帰還系サキュバス魔法少女 作:エルフスキー三世
うれしょんしながらお詫びします(深夜テンション
夕暮れの校舎内、そして校庭は、部活動を行う生徒たちの賑やかな声で満ちていた。
ボクは図書室での当番を終え昇降口へと向かう。
頭の中では、朝見た佐伯さんのステータス表示が、相変わらずグルグルと渦巻いていた。
対象:サキュバスクィーン4回
何度考えても理解不能だ。
自分でない自分に寝取られたってどういう状況なのかな?
「……はぁ」
自分に呆れすぎて、やだやだと溜息がでる。
昇降口に入ると、件の人、鞄を持った
片手に持っているのがスマホではなく、黒のブックカバーに包まれた文庫本というところが佐伯さんらしい。
静かに読んでいる姿が本当に絵になってて、とある名家のご令嬢ですと言われてもすんなり信じてしまいそうな透明感がある。
「佐伯さ~ん」
軽く手をあげ、声をかけるとこちらを見る彼女。
いつもどおりの眠たげでクールな表情だけど、ボクを見て少しだけ顔をほころばせた。
「佐伯さん、待ちましたか?」
ボクは平静を装いながら彼女に質問する。
内心は『寝取り寝取られ』で大混乱中だよ氷菓ちゃんと叫んでいたけど、顔には出さないように全力で努めた。
「そんなに待っていないわ」
佐伯さんは小さくふるふると首を左右に振る。
そして何故か言いづらそうに……
「それであの、阿江木さん……?」
「はい、一緒に帰りましょうか」
ボクの言葉に佐伯さんは明らかにほっとした表情を浮かべた。
あら、昨日の今日で約束を反故にされると思ったのかな?
ひどいワン、ボク、そんなやつじゃないニャン。
「さ、行きましょう」
ボクは靴を履き替えてトントンすると、佐伯さんと一緒に校門を出た。
夕陽に染まる街並みを二人で静かに歩く。
昨日と同じ並び順で。
ただ昨日と違うのは雨が降ってないのと、ボクの内心が明後日の方角に複雑骨折していることくらいだ。
佐伯さんの姿は相変わらず美しい。
艶やかな黒髪も、清楚な整った顔立ちも。
夕陽に照らされる彼女の横顔はファンタジー系アートのように幻想的というか、見惚れるほどで──
くく、よく見るのじゃユメよ、こやつ、卑しい寝取られヒロインの
(脳内戦闘開始)ボクはボクの中の
そこから流れるように組み付き、必殺のバックドロップ……1回転……2回転……地獄の3回転だ!!
そのまま乱暴にぶん投げる!
ぐわぁぁ、冗談なのにやりすぎじゃこのおぼこ『ギャー*1』悲鳴がした方向にペペっとつばを吐いた(脳内戦闘終了)
油断すると鬼畜エロ漫画コメディにしようとするのなんなの、ボクの中のエロ魔人は、ほんと。
……まあ、あれです。
別に佐伯さんが何かしたわけではないし、ナニを致したかもしれないけど所詮は妄想にすぎないからね。
彼女が誰をおかずにして何回どぴゅっと発射しようと、ボクは物わかりの良いサバサバした女だからごちゃごちゃ言わないよ*2
それに、元男だから分かるんだ。
シコれる『おかず』はいくらあってもいいっ……!!
え、なによそれ……?
なんて思った女の人のために分かりやすく解説しますと……
たとえば、朝食に目玉焼きを食べるとする、しかし食卓に塩しか調味料が置いてなかったら、流石に飽きがくるでしょう?
たまには胡椒や醤油のさっぱり味、もしくはソースやケチャップなどの濃い味も使いたくなる。
男子のおかずとは、そんなバリエーションを求め、新たな組み合わせに挑戦するトライアンドエラーみたいなものなんだよ。
もっと言うなら毎日、目玉焼きだけじゃなくて、ぶっ太いソーセージとかペロペロ舐めまわしてカプカプ甘噛みしたくなるじゃない?
え、ならない?
……少なくともボクはなるね、それも頻繁にだ!!*3
まあ、そう考えると何となく理解もできるはず。
どちらも、おかずだけにね……!
で、素朴な疑問なんだけど、佐伯さんってボクで致してるとき、攻めと受けのどちらの妄想でしているんだろ?
泣き叫ぶ佐伯さんに騎乗位ガン攻めしている
「今日の授業は難しかったですね」
ボクは当たり障りのない会話を彼女にふった。
「……そうね、古典文法の活用は特に」
そう返答しながらも、どこか心あらずの佐伯さん。
どうしたんだろう?
時折、ポケットに手を入れたり出したりと、何かを気にしている様子だ。
「っ……」
不意に佐伯さんが立ち止まった。
ボクもつられて立ち止まる。
「佐伯さん、どうしました?」
「これ……」
佐伯さんがごくりっと喉を鳴らし、覚悟を決めたかのようにポケットから何かを取り出した。
それは映画のチケットだった。
アニメ映画?
可愛らしい絵柄からみると、プリキュアみたいに家族で観れる
「その、貰い物なんだけど、二枚あって……チケットの有効期限がそろそろ切れるから、それで……」
彼女はそこで一旦言葉を切り、深呼吸をする。
「今度の休みの日に……よかったら……その……一緒に……観に行かないかしら?」
上擦った声でそう告げた佐伯さんの顔は真っ赤になっていた。
耳まで茹で上がってタコさんみたいだ。
ああ、もう可愛いね、抱きしめたいね、これは拉致してくれって淫魔を誘っているんだよね?
……はっ!?
恐ろしい子、佐伯氷菓……!
エロバカ淫魔ヘンタイ界ではピクリとしなかったボクの
「イキます!」
ボクは考える間もなく即答した。
だって断る理由なんて一ミリもないもん。
それに、佐伯さんが勇気ふりしぼって誘ってくれたのだ、断ったら女が廃るってもんよ(江戸っ子)
「ほ、本当に?」
「はい、映画なんて久しぶりなので楽しみです」
「ありがとう……ふふ、私も楽しみにしてるわ」
そして、佐伯さんの一瞬だけ浮かんだ暗い表情に、ボクは確信した。
彼女は一世一代の賭けに出るつもりだと。
つまり、映画を観に終わったあとイイ感じに街をうろつき、ほど良い時間帯になったら人のいないところにさり気なく移動して……
交尾する気だ*5
……いやまてよ、佐伯さんは意外と
うん、ボクは淫魔だからね上の口と下の口どちらでもいけるよ?
とにかく、間違いないね。
ボクはそういう恋人同士の機微には誰よりも詳しいんだ*6
「(オ〇ペットとして)負けませんから(サキュバスクィーンになんて)」*7
「え?」
佐伯さんの疑問の声に対してボクはにっこりと微笑んだ。
***
休日の午後。
映画館の薄暗い照明が少しずつ明るくなり、周囲の観客たちが徐々に席を立ち始めた。
ボクと佐伯さんはしばらく呆然としたように座っていた。
「……あれ?」
ボクは眼鏡の下のまぶたをこすりながら思わず呟く。
「何だか思ってたのと……」
「……全然違うわね」
隣で佐伯さんが小さくため息をついた。
ボクたちがイメージしていたのは、明るくて楽しい魔法少女たちがキャキャウフフと戯れる学園ライフ物だったはずだ。
しかし実際の映画は全く違った。
登場人物は互いを信じきれず、それぞれの秘密や望みを抱え、歪んだ友情関係に翻弄されていく暗い群像劇。
魔法の力も仲間との絆によって生まれるものではなく、孤独と犠牲の末に手に入れる絶望的な代償のような扱いだった。
エンディングも希望に満ちたハッピーエンドというよりは、登場人物たちがそれぞれ新たな苦悩を抱えて彷徨い続けるような、どこか切ない終わり方。
面白いと言ったら面白かったけど……
「……これ、本当に親子で観られる映画なのかしら?」
佐伯さんが、ボクと同じ疑問を呟いた。
「うーん……テーマ的には大人向けっぽいですね」
「少なくとも、小さい子には見せられないわね」
「同感です、たぶんトラウマになりますよね?」
ボクたちは顔を見合わせて苦笑する。
確かにストーリー自体は凝っていて見応えがあったが、期待していたものとは正反対だった。
まあ、作品の捉え方は人それぞれだから仕方ないかな。
さて……
「どうしましょうか? とりあえずお昼でも食べます?」
ボクは時計を見ながら提案する。
「そうね、どこかお店に……」
佐伯さんがそう言いかけたところで、ボクは彼女の言葉を遮るようにバックに入れていた紙袋を見せた。
「はい、これ」
「え?」
佐伯さんが目を丸くする。
「実は今日、佐伯さんと一緒に食べようと思ってお弁当作ってきたんです」
「お弁当……」
彼女は信じられないといった表情でボクを見つめた。
「わ、私のために……?」
佐伯さんの声が少し震えている。
「はい、映画をごちそうになったし、せっかく一緒に過ごすんですから、こういうのもいいかなって」
ボクは照れ臭さを隠すように笑う。
佐伯さんはしばらく紙袋を見つめていたが、やがて顔を上げてボクを見た。
その瞳が潤んでいる。
「阿江木さん……」
「はい?」
「ありがとう……本当に嬉しいわ」
彼女は柔らかく微笑んだ。
ボクの胸が、柄にもなくドキンと高鳴る。
この幼子みたいな無垢な表情……やっぱり佐伯さん純粋で清楚で本当に可愛いな!
どこぞの淫魔アホドスケベ界のエロ魔人どもに佐伯さんの爪の垢を飲ませてやりたいくらいだ!
いやだめ、やつらにはもったいないボクが飲むよ(三杯ほどね!)
「それじゃあ、どこか広くて景色のいいところで食べましょうか」
「ええ、阿江木さん、そうしましょう」
そうして二人で近くの公園に向かった。
子供たちが走り回れるほどには広い敷地内、家族連れらしい人たちがまばらにいた。
そんな穏やかな陽気の中、空いているベンチに座ってランチタイムを楽しむことにした。
お弁当の蓋を開けると、サンドイッチをメインとし、鳥の唐揚げやフライドポテト、卵焼きといったピクニックって感じのおかずたちが詰め込まれて並んでいる。
「……すごいわね」
佐伯さんが感心したような声をあげる。
「あはは、作りすぎて入れたらこうなってしまいまして」
「……料理上手なのね」
「ありがとうございます」
「食べてもいい?」
「ふふ、もちろん」
ボクは紙の取り皿と箸を佐伯さんに渡した。
佐伯さんがおずおずと箸をつけ始め……
「美味しい……ええ、本当においしいわ」
「えへへ、佐伯さんお料理上手な印象あったからお口に合ってよかったです」
「そんなことはないわよ。料理なんて全然しないし、普段はレトルトばかり食べているの……」
あ、そうなんだ。
「それじゃ今度、佐伯さんの家に料理でも作りに行きますか?」
「……!?」
佐伯さんがごほごほと蒸せた。
ボクは慌てて水筒を佐伯さんに渡した。
「大丈夫ですか佐伯さん!?」
「げほっ、げほっ……平気よ」
彼女は咳込みながら答えたが、その頬は赤く染まっている。
「……そんなこと、急に言われても困るわ」
「そうなんですか? 私が佐伯さんの家に行っても迷惑かな」
「そんなことはないわ!」
佐伯さんが勢いよく否定した。
そして恥ずかしそうにぼそぼそと続けた。
「むしろ……いつでも来て欲しいくらいよ」
「じゃあ今度、佐伯さんの都合の良い日に伺いますね。それまでにレパートリー増やしておきますから」
佐伯さんは恥ずかしそうにうつむいた。
彼女は再び弁当を食べ始めた。
その時だった。
「グルルル……」
低く、しかし力強い唸り声が聞こえてきた。
ボクたちは同時に声の方を向いた。
そこにいたのは、黒い毛皮とトゲトゲの鱗に覆われた巨大な狼のような二足歩行の獣だった。
ナイフのように尖った牙を剥き出しにして威嚇している。
「あれは……」
「ダークプリズンの怪人だ!?」
誰かが叫んだ。
「なぜ、昼間からこんなところに……?」
佐伯さんが呆然と呟く。
狼型の怪人はボクたちと視線が合うと、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
公園にいた人々が悲鳴を上げ、その場から逃げだす。
「阿江木さん、私たちも逃げるわよ!」
「わ、わかりました!」
佐伯さんが、ボクの手を引いて走り出した。
背後からは獰猛な獣の唸り声と、地面を蹴る重く速い足音が迫ってくる。
公園にいた人々はパニック状態となり、あちこちから泣き声や助けを求める声が上がった。
「阿江木さん!」
「ひぃん!?」
不意に佐伯さんが立ち止まり、ボクの腕を掴んで引っ張る。
目の前を狼型怪人が疾風のような勢いで駆け抜けていく。
通り過ぎた後を見てみると、地面にびっくりするくらい深い傷跡が刻まれていた。
危なかった……
佐伯さんが引っ張ってくれなかったら後ろに跳ね飛ばされていたかもしれない……距離にすると日本成人男子の平均ちん長くらいには*8
なんにしてもまずい。
この状態で狼型怪人に攻撃されても死にはしないけど、このまま立ち回るのは人外認定されそうだし……かといって変身しようにも佐伯さんがすぐそばにいるから無理だ。
「う~ん……」
狼型怪人から感じる圧倒的な敵意。
ただの獣ではない。
何故か、ボクたちを標的として明確に狙っている。
害意と殺気を向けられていることが肌で感じられる。
少なくとも昨日戦ったドラゴン型怪人より強さは上か……
「くっ……!」
佐伯さんが悔しそうに唇を噛む。
ゆっくりと、間合いを測るかのように歩いていた狼型怪人が動きを止めた。
そして体を沈め力をためると、再び地を蹴り、先ほどよりも加速してこちらへ突進してきた。
どうみても、
仕方ない、少しでも怪しまれないよう、派手に転んだふりをして一夫多妻去勢拳のカウンターを打ち込もうと決め……
その刹那だった。
「止まりなさい!」
凛とした声が響き渡る。
同時に、地面に太陽が落ちたかのような眩い光が炸裂し、視界が真っ白になった。
「グォォオオ!?」
狼型怪人の困惑したような叫び。
光が収まると、そこには一人の魔法少女が立っていた。
その肌は雪のように白く、腰まである長く白い髪は風もないのに揺らめき、煌めく輝きは見る者の心を奪う。
服装は学生服とドレスを掛け合わせたような独特なデザインで、魔法少女特有のものだった。
そして背中には、天使の羽のようにも見える美しい光輪を纏っていた。
佐伯さんの瞳は
彼女の周囲には、細かな
まるで、凍てつく冬の精霊が具現化したかのような神々しさ。
その美しさに思わず見惚れてしまう。
「佐伯さん……?」
ボクの呆気にとられたような問いかけに彼女は振り返り、そして儚げに微笑んだ。
「阿江木……ゆめさん。私……私ね、魔法少女なの……だから、その誇りにかけて貴方だけは絶対に守るわ!」
彼女はそう宣言すると、再び怪人へと向き直り構えをとった。
「今は私を信じて……ゆめさん、安全な場所まで逃げて!!」
ボクは小さく頷き……
「佐伯さん……まってて! 助けを呼んできますから!」
そう言って駆けだした。
@阿江木ゆめ
いつでもこいやぁ!
ボクはいつでもいけるぞ!
うおお、I字開脚じゃい!
ド真ん中に打ち込んでこいやぁ!!
@佐伯氷菓
いけるかしら……?
いけるはず……!
勇気を出すのよ!!
て、手を繋ぐくらいなら女の子同士だからおかしくないはず!
@サキュバスクィーン
あらあらまあまあ、若い子たちって青春してていいわねぇ(うっとり