モモンガさん、転生する   作:一人旅系亜種

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 ラナーとの会話を終えた俺とパンドラは城を出た後、泊まる予定の宿に向かう。その途中、カルネ村からセバスと、全身甲冑……と言うか、中身空洞の鎧アンデッドを3体ほどこちらに呼んでおく。

 

「お待たせいたしましたモモン様」

「来てくれてありがとうな、セバス」

 

 なぜセバスらを呼んだかと言えば、単純に王都の治安が非常に悪いからだ。元々王都は賄賂上等社会なのでマフィアやヤクザみたいな裏組織が多かった場所だが、数年前から八本指なる組織が幅を利かせ始めた影響で秩序の崩壊が早まった。なんでもこの組織には八つの部門があり、一応は一つの組織なのだが部門同士仲が悪くお互いに対立しているらしい。表立ってバチバチやりあってはいないが、同一組織の仲が悪い影響は全体に波及する。

 八本指に影響された他の組織は、これでもかと暴れまくる。市民は恫喝暴行で金を毟り取られ、それを衛兵や巡回使に申告し訴え出ても、犯罪組織が懐が潤う怪しく光る金の薬を渡せばあら不思議。なんと市民の方が虚偽の申告で投獄されたり、治安を守る衛兵の手を煩わせたとしてその場で滅多打ちにして殺されたり、女なら詰所に連れて行かれ見逃して欲しくば……なんてのも珍しくない。お金がある相手なら、謂れなき罪を被せて釈放金をせびるのも朝飯前だ。

 すごいね、モラル。どこに人間性を捨てて来たんだこのソドムとゴモラは。六色聖典をここに連れてきたら、俺たちが血を流した結果がこれか! とキレながら衛兵を皆殺しにする気しかしない。俺も精神作用無効があるから平穏かつ穏やかにいられるが、そうでなければ一人ぐらいは拝借して眷属の仲間入りさせていたかも。

 ではここで、我がパーティを外見だけで判断してみよう。最近また身長が伸びたが、それでも150cmぐらいしかない11歳子供な俺。見た目は美人エルフなあけみさん外装のパンドラ。そんな二人がトコトコと呑気に王都を散策するぜ!

 

(あほか。トラブルにしかならねえ)

 

 王城までのメインストリートは流石に犯罪組織も手を出さないが、道を外れたら一気にスラムのような有様になるのが王都と言う場所だ。道端に死体が普通に転がっているのも珍しくない。これでまだ本当のスラムではないんだって。本気で悪徳都市リ・エスティーゼに改名するべきなんじゃなかろうか。

 仮にトラブルに巻き込まれたとしても、切り抜ける手札はいくつもある。とはいえある程度巻き込まれない様、それなりの自衛はするべき。奴隷エルフと執事と護衛兵らしき者を引き連れた、貴族のような身なりをした子供となれば、どうみたってどこかの貴族子息だ。

 犯罪組織も衛兵も、貴族には喧嘩を売るより媚びを売る方が旨味が大きいと知っているので手は出してこない。そうやって安全を確保してから、俺は宿に向かう。道中道を何度か外れて、王都の腐敗具合を確かめておく。殴り合いをしている酔っ払いがいて、一般市民らしき人物に絡むチンピラがいて、こちらに視線をやる者らが大勢いる。

 彼らはこちらをみて、横の使いこまれたと分かる鎧を着た兵士を見て目をそらす。流石だぞ、リビング・アーマー。

 

「見た目がちょっとボロい鎧なのが、逆に歴戦の兵士感を演出してくれているな」

「ですね。モモン様のゴーレムクラフター設定を考慮すると、人間社会で使うならこの辺りが最適かと思われます」

 

 仮に空洞なのがバレても、俺の魔法で動かしている鎧ですで誤魔化しやすい。強さとしては素がオールドガーダーに近い15レベルで、俺のブースト込みでも25から28と英雄一歩手前の性能しかなくて、目立った点も使用武器が下級の魔法武器ぐらいとカルネ村基準ではそんなに強くない。

 でもカルネ村以外では違う。色々な調査の結果、25あればアダマンタイト級冒険者に匹敵する戦力になる。流石にちゃんとした戦闘職の25~28レベルと比較するとスキルとかの関係で全然弱いが、それでもオリハルコン級前衛職ぐらいは保証されているので王都では十分なはずだ。

 

「こっちに行ってみようか。視察がてら」

 

 俺が指さすのは、どうみても今まで以上に荒れているスラム街の入り口だ。治安の悪い王都の中でも、さらに治安の悪い場所。トラブルの種に突っ込むのは野暮ではあるが、本当の王都を知るにはこういった場所も見ておかないといけない。

 貴族様が踏み入るような場所ではないが、それで絡まれることもない。見た目がごつい鎧が一緒と言うのは、こういう時にほんと便利。

 歩いて歩いて……こういうのもあるよなと思う光景に出くわす。道端に赤ん坊が捨てられていた。布で包まれることもなく、ゴミを捨てる程度の感覚で土の上に裸のまま放置されているのだ。

 体の一部は既に腐っていて、多様な虫がたかっている。俺は思わずため息をつく。エ・ランテルは権力から遠く、犯罪組織の少なさからここまでではなかった。なのに、首都とも言える王都では子供の死体が腐るまで放置されているのだ。

 

(それだけ腐敗の温床になっているんだ。死体を片付けるのは衛兵の役目なのに、金にならないから優先度が低い。賄賂を受け取れるお仕事の方が楽しいんだろうな)

 

 全兵士がそうと言う訳ではないが、八本指を始めとした犯罪組織の跳梁跋扈を許すのは、結局のところ取り締まる側のやる気の低さと兵力の弱さにある。話によればワーカーなどの元冒険者も八本指に協力しているのだとか。冒険者は大抵一般兵士より強い。それと争うぐらいならば、袖の下を貰いながら悠々自適に暮らす方が楽しいし楽だよね……

 

(ランポッサさんやザナック殿下次第だが、尻を叩いて今まで得た金の分死ぬまで働かせてやる。死んでもアンデッドになって一日32時間の奉仕労働だ)

 

 俺が決意を新たにしていると、セバスが赤ん坊の死体を見て目を細めている。

 

「どうした、セバス。思うところがあるのか?」

「……いえ」

「言いたいことがあるなら言っていいんだぞ」

「では……少しばかり時間を頂けますか」

「いいよ」

 

 俺がそういうと、セバスは死体の傍まで歩いていき、近くの地面に軽く拳を打ち込む。それだけでそこそこ大きな穴があいた。そこに死体を入れると埋め戻していた。

 

「……それがしたかったんだな」

「はい。意味がないとはわかっています。この子を埋めたとて命が戻るわけではない。それでも、そうしたいと思ったのです」

「いいさ。したいことがあるならすればいい」

 

 埋めたところで何が救われるわけでもない。あれほど小さい子だと、<真なる蘇生>の生命力損失にすら耐え切れない。死んだ時点で……道端に打ち捨てられた時点で人生は決まっていた。仮に俺ならアンデッド創造で一時的に保護者を作って助かるかもしれないが……そうではない命は、親に見捨てられた時点で死ぬしかないのだ。

 

「いやな光景だよな……全く、本当にいやな光景だ。リアルを思い出して嫌になる」

「リアルを……ですか? たしかリアルとは、モモン様が住まわれる天の世界と。なぜそのような理想の世界で、今のような光景が?」

「……うん? セバスらには、そういえばリアルの話を詳しくしたことはなかったか」

「はい。モモン様が我らを御作りになられる前。スルシャーナ様の時代に、ユグドラシルにいた頃の話とは伺いました。天の世界とは理想郷である。それが私やパンドラズ・アクター様の認識です」

「そうなのか、パンドラ?」

「セバス様の仰られる通りですね。ペストーニャ様を含めて、我々は地下の遺跡で見つけたマジックアイテムにより産み出された存在。あの遺跡にあったマジックアイテムにより産み出されたおかげか、我々の持つ記憶はあの遺跡と結びついています。なのである程度の知識は持ちえますが、リアルの詳細となると不明としか答えられません」

 

 そういやそうだったな。ベースの記憶部分はナザリックNPC時代から引継ぎさせてある。あくまでも弄ったのは、いつ産まれたか、誰が作成したかだ。となると……ユグドラシル時代に設定されていなかった記憶と、見聞きしていない記憶は不明か。

 

「なら聞いてみるか? 別に面白い話でもないが、リアルのことについて」

「モモン様の御話を聞かせて頂けるのであれば、是非に」

 

 了解。それじゃ、どこから語るかね? とりあえず俺は、リアルとはどんな場所なのかを説明。企業、ようするに商会が政治にまで食い込んで支配して、結果上流と下流に分断されてしまった社会について語る。

 

「これがリアルの世界だ。理想もへったくれもない、強者と弱者がいるだけの世界。金がないやつにはとことん厳しく、金を持つやつはひたすら独占して利益を貪る。まるでこの国の貴族と平民のような関係だ」

「なんと……」

「道端には普通に子供の死体が転がっていた。親に見捨てられたか、親が死んだかで路頭に迷った子供の死体がな」

 

 まるで今のように。大気汚染の影響で、人工肺か防毒マスクがないと出歩けない大地に子供が置き去りにされたら、一時間保たずに死亡する。仕事に行く傍ら、何度か見たことがある。呼吸困難に苦しみ、苦痛の中で悶え苦しむ子供を……

 

「いやな話だよ、全く」

「……そのエリートとやらは、この世界の貴族のようなもの……だったのですね。なんと忌々しい」

 

 セバスは義憤にかられているのか、拳を握りしめて憤っている。記憶を弄ったことで、そのエリートの一人に作成されたことを知らぬセバスにとっては、怒りの対象でしかないのだろう。俺はそれが忍びなくて──

 

「だが全てのエリートがそうではなかった。法国の貴族しかり、この国でも数は少ないが良識派の貴族もいるようにな」

 

 一応この国の貴族にも、パンドラと俺が作成した粛清リストに載っていない者はいる。六大貴族なら王派閥のウロヴァーナ辺境伯にぺスペア侯。貴族派閥ならボウロロープ侯にレエブン侯。エ・ナイウルを統括するナイウーア伯爵のように、積極的に自分の領地の民を守ろうとする気概のある御仁もいる。

 

(大体まとも率は3割くらいかな。どちらともいえないが1割。まだ国を想える貴族に改善可能が2割。ガチの粛清リスト行きは4割ぐらいだ)

 

 なんだ40%も殺すかブラック企業させるだけでいいじゃんははは……まじ憂鬱だ。4割も腐ってるとかなんだよ。改善可能の2割も駄目だったら、6割が滅ぶ大粛清だ。まともよりまともじゃないの方が多いの、国としての体裁が死んでる。

 なお六大貴族のうち、ブルムラシューとリットンは駄目。ブルムラシューは仮想敵国の帝国に、アダマンタイトやミスリル、オリハルコンを金欲しさにこっそり売り払っているガチの売国奴。王宮に提出している採掘量を虚偽申告までしているので、王権を発動させたら死罪以外にない。

 リットンはブルムラシューよりはマシだが、自分の利益独占のために他の弱小貴族を裏切りまくって不和をまき散らしている。自分が得するためであれば、本気でなんでもするタイプだ。改善可能の2割のうち、1割がこいつのせいで心が歪んで闇落ちしたと言えば害悪度が分かるだろうか。

 酷い話だよ、まったく。

 

「モモン様は、リアルのそうではないエリートを存じておられるのですか?」

「いる。とても大切だった友人がな」

 

 そしてお前の本当の製作者でもある人だ。

 

「セバスの好きな言葉。誰かが困っていたら助けるのは当たり前は、そのエリートが好きだった言葉なんだぞ? あの人はまっすぐな人だった。誰よりもまっすぐだったかもな」

 

 もしもあの人がここにいたら、セバスと同じようなことをしているんじゃないだろうか。穴を掘ってやって埋葬する。そんな正義感で動いていた。俺はそう確信している。

 

「よき御仁だったのですね」

「ああ。誰よりも、何者よりも、な」

 

 俺たちは盛り上がった土に手を合わせてから、再び歩き出す。それで判明するのは、王都は想像よりも腐りきっていること。向けられる目線から、兵士にみせかけたリビング・アーマー達がいなければ、俺たちはたちまち襲撃されていただろう。

 空に目を向けたら日も暮れ始めている。そろそろ宿に向かうかと足を向け、別の路地から行こうとしたところで──

 

「とまれくそがき!! 殺されてえのか!!!」

 

 正面から小さな子と、大人二人がその後ろを走ってくる。子供は小さい、3歳ぐらいかな? 腕などは細く、足も枯れ枝のような見た目。ボロボロの布を体に巻き付けていて、両手で細長いパンを抱えている。ふむ?

 子供は進行方向にいる俺たちに気づいて、進路を変えようとしたところで、ぬかるんだ土に足を取られて転んだ。そこに追いついた大人が、近くにあった木の棒を掴み振り下ろそうとする。

 木材は子供にクリーンヒット……はしない。その前に──

 

「己の背丈の半分もない童相手に、本気の打ち込みなど大人がすることとは思えませんね」

「……は?」

 

 一瞬で距離を詰めたセバスが木材を素手で止める。俺はその様子を見て<時間停止>の発動をやめる。パンドラもいつの間にか握っていたアウラの弓を下ろしていた。

 

「なん、なんだよお前ら。俺の邪魔すんじゃねえよ!!」

「どのような事情であれ、幼い子が殺されそうになっているのであれば私は助けますよ。どのような事情であろうとも」

 

セバスの鋭い眼光に射られて、男たちはたじろいている。生物としての格が違いすぎて、セバスの睨みつけるは本気であればそれだけで弱い生物を殺してしまえる。実際ゴブリンぐらいなら死ぬ。

 停止する男らと、殺気を滲ませるセバス。このまま放置していても時間が勿体無いので、俺は仲裁のために間に割って入った。

 

「そこまでだセバス。お前の怒りに賛同できる部分もあるが、まずはどうしてその子を追いかけていたのか。それを聞き出してからで無ければ、公平とは言えない。後ろに下がれ」

「失礼しました、モモン様」

「良い。お前が止めていなければ、俺が止めていた……初めまして、お兄さんとおじさん。お二人はこの子をどうして追いかけていたのですか?」

 

 心臓が止まりかねない眼光の持ち主が後ろに退いて、代わりに前に出たのは子供の俺なことに相手は戸惑っている。けれど戸惑いはあれど、さっきの執事よりはマシだと判断したのか、中年の方が口を開いた。

 

「そのガキはうちの商品を盗みやがったんだ! 盗人は例外なく死罪! それが王都の法なんだよ!!」

「盗みですか。たしかにそれは重罪ですね。すまないが、持ち物を見させてもらうぞ」

 

 俺がそう言って屈んで少年に目を合わせると、怖いのか目を逸らしてしまう。それと同時に、抱えていたパンを隠そうとした。なるほど……ごめんよ、ちょっと借りるね。

 俺はそのパンを一瞬で奪い取る。自分の手からパンが消え、俺の手に渡った事に驚いた顔をした後、少年の顔がくしゃっと崩れる。ほんとにちょっと借りるだけだから泣かない泣かない。

 

「商品とは、この泥だらけのパンですか?」

「そうだよ! そのクソガキ、孤児なのか知らねえがうちの店先からパンを持って行こうとしやがった。だから追いかけてたんだ。これで満足か!」

 

 向こうは苛つき声を荒げて殺気立っているが、子供の俺相手でも手を出そうとはしてこない。後ろの兵士とセバスを警戒してるからだろうな。

 

「や、このパンだけど、あのおじさん達から盗んだの?」

「………………」

 

 くしゃくしゃの顔で口をパクパクと動かし、何かを伝えようとするが言葉は出てこない。ふむ? 孤児でこの年となると、誰かと喋ったこともないか? それか怖くて何を言えばいいのか分からないのだろうか。

 

「これは、あの人達が言うように君が盗んだ?」

「……ち……う」

「違う?」

「違う訳ねえだろ!! なぁ貴族のボンボンなのかしらねえがよ。とっととそのガキ渡してくんねえかな。お前さん達にとって、そんな孤児なんて何の意味もねえゴミだろうが」

「……へぇ」

 

 まぁ確かにその通りだ。俺が貴族であれば、こんなどこにもでもいそうな孤児なんて無視するだろう。だがお生憎様なことに俺は貴族ではない。それに……こいつら、なんでか妙に焦って見えるんだよな……あ、そうだ。

 

「ちょっとだけ頭に触るね」

 

 少年は俺が手を伸ばすとビクリとした。ごめんね、ほんとにちょっとだけだから我慢だよ。

 

(<魔法修正強化・記憶操作>)

 

 この子が言葉を話せないなら、直接記憶に尋ねればいい。もしもーし、この子はどうして盗んだんですかー……はい、こいつらの嘘確定。マジでゴミみたいな都市だなここは。

 さーてと、俺が記憶を見た事を話せない。ならこいつらに直接話させますか。

 

(<魔法修正抵抗難度強化・支配>)

 

「うーん。この子が本当に盗んだのかな? おじさん達、何か嘘をついてないですか?」

「嘘? 俺たちがそんなガキ相手に、どんな嘘を吐くって言うんだよ」

「それが分からないんですよね。だから『ほんとのことを話して欲しいな』」

「は、本当も何も、『俺たちは仲間内で孤児のそのガキ脅して、表通りのパンを盗ませたんだよ。そのガキが上手く盗めるか、それとも失敗するかで賭けたんだ。そしたらそいつ、忌々しい事に成功させやがった。おかげで俺とこいつは大損だ。俺たちに損させたんだ。そのクソガキ、内臓全部吐き出すまで殴りつけてやるよ』……は?」

「お前何言って……」

「ありがとうございます。『ちゃんと本当のことを話してくれて』」

 

 今回の修正内容は、精神作用効果の限定拡張。俺の特定ワードだけに反応して、強制的に言う事を聞かせるだ。『支配の呪言』というスキルがあり、それを魔法で再現してみた。それにしても賭け事に使って、自分が損をしたから孤児を殴ってすっきりしたいか。そんなにすっきりしたいなら、お前達どうしで殴り合ってろ。

 

「『この子にしようと思っていたことを、お互いに殴り合って実現しておけ』」

 

 男二人が拳による制裁を始める。指が眼を抉り、拾った石が歯を潰し、馬乗りになって首を絞めている。それを見てセバスは溜飲が下がったのかうんうん頷いていた。

 少年はと言うと、俺が命令した途端追いかけて来ていた二人が殺し合いを始めたことに本気でびっくりしていた。こらこら、あんな大人の醜い喧嘩みたら駄目だぞ。

 

「怖かったな。もう追いかけてくる大人はいないぞ」

 

 俺はその子の頭を撫でておく。最初は怖がっていたが、俺が痛い思いをさせたりしないと分かったのか目を瞑ってさせるがままになった……この手の年代に弱いんだよ俺は。エンリと同年代ぐらいが相手だと、どうしても甘い面が出てしまう。厳しいお兄ちゃんにならないといけないんだけどな。

 

「それじゃ行こうか。またな、少年」

 

 俺は立ち上がろうとして──

 

「ん?」

 

 手を掴まれた。少年はくしゃくしゃの顔をしながら、俺の手を離すまいとしている。これは……懐かれた?

 後ろのセバスとパンドラに振り返る。パンドラはご愁傷様ですみたいな顔をしている。こら、なんだその顔は。セバスはと言うと──

 

「モモン様。誰かが困っていたら助けるのは当たり前ですよ」

「この従者どもめ……はぁ……」

 

 王都に孤児なんてたくさんいる。その中の一人に懐かれたからと言って、別に見捨てても構わない。しかし……チラッと少年の顔を見る。まるで初めて優しくされたかのような、子犬の目を見ているとなんとも言えなくなる。俺は少しだけ頭を掻いてから──

 

「ランポッサさん次第だが、あの人の動向次第では王都の大改革も必要になる。その時には、どちらにしろ孤児院とかも必要になってくるか……これはモデルケースだモデルケース。こういった、小さい孤児とどう向き合うかのモデルケース」

 

 俺がそう言うと、セバスは嬉しそうに手を叩いていた。お前はそれでいいのか?

 

「それじゃちょっと持ち上げるぞ」

 

 俺は少年を抱え上げる。小さいし軽いね。まぁ人間なんて誰を持ち上げても軽いが。唯一重いのは筋力のあるアンリ? これ言ったらデリカシーがないとか殴られそうだけど。

 少年は特に暴れる気配もない。どころか俺にしっかりとしがみ付いている。こら、そういう反応をするんじゃない。エンリを思い出して優しくなっちゃうだろ。

 

「そう言えば、お前は何か名前とかあるのか?」

「?」

「無いよな。まぁ孤児だし無くても普通か……ん? そうなると俺が名づけ親になるのか……なるほど。なら、仕方ない。一肌脱ごうか。俺が考える、最高の名前を付けてやるからな」




前話の感想数とここすき総数(過去一多い)に一番戸惑っているのは俺なんだよね。みんなくぎゅううううすぎない?
何一つ人物描写をしていないのに、なぜか同じ幻覚が見えてる……



…………とあるキャラはピンクブロンドだ
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