モモンガさん、転生する 作:一人旅系亜種
「よく来てくれた。そなたがパナソレイからの報告にあった、モモン・エモットだな。さぁ、かけてくれ。長旅で疲れただろう」
「では御言葉に甘えさせて頂きます」
時間通りに扉を鳴らせば、出迎えてくれたのは王国で一応一番偉い人という事になっている国王、ランポッサ三世だった。年齢は40代後半と聞いていたが、それよりも老けて見える。元は全部金髪だったろうに、今は金と白が半々ずつに分かれている。体も瘦せ細りつつあるのか、年齢に対して腕などが細く見える。それだけ心身に苦労があるのだろう。
今回の話し合いは秘密裏に行うという事で、普段は大貴族を執務室で迎えたりするらしいが、今回は人目につかないよう宮殿の片隅にある部屋が選ばれた。それでも怖いので、念のために無詠唱で情報対策魔法を使っておく。特に盗聴などの痕跡もなし。
俺とパンドラは礼をしてから、ランポッサ三世の向かいに座る。とりあえず手土産として、俺はアダマンタイトを加工したペンダント型のマジックアイテムを王に献上する。これはあまのまひとつさんの能力をコピーしたパンドラが形を創り、ペストーニャの魔法で魔化を施した代物だ。材料がアダマンタイトなので第三位階魔法までしか組み込めないが、それでもこの世界では破格の魔法詠唱者であるペストーニャが丹精込めて製作した逸品。使うと一日に3回まで魔法詠唱者でなくとも<重傷治癒>が使えるようになる効果があり、金貨二千枚分ぐらいの価値はあるマジックアイテムだ。
仮に法国の神官長らにこれを送れば、泣いて喜んでくれるだろう。
「こちらには信仰系第三位階魔法<重傷治癒>が組み込まれております。ランポッサ陛下には敵が多いと聞き及んでおります。このペンダントを着用していれば、仮に不意打ちで腹などを刺されたとしても、自動で治癒魔法が働き傷を癒してくれます。あるいは陛下御自身が治癒魔法を行使することを可能とします」
「ほう! それはそれは……かなり値打ちのある代物だな」
ペンダントを手にして、しげしげとランポッサは観察している。魔法後進国な王国だが、神殿勢力が管轄する信仰系魔法にだけはそれなりに詳しい。権力は怪我や病気から体を守ってくれはしない。なので第三位階信仰系魔法が使えるアクセサリーの価値を、きちんと理解してくれる。
「そなたの献上品、有難く頂いておこう。それでは本題に入ろうか……パナソレイから大筋自体は聞かされておる。法国のことも、法国から贈られた財宝の数々に関してもな。それとモモン殿が子供ながら、人知を超越した力を保有していると。まずはその力とやら、実際に見せてはくれぬだろうか」
「承知いたしました。それでは場所を移します。<転移>についてはお聞きでしょうか?」
「それも聞いておる。遠く離れた地であっても、瞬時の移動を可能とする魔法か。そんなものが本当に使えるのであれば、素晴らしい話だが……」
「ではさっそくお見せします。座ったまま転移すると尻もちをついたりして危険なので、一旦立ち上がって頂いても構いませんか?」
「これでよいかな」
ランポッサは俺の言葉に従ってくれた。平民如きが私に命令するか! とか言われたらどうしようかと考えていたが、その辺は杞憂だったようだ。パンドラ曰く今の腐りきった王国を任せられる王ではないが、臣下がまともであればちゃんと国を運営できる采配が可能。性格も民草を想う心は政策から本物です……だったな。
まずは<転移>が本物であることを証明するために、とある場所に移動する。向こうに連絡をとって……はい、そうです。今からそちらに一度行きますね。
「では行きますよ……」
パンと俺は柏手を一つ叩く。それだけで三人とも宮殿の一室から、どこか違う部屋へと移動する。ランポッサを見たら、その部屋にいた人物を見て馬鹿な! と叫んでいた。
「パナソレイ!! で、ではここはエ・ランテルなのか!?」
「こうして顔を合わせるのはお久しぶりですね、陛下。転移魔法を体験された感想はどうですか?」
「なんとも……摩訶不思議な。これが本当の魔法、なのか。なんという。この転移だけでも、今までの常識が大幅に変わるぞ……」
かなり驚いてくれているランポッサには申し訳ないが、他人を転移させるのは第五位階から使用可能な魔法。法国でも使い手は片手で数えるほどしかおらず、それ以外の国で転移が使えるのは帝国のフールーダ、王国のリグリットぐらいだ。十三英雄など探せばもうちょっといるかもしれないが、それでもカルネ村勢以外では全員合わせて10人もいない。
カルネ村はと言われたら、デス・メイジ軍団が地味に第五位階の<転移>を使える。それ以外にも軍団を大量に動かす用として、ジェネラルが<転移門>を。ペストーニャが<上位転移>を習得。こう考えるとけっこういるな、転移の使い手。大半がうちの陣営な気もするが、それは無視しておく。
「陛下。もう一度転移を使います。今度は私の魔法を使用しても、問題ない場所までお連れすることになります。問題ありませんか?」
「問題はない。これほどの魔法を使うそなたの攻撃魔法……どれほどのものか見せてもらおうか」
「承知いたしました。それでは──」
手を叩く寸前、パナソレイが腰を抜かされぬようお気をつけくださいとランポッサの身を案じていた。<魔法の矢>を見て驚き過ぎたあまり、足元の土で滑って転んでたものね、パナソレイは。
パンと音がしたら、そこはもう広い砂漠だ。ちょっと日光が厳しくて、ランポッサも暑そうにしている。すぐに終わらせようか。
「これから御見せするのは第三位階魔法<
「<火球>は聞いたことがあるな。非常に高度な攻撃魔法で、使い手も少ないと。しかしこのような転移なる魔法を使いこなすモモン殿の魔法が、私も聞いたことがある魔法というのは少し残念だ」
たしかに。第三位階の使い手は少ないものの、それでもミスリル級冒険者なりを探せばそれなりに見つかる。転移魔法の使い手と比較すれば珍しいものでもない。ただし、それは普通の第三位階魔法の使い手の話。
「<
俺が呪文発動をすると、手のひらに魔法陣が描かれてその上に小さな火球が生まれる。それは人の頭サイズまで従来であれば大きくなり……位階上昇させたことで、一気に巨大な火球に変化する。直系20㎝ぐらいの球になる<火球>が、俺の頭上で直径2mほどまで膨れ上がった。
「これが<
「いいえ、普通はここまではなりませんよ、ランポッサ陛下。<火球>の魔法は使い手の力量により威力や射程距離が伸びます。モモン様ほどの魔法詠唱者が使うからこそ、これほどのサイズに変化するのです」
パンドラが説明してくれる。たしかにパンドラが言うように、<火球>は魔法攻撃力などにあれこれが左右される。しかし変化すると言っても、こんな見た目で分かるようなことはない。ではなぜこんな大きな<火球>になったかと言えば、もちろんタレントの恩恵だ。
ブーステッドマジック。位階判定を上昇させる魔法によって。
ユグドラシルは古いTRPGが基になっていて、魔法もそのTRPGから引っ張ってきている……とはギルメンの話。これタブラさんの言葉だったかな?
ダメージ計算もかなり準拠しているらしく、一時期流出していた解析データから判明している。
例えば<火球>の魔法は、第十位階魔法まで習得している場合は10d6。第七位階魔法<
本来であればブーステッドマジックとは、俺が持つ上位魔法無効化などを突破するためだけに使うもの。第一位階でも第十位階判定にさせることで、特殊な魔法防御を貫通させる効果を付与させるだけだ。なのだが、どうも俺のブーステッドマジックはタレント効果によりこのダイスロール数値も弄ってしまっているっぽい。
要するに、第一位階魔法を第十位階魔法まで上昇させると、第十位階で使うような計算式が適用されているみたいなのだ。なので第三位階魔法の<火球>でも、第十相当にまで上昇させたことで、第十位階魔法でしか許されないサイズのデカい火の玉になる。
ちなみに今回は位階上昇をさせただけだが、ここに修正五重効果範囲拡大距離延長最強化を乗せるとさらにすごい。これと同じサイズの火玉が複数飛んでいき、着弾地点で連鎖大爆発する。実際になった。
そこまで見せても仕方ないので、ランポッサにはこの手加減<火球>で我慢してもらう。俺が発射した巨大<火球>はかなり先まで飛んで大爆発。たーまやー……今のを王城で見せていたら、おそらくヴァランシア宮殿が半壊していたな。
「どうでしょうか、ランポッサ三世陛下。これが私の魔法です」
「これが、これが魔法なのか? パナソレイはたしかに……たしかに国家を揺るがす戦略兵器に匹敵すると評価していた。それでもこれは……」
パナソレイに見せたのは<魔法の矢>。こちらもタレント効果でかなり悪さができる。正直、ガチの戦闘でも<魔法の矢>一つあれば、セバスレベルの戦士職を相手に一方的に翻弄できるほどの超性能になる。魔力消費のことを考えたら、今後は第一位階魔法だけで戦った方がいいんじゃないかと思えるほどの超性能に。
爆心地を眺めて呆然としているランポッサを連れて、俺は宮殿の一室へと帰還した。
「すまない……少し水を飲ませてくれ」
机の上に置いてあった水差しからコップに移し、勢いよく水を飲み干す。しばらくの間じっとしていたかと思えば、ランポッサの眼光が鋭く光る。
「あれは……あの<火球>。あれはモモン殿にとって、切り札のような魔法なのだろうか。私が知る魔法詠唱者は、魔法を使用すると魔力を消費すると聞く。あれほどの魔法となると、モモン殿でも連発はあまりできないのでは?」
「そうですね。あれを使うとかなり魔力を消費します」
「そうか。やはり──」
「一度に撃てて、20から30発ぐらいが限度かと思われます」
「……………………」
あ、ランポッサさん黙ってしまった。でもこの弾数でもかなり過小申告なんだよ? 本当は600発ぐらい……修正強化で一度の発射数を3発までは増やせるから1800発か。五重化も使えば9000発。それを300分の1以下まで抑えているのだから、とんでもない弱体申告だ。それでも威力としてはロ・レンテ城の半分を一撃で……は無理か。一発で直径100mを燃やせるんだから、王城全部を火の海に変えるには5発いる。建物も全壊させたかったら、3から4倍は撃ち込まないといけないからちょうど申告数を使い切る計算だ。
「そ、う、か。そう、か。そうか……あれを20発は使えるのか……そうか」
「はい。この力に加えて、私にはゴーレムクラフターとしての才もあります。これらの力であれば、ランポッサ三世陛下の御助力になれると考えていますが、いかがでしょうか?」
如何かと聞かれて、ランポッサは考え込んでいる。いきなり降ってわいた、戦略級兵器に戸惑う人みたいな反応だ。
「なぜ?」
「なぜ、とは?」
「そなたの力は見せてもらった。ゴーレムクラフターなる力はよく分からぬが、あれほどの大破壊を見せたモモン殿の力だ。ゴーレムとやらもこちらの想像を超えるような何かなのであろう……だからこそ、なぜと問いたい。それほどの力があれば、私の配下になどなる必要がない。これを──」
ランポッサは自分の王冠を指さす。
「力ずくで簒奪できるはずだ」
「確かに可能です。私の持つ推定戦力は、王国兵士50万人に匹敵すると自負しています」
「50万人か。あれを見る前であれば笑い飛ばせたが、そなたの魔法。あれはただ一発で数百数千の兵士を焼き払ってしまえるだろう。あの転移とやらと組み合わせれば、発射地点を逐一変えることもできる。魔力が尽きそうになれば、安全な場所まで一瞬で退避すれば良い。モモン殿であれば、時間はかかるが我が国を単独で滅ぼせる……か」
正解。自己申告通りの弾数だとしても、転移と組み合わせたら軍を蹂躙できる。<次元封鎖>で転移を阻止されない限り、転移魔法一つで戦況は大きくひっくり返る。
なお実際には50万人どころか、88レベルが一人いて30レベル以上が複数人いて、加えて20レベル以上が250人以上に正規軍も抱える法国が俺単体で落ちるので人数で評価するなら1500万人以上だ。眷属のアンデッドが一体辺りソウルイーター換算で3万人とするなら、軍団が3億人相当。パンドラやセバスも入れるなら、全部合わせて王国兵士4億人分ぐらいの戦力だ。半日で王国が陥落するぞこんなの。
「それをしない理由は簡単です。私には正当性がありません。力技で王位の簒奪などすれば、待っているのは魔王の道です。王道、正道ならぬ歩みに人はついてきません」
「王道か。ではそなたに問おう。私の配下となり、何がしたい?」
「この国の改革を。多くの貴族が民草を雑草と嘲笑い、己の欲望に燃やすだけの薪や藁としている現状を改善したいのです。私は幸いにも、ランポッサ様の直轄領で、パナソレイ様の正しき政治と采配により、重税に悩まされることもなく育ちました。ですが他の領は違います。法国で多くを学びました。この国の、現状のあり様を学んだのです」
「……そなたは知っているのだな。ではこれも知っておるのだな。我が権威が……王家の名声もとうの昔に失われていることを」
「存じております。陛下が即位された時には、王権は行使すらままならなかったことも。正しき事を成そうとしても、正しきを通せぬほどに長い時間をかけて王家の力は失われてしまっていました」
「それらを知ってなお、私の力となり、この国を立て直したいと申すのか?」
「はい」
「なぜ? 貴族達に対する義憤がそなたの原動力か?」
「それも多少はあります。ありますが、最大の理由はこの国の国防能力の低さを嘆いてのことです……陛下は、リ・エスティーゼ王国の軍事力。それがどの程度の脆さなのか、実感としてご存じですか?」
「……すまぬ。どの程度と質問をされても、この国には専属の軍人がおらぬゆえ、どう答えたら良いのか……」
「仕方ありません。この国は長い間外敵から晒されることなく平和でした。平和がゆえに、軍事力を不要としてしまった。結果として、軍を不要と断じてしまいました」
平和な世では軍事力は金食い虫だ。法国のように常に異種族からの侵攻相手に死に物狂いで戦っていたり、帝国のようにそこそこ外敵も多い環境であればまた違ったのかもしれないが、王国はヌルゲー環境過ぎた。イージーモードだったせいで、わざわざそんな金が必要な軍隊を持つのを嫌ったのだ。
歴代の王の中には、念のために軍を持とうよと王権を発動しようとしたものもいたらしいが、これには貴族が猛反対。
やーやーなの! 軍隊なんかにお金出すのやーやーなの! 僕のお小遣いが減っちゃうでしょ!!!! そんなの無くてもこの国は僕たちの権威で守られてるからへーきなの!!
大体こんな感じの反発だ。最初この記述を法国歴史書で見つけた時、俺は法国が都合の良いように改ざんしてると思った。なのでもっと詳しく調べると、これは王国宮廷書記が書き記した写しを抜粋したものであることも判明。つまり王国が自分たちで残した記録そのまま。俺は素で死ねよと言っちゃった。法国が自分たちで金出して命出して守ってるから軍隊がいらないだけなのに、その辺の事情を一切調べず、仮初の平和が自分たちのしょうもない権威のおかげで守られている的な発言が公的記録に残っているのだ。
そして俺はこうも思ってしまった。この国の軍事力を、まさか俺一人でワンオペするの? 冒険者もいるけど正直人手不足だよ? 正気か? 絶対にやだ。貴族に苦しめられている民ならまだしも、特権だけ貪り食って肥え太るだけで、義務も果たさないカス共守るの絶対やだ。
だから俺はランポッサに伝える。法国が何をしてきたのか。この世界の人類がどれだけ弱小種族なのか。この国の軍事力がどれだけ低いのかを。
「法国が……しかし……」
「嘘だと思うのならば、今から最前線に向かいましょうか。もう一度立ってもらえますか」
「あ、ああ……」
俺は柏手を一つ叩き、ランポッサを法国の戦線に連れていく。そこはまだ俺の眷属を配置していない場所。俺任せだと英雄が育ちにくいので、法国住民だけで戦っている最前線だ。俺はランポッサと一緒に、岩場の上に座って観戦する。人間と亜人、お互いが死力を尽くして戦う命が消費される場。王国の貴族が……ランポッサすら見たことがないであろう本当の戦場。
眼下で数多の命が消費されていく。よく見てみれば、陽光聖典もいるな。暫く殺し合いを眺めていると、ハーピーか何かがこちらに気づいて飛んできた。ランポッサは身構えるが──
(<魔法修正強化・魔法の矢)>
四本の光弾が、頭を弾き腕をもぎ取り足を引きちぎって腹を貫通し大穴を空ける。
「帰りましょうか」
手を叩いて再び転移発動。真正面に座るランポッサを見たら顔を青くしていた。あそこまでの殺し合いを見るのは初めてなのだろうか。
「……法国は、法国は我らが身内同士の政争に明け暮れる間に、ずっとあのような戦を?」
「ええ、その通りです。そして、もしも法国が亜人に滅ぼされたら、次はこの国であの光景が繰り広げられます……たくさん死にます。想像以上の死者が出ます。亜人相手に貴族の権力を披露しても止まってはくれません。お金だって意味がありません。純粋な武力以外に、対抗できる手段はない」
「それは……そなたがいてもか?」
「ある程度は守れます。ですがずっと守り切れるかは分かりませんよ……貴族は自分たちで富を独占しています。しかし、その独占する資源を徴収すれば、この国に教育機関を設けて軍隊を編成することも可能となります」
「それがモモン殿が、この国で行いたい改革なのか……」
「その通りです、陛下……いい加減、この国は自分たちで自分の身を守れるぐらいの戦力は持つべきです。今が平和だから、明日も平和。そんなことはない筈です。そして、陛下の持つ王権を十全に行使できるようになれば……貴族の怠慢を是正できるようになれば状況は大きく改善できる。私はそう考えているからこそ、パナソレイ様を通じて陛下に接触しました。王権を行使可能とする武力として運用していただくために」
……少しの間、ランポッサは苦渋の面をしていた。俺が見せた俺の武力と、法国が行っている異種族との闘争。国内の王派閥や貴族派閥などという、小さな問題など些細なこと。真に考えるべき、本当にすべきことがなんなのかを知ってもらった。
「陛下は、この国をどうしたいですか?」
「……私はただ、民に平和と安寧の中で暮らしてほしい。飢えることなく、苦しむことなく、ただ生きてほしいと願っている」
「私もその願いには賛成です。ただ幸福に生きたい。幸福に生きてほしい。俺と陛下は守るものの広さが違います。俺はカルネ村さえ最悪守り切れたらいいのに対して、陛下が守るべきはこの国全土。そのためには国内に敵が多すぎることも……陛下が悩んでおられるのは、内戦が起きて民草が巻き込まれることですか?」
「……そうだ。王としての特権を行使することを何度か思案した。だが行使など夢のまた夢だ。貴族派閥も王派閥も、私を軽んじていることぐらいは理解している。たとえ強権を振るおうとしても、その力が足りていないことも」
「その力はここにあります。強権を行使したい相手がいて、応じなければこう命じてください。モモン、あの不届きものを私の前にひっ捕らえろ。王の命に従わぬ愚かさを、その身をもって思い知らせると……内戦は起きません。その前に、
「……どちらにしろ、その者らの血は流れるのだな。平穏とは程遠い、夥しいほどの血が」
「流れます。ですが……亜人に、異形に蹂躙されれば、そんなものは少なかったと思うほどの血がもっと流れます」
「………………少し考えさせてくれ。あまりにも多くのことを知ってしまった。今すぐに決められは……」
「承知いたしました。決断されるのはランポッサ三世陛下です」
俺は立ち上がり、この場から一度退散することにする。すぐには決められないだろう。退出間際に、パンドラが陛下と声をかけた。なんだ?
「陛下が悩まれる感情は理解しえます。けれども、私は今がチャンスだと思いますよ。これ以上年を重ねたら、陛下は今以上に体力も落ち衰えてしまいます。仮に血が流れることが汚名だとするならば、陛下がおひとりで引き受けることがまだできる。しかし決断が遅れれば……血を流させるのは陛下ではなく、御子息の大仕事になります」
「それは!」
「誰が次代の座を引き継ぐにせよ、今ならば多くの負債を清算できます。私個人としては、今が本当に最後の機会だと具申させて頂きます。それでは……」
パンドラと共に俺は部屋を出る。一人残されたランポッサはどこか影のある顔をしていた。
「差し出がましい申し出でしたかね」
「そうでもないだろ。あれは必要な言葉だよ。上の出来損ないなのか、それとも次男か。どちらが継ぐにしろ、腐った貴族の影響を0にできる機会はいまだ。大粛清をするなら、まだまだ陛下の体が動くうちにするべきだ。しかし、まぁ、貧乏くじだな」
その点には同情する。過去からの借金を特別な力もなしに背負わされたことには。あと法国が結構長い間放置してしまった点にも。
(法国にも同情できる点はかなりあるんだけどな)
最初から王国と共同でやっておけばと言いたくもなるのだが、法国は一応過去に異種族との闘いなどについて教えようとはしたのだ。けれど情報は王に届かなかった。一部の貴族がこの情報を独占し、法国の軍隊が拡散しているなら、それだけ戦線が大変なら、漁夫の利が狙えるだろと自分のところの民兵を纏めて法国への侵略戦争だ。まじすげえ、法国が倒れたらまずいと聞いたうえで、自分たちは法国より偉大で大丈夫で強いから問題ないと侵攻しようとしたのだ。頭沸いてんじゃねえの。
そいつらは当時の風花聖典が速攻で暗殺して事なきを得たが、その領地を引き継いだのはそいつら以上の暗愚。殺しても次に出てくるのがより酷い蛆虫なことに、当時の神官長らは頭を抱えたらしい。ついでに言えば、どっかの馬鹿が神人攫って奪還に来た漆黒皆殺しにしたのもこの時期。やんなるね、ほんと。
ランポッサが最終的にどんな判断をするのかは分からないが、頑張って教育機関を設立させてそういった点を改善しないといけない。さぁてどうなることやら。
位階上昇のダメージ計算
<火球>のダメージ量を例とする
以下が<火球>の基礎ダメージ
アルシェ(第三位階):3D6の期待値11
フールーダ(第六位階):6D6の期待値21
モモン(第十位階):10D6の期待値35
モモン(ブーステッド):20D12の期待値130
作中で説明機会もないのでここで最強化も説明
最強化は通常はダイスを最大値に固定する。モモンの場合はタレントでダイスの数値とダイス数を倍にして最大値に固定する
以下が最強化時の<火球>の基礎ダメージ
フールーダ(マキシマイズ):6D6の最大値36
モモン(マキシマイズ):10D6の最大値60
モモン(ブーステッドマキシマイズ):40D24の最大値960
第十位階最強攻撃魔法の基礎ダメージ量
現断(リアリティ・スラッシュ)の基礎ダメージ:100D6の期待値350
現断(マキシマイズ):200D12の最大値2400
この基礎ダメージに魔法攻撃力・装備ブースト・パッシブスキル・アクティブスキル・バフ・敵の魔法防御力・敵の耐性・地形効果etcが計算されて最終ダメージが決定する