たりないふたり   作:夕暮

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プロットなんにも作ってないのでほんとに大変でした


うしなったふたり

気が付くと、病院のベットで寝ていた。

起きてすぐ目に入ったのは涙ぐんだ親の顔だった。

三ヶ月前に死ぬかもしれないといわれてからのこれだから、かなりの心配をかけただろうと思う。

診察を受けた後医者からは、精神的なもので気を失ったのだろうといわれた。

自分が寝ている間に見守ってくれていたのだろう親に

 

「ゆきちゃんは?」

 

と聞いてみるが、両親はうつむいたまま、答えてくれることはなかった。

後を察した俺は両親に一度部屋から出てもらうよう様に言うと大きな声を出して泣いた。

肺の痛みなんて比じゃないほどの、胸の痛みがこみ上げてきて涙が止まらなかった。

何も伝えられないまま終わってしまった

自分の気持ちに素直になれないまま、何も始まらないまま、消えてしまった。

最後の言葉もまだ聞けてない。こんなにひどいことはない。

親には外に出てもらうように言ったが、こんなに大きな声で泣いてしまったのでは多分聞こえているだろう。

それでも、こんなところは誰にも見られたくなかった。

自分の気持ちに素直になれず、そのまま終わってしまったバカな男の姿など、誰にも見られてはいけなかったのだ。

 

 

泣き止んで時刻がちょうど12時あたりを指したとき、検査も特に問題なかったので退院手続きをしているとき、俺の部屋の看護婦さんだった人が慌てて出てきた。

 

 一緒だったあの子のオペが完了して、意識が目覚められましたよ━━━

 

死んだのではなかったのか、まだ生きているのか

聞き間違えではないその言葉に、静かに涙が出てきた。

面会されますか?と看護婦さんが言うので、退院手続きを親に任せて彼女の部屋へ急ぐ

オペが完了したということはそこまでひどいのか、そんなことを思いながら病院の廊下を少し早歩きで病室まで向かっていく

彼女の病室です、と案内された部屋の名前には確かに彼女の、ゆきちゃんの名前が書いてあって

部屋からはゆきちゃんのご両親の泣いている声、話し声が聞こえていた。

今部屋に入るのは家族水入らずの時間を奪ってしまうと考えた俺は焦る気持ちを抑え、しばらく部屋の前で待つことにした。

 

20分ほどして、部屋からゆきちゃんのご両親が出てきた。

 

「あらシグレ君、あなたも入院したと聞いたけど大丈夫だった?」

「はい、俺はなんとか。.....あの、ゆきちゃんの様子って」

そう問いかけると、少し困ったように

「....親から見ると、少し無理してるように感じるわね。昔っからあの子、私たちに心配させないようにっていつも隠してたから。」

「そう、ですか」

「...こんなことを言うのも変だけど、シグレ君に頼みがあるの」

 

急な言葉に少し驚きながらどうしましたか、と聞き返すと

 

「あの子と少しの間一緒にいてあげてくれない?...あの子、シグレ君といるときはいつも楽しそうで、心の底から笑ってたと思うから」

「わかりました、でもいいんですか?俺なんかで」

「シグレ君だからいいのよ、私と夫はほら、病院の人に話を聞きにいかないといけないし」

 

そういうと部屋の前から歩き出して

 

「あの子のこと、頼んだよ」

 

と言い残して廊下の角に消えていった。

 

 

「シグ君、来てくれたんだ」

 

病院に来てから初めてみるゆきちゃんはいつも通りだった

いつもの元気なゆきちゃん

一つだけ違うのは

 

ベットのシーツのふくらみを見ると、右足のところだけがないのだ

 

「ゆきちゃん...足は....?」

「あの事故でダメになっちゃったみたいで、むしろ左が残ったのが奇跡だって言ってた」

 

しょうがないよね、とあっけからんにそう言う彼女はいつも通りにみえてどこか違う、右足はそうだがなにより

 

「ゆきちゃん」

「どしたのそんなうつむいちゃって」

「無理しなくていいんだよ」

 

ゆきちゃん自身は気づいていないかもしれないが、その顔は今にも泣きだしそうで、それを必死に取り繕ってるようにしか見えなかった。

 

「無理なんてしてないよ~大げさだなぁ」

「...でも俺が癌になった時、ゆきちゃん言ってただろ」

 

━━むりしなくていい

━━ともだちだからいえることもあるよきっと

 

「ほんとに、いいの?」

 

ゆきちゃんは我慢できなくなったみたいに、笑顔が崩れた。

 

「今度は俺が聞くからさ、友達だろ?」

 

 

ゆきちゃんの目から涙が一つ、二つと落ちて

 

「陸上の大会、でたかった」

 

「優勝したかった」

 

「シグ君の隣で、歩きたかった」

 

彼女はぽつぽつとやりたかったこと、できなくなってしまったことを話し始める

かつての自分もこんな感じだったのだろうか、ゆきちゃんを昔の自分に重ねてしまう。

左肺と右足、場所も向きも違えど、失ったことに変わりはない。

失ったものは失ったときはじめてそれの大事さに気づく。

傷の舐めあいかもしれないが、あの日ゆきちゃんに慰めてもらったとき、確かに救われたのだ。

そう思うと心が締め付けられた

そして思わず、あの時ゆきちゃんにしてもらったように、彼女の手を握った。

人の温かさがあの時どれだけありがたかったか、いつかの自分が感じたぬくもりをおすそ分けするように、やさしく手を握っていた。

 

「シグ君....」

 

涙が止まらない彼女の手を優しく握りながら、彼女と会話を重ねる。

失ったものでぽっかり空いてしまった心を少しづつ埋めるように。

傷口を少しづつ閉じていくように。

 

やがて話も落ち着いて、日が沈みかけたころ。

夏祭りの帰り道で話したことをふと思い出す。

そして一呼吸入れてから、覚悟を決めて

 

「ゆきちゃん」

「シグ君?」

 

泣き止んで、少しだけ疲れた様子のゆきちゃんに言葉を放つ。

 

「夏祭りの帰りに話そうとしてくれたこと」

「俺の、杉野シグレの気持ちは、」

 

 

「君のことが好きだ」

 

「昔からいつも二人で遊んでいて、笑っているゆきちゃんが好きだ」

「ふと気が付けば隣にいて、一緒に笑ってくれるゆきちゃんが好きだ」

「なにより、一番つらいとき、隣にいて励ましてくれた優しい君が好きだ」

 

━━俺と、付き合ってください

 

 

ゆきちゃんは突然のことで驚いたようで、戸惑いがありつつ、ぽつぽつと語る

 

「でもいいの...?ボクなんかで」

「君だからいいんだ、一番つらいときにいてくれた君だから」

「でもいシグ君に頼ってばっかりだよ?」

「俺もいつもゆきちゃんに支えられてる。むしろもっと頼ってくれ」

「でもっ...足もこんなになっちゃったんだよ?」

「なら今度は俺が支える。それに俺も肺が半分ない。お揃いだな」

 

素直になれなくて失いかけたからこそ、二度と失わないようにいうんだ

後悔する前に

 

改めて気持ちを整理し、話を続ける

 

「なぁ、あの日事故で聞けなかった続きを聞かせてくれないか」

「君の気持ちを、聞かせてほしい」

 

「ぼ、くは、シグ君のことが」




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