モモンガさん、転生する   作:一人旅系亜種

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『〇〇王』ランポッサ

「お久しぶりですね、殿下。それにボウロロープ侯。あとリットン伯にその他の皆様。お迎えに上がりました」

「あがが……」

「き、貴様……うげぇ!!」

「ひ、ひ、人殺しぃ!! たいりょうぎょくざぁ!!」

 

 いや、殺してはねえよ。殺しては。やったのは、病気バステの付与だけだ。

 病気バステは付与されると、軽い症状は風邪・熱・下痢などにかかり、時間経過で重症化し呼吸困難・臓器不全・脳卒中など数多の病気を引き起こす。もう一つ特徴として、このバステは他人に感染していく。

 俺は進軍中の王都解放軍の野営地にこっそりお邪魔して、病気バステを付与する魔法に、感染速度増加と感染経路拡大と重症化阻止の修正をつけてから、寝ていた一人にプレゼントした。

 数日で七万人全員が野営地から動けず寝込む事態に。この感染速度だと、重症化阻止をつけてなかったら、全員多臓器不全とかで中枢神経麻痺などを引き起こして死んでたかもしれない。

 

(三つどころか一つの魔法だけで壊滅しちゃったよ)

 

 これ敵国とかの首都で病気バステに、潜伏期間追加・感染経路増加・時間経過重症化変異加速・感染速度増加・低位階治癒無効と諸々付与修正してばら撒いたら、それだけで病気無効持ち以外死にまくる地獄が出来るかも。

 ちなみに貴族やバルブロ達も、もれなく病気にかかっている。天幕に入ったら、殆どの貴族がグロッキーダウンしていた。上からはゲロを吐きまくり、出口を求めて下からも出まくっている。端的な評価を言うなら、野営地全体が臭い。

 

「全員、まずは療養させないと駄目か」

 

 感染拡大するから魔法一回で済む分お手軽ではあるが、病毒地獄は自国内で使うものじゃないという結論だけは出た。

 貴族連中は全員縄で縛ってから、王都の牢屋に転移で放り込んでおく。元気なさそうにこんな場所は嫌だとか文句を言うので、仕方なしに毛布だけは綺麗な新品を渡した。

 残りの七万人患者については法国に協力してもらうことに。

 

「もしもし? これから病人を……ええ、そうなんです。見習い神官の教材にどうかと思いまして」

 

 まだ不慣れな信仰系魔法詠唱者の経験値用にぴったりだったので、向こうも喜んでくれた。国一つが協力者というのは、こういう時に便利だ。

 

「ただいま戻りました、陛下。逆賊ボウロロープ侯、リットン伯。及び御身の御子息バルブロ殿下とその配下である奸臣らの捕縛完了いたしました。反乱軍の制圧も完了しております」

「うむ、ご苦労であった、エモット公。捕えた貴族らはどうしておる?」

「現在床に伏せているため、療養させております」

「そうか。では治り次第、主犯格であるボウロロープとリットンを除く貴族は裁判の後、市中引き回しの末、民の前で縛り首とする」

 

 主犯格である三人については後回しとして、残りの連中は集団で葬られた。全員例外なく、こんなの間違っているなぜなんですか! や、我々こそが真なる人類なのだ! とかなんとか妄言を吐いていたが、市民からは嫌われていたのか、市中引き回しの時に石を投げつけられたり、腐った生ごみをぶつけられていた。

 そのまま特に何の問題もなく、全員括られてあの世に旅立った。

 

「リットン。お主には、十数回は警告文を送っていたな。ただちに反乱軍を解体し、投降せよと。なぜ警告に従わなかった? これは王命であったのだぞ」

「そ、それは……」

「従えば、自分はどちらにしろ縛り首になると知っていたからか? そなたの重ねた罪は、一つ一つは軽微なものであるが、全てを合わせれば死罪以外ない……そのことを 自覚していたからこそ、抗った。そうだな?」

「ち、ちが……そうです! その通りです陛下! 私は自らの罪を自覚し、大いに恐怖していました! そのことを、そのことを自白いたします! ですので──」

「自白するのが数十手遅いわ! エモット公、こやつに慈悲はいらぬ」

「はっ! リットン、お前がかかった病気だが、あれは重症化しないように加減していた。今度は加減しない。お前には苦痛の中で死んでもらうぞ」

「や、やめろぉおお!! 私に近づくなぁああ!!」

 

 症状進行速度増加、重症化速度増加、全症状発症変異でバステ付与完了。さて、ここまでするとどうなるんだろうか? ……うわぁ、なんだかすごいことになってしまったぞ。

 

「エ、エモット公よ。流石にこれは……」

「申し訳ありません陛下。すぐに片づけておきます」

 

 アンデッドのゾンビというより、ホラー映画のゾンビみたいになってしまったリットンを焼却処分しておく。

 

「ボウロロープ……もはやお主に言葉はない。反乱軍を結成した罪と、私の暗殺を狙った罪。死罪は免れぬが、遺しておきたい言葉はあるか?」

「ありませぬ。私は貴族派閥の長として、すべきことを成し遂げようとしたまで。結果として陛下と道を違えてしまったことは残念ですが、後悔を吐き出すつもりはない……エモットよ」

「なんですか」

「お前の勝ちで、私の負けだ。あの魔法詠唱者が暗殺を失敗した時点でな……残された家族はどうなる?」

「爵位は剥奪されますし、御屋敷などの財は没収されますが、今まで処刑された者らと同じく、家族は助命されます。これは陛下のお慈悲であると覚えてください」

「感謝します、敬愛なる国王陛下よ……」

 

 ボウロロープは連れていかれる。国王暗殺未遂の犯人、及び一連の国家反逆騒動の主犯格として、彼は貴族の死に方ではなく大罪人の処刑方法である磔の刑に処される。長い時間をかけて日光や雨風に晒され、脱水や餓死で亡くなるのだ。

 その後ろ姿には怯えは見て取れない。それを見て、あれはあれで派閥の長を預かるに相応しい傑物ではあったのだろうなと俺は思う。

 そして……最後の一人の裁判も始まる。

 

「なぜだ……なぜだバルブロ! なぜ、父の助言を受け入れなかった!? 貴族に無理に担がれたと申せば、まだ未来があった! なぜ私の言葉を受け入れなんだ! どうしてだ!」

「グッ!」

 

 後ろ手に縄で縛られ、玉座の前で正座に座らされたバルブロは、ランポッサを憎々し気に睨みつけていた。

 

「なぜもこうもあるか! 父は間違えた! それを正しき道に戻すのが俺の役目だ! 民は我らが導かねばならない愚者で弱者……強き王だけが民を正しき道に……王道へと誘えるのだ!」

「何度も言わせるな、この馬鹿息子がぁ! 民は愚者で弱者などと決めつけ、彼らが生きる道を奪い取ったのは我ら王侯貴族の怠慢だ! 正しき道とは最初から示されておる! ただ歩けるようにすれば良いだけだ!!」

「その結果がこれか! 父上は何人の貴族を抹殺した! 何人の臣下の血を流した! 父がなんと呼ばれているか知っているか!? 裁血王ランポッサ三世だぞ!! 栄光に輝くヴァイセルフ王家の名を血色に染めて!!」

 

 裁血王。それが今のランポッサの呼ばれ方だ。この間ランポッサのクラスを確認したら、なんかキリングマシーンとか言う非常に物騒なクラスを獲得していた。しかも27年間務めたキングよりもレベルが高いおまけ付きで。

 

(貴族だけじゃなく、王都の役人もだいぶ血祭りにしたからなぁ……)

 

 貴族の犬として、賄賂を受け取り私腹を肥やしていたアホ共もだいぶ裁いた。全員王都の地下水道でどぶ攫いの刑などに処したり、休憩なしの重労働に就かせたら大体死んだ。

 生き残りも狂気に魅入られたりしたので、やむなく処分した。この世界のレベルが少しでも高い人間は頑丈だと思っていたが、300時間睡眠休憩なしで働かせたら死ぬことが判明したのでよしとしておく。

 殺人兵器なんて名前が付くぐらい、かたっぱしから裁判にかけて処刑する。憎き貴族や役人がボロボロにされていくことに溜飲を下げる者もいるが、貴族の恩恵を受けていた者には堪ったもんじゃない。

 他人を裁き血を流す。ゆえに裁血王。とても物騒な名前なので、代わりにデンジャラス・キングを広めようとしたが全然ダメだった。解せぬ。

 王国で駄目なら法国でと思い神官長達にも伝えてみたが、他国の王をその名で呼ぶのは憚られますと断られた。心底解せぬ。

 

「輝かしい王家か……そんなものがどこにあったのだ、バルブロよ。事実上のお飾りとして玉座に座らされ、王権を振るう事すら叶わぬ弱き王族。それがヴァイセルフ家だった。王権を行使できるようになったのも、エモット公の助力あってこそ。そんな王家のどこに、お前の言う栄光があった?」

「それは父が弱き王だからだ! 俺が王になっていれば違った! 貴族は俺相手であれば、誰も彼もが平伏し傅いた! 俺にはそれだけのカリスマがあった!」

「それは向こうにいた間の話ですか?」

「そうだ。新王バルブロ陛下。俺に相応しい名と地位だ!」

 

 すごいすごいと褒めそやされて、自分が本当に王に相応しいと思ってしまったのか。乗せられやすいにもほどがある。そんなんだから、お前はランポッサに次期王には問題ありと見做されていたんだ。

 

「……父よ。茶番劇は終わりにしよう。早くこの縄を解くんだ」

「なんの話をしておる?」

「俺を処刑にするなどという話だ。裁判だというのに、この場には俺と父とザナックと、その平民しかおりません。本当は処刑などする気はなく、逃がすおつもりなのだろう? だから人数を少なくした」

 

 得意げに語ってくれるバルブロだが、残念ながらそのつもりはないよ。単純にこれからバルブロが死ぬのを、他人に見られるのをランポッサが嫌がったので仕方なしの少人数裁判だ。死にゆく息子の姿と、言い訳がましい恥だけは晒してやりたくない……それもまた親心ではあるのだろう。

 

「兄上……それは違う。兄上が処刑される姿を、父は他者に見せたくなかっただけだ」

「なに?」

「殿下……まことに残念な話ではありますが、殿下の性格上、ほんとうに処刑されるとなれば、死にたくないとみっともない姿を晒す可能性があります。なので少人数であることを御理解ください」

「なっ……き、貴様! 父を誑かし、ボウロロープ義父上を処刑台に送り、解放軍を卑劣な手で壊滅させた上、それでもなお足りぬと俺を嘲笑うつもりか! ち、父上! 縄を解いてください! そこのエモットは悪人です! この国を腐らせる病原菌だ! 今すぐに、そやつの首を落とさねば──」

「もうよい! もうよいのだ……モモン。ラナーを連れてきてくれぬか。あの子に、兄との別れをさせてやりたい」

「それは……承知いたしました。連れてまいります」

 

 たぶんそんなに会いたいと思っていませんよと声に出そうになったが、流石にあれすぎるので黙っておく。転移でラナーの私室前まで行き、ノックをして扉を開く。

 

「モモン様。断ることはできないでしょうか?」

「私が何か言う前に、内容を察してくださってありがとうございます」

 

 パンドラ並に話が早くて助かる。助かるんだけど、断るのは難しいんじゃないかな。

 

「でも話したいことなんて……少し練習をしてもいいですか?」

「そんなに?」

 

 家族との会話に練習? そんなに?

 

「わ、分かりました。では練習相手は私がすれば良いですか?」

「お願いします。ではこれを持ってください」

「これは熊のぬいぐるみ?」

「はい。モモン様相手ですと普通に会話が成立しますから、モモン様は自分がぬいぐるみになったと思って会話してください」

「そんなに?」

 

 ぬいぐるみレベルじゃないと練習にならない? そんなに?

 

「わ、分かりました。それでは僭越ながら、ぬいぐるみをさせて頂きます……うーん、今日は朝日が眩しいな。こんないい天気の日には、お散歩に出かけ──」

「お待ちください、モモン様。バルブロお兄様は、朝日を見ていい天気なんて言う方ではないと思います。もっと馬鹿みたいに喋ってください」

「そんなに?」

 

 内容はあれだけど、さっき普通に会話はしてたよ? ラナーちゃん視点のバルブロはそんなに?

 ラナーちゃんとリテイクすること数回。

 

「ぐへへ。この朝日の眩しさ、俺の覇道を見事に照らしておるわ! さぁて略奪に行くか、行くぜ野郎ども!」

「おー!」

「……ラナー殿下の中では、これがバルブロ殿下の正解図ですか」

「はい!」

「そんなに?」

 

 たしかにバルブロっぽいと言われたらそんな気もするけど、でも家族との会話がこれ? そんなに?

 バルブロをほんとにランポッサは処刑できるのか? みたいな不安があったが、それ以上にラナーちゃんとバルブロの会話が成立するのか不安になってきた。

 

(いけるか? 大丈夫か? 最悪パンドラを召喚するか?)

 

 一抹の不安を抱えながらも、俺はラナーを連れて玉座の間まで転移。ちょうどラナーの上二人が玉座の間から出ていくところだった。ちょっとラナーと話をし過ぎたようだ。

 

「遅かったなモモン。どうかしてたのか?」

「申し訳ありませんザナックお兄様。私が少しお花を摘んでいましたので」

「その間、私は護衛として雉を滅ぼしていました」

 

 とにもかくにも、ラナーとバルブロ最期の会話だ。

 

「お、おおー、ラナー! いいぞ、お前からも父上を説得するんだ。お前の偉大なる長兄は、このような場所で死んで良い相手ではないと。お前は言葉を話し始めてから、気味の悪いことしか話さぬ馬鹿だったが、それでも俺の崇高さは理解できるだろ? さ、すぐに父と話すんだ」

 

 俺の手を掴むラナーの手に力が入る。ごめんね、ラナーちゃんが正しかったね。5歳の妹との最期にする会話じゃねえわ、これ。

 

「バルブロお兄様……う、頭が。理解しようとすると、頭が割れるように痛い……」

「お部屋に戻りましょう、ラナー殿下。申し訳ございません、陛下。ラナー殿下はご気分が優れないようですので、お部屋まで案内してきます」

「う、うむ。任せたぞ、エモット公」

 

 流石に5歳の妹に父親を説得しろと言いだすとは思っていなかったのか、ランポッサも諦めたようだ。

 

「パンドラズ・アクター様とお話ししたいです。このままだと頭が……」

「<伝言>。パンドラ、殿下が御指名だ。今すぐヘルプに来てくれ」

 

 ラナーのことはパンドラに任せておく。一番相性がいいからな、あいつ。でも最近、ラナーがパンドラを真似て変なポーズをするようになっているのが困りものだ。この間なんて、二人揃ってフハハハハハしてたし。

 玉座の間に戻ったら、今度はザナックとバルブロが話をしていた。

 

「ザナック、お、お前からも父上に早まった真似をせぬように説得しろ! 俺が、俺が死んだら、お前が王になってしまうのだぞ! お前のような背も低く、太った馬鹿に王など務まらん! 王とは俺のような体格に優れ、全てに優れた傑物にこそ相応しい座だ! 愚かなお前にとて分かるだろ!?」

「……カリスマという点で、兄上に劣っている事は自覚している。父のような慈悲で他者を惹きつける人徳がないこともな。だがな、兄上。父は己が裁血王と呼ばれてでも、この時代に全てを清算することを決定した。この先の道を、モモンと共に切り拓いたんだ。なら、俺がそれに相応しいようになるさ……まずは瘦せたりとかな」

「お、お前!! 兄が、実の兄が死ぬかもしれないことを受け入れるつもりか!?」

「隙あらば俺を殺そうとしてたやつが、今更仲良し家族の仮面を被ろうとするなよ」

 

 うん、それはそうだ。ザナックが死ねば、自分の座は完璧だと思っていたのがバルブロだ。それなのに兄の死がどうのと言うのは筋が通らない。これ以上話す事もないのか、ザナックは自分の椅子に戻った。

 

「お前だ……お前さえいなければ……お前さえいなければ、俺たちヴァイセルフ家は家族で仲違いすることもなかった! お前が、モモン・エモット!! お前が父を狂わせ、俺を破滅に追いやろうとしている! 王になる俺を殺し、次はこの国か! この国を殺すのだな!! 俺は次期王として、お前のような悪しき魔法詠唱者を絶対に許しはせん!! 悪魔のてさきめ──」

 

 それ以上言葉を口にする前に、ランポッサが剣の鞘でバルブロの喉を突いた。えずきゴホゴホとバルブロの体が反射的に動き、言葉が中断される。

 

「……すまない、エモット公。最後の最後まで、我が愚息がそなたに斯様な言葉を吐きかけて」

「いえ、気にしておりませんので大丈夫です」

 

 ほんとに気にしてない。こいつがどんな言葉を吐きだそうが、この後の運命は決まっている。言いたいことがあるなら好きに言えばいい。これが今世で言葉を口にする、最期の機会なのだから。

 

「……バルブロよ。我が愛息よ。そなたに王としての使命と、王に相応しきあり方を教えてやれなんだこと。すまなかった……先に向こうで待っていてくれ。いずれは老い先短い私もそちらに行く」

「げほ……へぁ……待て。待て! 父よ、待ってくれ!! おれ、あ、いや私は反省した! これからは心を入れ替える! だから……ひぃ!!」

 

 ランポッサが剣を抜く。白銀に輝く、オリハルコンの剣。パンドラが作成したランポッサ用の剣には、肉を断ち骨を切りやすいように魔法がかけられている。きっと抵抗なく、バルブロの首を断ち切ってしまうことだろう……これまで斬首された貴族たちと同じように。

 

「だ、誰かぁ!! 父が、父が乱心なされた!? 誰でもよい!! 父を止めろぉ!!」

 

 後ろ手に縛られたままでもなんとか立ち上がって逃げようとしたので、足を払って転がし、髪を掴んで首を落としやすいように固定する。

 

「どうぞ、陛下」

「はぁ……はぁ……」

 

 バルブロの髪を離せという悲鳴の中に、ランポッサの乱れた呼吸音が混ざる。剣を持つ手は震えていた。ランポッサは目をきつく閉じ、何度も深呼吸をして気を落ち着けようとしている。恐怖とは違う感情。これから己が手で、家族を抹殺せねばならない。それはどれほどの苦痛を伴う決断なのだろうか。

 

「父上、お辛いようでしたら、俺が代わりに──」

「ならん! ……弟が兄を殺すなど、そんな残酷なことをさせんでくれ……」

「陛下。では私が代わりに、このままバルブロ殿下の首を落としましょうか?」

 

 髪を掴む手に力が入り、バルブロの頭蓋骨がミシミシと軋み始める。バルブロの悲鳴が一層強くなった。

 

「……いいや。これは私がやらねばならん。今まで、多くの命を奪ってきた。今更、家族だからと、手を止めるような真似は許されない……モモン。この剣に魔法をかけてくれ。蘇生魔法が使われても、バルブロが誰かの手で蘇らぬように」

「ち、父上ぇえええええ!!!」

 

 決断したのか、ランポッサが刀身を俺に差し出してくる。俺はその覚悟に、本当に心を動かされた。蘇生封じをすれば、本当の意味でバルブロは死亡する。

 

いいんですか?

頼む。私の決意が鈍らぬ内に、早く

 

 目で語ればこれ以上の言葉はいらない。俺は修正強化に五重最強化まで重ねた<真なる死>を、一時的に剣に付与する。これで切られて死ねば最期、蘇生はまず不可能になる。

 そんな必殺の剣が上段に構えられた。

 

「やめろぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

「願わくは、今日流れる血が、この王宮において流される……最後の血であることを私は願う!! さらばだ、我が息子よ!!!」

 

 ゴトン。地面に向かって重い物が落ちる。落ちたそれをランポッサは拾い上げ、自分の服が汚れるのも構わずに抱きしめていた。

 

「すまぬ……すまぬ………………」

「……行こう、モモン。今はそっとしておこう」

「はい……殿下」

 

 謝り続けるランポッサを残し、俺とザナックは玉座の間を出る。扉が閉まる直前、部屋の中を一緒に見た。国王ではなく、薄ぼけた背中をした父親。それが俺の抱いた印象だった。

 

 

 

 

 

 その後。遺体は代々王族が埋葬された地に眠った。ランポッサは以前と変わらない様子だったが、時折とある方向を見るようになった。その方向には、埋葬された人物が以前使っていた私室がある。そのことに俺は触れないようにした。誰にだって、触れてほしくない所はある。トブの大森林近くの草原に眠る地下墳墓とかな。

 ザナックは宣言通り、ダイエットを始めたようだ。俺と訓練したら痩せるかなと言ってきたので、一度カルネ村に行って、ツアレニーニャちゃんが受けるセバス武術訓練室を体験してもらった。

 

「モモン、あの爺さんの殺気とやらがやばいんだが?」

「実際に殺すわけじゃないので……大目に見てあげてください」

 

 それから、大多数の元貴族領地が空いてしまったので、それの後始末をすることに。大部分はいつも通り法国文官に任せたが、六大貴族の領地であるリットン伯の領と、ボウロロープ侯の領地であるリ・ボウロロールは流石に任せきれない。

 リットン伯の領地に関しては、一時的にザナックが管理することになった。これから王になるための勉強として、まずは領地経営から始めさせるそうだ。

 もう一つの巨大領地であるリ・ボウロロールについては、同じく巨大領地の運営経験があるという事で、パナソレイさんが担当することに。そうするとエ・ランテルが空く事になってしまうが、ここは王直轄領地でもかなりの重要拠点。法国と帝国に隣接し、王都から遠く離れた辺境の都市だ。

 よほど信頼できて、なおかつ周囲の誰もが納得するような大貴族にでもなければ任せられない要地。なおかつ仮想敵国の帝国や、王国に協力しているとは言え他国でしかない法国相手に堂々とやりあえるような人物でないといけない。

 

「つまりモモンが領主になるんだな。頑張れ公爵閣下」

「はい……お互い領地経営がんばりましょうね、ザナック殿下」

 

 俺だよ、ちくしょう。元々出身地であるカルネ村はエ・ランテル領に属するので、俺が管理するのが一番納まりがいい。法国も次の領主は俺ですと伝えたら、エ・ランテルに法国支部を作りますと喜んでいた。喜ぶのはいいけど、元の神殿勢力とは仲良くしてね? あと七万人の治療ありがとうございます。

 俺が病気バステやっちゃった人達については、リ・ボウロロール領など一部の民を除いて、全員そのままエ・ランテル領の民になってしまった。元々住んでいた領では相当の辛酸を舐めさせられていたのか、あまり帰りたくないらしい。

 仕方ないので家族がいる者についてはこちらに呼んでおいた。俺のゴーレム軍団と一緒に、新規で村を開拓してもらう。余ってる土地はたくさんあるからね。

 エ・ランテルの領主となってしまったので、カルネ村の住民は全員エ・ランテルに引っ越ししてもらった。村には七万人の一部に住んでもらう事に。

 

「ほーら。今日からここが俺たちの家だぞ、エンリ」

「わぁ! 凄く広い!!」

「だよなぁ……広すぎるよな」

 

 パナソレイが使っていた都市長宅が俺の新しい家になる。はっきり言って広すぎる。全然落ち着かない。

 

「おお! この小屋、それがしにぴったりのサイズでござるよ」

「そこ、ただの馬小屋だぞ?」

「馬と同じサイズのそれがしには、良い場所でござるよ!」

「まぁ、お前がそこで良いんならいいけどさ」

「も、モモン! 本当に……本当にここが私たちの新しい家なの!?」

「お前が公爵様になったというだけでもびっくりなのに、こんな大豪邸になんて……」

 

 分かる。でも、これでも公爵の住む邸宅としてはとても見劣りするらしいんだ。実際、六大貴族の邸宅とかこれより広くて豪華だし。ま、父さんも母さんも慣れてくれ。特に母さんはあまり驚いて体に負担をかけないでくれ、妊娠してるんだから。

 

 こうして俺の日常は一変した。貴族の大粛清にしても、殆ど終了済み。あと片づけていないのは、問題ないと判明している貴族ばかり。レエブン侯と彼の一派ぐらいだ。

 それからの日々は、とりあえずは冒険者組合や、薬品組合、魔術師組合を始めとしたエ・ランテルのお偉いさん達へのあいさつ回り。商人らとも言葉を交えたり。

 久しぶりに出会ったアインザックなどは、冒険者ではなくそっちに行ってしまったかと少し寂しそうだった。

 そうして少し落ち着いた頃。俺の下に一つの手紙が届いた。

 

 差出人の名は、帝国の大魔法詠唱者。帝国主席宮廷魔術師ことフールーダ・パラダインだった。




名前:モモン・シャーナ・ライル・エモット
種族:人間種
異名:周辺国家最強の魔法詠唱者・輪廻権現 他多数
役職:リ・エスティーゼ王国公爵兼エ・ランテル領主
住居:エ・ランテル領主宅
職業レベル
ワールド・リインカーネイター 1Lv
ワールド・ディザスター5Lv
モナーク1Lv
アコニティ5Lv
マスターオブスペル3Lv
エレメンタルマスター2Lv
他多数66Lv

12歳で本格的に働く事になるなんて前世みたいだとは本人談。でもあの頃よりは家族もいて友達もいるから精神的には楽な模様。レベルがえらい事になっているが、これは11歳時から更に修練したのと、100Lv6人討伐のせい。上限値は本来もっと低いが、ワールドアイテムモモンガ玉の影響で肉体がプレイヤー仕様に変化してる

モモンガ玉
複数の能力・最大稼働は生命力(レベル)喪失・竜特攻・見た目が赤い玉などから名前も決まっている(たぶん元ネタはあれ。伏字の名前が???三つで竜殺し(この場合は蛇殺しか?)が絡む逸話が付いていて見た目が赤い球体となるとあれ以外に無いような気がする)
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