがあったのだとか。

 

「本当にありがとうございます。こんなにスムーズに進んだのは、アンティリーネさんの助力あってこそです」

「だから別にいいって。私もさ、自分の国がああいうことをしているの、そんなに好きじゃなかったから。だって、人を拉致して、調教して頭をおかしくさせるのってさ。あの糞馬鹿親父と一緒じゃない」

「……あいつはなぁ」

 

 今はジェネラルとして頑張るデケムは、良くも悪くも彼女の在り方に影響を与えている。それでもデケムを殺したことで当人曰く多少はマシになったようで、昔は隠していた長耳を今は出すようになったらしい。

 

「そうだ。貰った指輪を付けてきたけどさ、これを付けてれば竜王には感知されない……でいいんだよね?」

「それは神器級の探知阻害指輪ですからね。まず見つけるのは無理……かと思います」

「その間は何? 不安な答えだね」

 

 エルフ王城宝物庫で回収したユグドラシルの装備品やアイテム。その中に混ざっていたのが、アンティリーネが持つ探知阻害の指輪だ。元の持ち主はゲイ・ボウの所有者と同じ。

 

「でもさ、これはモモンがつけておいた方がいいんじゃない? あなたもあの竜王に見つかると、面倒な立場でしょ」

「そうしたいのは山々ですが、その指輪は一個しかありませんから。それなら、元々要監視対象だったアンティリーネさんが持つ方が、理に適っていますよ」

「そう? それじゃ、遠慮なく使わせて貰うわ。これがあれば、とりあえずは法国に引き籠らなくても、外を出歩ける。助かるよ」

 

 指輪を眺めながら、そこそこ楽しそうに笑っている。その笑みには前の影がある邪悪さはまだ残っているが、それでも最初見たときに比べたらマシになっていた。

 この笑顔を見られたならば、元の持ち主も喜ぶだろう。何せ10代前半のロリが使うのだ。やったぜとガッツポーズする姿が幻視できる。

 

「あいつは、今もモモンの眷属としてご活躍中?」

「役に立っているよ。いないと、この早さで受け入れ先の整備は終わらなかったかもな」

「そう。六大神様が遺した言葉に、馬鹿は死ななきゃ治らない。なんてのがあるんだ。あの馬鹿も、死んでモモンの眷属になったから、馬鹿が治ったのかな?」

「だといいが」

 

 俺のアンデッド創造は、根本的に別物に変化させるスキル。今のジェネラルとデケムには何の相互性もない。それでもあんな国を傾けたやつでも、死後にはエルフ達の住まい整備に役に立ったなら良かったのかもしれない。

 そんな風に考えていると、アンティリーネが何やら俺の上から下までじろじろ眺めていた。

 

「何ですか?」

「惜しいなと思って。モモンがあと8歳ぐらい年を取っていたら、子供を作ってたのに」

「……なんて?」

「だから子供。あの馬鹿親父を簡単に<支配>する魔法詠唱者なら、私の伴侶に相応しいじゃない」

「伴侶って。なぜ急にそんな話を」

「私はね。敗北を知りたいの。私を敗北させるぐらい強い相手になら、抱かれてもいいの。小さな頃は神人の母に虐待としてぼっこぼこにされたけれど、成長して母も亡くなってからはこっち敵になる相手もいない。新しい漆黒の英雄も、どの子も大した強さじゃない。でも──」

 

 アンティリーネさんが俺を指さす。

 

「聞いたよ。神官長達から。モモンの総合戦力は難度330以上。本当なのかどうか確かめてからになるけれど、その強さが本物ならさ。私はモモンに嫁入りしてもいいよ」

「えー。今の話だと、俺が強いから気に入ったみたいに聞こえるんだけど」

「なに? 不満? 生物の強さはオスのアピールとして十分でしょ」

「いや、しかし。俺はまだ9歳、もうすぐ10歳になるけれど、まだ子供ですよ? その相手に子作り云々の話はないでしょ、流石に」

「そうかな? モモンが成人したら、神官長達はたくさん女を宛がうと思うよ。たくさん子供を作って欲しいから」

「それは……戦力として? でも、俺は遺伝的に強いんじゃなくて、スルシャーナの魂の方に強さの秘訣があるんですよ? それでは、仮に子供を作ったところで、その子は強くならない。戦力が欲しいなら意味がない」

「だとしてもだよ。それを抜きにしても、モモンはモテるね。びっくりするくらいモテる」

「その根拠は?」

「んー……」

 

 アンティリーネさんは奴隷エルフ達の方に視線をやる。ここで暮らせるんだと涙を流す人たちを。同時に、自分の長耳をちょいちょいと触っていた。

 

「こういう光景を作り出せるから。強さを抜きにしても、私はけっこうモモンのことを気に入ってるよ」

「……そうですか。誉め言葉として受け取っておきます」

「誉め言葉以外の何物でもないけどね」

 

 それじゃさっそく模擬戦でいいからしない? と誘われたが断っておいた。それじゃ仕方ないねと手を振りながら、アンティリーネさんは元奴隷エルフ達のところに歩いて行った。

 探知阻害の指輪があるとは言え、彼女が他種族との戦線に立つのはリスクがあるので好ましくない。当分の間は、ここでスルシャーナ様の助手としてエルフ達の面倒を見るのがアンティリーネの仕事だった。

 

 それから暫くの間、俺は法国に行く以前の生活を送っていた。ちょっと変わったことと言えば、トブの大森林に豚や牛の放牧地を作ったことぐらい。肉の安定供給ができるように、牧畜を始めたのだ。ノウハウはいつものように、法国から貰った技術資料。よほど特殊な魔法研究資料でもない限り、神官長らはどうぞとくれる。助かるね、ほんと。

 

「おめでとう、エンリ。3歳の誕生日だ」

「うん! 3さいになったよ!!」

 

 モモン様の妹君様の生誕を祝いますと、法国から大量の貢物があったりしたがこれは割愛。久しぶりに輪廻権現として、この間ちょっと亜人退治を手伝ったのが良かったのかな?

 久しぶりと言うのも、今の法国は少しずつ人手不足が解消されている。一番の難敵だった、エルフ王が討伐されたからだ。エルフ国方面の軍隊を別方面に向けられるようになったので、そりゃ解消される。

 それに王国と帝国を守るために必要だった、トブの大森林の亜人およびモンスター駆除の必要性が薄くなったのも大きい。なにせこの森はリュラリュースの支配下にあり、ナーガの王が人間を襲わないように統制している。偶に反逆するやつも出てくるが、そいつらは俺の眷属に刈られるかハムスケのお腹行きだ。

 そして、俺も10歳の誕生日を迎える。ようやく二桁だ。この時はレイモンさんやニグンさんも訪ねてきたり、クレマンティーヌも来たりと中々豪勢な誕生日だった。

 ところで、そのデカいキャンプファイヤーなんです? 俺に捧げる火の祭り? あ、やべ隣の家に燃え移ってる。

 まぁ色々とハプニングがありつつも誕生祭も無事? 終わり、同時期にようやく俺は前々から習得に励んでいた魔法修正強化を習得した。

 魔法強化スキルを習得したので、お次は弓の練習をする。頼んだぞ、デス・レンジャーにデス・アーチャー。お前たちが俺の師匠だ。

 ゲイ・ボウを手に味方のアンデッドを的に練習する日々。この弓は物理攻撃ではなく、属性攻撃の矢を発射する能力を持つ。しかも発射するのは、神聖・光・炎属性。アンデッドには堪えるのか、デス・ナイトですら簡単にお陀仏しかける。神器級武器は強いな。

 そうして月日は流れ、俺の誕生日から2か月が経つ頃……それは見つかった。

 それはカルネ村から北東に10キロ行った平坦な草原地帯にあった。以前神官長から聞いてから、ずっとアンデッド軍団に探させていた地下遺跡。

 ようやく……見つかったのだ。

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