モモンガさん、転生する   作:一人旅系亜種

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ツアー&モモン&ジルクニフ

 私は手伝う気はないよ、か。いや、待てよおい。お前俺の所に、ワールドアイテムを使っただろで乗り込むぐらい、プレイヤーやユグドラシルのことが嫌いなんだよな? それを断るってどういう了見だ。

 

「……おかしいな。前に話した時には、相手が邪神であれば協力する。それがツァインドルクス、お前の言葉だったな。それにまだ悪行を成していないか……お前の中では、帝国の重鎮二人が殺されたことは、決して悪ではないと?」

「人間社会では悪なのかな?」

「悪だな」

「ではモモン。君も悪になるのではないか? 王国で国王と共に、多くの命を摘んだ君が、命を奪う事を悪と宣言するならば、私はまず、君から断罪しなければならない。違うかな?」

 

 なーるほど。確かにその理屈であればそうかもしれないな。

 

「だから静観すると?」

「そうだ。現状では、皇帝を暗殺した犯人は、まだ人間を二人殺しただけ。そうだね?」

「……そうなるな」

「それだけであれば、私は悪とは断じきれない。先ほどの君たちの話であれば、あくまでも人間同士の権力闘争の結果によるものだ。そこに私が介入することは、望ましくはないだろう。なにせ私は、評議国の永久議員だ。内政干渉は好ましくない」

「そうして静観した結果、より大きな邪悪を成したら?」

「その時には悪だと認定しよう。そうだね……そのプレイヤーが、帝国の住民の皆殺しを決定したら私も動こうかな」

 

 ……おかしい。こいつはワールドアイテムを使ったかもしれない。それだけで乗り込んできたのだ。なのにここまで静観を決め込もうとするのか?

 

「ツァインドルクス。少し前に、お前はワールドアイテムが使われたかもしれないと言ってたな。皇帝暗殺犯が、その相手かもしれない。それでもか?」

「……ふむ。そうであれば動く理由にはなるが……いや、やはり動くのはまずいね。私にも立場がある以上は、どうしても動く理由は相応のものが求められる」

「……それを父が殺された子の前で言うのか?」

「それについては申し訳ない。言葉を飾るのが少し苦手でね。気分を悪くしたなら謝ろうか……すまない、ジルクニフ。ここにいる私は鎧だが、本体はドラゴンでね。人間社会には少し疎いんだ」

「……はは……」

 

 全く悪びれた様子のない言葉に、ジルクニフは乾いた笑いを漏らした。俺はその様子を見て、ワールドアイテムを使われたかもしれないと聞いたうえでも、静観を選んだツァインドルクスに疑いの目を向ける。

 こいつ……まさか……

 気になった俺は、パンドラに目配せをしてみた。その意図を読み取ってくれたのか、パンドラは少しだけ頷いてくれた。やはりか。

 

(こいつ! ツァインドルクス! 既にその推定プレイヤーと接触しやがったな!!)

 

 それなら納得もいく。こいつがブチギレて乗り込んできたのが一カ月前だ。俺はワールドアイテムの使用と言われても、その波動を感じ取れないので少し優先度を下げていた。しかしこの竜は違う。こいつにとっては、500年前に世界法則を書き換えたワールドアイテム級の何か。最優先で探そうとしたはずだ。

 こいつには始原の魔法(ワイルド・マジック)があるから、相手が探知阻害などの装備をしていても、本気で集中すれば見つけられる可能性がある。そして探し出して、接触をした。その結果、こいつは相手が邪悪ではないと判断して手を引いた。

 

(……あくまでも俺とパンドラの考えに過ぎないが、ほんとうにこいつ……)

 

 あまりにも信用できない。そもそもこいつは、ユグドラシルの関係者であれば勝手に潰し合いをしてほしいと願っているような奴だ。ならば静観を決め込み、俺とその推定プレイヤーが潰し合うことを望んでいてもおかしくない。

 

「ん? どうしたのかな?」

「いや、なんでもない……ツァインドルクス。お前は、現状では動くつもりがない。それが答えで良いんだな?」

「それでいい。むろん、モモン。君が調査した上で、件の人物が種族の殲滅などを目論んでいるような相手であれば、いつでも助けを求めてくれ。私は必ず救援に向かうよ」

「……それは助かるよ」

 

 あまりにも心の籠っていない言葉に、俺も空虚な言葉で返す。別に仲良しこよしにしたいわけではないが、この竜の信用と信頼できなさに呆れ顔になりそうだ。

 

(前世のリアルでもいたなぁ。めっちゃ笑顔で良い言葉だけ並べて、実態は何もしない営業マン。あいつら嫌いだったわ)

 

 伝えたい事は伝えたのか、ツァインドルクスは再び転移で戻っていった。パンドラ、塩撒いておいてくれ。

 

「モモン、お前は何をしているんだ? そんな塩なんて投げつけて」

「気にしないで下さい殿下。ちょっと譲れないことなんです」

「そ、そうか……ともかく、父とフールーダを殺害した誰かは、もしかしたら皇族に協力しているかもしれない。そういうことで良いのだろうか?」

「今はその考えで良いと思います。それと、この場にいつまでもジルクニフ様がおられるのは、あまり宜しくはありませんね」

「……皇城では、今頃死体が見つかり大騒ぎだろうからな。そこで城にいないとなると、俺に疑いの目が向けられるか」

「ではジルクニフ殿下。一旦皇城に戻りましょう」

「……モモンが傍にいてくれるか?」

「勿論です。どちらにしろ、<転移>やその他の魔法が使用可能な私は、暗殺容疑の最大候補。ここでじっとしていても、いつかは疑いの目が向けられる。それならば、殿下と共にもう一度皇城に行き、犯人を捜す方が先決です」

「そうか。それなら助かるよ」

 

 俺はジルクニフを連れて、<転移>で皇城の一室に赴く。二人で部屋から出て、中庭に向かう。途中で廊下の端を、近衛兵が大慌てで駆け抜けていくのが見えた。

 

「皆、殺気立っているな」

「帝国最大権力者の皇帝と、最大の英雄である主席宮廷魔術師の暗殺ですからね。国始まって以来の、大不祥事ですよ」

「……あの様子を見る限り、俺の目に焼き付いた光景は、決して幻などではないのだな。あのような肉塊に、じいと父上が……」

「殿下……今は気を確かに持ってください。殿下はまだ、あの現場を見ていないことになっている。下手に動揺すれば、疑われかねません」

「そうだな。その通りだ……行こうか。まずは近衛などに状況を聞き、初めてそれを知ったように見せかけなくては」

 

 ジルクニフが歩く後ろを俺も付いていく。途中で近衛の一人に会ったので、何があったのかをジルクニフが問いかけた。近衛は俺を見て、少しだけ離れるように言葉を投げる。まぁ、これから話す言葉を、皇族以外には聞かせられんわな。

 

「……落ち着いてきいてください、殿下……皇帝陛下と主席宮廷魔術師殿が暗殺されました」

「な………………なん、だと……」

 

 俺は<兎の耳>を修正強化して発動し、一応内容を聞いておく。めっちゃジルクニフが動揺した振りをしていて、俺は演技が上手いものだと感じ入る。

 

「な、なぜ! なぜ父とフールーダが!!」

「分かりません。現在、皇城は厳戒態勢に入っております。そちらにおられる、エモット公爵もあまり長居されるとまずいやもしれません」

「そう、か……あい分かった。報告感謝する……エモット公爵。こちらに来てくれないか」

 

 近衛と別れた後、誰も聞いていない事を確認してから、ジルクニフは俺に言葉を投げかけてきた。

 

「どうやら、今のところ犯人だとは思われていないようだな」

「のようですね。とは言え、いつまでも皇城にいれば、殿下はまだしも私は疑われる。手っ取り早く済ませるのが良さそうですね」

「ああ」

 

 俺は探査魔法を気取られないように修正し、常時発動して皇城内を歩く。まだいるのか? それとも離れたのか? まだいるとすれば、怪しい人物がいないか。そうして歩いていると、妙な反応が一つあった。

 

(……探知阻害装備を持っている?)

 

 修正強化しているからこそ気づいた。とある場所に、ちょうど人一人分ぐらいの空洞が出来ているのだ。この反応は、探査魔法などを潜り抜けるための何かを持っている時の反応だ。

 

「殿下。少し気になることがあります。そちらに向かってみても構いませんか?」

「……見つけたのか?」

「もしかしたら……ですが」

 

 俺はジルクニフと共に、その場所を目指す。そこは中庭だ。中庭にはベンチがあり、そこには男性が二人座っていた。

 

「あれは?」

「一人は私の兄、長男だな。もう一人は……分からん」

 

 長男……となると、レオンか。そちらは俺も名前は聞いた事があるが、もう片方の糸目をした男性は誰だ? 妙な反応はそいつからしている。そうなると……この糸目がプレイヤー?

 

「ん? おお、ジルか。こんな場所にどうしたんだ?」

「それは俺の台詞ですよ、兄上。じいと父上のことは聞きましたか?」

「? 何の話だ?」

 

 というので、重要人物2名が殺害されたことを伝えたところ、向こうはおおいに驚いていた。俺はその反応に、嘘を感じ取れない。何も直感などではなく、魔法に反応がないのだ。

 

(つまり、長男は皇帝暗殺のことを本当に知らなかった?)

 

 魔法を誤魔化す何かを使っている可能性もあるが、現在は候補から外してみてもいいかもしれない。それよりも、隣に座る糸目の白髪の方が気になる。こいつは一体?

 

「おや? どうしたんかな、お兄はん。僕の方をじっと見て」

「いえ、殿下がこうして立っているのに、座ったままなんだなと思いまして」

「あ、こらうっかりしてたわ。そうやったそうやった。お偉いさんが来たんなら、立たなあかんなぁ」

 

 よっこいせっと言いながら、そいつは立ち上がった。身長は190半ばぐらいはありそうだ。

 

「兄上。こちらの方は?」

「私の護衛として、新しく雇い入れた者だよ。ほら、挨拶を」

「僕はびりけん言います。そちらは……誰さんかな?」

「ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス殿下です。そちらにおられるレオン殿下の弟君。些か、言葉遣いが軽すぎるのではないですか?」

「ごめんなぁ。あんまり、礼儀正しさっちゅうんかな。慣れとらんねん、僕。許してな、ジルクニフ殿下……で、そっちのお兄はんは?」

「私はモモン・シャーナ・ライル・エモットと申します。以後お見知りおきを」

「よろしくなー……へぇ、ほぉ、ふうん……」

 

 びりけんと名乗った時点で、どう聞いてもハンドルネームだろこれ? と思ったが、指摘はしないでおく。それよりも、なぜこいつは俺を見て頻りに頷いているんだ?

 

「何かありましたか?」

「あら? 少し不躾過ぎたかな……いや、モモンはん、えらい強いなーと思いまして」

「見ただけで分かるので?」

「そういうの得意やから。ふーん……うん。僕が出会った中でも、モモンはんが一番強いかもしれんね」

「誉め言葉として受け取っておきます」

「皮肉とかで言うとるわけやあらへんで? そうやな……五色如来が近いかな?」

 

 俺はその言葉に内心、ああ、やっぱりお前がそうなのかと言葉を吐きだしたくなる。俺の情報かく乱の上から、直感で見抜いたのか? しかしなぜ、ここまではっきりと俺に分かるように示す? 目的はもう達したからか?

 

「五色如来? なんですか、それは」

「僕が知る限りでは、最強のモンスターの呼称やね。モモンはんは、あいつらぐらいはありそうや」

「最強ですか。私はそれを見たことがないので、何とも言えませんね」

「はは、言われてみれば確かに。この辺りに出るようなモンスターじゃないからね……いやぁ、でも本当に強い。うん。もしモモンはんと揉めたりしたら、少し苦戦するかもしれんなー」

「私を強いと表現するのに、それに少し苦戦するだけなんですか?」

「まぁね。これでも、レオンに仕える前には、格闘技の世界王者をやってたんよ。あ、格闘技って言うて分かる? 僕のはMMA言うんやけども」

「分かりかねます」

「そっか……それが分からんか……ままええわ」

「びりけん。父上が亡くなったとなれば、大事だ。私たちも現場に行くぞ」

「はいさー……そんじゃあね、ジルクニフ殿下にモモンはん。またなー」

 

 その言葉だけを残して、レオンと共にそいつは去っていった。

 

「……モモン。あいつが、お前の言う犯人かも知れない男か?」

「恐らくは。私にしか分からない言葉で、自分が何者なのかをアピールしていきましたから」

「そうか……この場で捕まえて、情報を吐かすことは可能か?」

「お勧めはしません。正直なところ、どれだけの実力を持つ神なのか不明なので」

「第十位階に到達したお前でも、分からないぐらいに?」

「はい」

 

 あいつは俺を五色如来に匹敵すると評価した上で、なお苦戦するだけと言葉にした。それに……探知阻害で分かり難いが、なんとなく直感するところはある。この世界で武術なども習った事で、分かるようになることもある。あいつは強い、それも飛びぬけて……

 あのびりけんは、俺を一番強いと言ったが、俺にとってもあいつが一番強いかもしれない。おでんとは違う……あれは恐らく頂点側だ。理論上の最大値。完成した俺で、ようやくたどり着けるかもしれない極致。

 

(……なぜ帝国に仕えているのかは不明だが……目的次第ではぶつかるかもしれない。勝てるか? 最悪、最奥も使う。ワールドリインカーネイターのスキルを。クラスレベルを上げなきゃいけないか……全く、揺り返しってのは面倒だな本当に)




63話のウロボロスまで一気読み推奨
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