ユニークスキルのせいでハーレムを作る事が確定した哀れな中年冒険者が挑む現代ダンジョン配信物   作:パラレル・ゲーマー

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第43話 大豪邸見学と、中間管理職の現実的判断

(…なんで、こうなった)

 

 彼の脳内には、その一言だけが、無限にリピート再生されていた。

 数日前、輝がARウィンドウに映し出した、一枚の不動産広告。

『【ギルド向け】新築・空間拡張技術搭載デザイナーズハウス!プール&テニスコート付き!夢のギルドライフを、今ここに』

 その、あまりにも胡散臭い、しかしどこまでも魅力的な宣伝文句。それに、少女たちの瞳が、星のように輝いたのは言うまでもない。

 健司は、もちろん全力で拒否した。だが、彼の「固定費の増大は経営リスクだ」というあまりにも真っ当な正論は、輝の「見るだけならタダでしょ?」という悪魔の囁きの前に、あっけなく霧散したのだった。

 

「うわー、すごい…!」

 健司の、その絶望的な感傷を、天野陽奈の、純粋な感嘆の声が断ち切った。

 彼らの目の前に、その「夢の城」は、静かに、しかし絶対的な存在感を放って、佇んでいた。

 白い壁と、ガラスと、そして温かみのある木材が、完璧な調和を保つ、モダンなデザインの大豪邸。その周囲を、手入れの行き届いた美しい庭が囲んでいる。

 その、あまりにも完璧な光景。

 それに、星野輝は、その大きな瞳をこれ以上ないほどキラキラと輝かせ、兎月りんごは、庭の隅に咲いていたタンポポに、すでに夢中になっていた。

 そして、その三人の少女たちの後方で。

 健司は、ただ一人、その心の中だけで、静かに、そして深く、戦慄していた。

(…固定資産税、いくらだよ、これ…)

 

 彼が、そのあまりにも現実的な恐怖に打ちひしがれていた、まさにその時だった。

 大豪邸の、重厚なチーク材の扉が、静かに開かれた。

 そして、中から現れたのは、寸分の隙もなく着こなされたアルマーニのスーツに身を包んだ、いかにもやり手といった雰囲気の中年男性だった。

 

「――お待ちしておりました、『アフターファイブ・プロジェクト』の皆様」

 不動産屋の男は、その人の良さそうな、しかしどこまでも計算され尽くした笑顔で、深々と頭を下げた。

「私、当物件を担当させていただきます、青山と申します。本日は、よろしくお願いいたします」

 

 ◇

 

「――まず、こちらの玄関ですが…」

 青山の、そのシルクのように滑らかな声が、大理石の床に響き渡る。

 彼らが、その家へと一歩足を踏み入れた瞬間。

 健司の、サラリーマンとして長年培ってきた全ての常識が、音を立てて崩れ落ちた。

 外から見た建物の大きさとは、明らかに釣り合わない。

 一つの、巨大な空間が、そこには広がっていた。

 天井は、二階まで吹き抜けになっており、その中央には、シャンデリアのように美しい、魔石を動力源とした照明が、柔らかな光を投げかけている。

 

「すごい…!」

 陽奈が、再び感嘆の声を漏らす。

「ボス!見て!あたしたちの倉庫より、玄関の方が広いんだけど!」

 輝が、そのあまりにも的確な指摘を、大声で叫んだ。

 その、あまりにも無邪気な少女たちの反応。

 それに、青山は、満足げに頷いた。

「ふふっ。驚かれるのも、無理はありません。これこそが、最新の空間拡張技術の力ですので」

 彼は、壁に埋め込まれた、小さなパネルを指し示した。

「この物件の外側の面積は、約200平方メートル。ですが、この『ジェネシス・ユニット』によって、実際の面積は、その10倍…実に2000平方メートルまで拡張されております」

 

 その、あまりにもSF的な、そしてどこまでも現実離れした説明。

 それに、テンションが上がる4人と1匹。

「すげーッピ!僕の計算能力をもってしても、その理論の理解には、あと数時間はかかりそうだッピ!」

 フロンティア君が、そのピンク色の体を興奮で点滅させていた。

 

 彼らは、青山に導かれるまま、その夢の城の、その奥深くへと、その歩みを進めていった。

 広大なリビング、プロ仕様のアイランドキッチン、防音設備の整ったトレーニングルーム、そして、100インチのスクリーンが設置された、ホームシアター。

 その、あまりにも完璧な、そしてどこまでも非の打ちどころのない、理想の空間。

 それに、少女たちは、もはや言葉を失い、ただその瞳を輝かせることしかできなかった。

 健司もまた、その口では「ふーん」とか「なるほどな」とか、どこまでも興味なさげな相槌を打ちながらも、その内心では、一つの、あまりにも人間的な感想を、抱いていた。

(…すげえ。マジで、すげえ…)

 

 そして、彼らはついに、その家の、本当の「心臓部」へとたどり着いた。

 リビングの、巨大なガラス窓の向こう側。

 そこに広がっていたのは、どこまでも続く青空と、そしてその青を映し出す、美しいプールと、テニスコートだった。

 

「――きゃー!」

 

 陽奈と輝の、歓喜の絶叫。

 りんごは、すでにそのゴスロリ風のドレスの裾をまくり上げ、プールへと飛び込む準備を始めていた。

 その、あまりにも楽しそうな、そしてどこまでも輝かしい光景。

 それを、健司は、ただ静かに、そしてどこか眩しそうに、見つめていた。

(…悪くない。…悪くない、かもな…)

 彼の、その氷のように凝り固まっていたはずの心が、わずかに、しかし確実に溶けていくのを感じていた。

 

 その、彼の心の変化を、見透かしたかのように。

 不動産屋の青山が、その完璧な営業スマイルで、近づいてきた。

「今回は、見学だけと伺っていますが」

 彼の声は、どこまでも穏やかだった。

「**『アフターファイブ・プロジェクト』は、今、一番勢いがあるギルドです。**先日のグランプリでのご活躍、私も拝見しておりました。あの、常識を覆す戦術。そして、佐藤マスターの、あの卓越した指揮能力。いやはや、感動いたしました」

「今後も、ご活躍、見守っております」

 

 その、あまりにも的確な、そしてどこまでも心憎い、賞賛の言葉。

 それに、健司は照れくさそうに、そしてどこまでもぶっきらぼうに、その頭をガシガシとかいた。

「いやー…すみません、見学だけなのに」

 彼の、そのあまりにも素直な、そしてどこまでも人間的な反応。

 それを、微笑ましくみてる不動産屋の人。

 

 そして、健司はふと気になって、その最も重要な、そして最も聞きたくなかった質問を、口にした。

「ちなみに、ここ、いくらです?」

 

 その問いに、青山は、最高の、そしてどこまでも自信に満ちた笑みを浮かべて、答えた。

「はい。こちらの物件ですが、現在キャンペーン中でして、大変お安くなっていまして。月々の賃料、70万円ほどですね」

 

「な、ななじゅうまん…!?」

 健司の、その悲痛な叫び。

 だが、その彼の絶望とは裏腹に。

 輝の瞳が、ギラリと輝いた。

「70万!?安っ!ボス、契約しよ!」

「馬鹿野郎!」

 

 その、あまりにも噛み合わない、そしてどこまでもコントのようなやり取り。

 それに、青山はただ、その完璧な営業スマイルを、崩さなかった。

 健司は、その心の中だけで、冷静に、そしてどこまでも中間管理職的に、その数字を分析していた。

(…70万か。今の、ギルドの収益を考えれば、出せない金額じゃない。が、固定費がなぁ…)

 彼の、そのサラリーマンとしての魂が、そのあまりにも巨大なリスクを、全力で拒絶していた。

 彼は、その全ての葛藤を、一つの、あまりにも彼らしい言葉に、集約させた。

 

「…A級になったら、考えます。まだ、B級に上がったばかりだし」

 

 その、あまりにも模範的な、そしてどこまでも先延ばしな、回答。

 それに、青山は、深く、そして完璧な角度で、その頭を下げた。

「ええ。お待ちしております」

 

 その、あまりにも完璧な、営業トーク。

 それに、健司がぐうの音も出ずにいた、まさにその時だった。

 プールの、向こう側から。

 三人の少女たちの、楽しそうな声が、彼を呼んでいた。

「ボスー!こっちも、一緒に見て回ろうよー!」

 

 その、あまりにも無邪気な、そしてどこまでも抗いがたい、誘いの言葉。

 それに、健司は、はっとしたように我に返った。

 そして彼は、青山へと、その最後の、そして最も重要な言葉を、告げた。

 その声は、どこまでも、面倒くさそうだった。

「…すみません。呼ばれたので、行きましょう」

 

 彼は、そう言うと、その三人の、あまりにも手のかかる「部下」たちの、その元へと、その重い、しかしどこか軽やかな足取りで、歩き始めた。

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