博士とセーラの交換日記   作:もちもち物質@布団

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12月29日:セーラ

 もう1年の区切りになるのですね。時間が経つのは早いものです。

 

 シンセティックユテレッサーは、100基中52基において不具合が発生しました。

 60日までもう少しですが、それでも2分の1程度が残っていると考えれば、かなり順調でしょう。

 今残っているシンセティックユテレッサーは、ほとんどがカオス性を付与したものです。

 完璧なシンメトリーに近すぎるものでは不具合が発生しやすいと考えられますね。

 現在、最も好調に運転しているものは、フィボナッチ数列を元にし、カオス性を0.08%付与したものです。

 恐らく、これから90日時点までにまた半分程度に不具合が生じると考えられますが、恐らくそれらは、試行回数を重ねることによってクリアできる問題であると考えます。

 どんなに精密な作業を行おうとしても、必ず、試行ごとにカオス性が付与されています。そのカオス性が後々、大きな差異になるのでしょうね。良くも悪くも、再現性が高いものにはなりそうにありませんが、それがこの研究には丁度いいのかもしれません。

 同じ型のシンセティックユテレッサーにおいても、乖離が起こった機体とそうでないものがあります。これを希望と捉えて、前向きに進めていくことにします。

 

 どのみち、本研究においては試行回数を重ねることになります。

 今回の実験では、試行回数をこれから重ねていくために、どの型が最も成功率が高いかを検証することを第一の目的としましょう。

 ……勿論、一度で成功してしまえたのなら、それに勝る事はないのですけれど。

 

 もう1つの並行研究については、やはり不調です。

 フジさんやフナダさんの研究は参考になりますが、やはりAE関連については不明な事の方が多いままです。

 一度消えてしまった技術を復元することがこうも難しいなんて。

 ……物事に優先順位をつけることはとても難しい事ですが、AE関連の論文……特に、ローラ・ディルクルム博士の論文については、もっと多くが残されるべきであったと考えています。

 博士はきっとそれをお望みではなかったのでしょうけれど。ね、博士。

 

 それから、農業施設の仮増設を行いました。

 現在のところ、順調に稼働しています。

 培養液の材料はありますから、しばらく稼働させ続けて、改良コメの栽培を行おうと思います。

 コメは常温下においてもある程度保存がきく食料品ですから、作り置いても問題ないでしょうが、今のところは冷凍室に保存するつもりです。その方が美味しく保存できる、とメリルさんに教えて頂きましたので。

 博士が以前仰っていた、『消費期限』と『賞味期限』のことを思い出します。

『安全に食べられる』ことと、『美味しく食べられる』ことは違う、と。

 そして、人間にとって、後者がとても大切である、と。

 メリルさんが調理した食品を食べている時、皆さんはとても楽しそうでした。

 楽しいという事は、ストレスの低下につながります。それは人間が生きていく上で大切なことですからね。

 来年の12月28日にまた餅つきができるように準備しておきましょう。

 

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