ユニークスキルのせいでハーレムを作る事が確定した哀れな中年冒険者が挑む現代ダンジョン配信物   作:パラレル・ゲーマー

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第21話 月曜日の憂鬱と、不本意な家族会議

 月曜日の朝。

 西新宿の空は、厚い雲に覆われ、まるでこれから始まる一週間の憂鬱を体現しているかのように、重く、そして静かだった。

 佐藤健司(35)は、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車の中で、死んだ魚のような目で、目の前のサラリーマンの汗染みがついた背中を、ただぼんやりと眺めていた。

 耳に装着したワイヤレスイヤホンからは、上司への言い訳と、クライアントへの謝罪の言葉だけが、無限にリピート再生されるビジネスニュースチャンネルが流れている。

 これが、彼の現実だった。

 

(…はぁ)

 彼は、心の底から深いため息をついた。

 昨日の、あの狂乱の一日が、まるで遠い昔の夢のように感じられる。

 女子高生三人との、D級ダンジョン高速周回。

 レベル17への、異常なまでのレベルアップ。

 そして、自分の意図とは全く無関係に、勝手に赤面したり、喜んだり、喧嘩したりする、あの騒がしい少女たち。

 **土日にダンジョンに潜っていたが、不思議と体には疲れはない。**レベルアップによるステータス上昇のおかげだろう。むしろ、体は軽く、頭も冴えている。ストレス解消には、良いのかもしれないな…。

 いや、でも、精神的疲労がな。

 彼の、中間管理職として長年培ってきた精神力は、この二日間で、数ヶ月分はすり減ったような気がした。

 

 彼は、会社の最寄り駅で人の波に吐き出されると、その重い足取りで、灰色のコンクリートジャングルの中にある、自らの戦場…オフィスへと向かった。

 そこは、ダンジョンのように物理的な危険はない。

 だが、そこにはもっと陰湿で、そして厄介な「モンスター」たちが、跋扈していた。

 

 ◇

 

「――というわけで、この件については、早急に営業部との調整が必要かと」

 佐藤は、システム管理課の課長として、その無機質な会議室で、いつものように淡々と、そして的確に、部下たちへと指示を飛ばしていた。

 彼の頭脳は、完全に仕事モードへと切り替わっていた。

 サーバーの負荷状況、新規プロジェクトの進捗、そして他部署との面倒くさい折衝。

 その全てを、彼は完璧に、そしてどこまでも冷静に、処理していく。

 そのあまりにも有能な姿は、ダンジョンで女子高生たちに振り回されている、あの哀れな中年男性の姿とは、似ても似つかなかった。

 

 会議が終わり、彼が自席に戻って、山のように積まれた書類の処理を始めた、その時だった。

 一人の若い部下が、コーヒーカップを片手に、彼の元へとやってきた。

 入社二年目の、山田だった。

 

「課長、最近、機嫌がいいっすね」

 その、あまりにも唐突な、そしてどこまでも無邪気な一言。

 それに、佐藤の眉が、わずかにピクリと動いた。

「…そうか?」

「はい!なんか、前よりも顔色が良くなったというか、覇気がありますよ!前なんて、月曜の朝はいつも、世界の終わりみたいな顔してたじゃないですか」

 その、あまりにも失礼な、しかしどこまでも的を射た指摘。

 それに、佐藤は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 彼は、その変化の理由を、正直に(ただし、大幅に脚色して)語った。

「ああ…。休日に、ダンジョン始めたから、ストレス解消にはなってるのかもな」

 

「おっ!ダンジョン、始めたんですか!」

 山田は、その大きな瞳をキラキラと輝かせた。

「やっぱり!俺も、先月から『プラス・アルファ・フロンティア制度』で始めて、週末は嫁さんと一緒に潜ってるんですよ!F級ダンジョンで、ゴブリンしばいてるだけで、マジでストレス解消になりますよね!」

 その、あまりにも共感に満ちた言葉。

 それに、佐藤はただ、曖昧に頷くことしかできなかった。

(…ゴブリン、ね。俺が最後に見たのは、いつだったか…)

 

 山田のその一言が、引き金となった。

 彼の周りに、他の部下達も集まってきて、オフィスはささやかな、しかし確かな「ダンジョン談義」の熱気に包まれ始めた。

 

「分かる!金も稼げて、日給18万超え。正直、副業として美味し過ぎですね」

「いやー、仕事優先なのは分かりますが、仕事終わりに1時間ダンジョンに籠もるだけで、違いますもんね」

「だよな!先週拾ったエッセンス、5万円で売れたぜ?もう、今月の小遣い、心配しなくていいわ」

 

 その、あまりにもリアルで、そしてどこまでも健全な、兼業冒険者たちの会話。

 それを聞きながら。

 佐藤は、その心の中だけで、静かに、そして深く、ため息をついた。

(…もうレベル17で、D級ダンジョンを余裕で周回してるなんて、言えねぇな、この空気じゃ…)

 彼は、そのあまりにも巨大な「格差」を、必死に隠しながら、愛想笑いを浮かべた。

「ああ、ゴブリンしばいてるだけで、楽しいぞ」

 彼の、そのあまりにも白々しい一言。

 それに、部下たちは何の疑いもなく、深く頷いていた。

 

 ◇

 

 午後6時。定時。

 佐藤は、誰よりも早くタイムカードを切ると、その足で新宿のデパ地下へと向かった。

 彼が向かったのは、きらびやかな宝石のようなケーキが並ぶ、高級デザート店だった。

 彼は、そのショーケースの前で、腕を組み、真剣な表情で悩み始めた。

 その姿は、まるで重要な経営判断を下す、CEOのようだった。

(…陽奈は、いちごのショートケーキが好きだったな。輝は、見た目が派手なモンブランか?いや、あいつは意外と、濃厚なチョコレートケーキかもしれん。りんごは…もう、分からん。適当に、一番高いやつでいいか)

 彼は、そのあまりにも面倒くさい、しかしどこか楽しい悩みの末、4人分のケーキを買って、その足で自宅のタワマンに帰った。

 

 カチャリと。

 静かな電子音と共に、彼の城であり、牢獄でもある部屋のドアが開かれた。

 その瞬間、三つの異なる、しかしどこまでも元気な声が、彼を出迎えた。

「ただいまー!」

「「おかえりなさいー!」」

「おかえりなさいッピ!」

 玄関には、学校帰りの制服のままの陽奈と輝、そして部屋着のパーカーに着替えたラフな格好のりんご、そしてその三人の中心でふわふわと浮遊する3人と1匹が、彼を待っていた。

 その、あまりにも温かい、そしてどこまでも彼の日常を侵食する光景。

 それに、佐藤は深いため息をついた。

 そして彼は、その手に持っていたケーキの箱を、これ見よがしに掲げた。

 

「ほら、ケーキ買って来たぞ」

 その、あまりにも不器用な、しかしどこまでも優しい一言。

 それに、三人の少女たちの顔が、ぱっと輝いた。

「「「ナイスー!」」」

 その、あまりにも息の合った、そしてどこまでも無邪気な歓声。

「僕は、食べられないッピ!だけど、見てるだけで楽しいッピ!」

 フロンティア君が、少しだけ寂しそうに、しかしどこまでも嬉しそうに、言った。

 

 その日の夜。

 リビングの、巨大なローテーブルの上には、四つの美しいケーキと、湯気の立つ紅茶が並べられていた。

 4人で、仲良くケーキを食べる。

 その、あまりにもありふれた、しかし彼にとっては世界の何よりも尊い光景。

 それに、佐藤の心の中の、何かが、わずかに、しかし確実に溶けていくのを感じていた。

 

「それにしてもさー」

 輝が、モンブランの最後の一口を頬張りながら、言った。

「あたしたち、マジで強くなったよね。この調子で行けば、今週末にはC級周回、出来るんじゃない?」

「うん!」

 陽奈も、目を輝かせる。

「私も、そう思います!今の私達なら、きっと!」

「そのためには、健司さんの装備、もう少し何とかしないとね」

 輝の、その鋭い視線が、佐藤の、まだ初期装備のままの貧相な革の鎧へと向けられる。

「今のままだと、健司さんが一番のウィークポイントだよ?ボス」

「…うるせえな」

「だからさ、憎悪の残響(ヘイトレッド・エコー)と、背水の防壁(バックウォーター・ウォール)を、健司さん用に買いましょうよ!」

 その、あまりにも的確な、そしてどこまでも真っ当な提案。

 それに、佐藤は眉をひそめた。

「…いくらだ?」

 その問いに答えたのは、ピンク色のタコだった。

 

「二つ合わせて、40万円ッピ!」

 フロンティア君は、ARウィンドウに、二つのユニーク装備の詳細な情報を表示させた。

「どちらも、かつてSSS級探索者“JOKER”が愛用していたことで知られる、戦士向け装備ッピね!」

 その、あまりにも懐かしい、そしてどこまでも他人事のような解説。

 それに、佐藤は深く、深いため息をついた。

 そして彼は、観念したように言った。

「…分かったよ。じゃあ、買っとくか」

 彼は、そう言って、インベントリからギルドのブラックカードを取り出した。

 そして彼は、その三人の、あまりにも手のかかる「部下」たちへと、その上司としての、最後の言葉を告げた。

「…**お前らも、ほしいユニークやレアも、買っておくといいぞ。**経費で、落としてやる」

 

 その、あまりにも太っ腹な、そしてどこまでもサラリーマン的な一言。

 それに、三人の少女たちは、顔を見合わせた。

 そして、彼女たちは同時に、最高の笑顔で、その最高のボスへと、敬礼した。

「「「はーい!」」」

 

 

 

 

 アイテム名: 憎悪の残響(ヘイトレッド・エコー)

 

 種別: 長剣

 

 レアリティ: ユニーク

 

 装備要件:

 筋力 50

 

 効果:

 

 ・この剣に、Lv15の【憎悪のオーラ】スキルが付与される。

 

 ・スキル【憎悪のオーラ】のMP予約コストを、100%削減する。

 

 ・【憎悪のオーラ】: 術者と、周囲の味方の全ての物理攻撃に、強力な追加冷気ダメージを付与する。

 

 

 フレーバーテキスト:

 

 復讐の炎は、時と共に消え去る。

 だが、凍てつく憎悪は、その魂に永遠に響き続ける。

 

 この剣を振るう者よ、忘れるな。

 お前の心臓が脈打つたびに、その刃は、かつてお前を裏切った者たちの、断末魔の叫びを奏でているのだと。

 

 

 

 

 名前: 背水の防壁(バックウォーター・ウォール)

 

 種別: カイトシールド

 

 レアリティ:ユニーク

 

 効果:

 

 ・全元素耐性 +4%

 

 ・毎秒50のライフを自動回復する。

 

 ・あなたへの凍結効果時間 -80%

 

 ・ライフ低下時に毎秒100のライフを自動回復する *(ライフ低下時とは、ライフが50%を切った状態の事を言う)

 

 フレーバーテキスト:

 

 崖っぷちに立って、初めて見える景色がある。

 死の淵を覗き込み、初めて聞こえる魂の産声がある。

 

 我が背には、もはや逃げ道はない。

 故に、我が前には、無限の生が広がるのだ。

 

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