モモンガさん、転生する   作:一人旅系亜種

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エ・ランテル

「ほほう……坊やが、あのプルトン・アインザックが話していた魔獣の弟子とやらで? 法国の貴族様を助けて、そのお礼としてスレイプニールと馬車を貰って? カルネの税について、我らが都市長パナソレイ様からお呼びされて? わざわざ田舎から都会に来た? へぇ……どう思うよ、お前ら」

「ガキの嘘にしちゃ面白えんじゃねえの? ま、それを言ったらアインザックの話も眉唾だけどな」

「そもそも森の賢王ってのがありえねえ。ミスリル級が勝てねえ魔獣に、8歳の小僧が立ち向かって認められた? 馬鹿みてえな話だな」

 

 彼らは最初はもう少し正規兵のような振舞いをしていたのだが、俺の話を聞くにつれにやにやし始めて、途中から馬鹿にしてもよい相手と見做したのか態度が一気に変わった。

 がははと笑う彼らを見て、俺はふぅんとちょっと冷めた目で見る。まぁ確かに嘘くさい話ではある。

 しかし当人を前にして、嘘だと決めつけるのはあまり宜しい喋り方ではない。するなら話が聞こえない場所でするべきだ。

 

「ここに、パナソレイ様からの封蝋がされた手紙もあります。これが証明になりませんか?」

「……ならない。そんなもの、偽装しようとすれば簡単だからな」

 

 なぜか目をそらした。なぜ? ……ひょっとして、こいつ領主の封蝋をみたことがないのかな?

 そうしていると、魔術師組合の人間とやらがやってきた。どうやら俺たちに怪しい場所がないかを、魔法で探るらしい。仕方ないので情報探査に対する対抗魔法を切っておく。セバスとパンドラも探知対策装備を外させる。すると<道具鑑定>を使った直後、その魔法詠唱者は急に叫びだした。

 

「こやつらをひっ捕らえろ! な、なんと言う恐ろしいマジックアイテムを身に着けておる!! こんなもの、たかが村人風情に手に入るものではない!!!」

 

 そう言って指さすのは、俺たちが着込んだ法国から貰った高価な服だ。そういえばこれ、そこそこ値の張るマジックアイテムだったな。質としては精々上級程度なので忘れがちだが、これだって人類国家では金貨数百枚から千枚が必要な代物。法国は神への献上品なのだからこれぐらいは当たり前と、普通に贈り物として贈ってくるので金の価値が最近忘れがちになりつつある。代わりに眷属を貸し出しているのでwinwinだ。

 俺やセバスらであれば一撃か二撃あれば倒せるアンデッドも、法国にとっては逸脱者の領域にある超戦力。たかが金貨千枚程度、人類を守る費用に比べたらなんだと言うのか……らしい。

 けれどそんな事情を知らない者から見れば、無駄に高価な魔法の服を着た辺境の田舎者が俺たちだ。

 兵士ははぁ……とだけ息を吐いてから、俺たちに命令し始めた。

 

「仕方ねえ。お前ら全員、服を脱いで並べ。詳しく調べさせてもらうぞ」

 

 彼らの視線はパンドラに注がれている。なるほどねー。見た目は美人エルフを合法的に脱がせられるからか、全員お楽しみと言ったところだ。でもそいつ男だぜ? 見た目はあけみさんだけどさ……知人の裸を衆人環視に晒すというのもあまり気分が良いものじゃない。

 

「少し待ってください。俺たちは、ここの都市長の手紙で呼び出されているんです。それなのに、ここで執拗な取り調べをされる謂れはありません。まずは都市長に確認して頂き、きちんとした手続きを踏むのが筋ではありませんか? そういった手続きを踏まなければ、困るのはそちらの方だと──」

「坊主。ちょっと利口な口を叩くのは構わないが、あまり大人に偉そうな口を利かない方がいいぞ?」

 

 喋ってる最中に、向こうは俺の前で剣の刀身を少しだけ抜いてみせてきた。あんまりうるさいと斬って捨てるぞと言う脅しだろうか? ……し、質が低い。そもそも剣で脅せば誰でも言う事を聞くと思ってる口なのだろうか? 戦争が起きるのは、大抵言葉で要望が伝わらなかった時だ。そもそもむやみやたらに武器を見せびらかすものじゃない。

 俺は兵士達をもう一度見る。言っては悪いが、力を隠しているようにも見えない。漆黒聖典どころか、陽光聖典の平隊員よりも絶対に弱いぞ、この人ら。なのに武器で脅すのは……うーん。

 と思っていたら、セバスが失礼ですがと俺の前に出た。

 

「そちらが都市を守護するために、日々業務に勤しんでいるのは伝わります。ですが、11歳の少年を前に刀身をチラつかせ、脅すというのは頂けません。大人気ないと思いませんか?」

「ぁ? 嫌な言い方するなよ爺さん。俺は職務に励んでいるだけだぜ? 兵士として、大人として糞生意気な口叩くガキに、社会の厳しさをちょっとぐらい教育してやるのも義務なんだよ、義務? 分かる~?」

「分かったら退けよ爺さん。あんまり逆らうようなら、ちょっと腕の一本二本へし折っちまうぞ。その年で足でも折れたら、大変だろうなぁ?」

 

 そう言ってシャドーボクシングのような真似をし始める。それをみて、俺はあまりの……あまりの練度の低さに正直失望する。それ演技ですよね? 訓練した結果がそれとかじゃないですよね? 幾ら何でも、平和ボケした結果がそれとかないよな? 頼むから嘘だと言ってくれ。貴族だけじゃなく、一般兵士ですらそのレベルとかはほんとやめてくれ。いつぞや思ってしまった、法国が倒れたら俺のワンオペになってしまう説を補強するのはやめてくれ。まだ入ったばっかりの素人とかだよね?

 

「見ろよこの爺さん。震えて動けねえぜ!」

「可哀そうなことすんなよ。お前に殴られたら、そんな爺怪我しちまうぜ」

「その……すみません。御兄さんたちは、兵士さんの中でも強い方なんですか?」

「はっ! ようやく分かったか。これが訓練した戦士の速度ってやつだ。お前も怪我したくなけりゃ、大人にあんまり喧嘩売んなよ?」

 

 はい、あの動きで怪我すると思ってるの確定。ついでにこれが訓練した人間の動きだと思ってるのも確定。

 ……ニグンさん、レイモンさん……陽光の皆さん。漆黒の皆さん。あと最近実力を上げつつあるクレマンティーヌに法国最強のアンティリーネ……は強すぎるな。流石に覚醒した神人を比較対象にしたら可哀そうだ。あと一緒にちょっとだけですが働いた火滅の皆さん。あなた方は強者です。間違いなく人類でも屈指の、びっくりするぐらいの強者です。

 ごめんね、アンティリーネ以外俺の眷属以下とかちょっとだけ思ったりしちゃって。ハムスケで英雄ラインなんだとか思ったりしちゃって。今度、お詫びのお土産にデス・ナイトを三体ぐらい持っていきます。

 

「……これが王国の正規兵ですか。法国の兵を見た後ですと、あまりにも低い練度と士気に呆れますね」

「……あ? なんつった爺」

 

 あーあ、セバスったら言っちゃったよ。俺と、うしろを見たらパンドラも思っていたであろう言葉を……うん? パンドラはひょっとしてこうなるのを分かっていたのか? この都市の実情を見せたかったのだろうか。表情を見ると、ちょっとだけ違和感がある。それと魔法探査をしたら、<伝言>を無詠唱化させて使用した痕跡がある。あ、なるほどね。

 それにしてもセバスや、確かに酷い熟練度だけれど当人を前にしてお前弱いは言ったら駄目だぞ。

 

「爺さん、俺のパンチなんて見えねえだろ。なのに練度が低い? あ? 老いぼれがイキがってんなよ。あんまくだらねえ法螺吹いてたら、本気で骨の一本ぐらいへし折っちまうぞ?」

「……ほう。先ほどの面白い舞がパンチだったのですね」

 

 まぁ、舞だな確かに。俺の感覚で言えば、この衛兵はレベル2か良くて3ぐらいだ。一般村人よりは強いが、俺やセバスが強いと思える水準にはいない。先ほどのジャブにしても、俺たちの感覚からしたらあまりにも遅すぎる。俺なら向こうが一回殴る間に70回ぐらい。セバスなら110回は殴れてしまう。

 型や技量も伴わないテレフォンパンチを見せられてしまえば、面白い舞ですねとしか言えない。

 

(これが正規軍か。そもそも王国はきちんとした軍人がいないとはいえ、それでも経済都市の門番になる兵士がこのレベルか。セバスの言う通りあまりにも練度が低い。法国なら、都市の門番ともなればちゃんと銀級冒険者ぐらいの実力者は配備しているぞ)

 

 法国も下の下はこの人たちと変わらないが、まともな正規兵は全員7レベルは保証されていた。それと比較すると、まぁ……もっと頑張ろうとしか。

 

「へぇ……へえ! ならやってみるかじじい! 怪我しても、誰も治しちゃくれねえぞ!!!」

 

 あ、まずい。向こうもヒートアップし始めた。流石に門番兵と本気で争うのは無駄なので、止めに入る。

 

「そこまでだセバス。俺たちは喧嘩しに来たんじゃない。思うところはあるだろうが、手を出すのは禁止だ」

「は! 申し訳ありません、モモン様!」

「まぁ、俺を守ろうとして動いたのは分かるからいいよ。それにお前が手を出さなくとも──」

「モモンくん! 君たちが衛兵と揉めてると聞いて、飛んできたぞ!!」

「話が分かる人を呼んでおいたので」

 

 無詠唱<伝言>でアインザックを呼んでいた、後ろのパンドラにサムズアップをしておく。パンドラもサムズアップを返す。以心伝心。

 

「ぷ、プルトン・アインザック! なぜこんなところに!?」

「先程言ったように、君たちとモモンくんが揉めていると垂れこみがあってね。それですぐにやって来たんだ」

「お久しぶりですアインザックさん。来て下さり、本当にありがとうございます」

「君と私の仲だ。プルトンと呼んでくれ」

「それではプルトンさんと」

「アインザックさんやぁ……そこのガキとジジイとエルフはあんたの知り合いなのか?」

「いつも私が話している、私とバレアレさん夫婦を助けてくれた少年がモモンくんだ。君たちも、この話ぐらいは聞いた事があるだろう?」

「そりゃ……聞いたことはあるけどよ……」

 

 急に衛兵達の態度が余所余所しくなる。あれかな、ちょっと武術を齧った人が良いところを見せようとしたら、師範代級が来ちゃったみたいな。

 アインザックは、今は冒険者をやめて事務職に回ったとは言え、それでも元ミスリル級冒険者。この兵士らとの間には埋めがたい戦力差がある。本気で争えば、アインザック一人に十秒かからずにこの場にいる全員の首が飛ぶぐらいの実力差が。

 アインザックさんが彼らの様子を見て、はぁとため息をついている。

 

「大方、身なりのよいモモンくん達を虐めて遊ぼうとしていた……そんなところだろうが、やめておきたまえ。モモンくんがその気であれば、この都市にいる兵士全員でかかったとしても相手にならない。9歳の頃ですら、最低でオリハルコン、もしかするとアダマンタイトに到達していたかもしれない逸材なんだ」

「……はぃ?」

 

 俺を指して、アダマンタイト級発言。何言ってんだこいつみたいな空気が兵士らの間にある。

 

「信じられないか、な!」

 

 アインザックさんの手が動き、机の上に置いてあったペンを俺の方に飛ばす。兵士らは全く反応できていないが、俺にはよく見えている。指で摘まんで止めようとしたら、その前にセバスの手がペンを掴み取ってしまう。早いね、セバス。パンドラも流石、もう俺の横にまで移動している。

 

「アインザック様。お戯れはおやめください。モモン様の実力の一端を見せようとするために、攻撃行動をするのは。反射的に我らの手が出かねません」

「申し訳ない、パンドラズ・アクター殿。セバス・チャン殿。私の命の恩人にして、王国でも最強であろう御仁を貶されて頭に血が上がってしまっていたようだ」

「……私も、モモン様を侮られて少し冷静さを欠いていたので、言えることはありません」

「そう言って頂けると助かります……しかし、お二方ともモモンくんの手紙にもありましたが、実に迅速な身のこなしで。英雄の領域におられますね?」

「はは、プルトンさんには分かりますか? 一応、ふたりとも逸脱者の領域ぐらいです。難度換算で140ぐらいですね」

「140……そうか140……140! も、モモンくんのお仲間ならそれぐらいは当たり前……うん当たり前だな。そういうことにしておこう。そういうモモンくん自身はどの程度かな? 口ぶりから察するに、それを確実に超えているのだろうか」

「法国の知り合いに難度を計測してくれる人がいます。その人曰く、俺は難度で180ぐらいらしいです」

「ひゃく!!!!」

 

 あ、これはアインザックも予想外だったのか、口を開けて驚いている。まぁ、しかし無理もない。180。英雄がハムスケの90ラインなので、その2倍だ。王国が抱える戦力で最強と呼べるのは朱の雫。ちょっと前までは英雄ローファンと十三英雄リグリットが率いたアダマンタイト級冒険者チームもあったのだが、そちらは解散している。

 ではこのチームでも難度180かと言われたら全然らしい。法国評価は130から140。朱の雫の方はとあるアイテムによりもう少し高いが、それでも160ちょっと。180とは、これがモンスターであれば国家非常事態宣言が発令されるレベル。エ・ランテル規模の都市が、最低でも2つは滅ぶのを覚悟しないといけない……らしい。

 ただしこれは、千眼千視さんが計測してくれたものとは違う。これはあくまでも、魔法を完全に使わずスキルもモンク系列のみとし武技は封印して、装備品すら縛り完全素手オンリーの数値。俺の本当の難度は装備やその他諸々込みで400以上。〇重戦士化も含めるなら、最大難度は1500オーバーだ。千眼さん曰く、アンティリーネを含めた法国全兵力で俺に挑んだとして、それでも勝率は5%以下らしい。この5%とは、ワールドアイテムが通ることを期待しての数値だ。

 実際には、俺の体にはワールドアイテムが融合していて、真なる無もあるので通用しない。それを考慮するなら、勝率は0.01%以下。既に俺が知っている、アンティリーネのタレントによるスルシャーナの切り札行使。あれが偶然刺さることを期待するだけの塩試合。

 なおこれらは本当に俺だけを相手にした時の話で、ここに死霊軍団1万とパンドラ達墳墓三神も加えたらゲームセット。一週間もあれば人類国家四カ国は灰塵と化す。というのが、パンドラの戦力評価だ。

 

「ひゃく……は?」

「それって……どの程度なんだ……」

「ギガント・バジリスクで難度80前後だ。モモンくんと、この従者たちであれば、あの恐ろしいモンスターを20体ほど相手にして、余裕で殲滅する実力だ……モモンくんであれば、あの凶悪で恐ろしいモンスターも、狩ったことがあるんじゃないか?」

「ありますよ。一か月くらい前に、村の近くに出たので狩って食卓行きになりましたね」

 

 ちょっと肉に毒があるのと肉質が硬いのが難点だが、筋を切って毒を治すポーションで煮込み、タレに付け込んで小麦粉をまぶして揚げたらちゃんと喰える。喰いにくい部位? ハムスケの夕食になった。

 

「そうか……モモンくんには、ギガント・バジリスクもただの肉か……さて……今の話を聞いて、モモンくん一行と喧嘩をしてみたい者はいるかな?」

「……いえ……」

 

 多分、セバスとパンドラの動きなんて追えてなかったのだろう。衛兵らはセバスの方をみないようにしている。見てみたら、最初に叫んでいた魔法詠唱者も黙っている。アインザックさんは頼りになるね、ほんと。

 

「この方たちは、都市長パナソレイ様の客人である……通っても良いかな?」

「……どうぞ……」

 

 許可が出たので、俺たちはアインザックさんと共に詰所を出て馬車にのる。後ろを振り返ってみたら、睨むように兵士たちが見ていた。あれは、流石に難度150だの180だのは信じてない顔だな。大方、自分たちに恥をかかせやがってかな? 法国の人たちは、アンティリーネや真なる竜王と言ったこの世界の頂点に立つ側を知っているから話が早かったのに……

 

「すまない、モモンくん。さっきのあれを見て、幻滅しないでいてくれるとありがたい。この都市にいる兵士は、あんな阿呆ばかりではないんだ」

「と言うと?」

「彼らは衛兵の間でも、かなり素行が悪いタイプでね。元々は貴族の五男や七男で、家督も継げないが、さりとて家名の問題で平民如きと共に働くなど真っ平ごめん。仕方なしにここに送られて、騎士ごっこをするぐらいしかやることがない。商人や都市住民からの評判も悪すぎて、訪れる人が殆どいないこの時間の門兵……と言えば伝わるかな?」

「要するに実家からも厄介払いされるスペアのスペアですか……それにしても質が低い。アインザックさん。ここの兵士は、皆あの程度の腕前しかないのですか?」

「モモンくんの言葉にそうではない……と力強く返したいが、残念ながらあれが平均だ。野盗がエ・ランテルを直接襲うことはなく、モンスターが襲撃することも少ない。以前はそれなりにあったのだが、私が引退した頃ぐらいから、急激にモンスターが人里に出る頻度も減った。特にトブの大森林から出てくる亜人などが。まるで、どこかの誰かが何かをしたようにね」

「はは……誰なんでしょうね?」

「……今はそういう事にしておこうか。とにかく、今のエ・ランテルは非常に平和だ。平和過ぎて、実戦を知らない兵士も数多くいるぐらいにね。冒険者組合も、野盗などの数が減っているせいか閑古鳥が鳴いているよ」

 

 カルネ村の周囲を片付けまくっていた影響のせいか、野盗などが河岸を変えてこの辺りは非常に減ったらしい。俺が出会ったあいつらにしても、王国側ではなく帝国側の連中だった。要するに、最近のこの辺の事情に疎く、詳しくない連中。なんともまぁ……と言ったところだ。

 モンスターにしても、一番生息数の多かったトブの大森林が片付いた事で、滅多に姿を現すことはなくなった……リュラリュースすごいな。

 

「モモンくん達がパナソレイ様に会われるのは、二日後だろう。それまでの間は、どこかの宿に泊まる予定かな?」

「黄金の輝き亭に、都市長様の方で予約を取ってくれているらしいので、そちらに宿泊する予定です」

「あそこか! ……モモンくんの話は聞いているよ。暫くの間村には行けなかったが、あのあたりを大規模開拓したそうだね。それで、パナソレイ様も話があるのだろうな」

「のようです。それにしてもプルトンさんにも伝わっているんですね……あれ? だとしたら、どうしてさっきの兵士達はそんな財があるわけないとか言ったんだろ?」

「それは……それは」

「それは?」

「住人台帳の記帳が間に合っていない。それに、あの貴族崩れ達は、そこまで平民の話に興味がない。彼らが興味あるのは、媚を売れば美味しい汁が吸える上級貴族や商人だけだ」

「……それで最初は下に出てたのか。納得です」

 

 多少は調べていたが、それでも多少の失望は隠せない。兵士であれなら、都市長はどうなのかという疑念がわいてくる。事前の調べでは都市長パナソレイは優秀だという話だが、もし違ったら本気で法国への移住を考えよう。しかし話次第では……協力はできる。パンドラと共に、どんな用事なのかを考えた結果、まぁこれだろうなと言う答えは出ている。本当に、まともであればの話だが。

 黄金の輝き亭に行く前に、一度冒険者組合に来てみないかとアインザックに誘われたので、せっかくだから行ってみることに。建物自体は3階建てで、周りにある建物とそこまで見た目が変わらない。

 

「さぁ、こちらだ」

 

 アインザックが扉を開けてくれたので中に入ってみる。広い受付があり、コルクボードのような場所には数は少ないが依頼紙が張り付けてある。近づいて見てみれば、難度50ぐらいのモンスター退治の依頼があったりした。

 

「興味があるのかい? ならどうだろう。今日、冒険者登録をしてみないか? 本来であれば入りたては銅級からスタートで、選べる依頼も荷物運びなどだが、君たちであればミスリルやオリハルコン、アダマンタイトに任せるような難しい依頼でも積極的に回させてもらうよ」

「はは……考えておきます」

 

 アインザックの熱心な勧誘が怖い。正直なところ、俺が冒険者になる旨味は殆どない。なにせ金に困っていない。名誉とやらが欲しければ、なんか六色の人たち含めた法国上層部が熱心に祈りを捧げてくる。下手に組織に属して動くよりも、自由に動き回る法国に協力する第三勢力として活動している方がやりやすいのだ。

 冒険者なぁ……と考えていると、後ろで扉の開く音がする。誰かが入ってきたようだ。

 

「お? そこにいるのはアインザックか」

「おや? これはガガーランくん。今日の依頼は達成かな?」

「ああ、終わったぞ。大した事ねえ連中だった」

 

 その人物は女性……たぶん女性だ。年は28ぐらいで、鋼の鎧を着込んでいる。非常に体格のよい御仁で、身長はセバスぐらいはありそうだ。背中に背負っている槌の使い手っぽい。

 

「あの人は?」

「彼女はガガーランと言って、冒険者として色々な町を回っている人でね。まだ21なのに、もうミスリル級に到達した才能ある戦士だ」

 

 21! うそ!! あの老け顔で!! いや、駄目だ。この思考は失礼だな。女性の年齢に突っ込むのはマナー違反だ。

 

「おん? そこの爺さんとエルフと……へぇ、中々可愛い少年だな。アインザックの知り合いか?」

「前に私が話した、森の賢王から助けてくれた少年が彼だよ」

「おお、あれか。確かモモン・エモット。へぇ~、この子があの」

 

 そう言って、彼女は俺の上から下までじっくりと観察している。なぜだろう、この視線に俺は恐怖を感じる。精神安定が働く……なぜ?

 

「……あと5年ぐらいかな」

 

 何が?

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