帰還系サキュバス魔法少女 作:エルフスキー三世
このお話はラブコメのタグを入れてもいいのかな?
放課後
「あらま……」
放課後の喧騒が遠ざかりつつある校舎玄関。
ボクは、濡れたコンクリートタイルの匂いに気づき、思わず顔をしかめた。
スニーカーに履き替えたばかりの足を止め、曇天の隙間から細く落ちてくる雨粒に目を細める。
「しまった。傘、持ってきてなかったなぁ……」
鞄の中を確認するが、折り畳み傘は見当たらない。
今朝は晴れていたから油断した。
学校から家までの距離は徒歩30分ほど。
小雨とはいえ間違いなく濡れネズミになる。
濡れたら眼鏡が曇って見えにくくなるし、制服も乾かさなきゃいけないし、風邪も引くかもでいいことは何もない。
どうしたものかと考えあぐねていたそのときだった。
「
涼やかな声が背後から響く。
振り返ると、そこにいたのは無骨な黒の傘を片手に持つ
彼女は相変わらずの美貌に、眠たげな目を少しだけ開き、ボクをじっと見つめ……
「傘を……忘れたのかしら?」
「あ、ええ、そうです。今朝は忙しくて天気予報を見てこなかったんですよね」
「そう……」
ボクは曖昧に笑って答える。
佐伯さんは雨の降る校庭に視線を向け、それからボクにまた視線を戻し、それを何度か繰り返した。
その動作はまるで何かを決意する儀式のようだった。
というか、小さく「よし……」と呟いていた。
「……これ」
彼女は自分の傘を軽く持ち上げて見せる。
「よかったら……か、傘に入っていく?」
一拍置いてから放たれたその言葉に、ボクは『おっ』と小さく声をもらす。
いつも一人で静かに帰る彼女が、こうして傘を差し出してくるなんて。
しかも、その声には普段の淡々とした響きとは微妙に違う、僅かな緊張と期待が混ざっているように感じられた。
刻んでしまった淫紋の効果なのだろうか、彼女の感情がほんのりと伝わってくる。
佐伯さん……ボクのこと、かなり意識してる。
ボクは微笑みながら頷く。
「佐伯さんありがとう。お世話になります」
「あ……構わないわ。お互い様よ」
佐伯さんはいつものクールな声で言い、傘をさしかけてくれた。
並んで歩くと佐伯さんの背の高さと足のコンパスの長さ、そしてボクのドチビ具合が実感できた。
それでも並んで歩けるのは、佐伯さんがボクの短足*1な歩幅に、自然な感じで合わせてくれているからだろう。
佐伯さんって男の子だったら*2女の子に凄いもてそうな気がするなぁ。
雨音が二人の間に響き、周囲の喧騒を遠ざける。
自然と距離が近くなる。
佐伯さんの腕がボクの肩に触れた。
「少し寒いわね」
「ええ、雨が降ってるせいですかね?」
「そうかも」
そんな他愛もない会話を交わしながらボクたちは歩いていく。
傘の下、雨に濡れないようにぴったりと寄り添って歩く。
見あげると、ボクの視界の端で、佐伯さんの耳がほんのりと赤くなっているのが確認できた。
そして、彼女がボクの横顔をちらちらと盗み見ていることも。
うーん、佐伯さん本当にボクのことが好きなのね。
まあ、おかず*3にするくらいだし好意くらいはあるよね?
で、肝心のボクの気持ちだけど。
前世男だった記憶を持つボクにとって恋人が同性でも問題ないというか、むしろ男を相手にする恋愛のほうが難しいまである。
そういう意味では佐伯さんみたいな美人でスタイルよくて性格も悪くないお得感満載の人だったら、こちらからお願いしたいくらい。
でも、佐伯さん、マジカルスティックを標準装備しているんだよねぇ。
「……阿江木さんは」
佐伯さんが突然、言葉を選ぶようにゆっくりと口を開く。
「何か趣味はあるの?」
「え、趣味ですか? えっと……私は読書くらいかな。あ、あと猫ちゃんと遊ぶのが好きですね」
「そう、猫ちゃん……猫を飼っているの?」
「昔は実家で飼っていたんです。今は叔母さんの家で居候していて……住んでる家が、お好み焼き屋を経営してるんでペットは飼えないんですよ」
「そう……」
会話は途切れる。
けれど、不思議と気まずくなかった。
むしろ、佐伯さんとの間にある沈黙が心地よいとさえ思える。
とまあ、ボクはそんな感じなんだけど、佐伯さんは逆に沈黙を恐れるかのようにソワソワしていた。
佐伯さん、頑張って話題を探そうとしてるなぁ……
彼女がボクとの共通点を見つけようと、必死になっているのが伝わってくる。
彼女にとっては、今日は絶好の機会というやつなんだろう。
同じ傘に入って、二人きりで話す機会。
これを逃すまいとしている。
私はあなたに興味を持っています……そう、アピールできるチャンスだ、がんばろう!
という強い感情が、痛いほど伝わってくるのだ。
きんた……廃棄魔力貯蔵タンクに刻んだ淫紋のおかげでね。
まあ、佐伯さんみたいな人に、そこまで思われるのは悪い気はしない。
「あ、あの」
不意に佐伯さんが立ち止まった。
傘が傾き、雨粒が頬に落ちる。
「何ですか?」
ボクも足を止める。
佐伯さんは俯いて、口ごもりながら、ぼそっと言った。
「よかったらだけど……あ、明日も一緒に帰らない?」
一瞬の沈黙。
雨音だけが支配する空間。
佐伯さんを見ると、傘の柄をもつ指が強く握られているのがわかる。
ボクは……
「いいですよ、こちらこそよろしくです」
にっこりと微笑み、そう答えた。
佐伯さんの顔がぱっと明るくなる。
それは普段のクールな彼女からは想像もできない、年相応の純粋な喜びの表情だった。
そして『よし!』といった感じで、小さく拳を握っているのが見えた。
なんだか一生懸命で可愛いなぁ……
ボクは佐伯さんの行動を見て改めてそう思った。
彼女の気持ちは淫紋がなくても、とても真っ直ぐで分かりやすい。
分かりやすいけれど、ボクは気づかないふりをする。
それが良い女ってやつだからね*4
なんとなく嬉しくなって、佐伯さんの腕に手を伸ばして組んでみた。
本当は手を繋ごうとしたんだけど、佐伯さんは片手にカバン、片手に傘を持ってるので、腕組みで妥協することにしたのだ。
ボクの無駄にデカいおっぱいが佐伯さんの腕にムニュって感じで当たってるけど*5気にしない。
「ひゃ!? あ、阿江木さん!? あの、当たっているわよ!?」
「友達らしく手をつなごうとしたんですけど、佐伯さん傘を持っているから腕組みにしました」
「と、友達? いや、でもその、本当にもの凄いモノが当たっているんだけど!?」
「先ほどのやり取りで、佐伯さんと私は友達だと、そう思ったんですけど……私の勘違いでしたか?」
そう言ってボクは自分のおっぱいをより佐伯さんに強く押し付けた。
佐伯さんの顔がトマトのように真っ赤になり、傘を持つ手が震えているのがわかった。
だけど振り払われるどころか、そのまま受け入れてくれた。
そして……
「ええ、そうね、友達だと思う、私たち」
「……本当は迷惑でしたか?」
「そんなことない! いえ、その、すごく嬉しいわ……」
珍しく大声をだした佐伯さんの瞳が熱を帯びる。
「阿江木さん……あのね」
「何ですか?」
「あの、私ね……」
雨が少しだけ弱くなってきた気がする。
「……ごめんなさい、なんでもないわ」
佐伯さんは小さく首を振った。
代わりに、ボクの肩にそっと寄り添ってきた。
そうやって二人で、またしばらく歩いた。
**
「あ、私の家はもうすぐそこなんで、ここで大丈夫ですよ。送ってくれてありがとうございます。それでは佐伯さん、また明日」
ボクがそう言うと彼女は小さく頷き、名残惜しそうに離れた。
「ええ、また明日……」
去っていく佐伯さん。
その歩き方がいつもより少しぎこちなく、そして前かがみになっていたのは、まあ、ご愛敬かな。
そのことについて、ボクは良い女だから気がつかないふりをする。
***
そして深夜。
空には星一つ見えない。
鬱蒼とした木々の陰から、禍々しい気配が漂ってくる。
ボクは金髪ツインテールを揺らし、ドスケベゴスロリな姿で闇の中に身を隠す。
サキュバス状態のボクの赤い瞳は、暗闇の中でも鮮明に見ることができる。
連日連夜、何度消滅させても、まるで湧いてくるゴキブリのように現れるダークプリズンの怪人に少々うんざりしていた。
でも今日は少し様子が違うようだ。
「グルル……ガァアアアアッ!!」
地を揺るがす咆哮と共に現れたのは、漆黒の鱗を持つドラゴンのような巨漢の怪人だった。
その爪は電信柱を飴のように両断できそうなほど鋭く、口からは紫色の瘴気がゴホーと漏れ出している。
「あは♡めっちゃ強そうじゃない♡」
ボクのテンションが少しだけ上がる。
強い相手を倒せば、より多くの
レベルアップにも繋がる。
そうすれば、アホ淫魔ドスケベ界から遊びに来る*6どうしようもないエロ魔人どもを三こすり半で
まあ、それに、弱すぎる相手は拍子抜けするというか、やっぱり戦うのなら歯ごたえがあるほうが良いのだ*7
「ではでは、やりますか♡」
ボクはルンルン気分で、足を踏み入れた。
そのときだった。
「はぁっ!!」
凛とした声が響き渡る。
青白い閃光が走り、ドラゴン型怪人の巨体がよろめいた。
そこに立っていたのは──
「魔法少女アイス……!?」
長く白い髪が風に舞い、学生服とドレスを組み合わせたようなデザインの衣装を身にまとう清楚な美貌をもつ魔法少女アイス。
優雅な動きで氷属性の魔法を放ち、ドラゴン型怪人に果敢に立ち向かっている。
しかし……
「キシャァアアアッ!!」
「な、きいてない!?」
ドラゴン型怪人は魔法攻撃に全く堪えた様子を見せず、それどころか太い尾の一振りのみで魔法少女アイスを吹き飛ばした。
「きゃあっ!?」
彼女は木の幹に叩きつけられ悲鳴を上げる。
「うぅ……」
地面に倒れ込んだ彼女に、ドラゴン型怪人が覆いかぶさるように迫った。
「グルルル……」
鋭い爪が魔法少女アイスの体を押さえる。
そしてドラゴン型怪人の背中から伸びた太く長い数本の触手が、彼女の両手足をそれぞれ縛り上げた。
「くっ……離れなさい……!」
必死に抵抗する魔法少女アイス。
だけど、触手は容赦なく彼女のスカートを引き裂こうと蠢く。
「あ、まずい♡」
様子見していたボクは慌てて飛び出した。
魔法少女アイスのスカートが左右に引っ張られ、生地がびりびりと裂ける悲鳴と、彼女の眩しいほど白いインナーショーツが見えて……!
ボク加速! 地面を一気に駆けぬける──
「お待ちどうさま!♡」
ゲシッ!!
ドラゴン型怪人の頭部に飛び蹴りを食らわした。
「く、アイスブレス!!」
悲鳴こそださなかったが、グラリっと大きく態勢を崩し隙を見せたドラゴン型怪人に、魔法少女アイスが体全体をつかって放った魔法が直撃する。
ドラゴン型怪人はその場から吹き飛ばされた。
ボクは触手に捕らわれた彼女の前に立つ。
「は~い♡サキュバスリリムちゃん満を持して登場よ!!♡」
「あなたは、昨日の……」
「あはん♡その目に毒なドスケベ衣装は魔法少女の最先端なのかしら?♡♡中々にイカしてるじゃない?♡♡♡」
驚いた表情を浮かべる魔法少女アイス。
「おっと話は後ね♡まずはこのトカゲちゃんにキツイお仕置きをするわよ!♡」
ボクは魔法少女アイスをいまだに拘束している触手を掴み「せーの!!♡」力任せに引き千切った。
「ギシャアアアッ!?」
よほどの痛みだったのか、ドラゴン型怪人が激怒したように吠える。
「はいはい♡うるさいうるさい♡ざぁこざぁこ♡」
だから……
「もう、消えちゃえ!♡♡♡」
ボクは十分に
そして再度加速。
突進──攻撃回避──ゼロ距離!
「無にかえれ!」
掌底から放たれた光がドラゴン型怪人の巨体を包み込む。
「ギャアアアアアッ!!」
断末魔の叫びと共に怪人は消滅した。
「ふぅ、なんとかなったわね♡」
ボクはかいてもいない汗を拭うそぶりをして、魔法少女アイスに向き直る。
彼女はまだ地面に倒れたまま、息を荒くしていた。
「魔法少女ちゃん大丈夫?♡」
ボクは手を差し伸べる。
「え、ええ……助かったわ」
魔法少女アイスは敵か味方か不明なドスケベ衣装のサキュバスなボクに一瞬戸惑いを見せるも、それでもわずかに微笑み手を取ると、ゆっくりと立ち上がる。
しかし……
「……っ!」
彼女は突然、ビクンと腰を震わせた。
「ん、どうしたん?♡」
「……な、なんでもないわ」
彼女は平静を装うが、その瞳は潤み、頬は紅潮していた。
「まさか……♡」
ボクは魔法少女アイスの手首に付着していた触手の分泌液を指ですくい舐めた。
「あなた!?」
突然の奇行に、魔法少女アイスから悲鳴じみた声が上がるが、ボクはそれに答えず胃の中に入った液体を分析していた。
「あ、これ媚薬じゃん♡*8」
「え?」
「だからBI♡YA♡KU♡清楚で貞淑な聖女でも一瞬でビッチ化*9する強力なやつですよん♡」
そういいながら、ボクは、先ほどから湿った音を生みだしている彼女のスカートを見下ろした。
そこには白濁した大量の液体*10が染み出ており、太腿を伝って地面にボタボタと滴り落ちていた。
「あ、え、なんで?」
「あは♡魔法少女ちゃん媚薬が完璧に決まってますねぇ♡」
「ん、ひぃ!?」
「自覚なしでしーしーお漏らしなんて危険すぎ♡媚薬もしーしー抜き抜きする必要がありまちゅねぇ♡♡♡」
そう言ってボクはサキュバスらしい蠱惑的な笑みを浮かべ、指で架空のナニかを握ってしこしこ上下させた。
「……こ、これは違うわ! ただの廃棄魔力よ!!」
良からぬことになると察したのか、魔法少女アイスは腰を押さえながら後ずさり慌てて否定する。
しかし、その顔は赤らんでいて、うっすらと汗をかき、媚薬の効果が如実に表れていた。
「ふぅん……♡」
ボクはニヤリと意地悪そうに笑う。
「廃棄魔力ねえ……たいして魔法も使ってないのに、魔法少女ちゃんはどうしてこんなにドピュピュしちゃったのかな?♡」
ボクは彼女の破れたスカートに手を伸ばし、そっとショーツの表面を……ドロドロなマジカルスティックを軽く引っ搔いた。
「んひゃあっ!?」
魔法少女アイスは面白いくらいの反応を示し悲鳴を上げた。
「だ、だめよ! 今触ったら……!」
彼女は必死に抵抗するが、生まれたての小鹿のように
「うふ♡ダメって言われると♡余計に触りたく♡なっちゃう♡じゃな~い♡♡」
「い、いやあああああああああああああ!?」
ボクは魔法少女アイスの背後から優しく抱き着いて、彼女のスカートの中にスススっと手を差し込んだのだ。
***
翌朝
教室に佐伯さんが入ってきた。
「佐伯さん、おはようございます」
「……ええ、おはよう」
彼女はいつものようにそっけなく、しかし頬を染めて少しだけ照れくさそうに挨拶を返す。
媚薬の効果は抜いたし*11佐伯さんの体調は大丈夫だとは思うんだけど……
ボクは昨日の激戦(意味深)を思い出しながら、佐伯さんのステータスを確認した。
*佐伯氷菓(女王の淫紋)
昨夜3回
対象:サキュバスクィーン3回
今朝5回
対象:サキュバスクィーン4回
対象:阿江木ゆめ1回
……ん?
ボクは自分の席で、佐伯さんのステータス表示を見て目をこすった。
「今朝、対象:サキュバスクィーン4回」
待って、待って、ちょっと待って!?
昨日の3回は、まーあれは仕方ない、アレは佐伯さんを助けるためだからノーカン。
でも今朝の4回ってのは……
「うそ……これってつまり……」
サキュバスクィーン=自分(普段の自分)ではない存在で佐伯さんが発散してたってことだよね?
「私じゃない私に寝取られたってこと!?」
頭の中で整理しようとするが、全く理解できない。
「いや、寝取られってレベルじゃないでしょこれ……」
ボクは思わず机に突っ伏した。
こんな状況を理解できる人間がどこにいるのだろう。
自分に好意を抱いてるかもしれない相手が自分に寝取られるなんて、哲学的な問題にすら発展しそうな複雑さだ。
「あ、あの……阿江木さん、大丈夫?」
隣の席の子が心配そうに声をかけてくる。
「あ、うん、大丈夫……ちょっと……真理*12について考えていただけ……」
そう答えるのが精一杯だった。
@阿江木ゆめ
なんだか脳みそが破壊されそう(ギギギ)
@佐伯氷菓
浮気はダメだと分かっているのに!
でも……!
最後はゆめさんで……うっ!
@サキュバスクィーン
でちゅねプレイは刺激がつよすぎたかしら……