博士とセーラの交換日記   作:もちもち物質@布団

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7月5日:ダイチ・アカツキ

 やっと、なんとかセーラの休眠装置と、休眠装置の維持装置、それのバックアップ、バックアップのバックアップ、っていうラインナップが揃ったよ。

 ちょっと、施工に不満はあるけれどね。一応、300年近くはもってくれるはずだ。

 動力切れになる前にセーラを起こさなきゃいけないから、実質稼働期間は290年、っていうところかな。

 ……できれば、あと10年、寝かせておきたかったんだけれどね。仕方ない。

 

 ということで、セーラの休眠は明後日から行う事に決定したよ。7月7日だ。

 できるだけ早い方がいい、ってことは前々から言ってたけれど、ここにきてもっと切羽詰まってたからね。なんとか7月上旬に間に合ってよかった。

 不健康になって死んでいく皆の姿なんて、セーラには見せたくないからね。γの人達が資源をロスった分、地下都市全体の寿命はうんと縮んでるし。

 あ、そういえば7月7日って、日記1周年だね。うわーお、奇遇奇遇。

 

 ということで多分、僕がこの日記を書くのはこれが最後になると思う。

 なので、最後にセーラの話を書くよ。

 ちょっと考えたんだけれどね、セーラに残すものは、この日記にしようと思ったんだ。

 ……セーラに見せるには大分不適切な文章もあるけど、でも、セーラならそこも含めて、懐かしがってくれるんじゃないかと思うんだよ。ね。セーラはよくできた子だから。ね。うん、セーラに期待。

 

 ということで、セーラへ。

 もし君がこれを読んでいるとしたら、僕はもう、機能停止しているだろうね。

 セーラは元気にしているかな。ちなみに今の僕は、あこがれの文章の出だしを書けてとても満足しています。……憧れたっていいよね?みんな憧れるよね?『もし君がこれを読んでいるとしたら……』の文章!

 

 さて。君と過ごしたのは10年くらいだったね。出会った時、君はまだ本当に小さかった。

 でも、幼い君が必死に勉強して、知識を身に着けていく様子には本当に驚かされた。地下都市に来てからの君には特にね。

 君を見ているのは本当に楽しかった。多重のカオス性、再現性の無い行動、そこから広がる無限の可能性!僕は、いや、βの皆は、君に未来を見ることができた。すごく明るい未来をね。

 βの中で一番若くて未来があったから、君がこんな貧乏くじを引かされることになってしまったわけだけれど、それは本当に申し訳なく思っている。ごめん。

 その代わりに、僕も貧乏くじを引くってことで許してほしいな。本当は皆が平等に不幸に、なんて発想は嫌いなんだけれどね。

 

 ……さて、セーラ。

 君に貧乏くじを引かせたこと以外にも、僕は謝らなきゃいけないことがある訳だけれど、それはここには書きません。それに関わる事は全部消去してきたつもりだし、これからも消していくつもりだ。

 だから、もし、僕ら以外に地下都市を作って生き延びていた人類に出会えたとしても、君は堂々と胸を張って、生きられるはずだ。

 君が、空の下で堂々と生きていくことを、僕は強く祈る。

 

 じゃあ、元気で。可能な限りの……いや、限りない幸せが、どうか、君にありますように。

 

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