モモンガさん、転生する   作:一人旅系亜種

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ぺスペア&○○○○姉妹

「本日はよろしくお願いします、ペスペア侯」

「こちらこそよろしくお願いする、エモット公」

 

 実態調査の第一目標は王派閥の六大貴族、ペスペア侯からだ。問題のない所からサクサクと終わらせて、大貴族は拒まなかったのにあなたは違うんですか? と大義名分を得る目的がある。

 ペスペアさん家のメイドに案内されたのは、多数の書物が収まる書庫だ。ここにはペスペア家が代々受け継いできた、税の記録なども保管されている。

 パンドラに加えて、多数の教育を受けたエルダーリッチを投入しまくり速攻で見分を終わらせる。うん、王宮に提出された資料との差異はなし。住民台帳については……一から見直しがいるな。

 書庫から出てペスペアに会いに行く途中、俺と同い年か少し上ぐらいの少年に出会った。挨拶をしておく。

 

(あれが長男か)

 

 次のペスペア家当主になるお相手なのでもう少し話をしたかったが、あいにく作業量を考えたらあまり長居はできない。エ・ペスペルを出て、転移魔法で各地の村を巡る。各村の長は兵士やアンデッドに見えるゴーレムを連れた俺を見て仰天していたが、ペスペアから預かった書面やらを見せてから、田畑の広さ・土の質・村の住民の名前や家族構成に、情報探索魔法でクラス構成を確認したり、法国に作成してもらったタレント確認魔法が込められた眼鏡で一人ひとり確認していく。

 これは法国が長年行なっている才能の有無の確認方法だ。素養などをしっかり調べ上げて、人類を守護してくれる英雄の見極めと発掘に時間を費やす。そのためにしっかりとした戸籍謄本を作成する。

 

(特に目立った才能の持ち主はいないな。ま、最初から大当たりを引けるとは思っていないが)

 

 クラス確認魔法を修正強化することで、どこまでクラスを積み上げられるのかを俺は知ることができる。クラスレベル習得数=でレベル上限だ。この村にいる住民113名は、例外なく15もない。一番高くて13で、平均値は11。

 高レアリティの封入率を考えたらこんなもんか。20レベルに到達できるのは、一千人集めて一人いたら御の字。31以上の英雄なんて、封入率はもっと低い。

 

「ご協力ありがとうございました」

 

 俺が頭を下げると、村人全員が驚いていた。一応俺は公爵だと説明しているから、対外的には大貴族だ。大貴族が平民に対して頭を下げるなど、今までであればありえないことなのでそれは驚きもするか。

 一つの村が終われば次の村へ。転移魔法で移動し、大量に眷属を投入してるとは言え、才能確認などは俺にしかできないことなのでどうしても時間は取られる。パンドラに今の俺をコピーさせたとしても、タレントなどは模倣不可能な能力だからだ。

 疲労も飲食もいらない集団ではあるが、俺が成長のための栄養補給と睡眠時間を必要とするので、どうしても一日に8時間は休憩しないといけない。

 かなりの時間を費やして、どうにかペスペア領の調査を終わらせる。集めた情報については、カルネ村にある法国支部に送って資料として編纂させておく。国の重要書類を他国に渡して編纂させるなど普通なら馬鹿な行為だが、法国は実質俺の支配領みたいなことになりつつあるのでたぶん問題ない。

 

(なんかこう……エモット領として法国の一部開放してくださいとか頼んだら、普通にくれそうなんだよな)

 

 冗談でも口にしたら最後、なんか大変なことになりそうなので絶対に言わないが。

 

「それにしても、思った以上に……人材が眠ったり腐ってたんだな、王国は」

「これだけの人的資源が、平民であるというだけで活用も重宝もされていないとは、度し難いですね」

 

 最初の村があれだったからそこまで期待していなかったが、調査すれば出るわ出るわ優秀な才能の卵達。ペスペア領の人口は50万人ほどで、その中から見つかった20レベル超え可能な人数はなんと百人以上。確率だけで言えば、法国からの出現率の10倍以上だ。俺はさっそくペスペア侯に掛け合って、特別リストに入れた者らを雇用したいことを申し出た。

 

「エモット公の御言葉は我らが王の沙汰も同然。そのものらが王のお役に立つのであれば、存分にご活用ください」

「……意外ですね」

 

 俺は優秀な人材であれば反対されるかと考えていたが、ペスペアは一切反対しなかった。それで思わず意外だなと口にした。

 

「そうでしょうか。エモット公が見抜くまでは、我が領内で眠ったままの才です。正しく活用できる者のもとで、その才を活かすことはひいては王の益になる。のであれば、私に反対意見などありません」

 

 それにとぺスペアは続ける。

 

「私はエモット公のことを好ましく思っていますので。あなたから好意的に見てもらえるのであれば、協力は惜しみませんよ」

「元平民なのに?」

「今は公爵ですよ。我らが王がそうであれと定められたね……ここだけの話なので、耳をお借りしても良いですかな?」

 

 断る理由もないので、ひそひそ話に耳を傾けてみた。

 

「私はエモット公の行いに、感服しています。疑わしいところはあれど、ブルムラシューは王派閥の筆頭でした。しかしあやつは良くない噂が多数あり、王も権力基盤の問題で疑うことはできなかった。それゆえに、私は王派閥へ属そうと考えつつも、長年保留せざるを得なかった。あの拝金主義と同等と見定められたら、私にとって不利益でしたから……正直に申せば、心の底からスカッとしました。仇敵としか言えない者が、正しき裁きにより鉄槌を下されたことにね」

「……俺の威圧に巻き込んでしまったことは謝罪しておきます。あの場では、あれ以外にやりようもなかったので」

「その件はブルムラシューと共に葬られましたよ」

 

 ……パンドラに視線をやれば、ペスペアは完全な白。ならばこれ以上、調査したり疑う理由もない。調査報告書には花丸満点をつけておく。

 

 ペスペア領の次は近いという事で、エ・ランテルとエ・ぺスペルの間にある小さな領地に向かう。ここは事前の調査では完全な黒。領民の不正拉致に税の過小報告。税率も王国法の基本規定から大幅に超過している。

 

「御用改めだ! 全員頭に手を置いて伏せろ!!」

「な、なんだぁ!?」

 

 館の正門を蹴り飛ばし、まっすぐ俺たち一行は領主の私室に向かう。そいつは無駄に肥えた体格をしていて、鼻の形なども豚そのもの。壺を手に何やらうっとりしていたようだが、俺たちがずかずか乗り込んできたのを見て慌てふためいていた。

 

「きさまはあの時の薄汚い平民! ここがどこだと思っているか! おまえのような平民がぁ!!」

 

 領主様は机に手を叩きつけて抗議しようとしていたが、連れてきていたセバスに机諸共手を砕かれて悶絶していた。こら、セバス。その机は、場合によっては押収する物品なんだぞ。叩き壊すな。

 

「ストゥル男爵様。モモン様は平民ではなく、あなた様より遥かに格が高い公爵位。薄汚い平民などと蔑んだ呼び方が許される御方ではないぞ。呼ぶのであれば、敬称としてエモット公か、公爵閣下と呼べ」

「~~~~っ!!!!」

 

 手首ごと持っていかれたからか、ストゥルは地面を転がって喉が千切れそうなほどの絶叫を上げていた。痛そう。

 のたうち回って話にならないので、セバスに安物の青ポーションを投げ渡す。

 

「セバス、それ飲ませろ」

 

 セバスが顔を掴み、無理やり瓶を口に突っ込んで飲ませる。流し込まれたからかストゥルは咳き込んでいたが、あれで痛みは引いていくだろう。欠損までは治らないが、出血も治まる。

 

「モモン様……セバスおじいさん怖いよぅぉぉ……」

 

 連れてきていたティラが俺にしがみついて、セバスを指さしながら震えている。執事の大暴れは凄かったからか、どうもイジャニーヤに所属する者は全員セバスがトラウマになっているらしい。

 ごめんね、記憶処置はしたけれども、深層心理に主人が亡くなるとか、居場所が壊されるとかそういったあれこれがセバスの中ではNGワードになってるんだ。そのせいかちょっと気が立ちやすくなってるから、大目に見て上げてくれると助かる。

 

「腕は生えないだろうが、痛みは引いたようだなストゥル。王宮で陛下が仰っていた、実地調査にやってきたぞ」

「……こ、こう、ここう……公爵閣下。突如として押し入り、このように手を潰されるいわれはありませんぞ……」

「あるかどうかを決めるのはお前ではない。陛下と、陛下の御意思を体現する私にある。全員、家宅捜索開始だ」

 

 眷属やティラやパンドラが散っていく。部屋に残されるのは俺とセバスだけ。3分もしたら、ティラが俺を呼ぶ声がした。そちらに行ってみるとベッドが置かれた部屋があり、そこにはストゥル男爵の欲望が体現されていた。

 

「こちらです」

「大方事前調査通りとは言え、これは中々……」

 

 ベッドが六つおかれていて、それぞれの上には10歳から15歳ぐらいの少女がいて手錠で繋がれていた。全員服は着せられておらず、生まれたままの姿が外気に晒されている。

 俺が入ってきたのをみて、年が上の子は何一つ反応せず、下の子は体を隠そうとして手錠を鳴らし体を捩っている。それらを見て俺は舌打ちしか出てこない。

 

「そうなるように調教したか、ストゥル男爵」

 

(<魔法修正強化・上位道具創造>)

 

 座標指定による道具創造で服を作成し、全員に一瞬で服を着せる。同時にセバスに男爵を持ってくるように命じる。

 男爵は髪を掴まれながら引きずられてきた。

 

「おい、これはなんだ?」

「そ、それはですね。そやつらは、奴隷です。奴隷……」

「奴隷ねぇ?」

「しら、知らないのですか! 公爵閣下はぁ! 奴隷には何をしても良いと決まっているのですよぉ!」

「たしかに奴隷への人権は何も決まってはいないな。ただしそれは、本当に奴隷だけの話だ。ここにいるのは、本当に奴隷か?」

 

 俺がそう言うと、向こうは言葉を詰まらせた。うん、と言うかお前が領民の中からお気に入りの子を見つけたら、貴族特権で連れ去ってるのは知ってんだよこっちは。そのあと飽きたら奴隷市場に流してるのも。

 

「ずいぶんと顔がいい奴隷しかいないな。奴隷なんて、普通は質もバラバラ。懇意にしている奴隷商がいたとしても、ここまで揃うことは稀だ……お前は何も隠し事をしていないな?」

「し、しておりません! 閣下に隠し事など、何一つぅう!!」

「……そうか。まぁいい。お前の帳簿や金の動きを追えば、奴隷が購入されたものかどうかはすぐに判明する。もしもこの少女たちが、お前が拉致したものであれば容赦はせん。陛下の前に引きずり出す前に、その手首だけでなく──」

 

 俺はストゥルの残った手足をトントンと叩く。

 

「全て斬り落とす。王国の民とは、貴様の領民である前に陛下の財である大切な人的資源だ。それを断りなく攫い、このような真似をしているのであれば、それは陛下に対する反逆だ」

「モモン様。この少女らですが、みたところ傷物にされているご様子。陛下の大切な民を傷物にしているようであれば、四肢だけでは足りないと思われます」

「そうだな。その時は、少女らを傷物にした凶器も破壊する」

「は……は……」

 

 俺が睨みつけ、ティラがとある提案をするとストゥルの呼吸が乱れる。そんなに怖がるなら最初からするな。今まで自分は大丈夫、安全……そんなまやかしを見ていたのだろうか。

 暫く待っていたら、パンドラが証拠類を持ってきた。こいつが奴隷を購入した形跡は一切なし。それを突きつけたらごにょごにょと言い訳をした後、平民如きが崇高なるストゥル家に口答えをするなと襲ってきた。一秒かからずにセバスに残りの四肢を破壊され、ティラが男の象徴を踏み潰していた。

 死なれると裁判出来ないので、安ポーションを再度飲ませておく。お前は裁判した後、<酸の矢>の的にしてやるからな。

 

「パンドラ。あの子らの手錠を解いて、慰めておいてくれ。男の俺が近づいても怖がらせるだけだ」

 

 あけみさん外装のパンドラならば、そんなに怖がられもしないだろう。パンドラがゆっくりと質問して、どこの村から連れてこられたのか判明。俺たちはティラと眷属をストゥルの見張りに残し、少女たちを親元に返しに行く。ついでに村の検地と住民調査。

 ん~、20超えはいないな。ペスペア領の質が特別良かったのだろうか? しかし、あそこでも英雄ラインに到達できそうな人材は見つかっていない。今のところ見つかった最高上限は24だ。法国でも20人も英雄はいないのだから、そんな簡単に見つかるわけがないとは言え──

 

「ん? ごめんね、ツアレニーニャちゃん。ちょっと詳しく視てもいいかな?」

「は、はい!」

 

 明らかに異常反応のある子がいたので、俺は修正強化に加えて位階上昇も乗せて探索力を底上げする。

 気になったのは今年で8歳になると言う、ツアレニーニャ・ベイロンちゃん。クラス上限は……34。すげえ! 鍛えたら漆黒聖典確実だ! それにこの子の妹の2歳になるセリーシアちゃんも凄い。上限値は38。こちらは逸脱者一歩手前の英雄級まで伸びる。この子も漆黒聖典確定。おー、まさか二つ目の領地で英雄候補が二人も見つかるとは。スレイン法国が、王国から人類救済の英雄の出現を願ったのも理解できる豊作ぶりだ。

 凄いねと思うと同時に、このレベルの人材があのカスのせいで使い潰される可能性があったことに勿体なく感じる。ちなみにあの肥満馬鹿の上限は9。アンデッドの素材にもならない。

 

「あ、あの公爵様。ツアレニーニャとセリーシアを見て、その、どうされましたか? まさか、この子たちが貴方様に何か粗相を……」

「いえいえ、粗相なんてしていませんよ。この子たち姉妹の中に眠る才能。それに驚いていただけです。二人とも適切な場所で、適切な教育を受けたらひとかどの人物に……英雄になれます。ベイロンさん。この子達ですが、私どもに預けて頂くことは叶いませんか?」

「え!?」

「もちろん無理強いはしません。ですが英雄に到達可能な才持つ子となれば、幼少期の教育は今後の進路に関わってきます。正しき……とは言葉が強すぎるかもしれませんが、選びたい道を見つけた時に、正しく己で道を選べるように学び強くなる。この子達に、そんな道を用意してあげたいのですが、どうでしょうか?」

 

 俺が創設しようと考えている王国正規軍。そこには王国出身の英雄が欲しくて、この子達は言い方は悪いがぴったりなのだ。勿論成長して軍属なんて嫌だと言われたら仕方ないが、今の内に唾を付けておきたい。

 そんな思惑からの誘いに対して、ベイロン夫婦は悩んだあと──

 

「……その預け先とやらは、ストゥル様の所ではなく、公爵閣下のもとに……になるのですか?」

「はい……ああ、ストゥル男爵の噂を聞いて不安に思ったのですね。彼が人攫いをしている……と」

「……そうです」

「安心してください。彼は諸事情により、この領地から転封されます。ずっと遠い所に行くので、この村と、この子達には指一本触れられなくなります」

「そうなんですか!?」

 

 そうなんですよ。ストゥル男爵はあの世という隔離場所に転封されますし、後釜には俺の息がかかった法国の官僚が来ます。もう重税に悩まされる事も無くなりますし、その点は安心してください。

 

「それと預けると言っても、転移魔法があるので週に一回はここに帰ってこられます。子供に寂しい思いをさせるのは、私の本意ではありませんので」

「……分かりました。閣下にそこまで言って頂けるのであれば、私と妻も御身に子供らを預けます。ツアレ……セリーを連れてこっちに来なさい」

 

 二人を抱きしめて、両親は辛かったら帰ってきても良いとか色々と別れの挨拶をしていた。いや、ほんとに週一で送りますよ……生まれてきてくれてありがとうとかめっちゃ泣いてる。

 そんなに? 貴族に対する認識そんなに不安? 最初は週一じゃなくて、三日に一回ペースで送り迎えした方が良いのだろうか……

 

 

 

 

 

 後日。ストゥル男爵の言い訳を聞いたランポッサは、俺に<支配>で全て語らせるよう命令した。そうすると出るわ出るわ領民に対する舐めた言動の数々。女の子や領民らにしていた仕打ちを聞いた瞬間、ランポッサは首を刎ねるのではなく肝臓を突き刺していた。

 あれは簡単に死ねなくて、地獄の苦しみの中で命が燃え尽きていく刺し方だ。

 

「モモンよ。悪鬼羅刹の始末などこれで十分だ……ストゥル。命を弄んだ罪は、命でしか償えん。己が命をもって罪を償うが良い」




兄弟姉妹は片方が高レベルだと、もう片方も大体高レベル(カストディオ姉妹、クインティア兄妹)

なのでニニャ(英雄に到達しフールーダに近づける才能)の姉であるツアレも上限は当然のように高め
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