モモンガさん、転生する 作:一人旅系亜種
父の命により、王国の都市エ・ランテルへと行くことになった俺は身支度を済ませて、護衛であるフールーダや近衛騎士と共に皇族用の馬車に乗っていた。
「爺、先ほどからそわそわと動いて一体どうしたのだ? 少しばかり大人しくはできないのか?」
「申し訳ございませぬ、殿下。人生で初めて、私を超えるやもしれぬ才と出会えるかもしれないのです。これで歓喜に体を震わせるなというのは、非常に難しいですな」
「魔法に捧げた生涯。200年の歳月か。俺には想像しか出来ぬ年月だが、爺にとっては長い時か。しかし本当なのか? 父から概要については耳にしているが、爺を超えるほどの才とは」
「殿下と1歳しか変わらぬ身で、転移を習得したほどの才。間違いなく十三英雄に匹敵するか、上回るほどの傑物。成長すれば、単独であの魔神達に伍するほどになるでしょうな」
「爺が魔法についてそれほど褒め称えるほどの天才か。俺の一個年上なようだが、これは話などすると面白いかもしれないな」
今回エ・ランテルに行く名目は、大粛清を終えた王国の立役者エモット公爵の新領主就任祝いだ。王国は帝国の仮想敵国だが、本当の意味で敵というわけではない。こうして訪れたとしても、そこまで問題はない。人類にとっての真なる敵は、帝国の東側にある都市国家連合のさらに東。人間なぞ餌としか思っていない亜人の連合国なのだから。
それでも王国が仮想敵国な理由は、帝国以上に腐敗政治をしていたから。あの膨大かつ肥沃な大地があれば、どれだけ強大な国家を成立させられるか……
(俺が次期皇帝となれば、祖父から繋げてきた国内平定の夢も叶う。国内を平定したら、王国は疲弊させ滅ぼし吸収するつもりだったが……難しくなったな)
このままでは帝国は土台から腐り、先に腐っていた王国の二の舞になる。それを危惧した俺の祖父は、数代掛けて国の統治を計画した。少しずつ皇室の権力が強くなるように各方面に働きかけ、貴族共の反発が強くなる前にいずれ強権を行使するための帝国騎士団を設立。
その襷は父に託され、さらに時間を掛けて中央に権力を集め、最終的には専制君主制へと切り替えられるように枠組みを整えていく。
多少の反発はフールーダの武力で睨みを利かせて黙らせた。あとは俺が成人すれば皇帝の座を引継ぎ、騎士団とフールーダを使い、腐った貴族共を時には武力、時には政争で排除する予定だった。
そんな大掃除が終われば、次は王国だ。脳の腐った馬鹿でも統括できるほど恵まれた大地。資源を食い潰すしか能のない馬鹿どもには勿体ない土地を手中に収めれば、帝国はさらなる発展を目指せる。
権力もなく、思い切った政策もこなせない王を抱く王国など敵ではない……そう思っていたが、どうやら事情は全く違ったようだ。
「エモット公爵は、ランポッサ三世の直轄領から出てきたんだったな?」
「そう聞いておりますな」
「もしかすると、王国は遥か以前から準備していたのかもしれんな。この時を狙って」
いきなり桁違いの才覚を持つ平民が現れて、それがランポッサに協力するというのもおかしな話だ。国内を単独で平定させるほどの力を持つ存在であれば、モモンとやらが王になればいい。逐一ランポッサにお伺いを立てるというのも不自然な話だ。
「エモット公はヴァイセルフ王家の遠縁……あれは家系図の捏造などではなく、真実かもしれんな」
「その心は?」
「王家も俺たちと同じで、改革の時を狙っていた。その戦力になり得る逸材を、王家筋の中から育てていたのではないか? エモット公の出身地であるカルネは、他の貴族から遠く離れたエ・ランテルの中でも、さらに辺境の村だ」
「……貴族の目が届かぬ場所で、王家の剣を鍛えたと?」
「あくまでも可能性だ。だがこれならば、エモットが王に忠誠を誓う理由にもなる。最初からエモット公家とヴァイセルフ王家は手を組んでいた。そこでようやく誕生した天才を、王家を通して法国に預ける。法国もリ・エスティーゼ王国王家の秘蔵っ子を扱うとなれば、最高の教育環境を整えるだろう」
「確かに、そう考えれば筋が通る部分は多くありますな。では法国はもっと早くから、王国と協力していた?」
「可能性はある。魔神戦争以前には、エ・ランテルは法国の都市だったなんて話があったな。エ・ランテルに属する村から、モモンなる人物は台頭してきた。これがお前には偶然に思えるか? 俺には必然に思えてならん。王家と法国は遥か以前より裏で協力関係にあった。そして法国であれば、王家を舐める貴族もさらに手出しはできない。そうして鍛え上げた剣……魔法詠唱者だから杖か? 当代最高の魔法詠唱者を使い、ランポッサ三世は国内を平定させた。タイミングも最高だ。あと数年すれば俺が皇帝になっていたからな」
ひょっとすれば狙っていたのだろうか? モモンは12歳だ。もっと時間をかけて鍛え上げた方が良いところを、それでも動かしたのはこちらの動きを読んでいたから? 俺が成人して帝国の統治を固めてから出兵する前に、自分たちの足元を固めようとしたのだろうか?
(だとすればランポッサ三世は侮れんな。日和見主義者を気取っていたのは見せかけの姿で、真の姿は裁血王ということか。自らの息子すらも処刑することで、この先誰が相手でも容赦はしないと周囲に知らしめている。そもそも最初に処刑されたのがブルムラシューなのも上手い。国内最大規模の貴族を処刑することで、牽制の楔を打ち込んでいるからな)
以前までは簡単に降せると侮っていた相手が、実はそうではなく牙と爪を隠した猛獣だったのだ。そんな侮れぬ国王の懐杖にして、フールーダが真の天才とまで呼ぶ魔法詠唱者のもとにこれから赴くのだ。
思わず口の中が乾いていく。さて……エモット公爵。どれほどの相手なのだろうか?
「俺の新刀が一発で!! うわああああああ!!!」
「ブレイン……すまん。まさか刀がそこまで脆いとは……」
新しい武技を披露するから、手合わせしてほしいというので修練施設に来てみれば、これが俺の新武技<領域>だとブレインが見せてくれた。
見せてくれたお礼に、俺も刃物破壊カウンター武技<鈴割り>を披露。<領域>からの居合一閃の刀身を、側面から叩いたら簡単にへし折れてしまった。
買ったばかりの刀が折れたことに嘆くこの男の名はブレイン・アングラウス。大公検地とか呼ばれてる俺の調査作業の時に、とある村でスカウトした男だ。年齢はガゼフより少し若く今年で24歳になる背の高い男性で、乱雑に切った髪をちょっと青っぽく染めているのが特徴的。
検地作業の時に英雄級になれる才能なのでスカウトしたら、俺より腕が劣るやつには仕えないと言われたので決闘。俺は素手以外には不慣れだったが、身体能力差に物を言わせて木剣でしこたま殴ったらスカウトに応じてくれた。
ブレインは魔法詠唱者に負けたのが悔しいらしく、今は俺に勝つのが目標なんだとか。
「それ見せてください。直すので」
「いけるのか!?」
「これぐらいなら普通に直せますよ。<魔法修正強化・修復>」
物体修復魔法を唱えると、刀は元通りになった。<修復>の魔法は直すときに物体の強度を下げてしまうデメリットがあるが、修正効果で元に戻す代わりに物体強度を上げるように変更してあるので問題ない。
「お、おお! ありがてえ!! 流石モモン様! 様々だぜ!!」
直った刀を握りしめて、ブレインは嬉しそうに笑っていた。うんうん良かったよかった。あの刀には血税が使われているのだから、壊れましたでは話にならない。
「おい、アングラウス。閣下を公的な場所で呼ぶときには、エモット公爵か公爵閣下と呼べと言っているだろ」
「よう、ガゼフ。その閣下ってやつは疲れねえか? モモン様の方が分かりやすいだろ。ちゃんと様もつけてるんだからな」
「お前というやつは全く……」
訓練場にはガゼフが姿を見せた。その後ろには、俺が雇っている20超え可能な三人もいる。どうやらガゼフが稽古をつけるみたいだ。
「申し訳ございません、閣下。アングラウスが無礼な態度を取ってしまい」
「ブレイン、ガゼフの言う通りですよ。公的な場所以外では許されているのですから、こうした場ではきちんとした呼称をするべきです」
「あんたあたしより年上なのに、そういうところが雑だよね、雑」
「俺たちでもできるようになったのにな」
ガゼフのあとに続けてブレインに呆れた反応をしているのは、エドストレーム、ペシュリアン、マルムヴィストの三名だ。
エドストレームは重税貴族領にいた10代の女性で、才能があったことからスカウト。重税に耐えかねて犯罪者になってでも生き延びるかどうかを悩んでいたところだったらしく、糞馬鹿貴族を抹殺した俺に恩義があるらしい。
ペシュリアンは元冒険者。ウルミと呼ばれる鞭のような長剣使いで、実入りの少なさからワーカーになるかどうか悩んでいたところをスカウト。食うに困らず、軍人としてまともな生活ができる今が気に入っていると聞いた。
マルムヴィストは元は俺の命を狙いにきた暗殺者だ。暗殺者と言っても俺の御命頂戴が初仕事だったらしく、事情を聞いたらちゃんとした生活がしたくて金欲しさに殺し屋になったらしい。才能上限が高かったことと、人殺しはまだしたことが無かったことから情状酌量の余地ありでスカウト。
三人とも鍛えたら英雄一歩手前まで伸びる才能なので、ちょっと期待している。
「では私は邸宅に戻ります。あとはガゼフに任せますね。三人を鍛えて、そこのブレインもビシバシ鍛えてあげてください」
「は! 承知いたしました! 必ずや閣下の御期待に応えてみせます」
「お願いしますね」
ガゼフはスカウトが早かったことからセバスの薫陶を受けており、既にオリハルコン級からアダマンタイト級相当にまで実力を伸ばしている。彼に任せて俺は訓練場を出て、転移で屋敷に戻る。
次の仕事は……アンティリーネの所か。なんでもトブの大森林に、何やら異常が起きているらしい。さっそく向かうか。
「ごめんね、モモン。呼び出したりしちゃって」
「問題ないよ、アンリ。それよりも異常事態……なんでも森の奥が枯れてるとは聞いたが、いったい何があったんだ?」
俺が事前に資料で貰っていたのは、森の一角が急激に枯れ始めたという話だけだ。トブの大森林は王国のかなりの面積を占める巨大な森林。ここで何かあると、ひいては王国への不利益になりかねない。
それに枯れ始めたのが最近なのも気になる。
「まさかプレイヤーか?」
ユグドラシルプレイヤーの可能性を俺は検討している。エリートプレイヤーの時には探しても見つからなかったが、隠れて潜伏していたプレイヤーが今になって出てきたのかもしれない。そう思っての質問だったが、アンティリーネは首を横に振った。
「神様じゃないと思う。事の発端は、リュラリュースの所に持ち込まれた案件でね。あいつの所の斥候が森が枯れてるのに気づいて、そのことで近くに住んでいるドライアードに相談された。場所を確認しに行ったリュラリュースは、自分の手に余ると判断して、私の所にこの案件が回ってきちゃった」
「あいつの手に余るなら、英雄級が必要な案件か」
「うん、そうみたい。現場まで案内するから、ついてきて。道中で詳しいことを説明するわ」
リュラリュースの所に案件を持ち込んだドライアードの名はピニスンというらしい。ピニスンが住む場所の近くには、ザイトルクワエとかいう強い魔樹が封印されていた。封印したのは大昔の竜王。ただ封印されても元が強いせいか、魔樹の触手などは動きまわり、周辺に被害を出していた。その触手自体は今からうんと前に、森の外から来た、桁違いの強さを持つ人間が倒してくれたらしい。
「桁違いの人間……八欲王かな?」
「分からないわ。私も、そのドライアードと直接話したわけではないから」
「それもそうか。それで触手は倒されてどうなったんだ?」
その人間は触手を倒した後ここを去っていった。暫くの間は大丈夫だったらしいが、最近生命力が戻ってきたのかザイトルクワエの触手が元気に地面から生えて動きだしてしまった。
この触手だけでも相当の脅威で、とてもじゃないが森にいる生物では太刀打ちできないらしい。リュラリュースも見て諦めたらしいので相当なものだ。
「そのドライアードは、前に倒してくれた人間を御所望らしいけれど、どこの誰かも分からないから探しようがない。私なら勝てるかもしれないけれど、相手は竜王と互角に戦った魔樹らしいから、万全を期したくてね」
「それで俺か。でも俺一人で大丈夫か? 必要ならセバスや、あの神様もこっちに呼ぶが」
「モモンで駄目なら、その魔樹は倒せないでしょ? モモンより強い相手なんて、この近辺にいないんだから」
それはどうだろうか。俺にたどり着ける強さは、凡人でも再現可能な強さに過ぎない。たどり着く場所はいつだって同じだ。俺の強さは二十まで含むワールドアイテムや、偶然が重なって出来上がった強さ。条件さえ揃えたらどうにかなるだろう。
ただこれを伝えても仕方ないので、俺は代わりの言葉を伝えておく。
「そうか……なら俺がどうにかするしかないな」
「私も頑張るけれど、モモンも頑張ってね……あ、そうだ。これ言い忘れてたね。婚約おめでとう、モモン」
「あれ? アンリはもうその件について知ってるのか?」
「知ってるよ。だいぶ前から神官長達にも聞いてたからね。クアイエッセの妹が、玉の輿どうたらってのは」
そうなんだ……俺だけ知らなかったんだ、その件。一番の当事者なのに。
「そのことについてはちょっと悔しいかな。一番は私が貰うつもりだったのに」
「それについては、なんかすまん」
「いいよ。私はハーフエルフで、成長がどうしても遅いからね」
……うん。実はアンリにもモモンの子供がどうたらーみたいな話はされてた。そのたびに俺は、俺自身まだ子供だからとか、そもそもアンティリーネが体自体はまだまだ子供だという理由でちょっと逃げてた。
「モモンが言うように、私の体が成熟するにはあと30年から50年は必要。母体の安全とかを考えるなら、体がちゃんと大人にならないといけないのは理屈で分かるから……今はクアイエッセの妹に譲るよ。その代わりに、50年後には私がモモンを貰うから」
「そ、その時はお手柔らかにお願いします」
まだ神官長らにも言っていない、俺の不老パッシブ。そのことについて、アンティリーネだけは知っている。知っているからそこまで焦っていないらしい。ハーフエルフの寿命は500年あって、老化が始まるのは寿命死する数年前だ。
まだまだ時間があるから、どこかで俺に抱かれたらいっかーみたいな感情なんだとか。長命種の思考は気長だなー。
走ること数時間。俺とアンティリーネは森が枯れている場所に出た。うむ、確かにめっちゃ枯れてる。木々や草花が一つもなく、一部は砂漠化しつつあった。
「あー! その目と耳! もしかしてあの時の人間の知り合い!! よ、よーやく来てくれたんだ! 良かったぁ……」
アンティリーネが見てみてモモン、この虫砂漠にしか生息してない珍しいやつだよとやっていたところに、俺たちの様子を窺うように木でできた女の子な見た目をしたドライアードが姿を見せた。
「リュラリュースから相談を受けて、魔樹の調査に来た者だが……お前がピニスンか?」
「リュラリュースってあの蛇のことかな? うん、そう。あたしはピニスン・ポール・ペルリア。そっかぁ、あの蛇、あたしの要望通りあの時の人間の仲間を連れてきてくれたんだ」
「あの時の? 話によれば、桁違いに強い人間が、ずっと昔にザイトルクワエなる魔樹の触手を倒したとは聞いているが……そのずっと昔というのは、どれぐらい昔のことなんだ?」
「ずっとはずっとだよ。太陽が何回も昇る前ぐらい」
「……時間の概念がないんだな。それがどれぐらい昔の話なのかは知らないが、私達はピニスンの言う人間でも、その人物の知り合いでもない」
「え! そうなの!?」
「数年前なら確実に俺が知っていなきゃおかしい。なら俺が生まれるより前。数十年以上前の話だろうな、お前の言う昔というのは。そうなると、残念ながらその人間は寿命死……待て。そういえばお前は、アンリを見て耳と目と言ったな。まさかお前の言う人間は、エルフなのか?」
寿命死していると言おうとしたが、エルフなら話は違う。仮に数百年前の話でも、エルフであればまだ存命の可能性がある。
「エルフ……というのは、そこの女の子のことだよね? そ、そうだよ! とても昔に、この森で住んでいた肌が褐色で耳の長い人間。その人たちに似た人間が来て、ザイトルクワエの触手を滅ぼしてくれたんだ!」
「肌が褐色のエルフとなると、ダークエルフか」
「ダークエルフがこの辺に住んでいたのは、法国が知る限りでは三百年から四百年前の話になるよ」
「それから後の話となると……まさか十三英雄か?」
二百年前に魔神と戦った英雄たち。あれの中にはたしかエルフも混ざっていたはずだ。それもある特徴を持つエルフが。
「ねえ、ピニスン。あなたが出会ったダークエルフは、ひょっとして私と同じ左右で違う目の色をしていた?」
「してたね。青と緑の不思議な目をした、君より背の大きい女性だよ。最初は無造作にザイトルクワエの触手に近づくからなんで自殺しにいくんだよー! って叫んだけれど、すぐに持っていた鞭で薙ぎ払って凄かったなぁー」
「……王の相を持つエルフ。法国によれば、エルフ王かもしれないなんて情報もあったが……」
「違ったようね。まぁ、あの馬鹿親父が人助けのために魔神と戦うとは思えないから、ありえない説として表向きの歴史書からは省かれたけど」
「しかしダークエルフで、鞭を使う王の相を持つ女性で桁違いの強さか……」
まさかな。あの弓があそこにあったんだ。ならば亡くなっているはず……しかし死亡したかどうかは、パンドラ達も知らない。殿で残り、その後の行方は不明。
(今、考えることではない。まずはザイトルクワエとやらをどうするかだ)
「ピニスン、ザイトルクワエの触手まで案内してくれないか。俺はその女性ほどではないかもしれないが、近隣諸国でかなりの強者ではある。触手だけであれば、なんとかなるかもしれない」
「え……でも、相手は世界を滅ぼす魔樹だよ? 君たちみたいな人間の子供が、どうにかできるわけないでしょ?」
「いいから案内しなさい。モモンが駄目なら、誰がやっても駄目よ。それに世界を滅ぼせるなら、何もしなくとも私達まで滅ぶじゃない。やってもやらなくても滅ぶなら、やって滅ぶ方がマシよ」
「それは……そうかもしれないけれど」
なんかピニスンはブツブツ言ってるが、対処しないと駄目なら対処するしかないのはその通りだ。
枯れ地の中心まで歩くと、確かに地面からなんか生えてた。高さ数百メートルはある6本の触手がうねうね動き、時折ビタンビタンと地面を叩いている。
「ほらー、あれがザイトルクワエだよ。ね? 触手ですらあんな大きいの、君たちじゃ無理だよ。だから、ほら、すぐに家に帰って、あの女性を探して連れてきて──」
「<魔法修正位階上昇最強化・上位転移>」
<透視>で見たら、地面の下になんかデカい魔樹が確かに眠っていた。そいつから触手は生えていて、意志あるように動いていたのだ。
地面ごと破壊すると周囲一帯を消し炭にかえてしまうので、俺は<上位転移>を修正使用。転移魔法は他人を飛ばすときは、相手の同意がないと使用できない。これはゲーム時代のバランス調整の一環で、そうしないとどこにでも敵を拉致できてしまう。それこそトラップルームなどに引きずり込まれたら最後、PVPでボコボコにされて死んでしまう。だから同意なしだと転移はさせられないようになっている。
俺はこの効果を無くして、同意がなくても転移可能に。ザイトルクワエは重すぎるので、位階の引き上げと最強化までした上で強制転移。
持っていくのは宇宙空間。俺も一緒に転移してるので宇宙線とか、極寒とか、真空とか諸々の要素が迫ってくるが、アンデッドにとって宇宙のような死の世界は何の支障にもならない。役に立つなー、モモンガパワーはこういう時に。
(……植物だから酸素が必要で、大気系攻撃に対する耐性がないのかこいつ?)
俺はなんともないが、ザイトルクワエは俺から離れた場所で触手を振って暴れまくっていた。HPを確認したら、みるみるうちに削られていく。
うーん、90レベルのレイドボス並の体力はあったようだが、それが何の役にも立っていない。酸欠ダメージと冷気ダメージと毒ダメージにすごく苦しんでいる。
眺めていたらどんどん動きが鈍くなり、とうとう暴れなくなった。HPは0。よし、討伐完了。これ、対プレイヤー用に考えていた確殺攻撃の一つだが、結構役に立ちそうだな。似たような技に、<転移門>の距離無制限を利用した、炎耐性を積んでない相手を焼き殺す太陽門フレアランスなんてのもある。もっとも大気系攻撃への完全耐性が無ければ、酸欠バステで即死するからそれもいらない気がするが。植物モンスターはちょっと事情が違ったみたいだけれども。
ザイトルクワエの死体は木材なので使い道が多い。かといって、このまま持って帰ると地上では邪魔になる。大きすぎて。
仕方ないので月まで転移し、ちょうどいいサイズのクレーターに入れて固定しておく。必要になったら取りにくればいいからな。
「ただいま」
「おかえり。ザイトルクワエは倒した?」
「倒してきたぞ」
「強かった?」
「分からん。眺めてたら死んだから」
「……え?」
なんだピニスン、その顔は。倒してほしいというから倒したのに、呆けた顔をして……あ、うるさ。呆けた顔から一転、ピニスンがうそだぁあああとか叫びだした。
そんなドライアードは、うるさい静かにしてとアンティリーネにワンパンで黙らされていた。
そういえば六腕とか八本指どうなったの? について。今回六腕になるはずだったメンバー三人出したので残りの三人補足説明
ゼロ(存命)
八本指の警備部門の一員
デイバーノック(死亡)
街道で強盗殺人→監査中のモモンが噂を聞き、アンティリーネとペストーニャを派遣
サキュロント(行方不明)
王宮筆頭魔導師暗殺を依頼され、狙うならまずは家族からだとカルネ村に向かった後消息不明