モモンガさん、転生する   作:一人旅系亜種

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ザナック&モモン

 パンドラとアウラの再会から一ヶ月。俺もエンリに続いて誕生日を迎え、ようやく13歳になった。法国では予定通り祝日に祭りが執り行われ、一部を除いた民はなぜこんな日にスルシャーナ様を祝う祭りを? と疑問に思いながらも楽しみ、輪廻権現を知る者はエ・ランテルとカルネ村に向かって一分一回のペースで礼をし続けた。

 

(一分に一回? え? それ一日に何回したの? 流石に一日中じゃないよね?)

 

 俺は怖くて聞けなかった。もし聞いて、実は1秒1回とか言われたらどうしようも無くなる。それで頑張って24時間やり遂げましたとかとんでも情報が出てきたら、お祭りの間に礼拝を86400回したことになる。あまりにも恐怖な情報だ。

 法国がお祭りをしている間俺はと言うと、王都で誕生日を祝ってもらっていた。

 

「良く集まってくれた皆の衆。我が王国を立て直した、最大の功労者。モモンが生を授かってから13年……我が杖にして、王国の英雄『魔導元帥』の始まりの日を、皆と共に祝えることを、私は大変嬉しく思う」

 

 王様が祝うほど? と思うのだが、魔導元帥とは王国正規軍の長にして国内最大の貴族にして最大の戦力。対外的にも、特別な存在であることを示さないといけない立場なのだとか。

 

「そしてもう一つ、私はこの場で皆に報告しておきたいことがある。つい先日、モモンと法国の有力者の間で、契りが結ばれることが確約された。これを受け、王国と法国の間に正式な同盟関係を結ぶことを考えているが……皆の意見も聞いておきたい。反対意見などはあるか?」

「ありませぬ、我が愛しき君よ。御身こそがこの国の法であり決定者です」

 

 クレマンティーヌと俺が結婚するのを機に、法国と王国の間で正式な同盟を結ぶ。これはまるでランポッサが考えたかのように言っているが、実際には法国からの申し出だ。今までの王国にはもはや期待もしていなかった法国だが、俺とランポッサで国内の膿をあらかた駆逐したことで状況が改善。

 今の王国とであれば、人類圏を守護する共同体として手を取り合いたい。とここまでは良かったのだが、法国から提出されかけた内容は、殆ど従属国になりますよぐらいの内容。輪廻権現様の成すままに! とか書いてあったので、俺とパンドラで慌てて訂正させたぐらいだ。

 

「よう、モモン。会うのは三ヶ月ぶりだが、元気にしていたか?」

「お久しぶりです、ザナック殿下。殿下は……痩せましたね」

 

 ザナックはリットン伯領の領主になり、俺はエ・ランテル領の領主になった。転移魔法があるので会おうと思えばいつでも会えるが、お互いに忙しいのでザナックが言うとおりこうして顔を合わせるのは三ヶ月ぶりだ。

 そんな久しぶりのザナックはと言うと、めっちゃ痩せてた。元々三ヶ月前の時点でかなり痩せてはいたのだが、更にほっそりとした体型になっている。顎と頬にたっぷりと乗っていた肉はどこかに行き、突き出ていた腹の肉は幻の如く消え去っていた。

 

「領主というのは思った以上に激務だな。寝る暇もなく、俺の心身を削ぎ落としてくるよ。そちらも忙しいんじゃないか? ちゃんと寝てちゃんと食べてないと、体も成長しないぞ。モモンは特に成長期なんだからな……と言いたいが、随分と身長も伸びたな、お前は」

 

 はい、おかげ様でめっちゃ伸びました。パンドラ作製の無駄に美味くて栄養バランスが完璧な食をしっかり摂取し、<時間停止>を使ってちゃんと8時間睡眠して、体も訓練で動かす事でホルモンなどをバンバン出しているおかげか一気に伸びました。

 この間セバスに計ってもらったところ、現時点で165ある。このペースで伸び続けるなら、190ぐらいまでは行くはずですとはパンドラの計算。前世が177だから、前世より13は高い。

 

「……リットン伯領は問題が多いのですか?」

「多い。俺が領地経営に不慣れなところもあるが、それ以上にリットンのやつがな……六大貴族の中でも、あいつは他の五家より格が低かった。その分、資産なども見劣りする。その状況で六大と呼ばれても、リットンとしては不服だったんだろうな。領民に対して、そこそこの圧政を強いていたようだ」

 

 他の税率100%みたいなカスに比べたら遥かにマシだが、それでもリットン伯領はそこそこの重税だった。そのせいで領民の貴族や王族に対する不信感はそこそこあり、新たな領主となったザナックに対しても、疑いの目が向いてしまっている。

 

「それに帳簿もな……リットン家の家格を良く見せるためか、かなり金もばら撒いていた。あいつの資産が予想よりだいぶ低かったのが、かなり手痛い。痛いが……この程度立て直せないようであれば、俺に国を預かる資格などないんだろうよ」

「……良い顔をされるようになりましたね、殿下。初めて王宮で会った時など、不貞腐れたような顔をされていたのに、今ではすっきりとした顔になられて」

「初めてってかなり前の話だろ? あれが中土月くらいの頃だから、もう1年半は前の話か。あの頃は、俺は兄上対策に演技をするしかなかったからな。今とは、それは違うだろ。それにすっきりと言うなら、そりゃそうだ。なにせ体重が、軽装鎧ぐらいは落ちたからな」

 

 にやりと笑いながら、ザナックはどうだ、頑張っただろみたいに誇らしげだ。半年かそこらで30kgぐらい落としたからな。今のザナックをバルブロが見たら、ザナックだとは認識出来ないだろう。

 改めてザナックの顔を見ると、かなり凛々しい顔つきをしている。俺の知り合いで近い顔となると、クアイエッセさんだろうか?

 

(ジェネリック・クアイエッセ……)

 

 クレマンティーヌのお兄さんと言う事もあり、クアイエッセはかなりのイケメンだ。ザナックは割とあの人に近い顔つきになっている。

 

(でもラナーのお兄さんなんだからそんなもんなのか? ラナーとは母親が違うらしいが、半分は同じ父親であるランポッサさんの血だ。だから痩せたら、普通にイケメンになるのか……なんとも羨ましい)

 

 なぜ俺の周りの上流階級は、大体イケメンなのだろうか? ジルクニフといい、これが血の成せる技なのか。俺がじっと見ていると、どうしたんだよとザナックが聞いてきた。

 

「貴族はなぜ面が良いのかか。俺は自分ではそうでもないと思っているが、そうか。ラナーが間違いなく美人になる顔だから、それと同じ血が入ってる俺も他人から見たらそこそこまともな面になるのか」

「今は亡きバルブロ殿下も、髭を剃って髪型を整えていたら体格と相まって普通に良い顔でしたからね」

「まぁ、あの体格は少し羨ましかったな。それにしても良い顔ねぇ? 王家にしろ貴族にしろ、美人を嫁に出来るから、子供もまた容姿に優れた存在になりやすいからな」

「ああ……確かに言われてみれば」

 

 貴族の始まりは金持ちや地域の権力者だ。その立場であれば、可愛い子を自分の嫁にしようと思えばできる。そんな血統の生まれなのだから、必然毛並みの良い馬も生まれやすいという事か。

 

「今の殿下であれば、かなりの美人を捕まえられそうですね」

「前の俺では無理だと? ……ま、醜く見えるようにしていたからな。変に身だしなみに気を使うと、兄上にあいつまさか……なんて思われる可能性があったから。それに美人云々と言うならば、モモンの方がそうではないか? お前の婚約者は、あそこにいる令嬢だろ?」

 

 ザナックが指さす方には、今回のパーティについてきたクレマンティーヌがいる。話し相手はラナーか。何を話しているんだろうな。

 

「それにお前の婚約者となれば、他にもかなり候補がいるだろ」

「まさか……私は今は公爵の位を頂いていますが、前まではただの平民ですよ。そんな何人も婚約者だなんて」

「いやいや。うちからも、ラナーがお前に嫁ぐのは決定しているからな」

「はは、そうなんですか………………ホワイ?」

 

 なんで? どうして?

 

「なんだ、もしかしてこの話を聞くのは初めてなのか?」

「……はい」

「そうか。まだ正式に決まったわけではないから、父もお前にはまだ話してないんだな」

「その……ラナー様は、まだ6歳になったばかりですよね? そのお相手が、私というのは一体……」

「6歳で許嫁なんて、貴族社会なら珍しい事でもないぞ? なんなら、生まれる前からお家の事情で相手が決まっている、なんてのも普通だからな。ラナーの上二人も、婚約相手が決まったのは4歳や8歳の時だと聞いている」

 

 そ、そうなのか……貴族社会だと、政略結婚が普通だからそうなるのか……

 

「しかし私に嫁ぐとなると、問題は……ないんですね」

「そりゃな。モモンはこの国最大の大貴族である公爵家。立場から言えば、大公と言っても差し支えない。王族の娘の相手として、これ以上の家格はないだろ」

「それは……そうかもしれませんが」

「ついこの間まで、平民家庭で育ったのがモモンだものな。妻が複数いるというのも、あまり慣れないか?」

「ええ……クレマンティーヌですら、私のような輩には勿体ないと思えるほどの女性です。そこに王族から妻を貰い受けるとなると、畏れ多くて……」

「この国どころか周辺国家でも最強の名をほしいままにする、我が国が誇る魔導元帥の言葉とは思えんな。望めば全てを手に出来るだろうに……そんなモモンだからこそ、父上も信頼したか。ま、あれだ。上流階級として生きる以上は、結婚による繋がりも必要になってくる。法国から一人出ている以上は、王国からも一人は絶対に必要だ。その内正式に父から話が行くと思うので、甘んじて受け入れてくれ」

「……はい」

 

 むぅ……しかし、この場合正妻はどっちになるんだ? 家の格だけで言えばラナーになるのだろうが、クレマンティーヌはクレマンティーヌで、法国の期待を一身に背負って嫁入りする立場。ある意味、クレマンティーヌとは法国そのものと言っても過言ではない。

 

「そう言えばなんですが、ラナー殿下はその話に納得されるのでしょうか?」

「するんじゃないか? あいつ今日話したら、お前とパンドラ殿についてはかなり気に入ってるみたいだからな。下手な阿呆の所に嫁入りするよりかは、モモンと結ばれる方が喜ぶだろ」

「投げやりだなぁ……」

 

 でもそうか。ラナーはパンドラをかなり気に入っている……どころか、心の師匠みたいな立場として捉えている。二人して、一緒に尖塔の上でマントを翻して遊んだりしているらしいし……いや、考えてみたら何してんだあいつら。

 

(なんかドイツ語も伝染してるらしいんだよな)

 

 ラナーがどんどんジェネリックパンドラと化していってる。このまま放置していたら、彼女はどんな子に育ってしまうのだろうか……というのはさておき、俺と結婚するという事は、師であるパンドラと一緒にいられる時間も増えるという事。

 

(そうなると、俺の所に嫁入りするのはラナーとしては悪い話ではないのか?)

 

 どっちにしろ、上流で暮らすならそれなりの何かが要求されるのは自然なことだ。クレマンティーヌはどう思うのだろうか? これは聞いておかないといけない事項だな。

 

「そういう殿下はどうなんですか? 殿下も今年で18。結婚を考えてもおかしくはない年齢ではないでしょうか?」

「俺か……一応、打診が来ている相手はいるんだ」

「そうなんですか? 殿下のお相手となると……ルイセフさん?」

「ラナーの侍女か。辺境伯の娘だから、家格としては申し分ないが、なんかあいつとは性格が合わん気がする」

 

 まぁ、ツンデレ少女とザナックが馬が合うかと言われたら、確かに違うな。ザナック相手だと、もっと素直な性格の女性の方がたぶん性に合う。

 

「ではどこの御令嬢で?」

「……ここだけの話になるがな。ベサーレス王家だ」

「ああ。聖王国の天才聖女カルカ・ベサーレス」

 

 今年で15になる少女で、その歳で第四位階の信仰系魔法を修めたとまで言われている。その天才っぷりと美貌から、聖女として親しまれているとは聞いている。

 

「向こうは確か、南と北で政争に近い状態で、国内情勢が不安定……なるほど、向こうの狙いは、ザナック殿下とベサーレス王家の間で婚姻を結び、私の力を背景に国内情勢を安定させようという事ですか」

「恐らくな。王国腐敗を是正したのは、モモンの力が9割以上だ。父上から俺に代替わりすれば、モモンは俺の配下という事になる。当然、その力を狙う勢力は出てくるな……」

「しかしそれなら殿下ではなく、私に直接婚姻の話が来るのでは?」

「父上の母方とは言え、平民生まれに嫁がせるとなると、聖王国内で揉めるぞ」

「ああ……血の正当性という奴ですか」

 

 じっとザナックが俺を見てくる。やだなぁ、めんどくさそう。

 

「ご安心ください殿下。私は陛下に忠誠を誓い、次代の王である殿下にも忠誠を誓った身。どのようなことがあれ、他の勢力に鞍替えなど致しません……ですので、どのような話が来ても、殿下を御通しするように打診するつもりです」

「それ、お前が単純に相手をしたくないから、俺に振ってるだけだよな? ……これ以上、モモンの仕事が増えるのもまずいか。その時は俺を通せと言っておいてくれ。そのぐらいの雑事をこなせないようであれば、モモンの力を使う資格もない」

 

 やったー! 俺の仕事が一つ消えた! ザナック殿下ありがとー!

 

「えらい嬉しそうだな。それだけ仕事が終わらんか?」

「はい!」

「……領主に王国戦士団の団長だものな。モモンに仕事が一極集中してるのはまずいから、早く文官と武官が育たんものか」

「流石に難しいですね。完全に形になるのに、あと最低でも5年はいりますよ」

「……ちょうど、俺が王位を継ぐ頃か。それまでに、俺も領主修行で帝王学を完全に学ばねばならんな」

 

 やれやれと頭を掻くザナックを見て、一緒に頑張りましょうとエールを送る。ザナックの頑張りが、俺のクオリティ・オブ・ライフに繋がるのだ。ザナックが頑張る=で俺の仕事が減る=人生が充実する。これ以上俺の仕事が増えてしまったら、俺は過労死してアンデッドになってしまう。

 

(俺がアンデッドになったら、どうなるんだろ? いきなりオーバーロードからスタート? それとも別のアンデッドモンスター?)

 

 ちょっと興味はあるが、試す気にはなれない。その後、会場中の貴族と話をしたりして、俺の誕生パーティはつつがなく終了した。

 家に帰って暫くしたら、帝国から色んな贈り物が届いた。前に皇帝が贈ると言っていた、フールーダの件に対する返礼も兼ねた誕生日プレゼントだ。へー、なんか色々とあるな。お、この杖性能は弱いけど、見た目は格好いいな。棚にかざっとこ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『奇蹟』は起こる、何度でも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を瞑れば、今でも思い起こせる。続くと思っていた、あの懐かしい日々を。

 変わらないいつもの日常。仕事をこなし、不変の日々を過ごすだけ。下風月にはツアレニーニャの誕生日を祝ったり、上火月にはラナーの誕生日をしたり。騒がしくも、何一つ変わらない日常。ちょっとずつだが俺の仕事も少なくなり、<時間停止>ブラック労働をする時間も減っていく。

 時折帝国を訪ねては、ちょっとうるさいお爺さんと魔法談義をする。法国から学んだ魔法技術のおかげで、そこそこ話は通じるのだ。とは言え、根本的な知識量は向こうの方が上。ボロが出ないように切り上げたりして誤魔化しつつ、向こうの魔法知識だけパクったりと俺は頑張っていた。

 中火月にツアーとちょっと揉めたりもしたが、向こうの誤解であると分かってもらえて、戦いになることもなく穏やかに時間は過ぎていった。

 そして……その日からの出来事は、俺の中で忘れられない日々の一つに……忘れてはいけない日々の一つになった。

 季節は下火月。その日の仕事を終えた俺は、帝国に足を向けた。フールーダの御爺さんと話をするためだ。

 

「あれ? フールーダさんいないな」

 

 いつもであれば、俺が来るとなれば自室でフールーダは魔法の研究をしながら待機している。なのに、その日は自室にいなかった。

 

「<伝言>。フールーダ殿……フールーダ殿?」

 

 おかしい。繋がらない……修正強化した<伝言>を使うが、全くうんともすんとも言わない。一体なぜだ?

 

「<伝言>。ジルクニフ……あ、繋がった」

 

 こちらは大丈夫だった。もしかしたら、フールーダはジルクニフと一緒にいるかもしれないと思い、俺は次期皇帝に繋げたのだ。

 

『ジルクニフ殿下ですか? 今フールーダ殿を探しているのですが、どちらにおられ──』

『も……も……たすけ……て……』

『ジルクニフ!? どうしたんだ!?』

 

 弱弱しい声に、たすけて。明らかに異常な何かが起きている。今は誰も……見ていない。よし。

 

「■」

 

 俺はありったけのバフを『無』で圧縮詠唱し、次にジルクニフの居場所を探す。<伝言>の修正で探知能力を追加して……いた。皇城の一室。たしか皇帝の居室だ。

 俺は飛ぶ前に周囲の様子も確認して……くそ。そういう事か。すぐに<転移>して、ジルクニフの容態を確認する。この傷ならいける。<上位魔法封印>に常時セットしてあるペストーニャの<大治癒(ヒール)>を修正強化して、これでどうだ。

 

「モモン……俺は……」

「大丈夫だ。傷は塞がっている」

 

 俺はジルクニフの右肺を確認する。つい先ほどまで、大穴の空いていた右の肺をだ。

 

「俺は……もう大丈夫だ。父と……フールーダを……」

「分かっています」

 

 俺はジルクニフの容態が安定したのを確認してから、皇帝とフールーダの方に向かう……異常に損壊したフールーダと皇帝に。

 

(即死だ。二人とも原型を留めていない)

 

 二人とも、首から上がない。部屋中に飛び散った、肉片のどれかが元は顔だろう。両手足とも胴体から引き千切られていて、お腹など内部からはじけ飛んだかのように破壊されている。俺はこの壊し方を見て、すぐに蘇生に対する対策だと感じた。完全に肉体を破壊することで、低位階の蘇生を封じる措置だと。

 俺は蘇生しようとして、すぐに思い留まる。明らかな蘇生対策が施された死体。直感した……これは罠だ。罠が仕掛けられている。<魔法探知>で死体を探り、理由が分かった。死体損壊だけでなく、この遺体には蘇生封じが掛けられている。一定時間は蘇生を阻害する魔法が。こうなると今すぐに蘇生させてはいけない。そして……この考えは正しかった。気配察知が、外に人が集まるのを感じとる。状況がまずい。この状況は……ジルクニフを掴んで、誰かが部屋に入ってくる前に一緒に<転移>で外に脱出する。

 

「ここ……は?」

「帝都アーウィンタールの外です」

「……転移か? なぜ転移で脱出を……」

 

 気が動転しているのか、ジルクニフは困惑の目で俺を見つめるだけだ。俺はその混乱に答える前に、帝都の方に目を向ける。

 

「……蘇生封じの魔法は、通常の位階魔法ではない」

 

 課金アイテムが必要だ。それもけっこうな高レアで、当たりにくい部類の。

 

「そうか……おでんだけではないと思っていたよ」

 

 パンドラと共に、おでんが転移した時間をきっちり調べたことで、今回の百年の揺り返しが少し違うことは分かっていた。おでんが最後じゃない、あれが最初かもしれないと。もしかしたら、百年の揺り返しは全部で11回あるかもしれない。そんなとんでも仮説を、パンドラが語ってくれた。

 

「あれは仮説じゃなかった……起きていたんだな。2回目の揺り返しが……」




63話のウロボロスまで一気読み推奨
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