博士とセーラの交換日記   作:もちもち物質@布団

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11月4日:セーラ

 シンセティックユテレッサーは全て順調に動いています。このまま様子を見ましょう。

 今のところは全ての機体において実験を継続していますが、10日経過時には1割が失敗しているでしょう。

 30日時点で半分残っていればよいのですが。

 

 今回の研究を進めるにあたって最も役立った知識があるとすれば、チハラさんが教えて下さった機器組み立てや改造に関わる諸々の事でしょうか。

 チハラさんは機器をご自分で作ってしまう方でしたから、専門分野以外の知識も教えてくださいました。

 今回、シンセティックユテレッサーを稼働させるに至るまでにも、チハラさんから頂いた知識を存分に生かすことができたと思っています。

 チハラさんの機器製作は何分、精密さからは程遠いものでしたが、資源不足の状況下においてはとても合理的なものであったと言えるかもしれません。

 ……今回、水製造機や送液ポンプの破損部分をパラフィンで固めましたが、これはチハラさんに教えて頂いたことでした。粗雑な修繕ですが、確かに、『熱が加わる訳でもないんだからこれでいいんだよ』と仰っていたチハラさんは正しかったですね。

 知識は論文や学術書で補填できます。しかし、実技に関わる事については、補填が難しいのです。

 チハラさんに感謝しています。だからこそ、もっと長く、傍に居て頂きたかった。

 

 シンセティックユテレッサーの稼働と並行して、もう1つの作業を進めようと思います。

 本来ならば、新しくシンセティックユテレッサーを試作して並行稼働させていった方がよいのでしょうが。

 その為、今まで手を付けてこなかった分野の論文を読んでいます。

 フジさんやフナダさんの論文、シバタさんの論文、それから博士の論文が主です。

 一通り、基本は教えて頂いていますから、論文を読み解くための苦労はありません。以前、何も学習していない状態で博士の論文を読んだ時は、単語1つ1つを逐一検索して読み解くような有様でしたし、各工程が何のためにあるのかも理解できていませんでしたから、当時と比較すれば、現在はかなり良い状態であると言えるでしょう。

 しかし、圧倒的に知識が足りません。特に、AE関係については知識が全く無いと言ってもいいでしょう。

 AEの実物を見た事はあっても、分解したことはありませんでした。理論についても、ほとんど理解していません。こちらは本当に0からのスタートになりそうです。

 もう少し、こちらの分野も学べていたらと思います。

 

 ところで、博士は、こちらの分野は私にとって優先順位が低いと判断なさったのですよね。だからこそ今、私はこちらの分野の知識がほとんど無い状態なのですから。

 勿論、その優先順位が間違っていたとは思いません。博士の判断は正しい。現に私は今、シンセティックユテレッサーを稼働させるに至ったのですから。

 ……なので、博士を糾弾するつもりはありません。

 これから、長くかかるかもしれません。或いは、論文が見つかれば案外早く終わるかも。

 後者を期待しています。

 

 明日は、古い論文を探してみようと思います。

 できれば、ローラ・ディルクルム博士の論文が見つかればいいのですが。

 

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