モモンガさん、転生する   作:一人旅系亜種

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 リュラリュースが気絶している間に、ハムスケがボコボコにしたナーガらを搔き集める。ついでに念のため全員状態を確認し、死亡しそうなやつがいないかを確かめておく。

 

「ハムスケ、これ死にかけてないか?」

「それがし、少し力加減を間違えたでござるかな……」

「こいつにもポーションかけとくか」

 

 瓶のふたを開けて中身をかける。これで暫く放置しておけば容体も安定するはずだ。俺の目が届く範囲に全部集めたら、気絶状態から目を覚ますのを待つ。比較的軽傷ぽかったやつらが起き上がり、ハムスケを見て

 

「ひぇっ!!!」

「失礼でござるな。それがしをみて、あいつら失礼でござるよ。モモン殿もそう思わんでござるか!?」

「ボコったんだから、あの反応で間違いないんじゃないか?」

 

 ついさっきぶちのめされたのは記憶に新しいのか、どいつもこいつも起きた傍からハムスケを見ては警戒したり声を漏らして、下からも漏らしていた。ナーガってあんな場所から出るのか……

 

「む……わしは、いったい……」

「ようやく起きたか。おはよう、リュラリュース殿。御目覚めの気分はどうかな?」

「………………ふぁああ!!」

 

 俺を見て慄き、後ずさりしてリュラリュースは急に平伏し始めた。

 

「ど、どうか! 貴方様の御命令通り、この森を平定して人間にご迷惑をおかけせぬよう尽力いたします!! 強者に従うのは弱者の務めゆえ、どうかご慈悲を!!」

「強者だから従う……というのは減点だな。お互いにメリットを出し合い、相互に旨味を得るのがビジネスだ。大森林を手中に収めるのはお前にとっても恩恵が大きい。俺とハムスケは人間側の平穏を。お前は森の王の座を。悪くない話だ。そうだろ?」

「その通りです! わしらにとって、貴方様のご提案は天からの恵みと言っても過言ではありませぬ!! 下賤な身ではありますが、誠心誠意この森の統治者として君臨し、人間に害が出ぬようこの身を粉にして働かせていただきます!!」

 

 ボコった上に、この対応に乗った俺が言うのもなんだが掌返しが素晴らしすぎだろ。後ろのナーガ達もリュラリュースを見て、驚きの顔をしてる。自分達が仰ぎ見るリーダーのこんな姿、見たこともなかったか。

 

「お前……まぁいいか。提案に乗ってくれるなら、こっちとしても言う事はない。ただな、リュラリュース。これだけは覚えておいてくれ」

 

 俺は傍に近づき、聞き漏らしが無いようリュラリュースの耳に口を近づけた。

 

 <絶望のオーラ・Ⅰ>。恐怖デバフ付与のスキルを発動する。ここにいる全員が体を震わせ始めて……あ、ハムスケもぶるぶる震えてる。体をひっくり返してお腹を見せ始めた。すまんハムスケ! あとで美味しい肉一緒に食べような!!

 

「口約束でも、契約は契約だ。お前は人間に迷惑をかけないと約束した。他種族同士が、そういう契約を結んだんだ。その意味、お前にならわかるな?」

「わ゛がり゛ま゛ず!!」

「契約不履行への損害賠償……お前は金が無いから、払えるものなんて一つしかないか。それを払わせるのは俺としても酷だし、お前も嫌だろ?」

「い゛や゛です!!」

「では、お互い全力で契約を遵守するとここに約束しよう。さきは口約束と言ったが、それでは不十分。ハムスケ、こっちに来てくれ……なに? 腰が抜けて立てない? 仕方ないな」

 

 ひっくり返ったハムスケの革鞄から日記を取り出して、一枚破る。俺は直筆でサインし、リュラリュースにもサインさせようとしたが、字が書けないそうなので指印を押させておく。

 

「これで契約成立だ。ありがとうリュラリュース殿」

 

 俺は絶望のオーラを解き、ニッコリ笑顔を浮かべながら手を差し出す。こら、なんだその信じられないものを見る目は。ちょっと強引な契約だったかもしれないが、実際そっちの恩恵は大きいだろうが。

 

「では契約に基づき、俺はグとやらを仕留めに行くか。リュラリュース、まず再度の問いかけになるが、お前から見てグは俺より強いか。それとも弱いか?」

「貴方様の方が遥かに上でございます!」

「ではグがどこにいるのか、お前は知っているか?」

「存じております!」

「ならこの地図の、どのあたりか教えてくれ」

 

 俺が地図を取り出しみせると、人間の地図ですとこの辺りになるかと思いますと印を入れてくれた。

 

「ありがとうリュラリュース殿。それと、グがどのようなやつなのかも、そちらが知る限り教えてはくれないか?」

 

 事前にこれから打倒しようという相手の情報は集めておくべきだ。リュラリュースはかなり詳しく知っていて、魔法武器を持つことなどを仕入れられた。

 

「感謝する……ハムスケ。行くぞ」

「承知でござるよー」

 

 ハムスケを呼び寄せて、背に跨り俺は集落をあとにする……ように見せかけて、ある程度進んだらハムスケを停止させた。

 

「ちょっと待っておいてくれ。嫌な奴が去った後というのは、そいつの悪口を言い合う事が多いんだ。俺にどんな印象を抱いたのか、確かめておく」

「モモン殿は念入りでござるなぁ」

 

 ハムスケが呆れているが、抱かれた印象というのは大事なんだぞ。今後の付き合いの上で大切だからな。ハムスケをまた穴倉に押し込み、<完全不可知化>で集落に戻る。

 

「──リュラリュース様。その……」

「言いたい事は分かる。じゃが、こうなってはわしらはあの人間の……そう言えば名前を聞いておらなんだな」

 

 そう言えば名乗ってなかったな。ビジネスマンとしては失格だ。子供としても礼儀正しくはない。今後は気を付けるとしよう。

 

「あんな人間の子に、平伏して赦しを請うたわしを笑うか?」

「めっそうもございません! あんな……恐ろしき威圧感を持つ怪物が人間にいるなんて……」

「そうじゃな。わしらの命運は決まってしまったか」

 

 怪物ねぇ。そういう印象を抱かれたのは、案外悪くはない。今回名乗り忘れてしまったのが痛手だが、モモンの名を恐れ名として広めようとしているのだから。

 

「悪い子はいねえが! ……なんてな」

 

 悪さをしていたらモモンが来るぞ。そんな風に広まれば、リュラリュースの統治もやりやすくなるだろう。俺はとりあえず<絶望のオーラ>まで使った脅迫風契約に効果があったのを確かめてから、ハムスケの所に戻った。

 

「そう言えばモモン殿? 最後の、あの、恐ろしい気迫はなんでござるか? それがし、あの場から一歩も動けなくなったでござるが……」

「あれか? あれは殺気だ。モンクのクラススキルで、気を飛ばしてぶつけるバステで周囲に恐怖とスタンを付与させる。お前まで巻き込んですまなかった。今日は良い肉を捕ろうな!」

 

 <絶望のオーラ>は死の支配者(オーバーロード)の種族スキルなので、勿論殺気云々は嘘である。しかしモンク系列に似たようなクラススキルがあるのは本当なので、こう誤魔化すのが一番納まりが良い。ハムスケはモモン殿は特殊能力まで備えていて隙が無さすぎでござるよと言った。

 

「それを言うなら、お前の<全種族魅了>だって利便なんだぞ? ……うん? ハムスケどこに向かっているんだ。そっちはカルネ村じゃないぞ」

「おや? このまま、グとやらの所に向かうのではござらんのか?」

「太陽の位置を見る限り、つく頃には晩になる。俺もお前も夜になってもそこまで困らないが、遅くなりすぎると母さんや父さんが心配する。今日は一旦帰って、明日出発だよ」

「そうでござるな。ではカルネ村まで、それがし号、全力疾走でござる!」

「そのフレーズ、エンリにも使っていたが、気に入ってるのか?」

 

 途中獣を狩ってその場で血抜きし、村まで持ち帰った。村の狩人に解体を任せて、俺はいつも通りエンリと遊んでやったりしつつ一日を終えて、翌朝。

 

「今日のグの討伐だが、二手に分かれる。本陣に突入するのは俺で、ハムスケはカルネ村方面に行きそうなやつらを叩いてくれ」

「承知したでござるが……行きそうとはどういうことでござるか?」

「グが死ねば、やつの下についていたモンスター共が暴走するかもしれん。それが村の方まで行けば、俺たちが帰る前に阿鼻叫喚の地獄絵図だ。それを防ぐためにも、逃げ出したやつが人間に復讐してやる! なんてなる前に、森の中で仕留め切る。その役目を任したいんだ」

「そういうことでござるか。必ずや、モモン殿のしんがりを務めてみせようぞ!」

「ござる口調じゃなくても、武士みたいな口調パターンあるんだな」

 

 もちろんハムスケへのあれこれは建前だ。村の方面に逃げたところで、ハムスケより強い33レベル相当……俺の強化スキルも込みなら40相当か? けっこうな数のゾンビ系アンデッドが地面の下に埋まっている。

 そいつらと監視役の非実体透明ゴーストが連携して、モンスターが踏み入りそうになれば地面に引きずり込んで殺し切るモンスターぶっ殺しゾーンが森入り口にあるので、そこまで俺は危険視していない。あそこを問題なく通過するモンスターがいたら、それは俺が直接殺し切らないといけない脅威。グがどうとか言ってる場合じゃなくなる。

 

(グとやらで試したいことがあるからな。ハムスケがいると試せない)

 

 今日も今日とてハムスケは走る。はしる。殴る速度などは俺の方が上で、完全平地を走るのも俺の方が速いのだが、ハムスケは四足歩行かつ地面の状態にあまり左右されないスキルでもあるのか、森の中ならこいつの方が早い。俺は方角と地図をいつも通り確認しつつ、道中にいるゴブリンやらは轢き殺していく。これは俺の指示ではなく、単純に獣道上にいたので事故だ。

 

「うわ……めっちゃ苦しんでる」

 

 後ろを振り返ったら、お腹から腸が零れたりしてぴくぴくしていた。ごめんな~。

 

「と、あの木があるから……ハムスケ。そろそろ別れるぞ。お前は来た道を引き返し、指示しておいた場所で伏兵として潜んでおいてくれ。万が一が無いとは思うが、気を付けるんだぞ」

「モモン殿も気を付けてでござる」

 

 分かってるさ。ハムスケの背から飛び降りて、俺は降りた勢いそのまま走り出す。後ろを見てハムスケが戻っていき見えなくなったら

 

()()、手筈通りの位置に待機させているな」

「滞りなく手配しております、モモン様」

「よろしい。では俺の合図があるまで、お前達は引き続き潜伏しろ」

「はっ!」

 

 俺の指示を聞いて、俺が来るまで木々に隠れていた者らが再び姿を隠していく。これでいい。確認を終えた俺は、グが住む洞窟とやらの前についた。

 

「う……酷い臭いだな。ゴミを片してないぞ、この臭い。リュラリュースが言ってたことは本当だな」

 

 グの住処はリュラリュースのようなきっちりとしたログハウスではなく、ただの洞窟。ゴミを捨てて衛生を保つような文化もないので、俺には酷い環境かもしれないと忠告していた。

 

「この様子だと、腐敗ガスも溜まっているな。ものぐさがゆえの、天然のトラップを作ってんじゃねえよ」

 

 俺は大気攻撃、つまり空気に何かをする攻撃は無効化されるので問題ないが、ここにハムスケを連れてきていたら酸欠で死んでいたかもしれない。俺の目的にはハムスケがいると問題なので外させたが、この様子だとその目的がなくとも来させなくて正解だったな。

 中に入る前に、簡単な探知魔法は使っておく。脅威がいないとは限らないからな。その結果、特にいないと判明した。これなら突っ込んでも大丈夫だろ……たぶん。

 俺は洞窟の斜面を滑り降りて進んでいくと、何やら大きな生き物が地面に座り込んで何かを食っている。

 

「オーガと……喰われてるのはゴブリンだな。ハムスケもよく食っているが、ゴブリンは美味いのか?」

 

 俺は絶対に喰いたくないが、森の中では弱者側のゴブリンは森のおやつらしい。ハムスケに聞いたら小魚に対する食レポみたいなのが出てきたこともある。

 オーガはこちらに気付いていない。俺は忍び足になり、音を殺して背中から近づく。トンと背中に掌を当てると、流石に気づいたのか振り返ろうとするが

 

「びっくりドキドキポン!」

 

 <心臓掌握(グラスプハート)>。接触と同タイミングで無詠唱化させた第九位階即死魔法を発動し、オーガを即死させる。はたから見れば、掌をあてて何かをした結果死んだように見えるだろう。

 うむうむ。けっこう上手くなってきたぞ。傍目には見えにくいタイプの魔法を、無詠唱化させて格闘術のように見せかける偽装武術。これを動きながらでも出来るようになれば、戦術はさらに広がる。これからも練習あるのみだ。

 奥に行けば行くほどグの取り巻きなのかモンスターがいて、中には俺に気付くやつもいた。俺を見るや否や

 

「ニンゲン! ニンゲン! エサ!!」

「餌じゃねえよ」

 

 棍棒を振り下ろしてきたので、それを蹴り返したら頭にあたり、頭蓋骨が砕けて死んだ。さらに進むと開けた場所に出て、オーガが10体とトロールが6体ほどいる。その中でも一際巨大な体格をしたやつがいたので、そいつに顔を向けながら集団全員に話しかける。

 

「初めまして、トロールとオーガの皆さん。俺はモモン。モモン・エモットと言います。あなた方のリーダー、グとはどなたですか?」

 

 俺の言葉に答えたのは、一番巨大なやつで

 

「なんだ人間! なぜ俺の洞窟に人間がいる!! それに……なんだ、モモン・エモット? そのような臆病者の名を、名乗るのを許した覚えはないぞ!!」

「失礼、名乗るのが人間のルールだったが、トロールの文化とは違ったか。しかし臆病者? なぜ、俺が臆病者だと?」

「そのような長い名前など、臆病者にしかつけられないからだ! 俺のような勇敢な名とは違う!!」

「……短い名前ほど勇者で、長い名前ほど凡夫という訳か。トロールの文化とは面白いも――」

「人間! 俺の質問に答えていないぞ!! 俺の洞窟に勝手に侵入し、俺の赦しもなく臆病な名を聞かせた! 答えろ!!!」

「うるさ……まぁ質問には答えてやるよ。お前は南の大魔獣が住んでいた土地を奪おうとしているだろ? それが原因で西の魔蛇と争っている。それに間違いはないな」

「それがどうした!!」

「俺は南の大魔獣の仲間だ。大魔獣は西の魔蛇と同盟を組み、お前を殺す事にした。それを実行する刺客が俺だよ」

「……どういうことだ!! ごちゃごちゃ言っていないで、理由を言え!!」

 

 え? 俺、刺客と言ったよな? まさかこの言葉の意味が通じてないの? 殺すと刺客が結びついてないの? マジで?

 

「……つまり、俺はお前を殺しに来た。お前はこれから死ぬ。理解した? オッケー?」

 

 俺の言葉に不思議そうな顔をしてから

 

「がははははは。俺を殺す! お前が俺を殺す!! 小さな人間が、臆病な名の人間が俺を殺すだと!! この馬鹿が!! 臆病者が勇敢な俺を殺せると思っているのか!!! この場で殺し、喰らいつくして殺す!! バラバラにして返り討ちにしてくれるわ!!」

「そ、そうか。まぁ、殺しにきた刺客に対する対応としては普通だな」

「何をブツブツと言っている!」

 

 グは魔法の大剣を握っており、それを大上段で振り下ろしてくる。動きはまぁまぁ速く、デス・モンク道場をしておらず壁越え前の俺ならまともに喰らっていたかもしれない速度だ。つまり、今の俺にとっては目を瞑っていても避けられる程度の攻撃。比喩ではなく、闘気感知っぽいスキルがあるので五感に頼らなくとも周囲が把握できる。

 俺は半身を逸らして躱し、飛び上がりながら腹に拳を叩きこむ。革鎧のようなものを着込んでいるが、それで衝撃を殺し切れない。革鎧は刃物を防ぐのには利便だが、殴打属性には有用ではないからだ。

 やつの体が浮き、洞窟の天井まで飛びあがっていく。今の一撃はリュラリュースの時と違い、一切の加減をしていない。つまり42から45レベルのモンクが放つ全力パンチという事だ。グの推定戦力は、俺の見立てだと近接ステータスは31相当と言ったところ。この戦力差で放たれたパンチは、当然の如く即死圏内。ついでに言えば、負の接触もオンにしているのでエネルギーダメージも追加されている。

 

「お、まだ動いてる。凄い」

 

 天井にあたって落ちてきたグは、まだもぞもぞと動いていた。最低でも11レベル差はあるのに、耐えるなんてマジで凄いぞ。思ったより体が頑丈だったみたいだ。それでも生命力を確認したら、もう風前の灯。トロールには再生能力があるが、傷が治るだけで生命力そのものを劇的に癒しはしない。

 俺が落ちたグに歩き出すと、取り巻きだったオーガやトロールらは悲鳴を上げて逃げ出した。自分らのリーダーを置いて逃げるなよと思うが、一番強いやつがワンパンで瀕死にされたらそうしたくもなるか。

 もっとも、逃げたところで無駄だと思うがな。

 

「逃げたやつらがいる。全員殺せ」

 

 俺はそう命じておく。今の逃げた連中は、これで全員死亡確定。あとはこのグにとどめを刺すだけだ。

 

「聞こえているか、グ。お前はこれから死ぬ。だが、ただ死ぬわけではない。これから先、お前は森の平穏を守る戦士に生まれ変わる」

「な……に……」

「じゃあな」

 

 俺が肩ポンをすると、負の接触によりダメージエネルギーがグの体内に注ぎ込まれる。それが止めとなり、グは死亡した。すぐに俺は

 

「<上位アンデッド創造>」

 

 グの死体を媒介に、上位アンデッドの作成に入る。アンデッド創造では、今のところ40レベルのアンデッドまでしか永続化させられていない。その原因が、もしかしたら個体の強さにあるかもしれない。その考えが真実かどうかを確かめるためには、強い個体がいる。

 そこでこのグだ。今まで使ったのは10レベルもない個体ばかりだが、こいつは30越え。これを使えばもしかしたら、永続化した上位アンデッドを作成できるかも。

 グの体が形を変え、鎧姿に変わる。こいつはリビングデッド・アーマー系列のモンスターで、英雄が使った鎧にその英雄の魂が宿ったとかいう設定の中身が空っぽの鎧だ。

 

「おはようございます、モモン様」

「とりあえず、今のところは問題なさそうだな。お前に命じる。この森を徘徊し、人間が森で彷徨っていたら手助けし外まで案内しろ。モンスターが人里に降りて悪さをしようとしていたら、そいつらを殲滅し人間を守れ。ただし人を襲おうとしていなければ、モンスターを殺す必要はない。ある程度の指示は誕生時点でインプットされているだろうが、細かい点は追って指示を出す」

「了解いたしました!」

 

 こいつは見た目は普通の鉄に見える鎧だが、その強さは60レベルはある。グやハムスケが上限のこの森なら、まず負ける事はないだろ。あとは永続化しているかどうかは、時間経過で確認するしかない。

 やれやれと俺は首を回す。これでリュラリュースが平定すれば、とりあえずは平穏が戻るだろ。ハムスケを回収して、あとはリュラリュースに抹殺したと伝えたら、これでこの一件は

 

「……は? いや、待てよおい。違うぞ!! 人間は殺すな!! 向こうから喧嘩を売って? 反撃してしまった? ああ、くそ! 防御機構がある分、こういう時に召喚モンスターは融通が利かない!」

 

 逃げたモンスターがいた時のために、この周囲に配置していたアンデッド軍団。それがなぜか人間と交戦し、お相手を怪我させてしまったらしい。はっきり言って最悪の事態だ。俺は<転移>を使って、交戦したモンスターの近くに瞬間移動する。

 そうしたらいた。20ぐらいに見える武装した成人男性が、お腹を押さえて地面に蹲っている。その人間と戦ったらしいデス・アサシンが所在なさげに立ち尽くしていた。

 成人男性は俺を見て眼を丸くしている。くそ、まだ気を失っていない。アンデッドといるところを目撃されるとあまり良くないので、俺はその人を眠らせようとして

 

(抵抗(レジスト)!?)

 

 弾かれた。魔法強化をしてないとは言え、それでも俺のバステが弾かれた事に警戒レベルを最大まで上げる。とりあえず今すべきは

 

「おのれ! その人を殺させないぞ!!」

 

 デス・アサシンを蹴り飛ばして吹き飛ばす。アンデッドは森の奥に消えていった。これでとりあえずは、偶然通りかかりアンデッドから守ろうとした子供戦士として誤魔化せる。とは言え、自分を怪我させたアンデッドを一撃で退散させた子供など不気味だろうが。

 それよりも、バステがレジストされたことが気がかりだ。なぜと思い、改めてこの人を観察してみる。それでようやく俺は気づけた。

 

(これは! たしか、たしか……なんだっけ。名前は忘れたけど、ユグドラシルの武装外装で見た覚えが……ないような、あるような)

 

 9年前に見たビジュアルデータなぞ、とうの昔に忘れている。注視したら思い出せたが、あんまり自信はない。しかし俺の懸念通りユグドラシルの武装外装とするなら、この装備はまさかと思い<道具上位鑑定>で調べてみて

 

(聖遺物級! それに製作者は……輝煌天使ねこにゃんて誰だよ。と言うかこの名前、どうしたってユグドラシルのプレイヤーネームとしか……この人は地球人なのか?)

 

 俺がモモンガの力を持って転生したように、他にも転生した人がいてもおかしくはないと考えていた。しかしそうなると、これらの装備は何なのか。転生じゃなくて、転移したとか? でもそれだと、デス・アサシン程度にやられかけているのが解せない。ユグドラシルで使う操作キャラなんて、普通は100レベルが当たり前だ。

 疑問が湧いてくる。この人は何なのかが。なぜこんな場所にいるのか。疑問はあるが、それは後回しにする。まずはこの人の怪我を治さないと、このまま死なれたら答えを失ってしまう。

 

「大丈夫ですか! その怪我、すぐに治さないと!! 俺の仲間がポーションを持ってるので、すぐに取ってきます! まってて」

「待ってくれ……ぜぇ……そこに、私の、か、ばんが……おちて。なか、ぽーしょんが……」

「分かりました! すぐに取ってきます!!」

 

 どうやらポーションは持ち合わせているらしい。俺はそのかばんを探して

 

「あった!」

 

 中身を探る。出てきたのは()()()()()()()。それを見て、推定に過ぎなかったユグドラシル産装備を確定に変える。すぐに戻り、ポーションを傷口に注ぐ。効果はすぐに出て、お腹の傷が塞がっていく。

 しかしそれで体調がすぐに良くなるわけではなく、生命力はまだ低い。血を失い過ぎたのか顔色も悪く、まだ自分で立てる力ではないようだ。怪我が治った事に安堵したのか、そのまま気絶してしまった。

 気を失っている今なら、もしかしたら<記憶操作>で何か情報を引き出せるやもしれない。しかしそれがのちにバレて、敵対行動と取られたら厄介だ。

 ともかく俺はその人を担いで走りハムスケと合流し、村まで連れ帰る事にした。

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