【オーバーロード】食事処もふキッチン【異世界編】 作:野神 汰月
彼女は正史と全く異なりますのでご注意を…。
それではもふキッチン開店です☆
まだ朝も早い時間帯のアームスヴァルトニル湖に浮かぶ島リングヴィ。その街の片隅にあるもふキッチンに来客があった。
「お爺ちゃん、お手伝いに来たよ~」
そう言って勝手口のカギを開けて入ってきたのは、金髪ショートのちょっと露出多めのレザーアーマーを着けた少女だった。
彼女の名前はクレマンティーヌ。彼女は幼いころ長男至上主義の家に生まれ疎まれていたところ家出をしてもふキチに拾われた。
現在はモモンガたちのいる世界のリ・エスティーゼ王国の町のひとつであるエランテルで冒険者として活動している。
彼女は時折こうやって早朝にやってきてはもふキチの手伝いなんかをしているのだが、エランテルのアダマンタイト級冒険者が頻繁にこちらに来て大丈夫なのだろうか。
「ティー(もふキチ式愛称)おはようさん、最近よく来るようになったの?」
二階の自室から降りてきたもふキチは軽くあくびをしながらクレマンティーヌに挨拶をする。
「最近モモンガ様たちが活躍してるからあたしは邪魔かなって?そうするとやることなくて暇なんだよね」
そう言ってクレマンティーヌはもふキチから贈られた
エプロンなどは彼女自身は料理が苦手だが店の掃除などは手伝える。そのため汚れても大丈夫なように、髪の抜け毛が散らばらないようにと装着するのだ。
「まあ、掃除終わったらまたお爺ちゃんの所のダンジョンでも遊びに行ってくるしね」
彼女が拾われたのは六歳の頃。そこから少しずつもふキチに懐き始め、戦闘の才能がある事から八歳ぐらいから戦闘の基本や体力づくり…そしてアームスヴァルトニル湖に複数ある初心者ダンジョンなどでレベル上げをしていた。
今の彼女のレベルは五〇。モモンガたちのいる世界では英雄と言われるまでのレベルに成長していた。今日は掃除が終わったら中級のダンジョンに潜ろうと彼女は考えている。
「これ以上レベル上げなんかしたらお前さん狙われるぞ?」
もふキチには心配事があった。例のスレイン法国が何やらきな臭いことになっているのだ。
今から六〇〇年ほど前に転移してきた六属性で構成されたクランが興したのがスレイン法国なのだが、五〇〇年前に転移してきた異業種族狩りのギルドによって滅ぼされている。最後に残ったモモンガと同じオーバーロードの人々からは死の神と崇められていたスルシャーナというプレイヤーも人間たちの裏切りで殺されてしまった。
そんなスレイン法国が今またきな臭い動きをしているのだ。
少し前にもふキチがカルネ村で暴れ散らかした後に、リ・エスティーゼの王国戦士長が来たのだがどうやらバハルス帝国の仕業に見せかけ彼の戦士長をおびき寄せるためのスレインの罠だったらしい。
らしいというのは暴れ散らかして村人全員に感謝どころか恐れられてしまったためすぐモモンガたちに任せて自分は帰ったので事後報告で聞いてるだけなのだ。
そのスレインがきな臭い…レベルの高いものを調べているような感じのことを以前モモンガからもふキチは聞いていた。だから心配しているのだが…。ちなみにもふキチは基本自分が巻き込まれない限りあの世界には不干渉を決め込んでいる。
「大丈夫だよ。それにレベル上げはモモンガ様たちからの助言だしね~。今日はちょっと遠距離攻撃伸ばしたいから森の方でやってくるよ」
「…まあ、モンちゃんがそう言ったんならなんかあったとき助けてくれるか…」
クレマンティーヌの言葉に少しの安どのため息をつくと、もふキチは料理の仕込みを開始する。
クレマンティーヌの方も話しながら店内の掃除をしていたらしくもうすぐ終わりそうだ。
仕込みをしながらもふキチはクレマンティーヌとの日々を思い出す。八歳になったころ彼女には戦闘の才があることに気付き、クレマンティーヌにどうすると尋ねたことがあった。そうすると迷わず彼女が強くなりたいと言い出したのだ。
いろいろな武器を持たせたところ短剣、軽めの直剣と弓に適性があった。近接が多いので格闘術も叩き込むことにした。
特に短剣と直剣の才はすごく、九歳になるころには一人で初心者用ダンジョンを一人で踏破して見せた。
ステータス的にはもふキチと同じAGI=DEX型で敵の急所を的確につくことができるようだった。弓も剣ほどではないが十一歳の頃に中級である飛行型の多い森のダンジョンも単独攻略した。
彼女を拾った頃は本物の獣のようで、口は聞かない食事は投げ捨てる、噛みつく殴るなど本当に手のかかる子だった。しかしもふキチが自分の味方だと解ると、途端に性格が反転したかの如く甘えてくれるようになったのはもふキチは今で思いだして嬉しくなるものだった。
しかし強くなり過ぎたところで、慢心が顔を出す。それはクレマンティーヌもそうで「もうお爺ちゃんにだって勝てるよ!」などと言い出すものだからもふキチは灸をすえるつもりでフルボッコにしてやった。上には上がいることを、いくら強くても慢心で自分より弱い相手に負けることもあるともふキチは身をもって知らしめた。
今では慢心せず、頑張っている姿を見ると少しセンチな気分になった。その証拠が外の世界での冒険者ランクアダマンタイト級だ。
今もあの世界で冒険者として世界を楽しんでいるだろうモモンガに聞いたが、アダマンタイト級になるにはよほどの功績がないとダメらしい。クレマンティーヌはそれをやってのけたのだ。とても誇らしい気持ちであふれる。
彼女がアダマンタイトになった切っ掛けはフロストドラゴンの討伐だった。何を思ったのか一頭のフロストドラゴンがアゼルリシア山脈から降りてきて村や集落を襲ったという。それを撃退したのがクレマンティーヌだ。
外に出るにあたってそれなりの装備を持たせていたが、まさか矢の一発でフロストドラゴンの心臓を撃ち抜くとは思ってみなかった。この子はやはり天才じゃと、いつも誇らしく思っている。
さて、そんな自慢の孫娘(すでにもふキチの中では家族で孫娘なのだ)の為に朝食を仕立てよう。
※※※
あたしは六歳の時あのクソな家を出た。クソ兄貴優先で両親はあたしに振り向いてもくれなかった。昔は分からなかったが今ならわかる。あたしはきっと孕み袋だったのだ。子を産み落とすだけの人間…いや人形だ。そんなことに近い話を聞いて何故かあたしはここから逃げなきゃいけないと感じた。
そんな時にお爺ちゃんにであった。今思えばすごく幸運だったのだろう。最初あたしはもう誰も信用できず、反抗したときもあった。でもあの人は…お爺ちゃんは辛抱強くあたしに接してくれた。
だからあたしも抵抗をやめた。普通に接していくうちに「ああ、この人は本当にあたしのことを心配してくれる人なんだ」ってわかった。
八歳の頃お爺ちゃんがあたしに武術の才能があると教えてくれた。強くなりたいか?と問われ、あたしは即座になりたいと希った。強くなれば少しはお爺ちゃんの心配も少なくなるだろうし、一番の目的はあたしの生家への復讐だった。
いくつも武器を持たせてもらい最も相性の良かったのは短剣と軽めの直剣だった。ついでに弓にも才がある事もわかった。その日からあたしはお爺ちゃんに師事し十二の頃には中級ダンジョン?というのを一人で攻略して見せた。
お爺ちゃんはすごく喜んでくれた。まるで自分の事のように…。そしてその年になるといろいろ分かってくるのだ。
お爺ちゃんは年を取らないで若々しいままだ。リングヴィの町の人に話を聞いたが、お爺ちゃんは神様で自分たちを見守っておられるのだという。そして町の人が死ぬと声を殺して滂沱の涙を流すという。
恐らくお爺ちゃんはぷれいやーなのだろう。物心がついてからずっと言い聞かせられていたお伽噺かよって思うような内容の話。一〇〇年に一度この世界に現れるぷれいやーという神様がいると。
その神様は種族によって違うが寿命があったりなかったりするらしい…。だからきっとお爺ちゃんもそのぷれいやーなんだろう。町の人曰くもう一〇〇〇年姿が変わったことがないというし。
―――あたしが死んだら、お爺ちゃんものすごく悲しくなるのかな?あたしみたいなのを孫娘として可愛がってくれているあの人に悲しんでほしくない。
……今度モモンガ様に相談してみようか。あの方も寿命のない不死の存在だ。そしてお爺ちゃんの実の孫だというし。
……うん、もしかしたら怒られるかもしれないけど一度相談してみよう。そうしよう。
そんな風に考えてたら店の掃除が終わっていた。ぷれいやーの皆様的に言えば掃除中自動モード?というのになってたらしい。気づけば終わってる掃除にホッとすると小さくお腹がきゅるっと鳴いた。お爺ちゃん耳良いからなぁ……聞こえてないといいけど。
※※※
店の方から可愛らしいお腹の音を聞いたもふキチはクレマンティーヌに大きな声で「朝食何がいいかの?」と尋ねる。そうすると店側から「おむすびがいい!!」と聞こえてきた。もふキチは了承してあいよと答えると炊き立ての白飯にいろんな具材を埋め込み握っていくのだった。
そして大鍋で煮えているのは具材たっぷりの豚汁。一般的な女性よりも量を食べるクレマンティーヌだがこれなら満足してもらえるだろう…。もふキチは出来上がったおむすびと豚汁を入れたお椀を盆にのせて店側へと行くのだった。
ということで今回はクレマンさんでした。
もふキチ誇りに思うって思っているようですが、もふキチブートキャンプと彼女に下げ渡した武器の数々によってのチート戦果です。
弓はエルヴンボウ(ゲームでは中級)だし、矢はアダマンタイトの鏃だったし()
どこ命中しても大怪我(虫の息)or即死だったことでしょう。
あとこのクレマンさん、とある十字に刺突かます技使ってきそうですよね(すっとぼけ
それではまた次回お会いしましょう。See you next story,バイバイ☆
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