STILL IS HAPPY
SOMEONE TOLD HER SHE'S CUTE
※某所に公開したものを修正して投稿
※pixivにも同時投稿しています
※何度でも言いますがスティルとネオユニを同室にしようと提案した人には勲章と年金が与えられるべきです
スティルインラブがお菓子をもひもひと食べている。
時々コーヒーを交えるのが彼女のこだわりである。
机の上のたくさんのお菓子、コーヒー。
傍目にも分かるほどに彼女は幸せそうだった。
しとやかなスティルも、本能を剥き出しにするスティルも、どちらも同じ彼女。担当ウマ娘のスティルインラブ。
走りにおいてあらわになる本能と、それをなんとか押さえようとするもう一面の理性。
それに対して、無理に押さえこませない方針を取っていた。
同時に徹底的に穏やかな時間を取り、バランスを取るのがいいかもしれないと考える。
それで彼女の趣味に半ば付け込む形とはいえ、食事管理も兼ねてスナックタイムの習慣を設けた。
実際のところどこまで効果があるかは疑問だったが。
しかしスティルがこの時間を楽しみにするようになったり、幸せそうに食べているのを見ればもうそれで良しとした。
またこの光景をぼんやり眺めるのも、音を聞きながら作業するのも個人的に好きだった。
紙やペンの擦れる音、タイピング音やクリック音。
その合間を縫うよう微かに届く、お菓子を食む音や食器の擦れる音。
同じ部屋にいて全く別々の事をしていながら、時間の不思議な共有があった。
◇◇◇
ある時いつの間にか、スティルの対面でネオユニヴァースがお菓子をもひもひと食べていた。
彼女はスティルのルームメイトだ。
まるでテレポートでもしたかのように現れたのは、もしかしてスティル以上の隠形の持ち主か。
お菓子は見覚えのないものなので持ち込み品のようだった。あれは豆菓子だろうか。
二人は揃ってお菓子をもひもひと食べていた。
スティルは相変わらずご満悦だ。気づいていないのか、気にしていないのか。
もしかすると、ネオユニヴァースも同じく機嫌がいいのかもしれない。
なんとなくだが、そのように見えた。
この二人はそういうところが似通っているように感じる。
不意に二人が手を止め、目線を合わせた。
数舜の間そうしていたかと思うと、自分のお菓子をお互いの小皿の上に交換するように乗せ合う。
単に手持ちのものを半分こし合っただけの話だが、どことなく厳かな儀式にも、微笑ましい仕草にも見えた。
それにしても、何故にこうしてスティルはお菓子を食べるのだろう。
今まで聞いたことはなかったし、別に甘い物の好きなウマ娘は他にもたくさんいる。
何てことはない、好きだから好きなのかもしれない。
しかしとりあえず聞いてみる。
「そういえば、スティルはなんでそんなにお菓子を食べるんだい?」
「ご存じないのですか?ウマ娘は、お菓子を一食抜いただけで餓死してしまうのです。この私が言うのですから間違いありません」
「”DUBT”それはスティルだけ」
にべにもないツッコミだったが、スティルはまるで意に介さずまたお菓子を食べ始めた。
ネオユニヴァースもまた気にせずお菓子を食べ始める。
問答は、コーヒーの湯気と共に部屋に溶けて消えていった。
いずれにしろ、大好きなのは間違いない。
スティルは相変わらず幸せそうである。
お菓子を食べながら次のお菓子の事を考えているのかもしれない。
ネオユニヴァースも多分幸せそうである。
豆菓子をかなり持ち込んでいるらしい。申し訳ないが、彼女のトレーナーに確認しておく必要がありそうだ。
ついでにLANEのチェックでもしようかと目を離し、少しして再度室内に目を向ける。
そのときにはもうネオユニヴァースはいなくなっていた。
スティルの小皿の上に少しだけ残っている豆菓子だけが残り香だった。
とにかく、来た時と同じように静かにいなくなった。
スティルは相変わらずご満悦だ。気にしていないのか、それとも慣れているのか。
夜になれば、二人は同じ部屋に帰る。
そのとき今日の話をするのだろうか。
それともまた二人で何かを食べたり、シェアしたりするのだろうか。
知る由もないことだ。でも、思っているよりずっと仲はいいのかもしれない。
自分も何か食べたくなって、机の引き出しにあるお菓子のストックを見た。
結構減っている。スティルが時々食べているのだろう。
残っていたものをひとつ、手に取って食べようとする。
スティルがじっとこちらを見ていた。
それでもういくつか手に取って彼女の傍に向かい、隣へ座ってひとつ手渡した。
スティルインラブがお菓子をもひもひと食べている。
時々、コーヒーを新しく用意しながら。
机の上のまだまだたくさんのお菓子。コーヒー。
傍目にも分かるほどに、間違いなくスティルは幸せだった。
おまけ
メジロマックイーンは上機嫌だった。
たまたま他のウマ娘が作りすぎたクリームビスケットを大量に貰ったので、これで今日のティータイムは決まりですわ!と心が勝鬨を上げている。
紅茶を手に『さあ始めますわよ!!』と勢い付いて用意した机に向かうと、予想外の異変が起きていた。
気配も無く現れたスティルインラブが、机に置かれていたクリームビスケットをもひもひと食べている。
まるで最初からそこにいたと言わんばかりの自然な雰囲気でマックイーンのビスケットを食べており、あまつさえコーヒーまで持ち込んで楽しんでいた。
マックイーンは余りの事態に暫し固まった後、目の前の不審ウマ娘に恐る恐る問う。
「あ、あの……スティルさんは何を……?」
「あっ、マックイーンさんも食べます?」
マックイーンは差し出されたビスケットを何とも言えない顔で受け取るしかなかった。
もともと私のですわ……と言いたかったが、信じがたい程堂々たるその振舞いの勢いに呆れ、押し切られてしまった。