時刻は午後17時、夕方。夕焼けが空を染めてカラスがカァーカァーと鳴きながら森へと帰っていく。そんな時間に遊牙は、美智に起こされる。
「起きて……起きて……おーきーてー!」
「うわっー!?あっ……ってここは?」
「ここは?って神社よ神社。用事済ませて帰ってきたら、宝物殿の横に腰かけて寝てるんだもん。起こしたくもなるわよ。それで、何でここで昼寝してたの?」
「えーっと……」
おかしい、確か俺はグールズの速水とか言ったやつと闇のゲームをして勝って……それ以降の記憶が曖昧だな。運ばれたのか?グールズとかいう連中はあの後一体どうなって……
「デッキ!」
俺は慌ててデッキを確認する。メインデッキを一通り見た後にEXデッキを覗くと、そこには「
「夢じゃなかったんだ……!」
カイベルトをまじまじと見る遊牙に、美智が話しかける。
「ねえ遊牙。そのカード何?見たこともないカードだけど……」
「今から言うこと、信じれるか?」
説明中
「そんな馬鹿な事ある訳ないでしょ。」
「いやいや、現に手元にカードあるだろ!」
「それに、闇のゲームで身体が傷ついてとか言ってるけど、服とか体とかに目新しい傷なんて出来てないわよ?」
体を確認してみるも確かに、傷は癒えて、服も修復されている。だが、竜の痣だけはしっかりと残っていたので、夢ではないのだろう。
「でも、その痣っぽいのは見たことあるかも。」
「え、マジ!?」
「ちょっとこっち来て。」
そう言われて美智の後について行くと、そこは神社の拝殿の先、本殿だった。
「おいおい、ここって普通のやつは来ちゃだめの類じゃなかったけ?」
「いいから、あそこ見てみて。」
美智が指を指した方を見ると、そこには俺の右腕に刻まれた竜の頭を模した赤い痣と同じ形の頭を持った竜の紋章のようなものが刻印された扉だった。
「これは……?」
「赤竜神社の本殿に続く扉よ。開いてるとこは見たことないけど、きっと何か関係があるんじゃない?ここで祀ってる神様かなんかじゃない?その遊牙が見た赤い竜って。」
「赤竜神社だから?」
「そうよ」
「安直だな」
「でも、実際似てるでしょ?」
「そうだけどさ、本当に関係あるのかねえ。」
ぐぅぅぅぅと腹がなり、拝殿に響き渡る。
「今日そう言えば昼から何も食ってなかったんだった。」
「じゃあ、今日うちで食べてく?」
「悪いって、家で食うよ。」
俺は、別れを告げて拝殿から出て、参道を抜けて、帰路へとつく。正直、今日のことが頭から離れない。グールズだとか、赤き竜だとか、何もかも頭の中から離れようとせず、頭の中で回り続けた。
道路沿いの歩道を歩き、家の目の前に着く。そうすると 家の目の前に着いた瞬間、俺の視界に飛び込んできたのは、見慣れた町の風景とはまるで異なる光景だった。家の前の道路に、黒紫のローブをまとった男と奇術師姿の男が立っていた。グールズだ。さっきの路地裏での一件を思い出し、背筋に冷たいものが走る。だが、さっきと違うのは、彼らの雰囲気が明らかにただのチンピラじゃないってことだ。
「少年、君がシグナーだな?」
奇術師姿の男が、俺をじろりと睨みながら言った。声は低く、どこか楽しげだ。まるで獲物を前にしたハンターのよう。
「シグナー? 何だそれ? またグールズの戯言か?」
俺はデュエルディスクを構えながら一歩前に出る。さっきの闇のゲームの痛みはまだ体に残っているが、逃げるつもりなんてない。美智やこの町を守るためにも、こんな奴らに好き勝手させるわけにはいかない。
「戯言ですか……? フフ、シグナーの力を知らずにその痣を刻まれたのか。無知なガキですねえ。だが、まあいい。私たちの目的は、その腕の痣とそのカードだ。渡せば命だけは助けてあげましょうか?」
男が指したのは、俺の右腕に浮かぶ赤い竜の痣。カイベルトを召喚した時に現れたあのマークだ。カードってのは、きっと「
「悪いな、俺はカードも命も簡単にくれてやるタイプじゃねえ。デュエルで勝負しろよ!」
奇術師はニヤリと笑い、デュエルディスクを構える。その背後の男も一斉にディスクを展開し、俺を取り囲むように配置につく。1対1じゃなく、複数でのデュエルを仕掛けてくるつもりらしい。だが、その時
「——遊牙!」
聞き慣れた声が背後から響いた。振り返ると、そこには美智がいた。巫女服姿のまま、デュエルディスクを腕に装着し、息を切らしながら参道を駆け下りてくる。
「美智!? 何でここに!?」
「遊牙の話聞いてたら、なんか嫌な予感がして追いかけてきたの! やっぱり何かあった!」
美智が俺の隣に並び、デュエルディスクを構える。男は面白そうに目を細める。
「ほう、巫女さんまで参戦か。面白いです。なら、2対2のタッグデュエルで遊んであげましょう。私とこいつでね。ルールは簡単、ライフポイントは共有の8000ポイント。あなた達が負けたらその痣とカードをデッキごと頂く!」
「ふざけんな!さっきの話と違うだろうが!」
「黙れ、ガキ。私たちの主が欲しがるものを手に入れるためなら、どんな手段だって使う。それがグールズだ!デュエルの申し出を受けてもらってるだけ、ありがたく思いな。」
男の言葉に、美智が一歩前に出て俺を庇うように立つ。
「遊牙、こいつらの目的は絶対にヤバいよ。だから、この町を守る巫女として、私も戦う!」
美智の瞳には、いつものおどおどした雰囲気はなく、あの時、俺を助けてくれた時のように強い決意が宿っていた。俺は小さく頷き、デュエルディスクを起動する。
「よし、なら一緒にぶっ潰してやろうぜ!」
「ンフフフ……奇術師相手のカード勝負が如何に恐ろしい行為であるか、教えてあげましょう。」
「「デュエル!」」
「先行は私が貰います!永続魔法「冥界の宝札」を発動し、「召喚僧サモンプリースト」を召喚。このカードは、召喚時に守備表示となる。そして手札の
「これで、レベル4のモンスターが揃った……エクシーズでも出す気か?」
「さあ、舞台は整いました。見せてあげましょう。奇術師パンドラの大デュエルショーを!私は「魔道化リジョン」の効果でこのターンに魔法使いをもう1体召喚できる。私は、「召喚僧サモンプリースト」と「魔道化リジョン」を生贄に捧げる。ハハハハハ!出でよ!「
現れたのは、赤紫の衣装と褐色肌に不敵な表情を浮かべたブラック・マジシャンの姿だった。
「ブラマジデッキだと!?」
「その通り、私こそが真のブラック・マジシャン使い。あの武藤遊戯とかいうデュエリストに一度は敗れたが。私はあいつなんかよりずっと正統なブラック・マジシャン使いだ!」
精神異常者か?武藤遊戯って言うとあの伝説のデュエリストのことだろうが、それはもう100年以上前の話。こいつが仮に武藤遊戯と戦ったとして、こいつの年齢も150歳とかになってるはずだ。ありえない。
「「冥界の宝札」の効果が発動し2枚ドロー。さらに「魔導化リジョン」の効果発動!このカードが墓地に送られた時、デッキからもう1枚の「ブラック・マジシャン」を手札に加える。そして、これがあなた達を死へと誘う魔法カードです!永続魔法発動!「エクトプラズマー」!この
「「エクトプラズマー」だと!?」
「カードを1枚伏せ、先行は最初のターンバトルフェイズを行えない。だが!ターンを終了するこの瞬間!「エクトプラズマー」の効果が発動!ブラックマジシャンを、エクトプラズマーに変換します!」
「自らのエースを躊躇いもなく、エクトプラズマーに変換しやがった!?」
「最初に言ったでしょう、私は手段を択ばないと!勝利を収められるなら安いものです!エクトプラズマー砲撃!」
エクトプラズマーが美智に向けて発射される。俺は美智を突き飛ばして、代わりにエクトプラズマーの直撃を食らう。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
[遊牙&美智
LP:8000→6750]
「遊牙!」
「はぁ……まだ耐えれるな……」
「なによこれ、遊牙の額から血が……遊牙に何をしたのよ!」
「そちらの巫女さんは、闇のゲームは初めてですか?知らなくても無理もありませんが、簡単な説明だけしておきましょう。デュエルで受けるダメージは現実のものとなります。気を付けてくださいねえ。そこで息上がってるガキのようになりたくなければ、サレンダーしてもらっても構いませんよお?ひゃはははは、楽しーい!サイコー!」
「遊牙君……」
「大丈夫だ、美智。ドローするんだ、お前のターンだぜ!」
美智の手が震える。デッキに延ばす手が震えている。恐怖を押さえ込み、デッキに手を伸ばす。
「わ、私のターン!ドロー!私は、手札から「
これで、美智のフィールドにレベル4のチューナーと非チューナーが揃った。
「私は、レベル4の「
「何と悍ましいモンスターを従えていますねえ。」
「「巨骸竜フェルグラント」の効果を発動!このカードの特殊召喚成功時、相手フィールド、墓地のモンスターを除外する!バース・エクスクルード!」
「なるほど、こちらの「ブラック・マジシャン」を警戒してきましたか。いいプレイングですが、まだまだ甘いですねえ!永続
対象が居なくなったことで、「巨骸竜フェルグラント」の効果は不発。「ブラック・マジシャン」は、通常モンスターだから2つ目の効果も効かない。うまく躱しやがった……こいつ、奇術師と名乗るだけあって判断力が高い……
「「巨骸竜フェルグラント」で「ブラック・マジシャン」を攻撃!
「んっん〜、破壊されましたか。ですが、次のターンには蘇らせるのでいいでしょう。」
「くっ、カードを2枚伏せてターンエンド。」
「おやおや?よろしいのですかターンエンドで?」
「どういうこと?」
「「エクトプラズマー」の効果はお互いのターン終了時に訪れる強制効果ですよ?モンスター1体だけではエクトプラズマーはそのモンスターの破壊耐性を無視し、エクトプラズマーに変換し墓地に送らせます。」
「つまり、モンスター1体だけだと場にモンスターが残らずにがら空きになるってことか...…」
巨骸竜フェルグラントの体がエネルギー体となって崩壊していくと、パンドラの方へと発射される。
[パンドラ&グールズ
LP:8000→6600]
「フェルグラントが……」
「いやはや効きますねえ。下っ端ロボット。お前のターンだ。」
「ターン開始。ドロー。永続魔法「
「こっちも早々にエースを召喚してきたか……」
「墓地の「
「モンスターが3体……来るか!」
「現れよ、魅惑のサーキット。アローヘッド確認、召喚条件は魔法使い族モンスター3体!3体の「
[「
ATK:2500→4000]
攻撃力4000!?しかも、あいつのフィールドには攻撃力1500の「
「バトル。「
「美智!」
「わかってる!
「攻撃の巻き戻しが発生。バトルを続行。「
「永続
「バトル終了。リバースカードを2枚セットし、ターン終了時に「エクトプラズマー」を発動。「
「ブラック・マジシャン!?」
ソリッド・ビジョンが実体化してやがるのか!?クソッ抜け出せない!美智に直撃しちまう!
「美智ー!!!」
[遊牙&美智
LP:6750→6000]
美智にエクトプラズマーが直撃する。傷だらけになるかと心配したが、いらない心配だった。
「フェルグラント……?」
フェルグラントが美智の体を守っていた。ライフこそ減っているものの、フェルグラントが美智に立っていた。
「巨神竜は腐っても巨神竜ですか、相当そのカードを使い込んでいるようですねえ。(カードの精霊とのコミュケーションができるようですねえ……これは早急に潰す方がいい)」
「さっきは、よくもやってくれたな!俺のターン!ドロー!手札から
「同じ縦列にカードを並べて、何の意味が……」
「そして、手札から「鉄騎竜ティアマトン」の効果を発動!このカードは通常召喚できない代わりに、同じ縦列にカードが3枚以上ある時、手札から特殊召喚できる!俺は、「永遠の魂」と同じ縦列に特殊召喚!そして、このカードの特殊召喚成功時、特殊召喚した同じ縦列のカードを全て破壊する!確か、「永遠の魂」には1つ弱点がある。それは破壊された時に発生するモンスターを巻き込んだ自壊デメリット!」
「それを私が対策してないとでも?下っ端!」
「永続
「コンビネーションが取れてやがる……だが、これでこっちも出せる条件は整った!俺は!レベル4の「鉄騎竜ティアマトン」にレベル3の「チューン・ウォリアー」をチューニング!遥かなる星々の果て、闇の軌道を切り裂く刃よ!凍てつく虚空に響け!シンクロ召喚!飛来せよ、「
「出ましたね、新たなるシグナーの竜。」
「これが、遊牙君が言っていたモンスター……」
「ああ!こいつが、俺の新たな相棒!カイベルトだ!!行くぜー!カイベルトの召喚時効果発動!フィールドのカード1枚を破壊できる!俺は、「
「「
「させない!永続
カイベルトの一撃が
「だが!貴様が召喚したモンスターは守備表示。このターンは攻撃は行えない。」
「それはどうかな。ユニオンモンスター「トルクチューン・ギア」を通常召喚し、効果を発動!カイベルトに装備魔法扱いで装備することで、カイベルトの攻守を500ポイントアップさせ、チューナーとして扱う。そして、装備魔法「ラプテノスの超魔剣」をカイベルトに装備させてバトルフェイズに入る!」
「攻撃不可能なモンスターに装備魔法を付けるなど愚策ですねえ……何!?やつのモンスターの表示形式が変更されているだと!?」
「知らないのか?「ラプテノスの超魔剣」にはお互いのバトルフェイズ開始時に装備モンスターの表示形式を変更できる。さらに、その後、モンスターの召喚が行える!俺は、手札から「ネクロ・ガードナー」を召喚!そして、カイベルトで攻撃表示のブラマジを攻撃!
[パンドラ&グールズ
LP:6600→6100]
「くっ……私のブラック・マジシャンが……」
「さらに、カードを1枚伏せ、「ネクロ・ガードナー」をエクトプラズマーに変換!頼むぜネクロ・ガードナー!」
[パンドラ&グールズ
LP:6100→5800]
「これでターンエンドだ。」
「あなたのターン終了時に、破壊された「ブラック・マジシャン」を復活させます。まさか、ここまで耐えられるとは思いもしませんでしたよ。そちらの巫女さんもいます、ここからはエンタメを捨て。本気であなた達を殺しにかかるとしましょう。」