【オーバーロード】食事処もふキッチン【異世界編】 作:野神 汰月
導入部第二弾。残念ながらもう少し真面目な話が続きます…。
今後通常の話を【〇人目XXX様が~】という表記で、話の都合上重要な話は【開店準備】、その他の挿話を【仕込み中】とさせていただきます。ご了承ください。
それではオーバーロード二次創作異世界編、もふキチ視点はじまります
意識が薄れ、これで終わりだと思った―――深く沈んでいく感覚と自分が消えていくような、言葉に表せないそれは急に浮上し意識が覚醒する。
「―――は?」
思わず間抜けな声が口から洩れる。浮上した意識に目を開くと、そこは先ほどまで儂が身を横たえていたベッドのある病室ではなく見知った……しばらく訪れていない水晶に囲まれた洞窟内の奥にある高い段差の上の儂の―――
どういう…ことじゃ?儂は確かにあの時死に瀕して―――まさか無意識にダイブしてここにきてしまった?
頭の中を疑問がグルグルと駆け巡る。だがいくら考えても答えは出なかった。そんな時、視界に二つの影が動いた。白と黒の影…それは―――
「あ、お父様。やっとお目覚めになられたのですね?」
「おとーさんお寝坊さん!!僕たちずっと待ってたんだよ?」
儂の…フェンリルであるもふキチの子供にして、儂が主催していたイベント【フローズヴィトニル(悪評たかき狼)の再来】リングヴィ中央神殿最下層のフェンリル戦随伴ワールドエネミー【
…いや、ちょっと待て。この子ら今喋った?
「―――キャァァァァァァァァァッシャベッタァァァァァァァァァァァ!?」
思わず古のファーストフード店のCMネタで驚いたのは仕方ないことなんじゃ…。
―――――
しばらくして落ち着きを取り戻した儂は、改めてハティスコの二匹を見る。というか今気づいたが儂、店に立つときの
たしか狼は視野角がほぼほぼ三六〇度という話を聞いたことがあるし、嗅覚に関しても人間の一〇〇万倍という。あれ、もしかして儂この子らのことが心残りすぎてラノベあるあるしとる?つまりゲームの世界に転生?
「おとーさん、どうしたの?じっと僕たち見つめて…なんか照れちゃうよ」
「お父様、まだ寝ぼけていらっしゃいますの?他の子たちもお父様が起きていらっしゃるのをずっと待っていますのよ」
丁寧な言葉づかいで狼姫に続くのが
「いや、すまんの…少し混乱しておってな」
儂がそう謝ると白夜はさもありなんとため息をつきながら
「そうでしょうとも。お父様が急に来られなくなって一年余り、唐突にお戻りになられたと思ったら一〇〇年近くお眠りになられてるんですもの。流石に寝すぎというものです」
そう答えたのだ。
……は?一〇〇年も寝ていた?
どういうことじゃ?一年ほど来なくなったというのは儂が身体を壊して突然引退してしまったからというのは解る。その後急に現れて一〇〇年眠っていたというのは―――?
白夜の説明を聞いて余計に頭が混乱する…。とにかく起き上がっていろいろと状況を確認せねばならん。そう思い獣人形態になろうとしていつものようにメニュー画面を開こうとして―――開かなかった。
うっそじゃろ!?これじゃあ儂この形態のまま過ごさにゃならんのか?!?!
再度混乱状態に陥ったが、突然儂の身体が光ったかと思いきやいつもの獣人狼種割烹着姿のもふキチになれた。ということはつまりこれはゲームではなくやはり現実ということか。ますますゲームの世界に転生というのがぴったりくる状況だ。
「わう…おとーさんまたちっちゃくなっちゃった。大きいほうがかっこよかったのに」
残念そうに狼姫が肩(?)を落とす。耳と尻尾もたれてしまっておる…。可哀そうではあるが致し方あるまい。なんせ儂もともと人なんじゃし…。
「狼姫、お父様にもいろいろとご事情がおありなのよ?私たち娘が親に我儘を言ってどうしますか、我慢なさいな」
「わう…」
一応狼姫ことスコルの方が姉という設定だったはずじゃが、これじゃあ白夜の方が姉じゃのう…。
そんな可愛い二匹をほのぼのと眺めていたいのはやまやまじゃが、とりあえず確認などしなくては…。
先ほどフェンリル形態からいつものもふキチスタイルになった時、イメージをしていたら戻れた…。ということはイメージでいろいろできるのかもしれん。そう思い、今度はGM専用コンソールを呼び出そうとイメージを強く持つ。すると―――
「…いや、出るとは思わなんだが出てしまったのう」
ここはゲームではなく現実なんだから半ば出ねぇだろ的な感じでやってみたら儂の周りにGM専用コンソールのホロウィンドウタブがいくつも出現した。つまり儂は今でもGM権限が行使できるということ。ならばと神殿の外の様子を映し出すためにGM権限を行使する。
ホロウィンドウに表示されるそれは、儂の知ってるリングヴィの町そのもので…ただし、NPCが活発に動いているのだけがゲームとの違いだ。ゲーム時代はこんなにNPCが動き回ることはなかった。ただ、インプットされた指示通りに動き、プレイヤーが一定の行動を起こした時に反応するだけの簡単なAIが組み込まれていただけなのだから。
それが今目の前に映る街並みではNPCがもうプレイヤー…つまり人と同じように動き、しゃべっている。うむ、やはりしゃべるのか…。
そして儂がいろいろ見ていく間に、気になるものが一つ…。町の入り口に設置していたマップ移動用のポータルが無くなり、神殿前の噴水のところに
それを誰にも使わせないようにするためか、門番のように立ち塞がっているのは―――
「セト?何故あ奴が…」
そこには
「お父様がお戻りになって直ぐに町の入り口のポータルは消え、代わりにあの転移門のような現象が生じました。お父様の子供ら全員で集まって協議した結果、町の者に何かあってはいけないからとああやって持ち回りで番をしております。勝手なことをしたこと、申し訳ありません」
白夜が子供らが外に出ていることに疑問を抱いた儂にそう答える。謝辞を示すために深く頭を下げて。
「いや、構わんよ…儂はおぬしたちの行動総てを許そう」
少し偉そうが過ぎるがそういうと白夜はがばりと頭を上げキラキラとした瞳で「お父様…ありがとうございます」と喜んだ。尻尾なんてすごくぶんぶん振っておるし。なにがこの子の琴線に触れたのか。絶対許しを得たからではないと思う。
まあ、とにかく…あの転移門を調査せねばならんな。儂はそう思い地上へ転移をしようと―――思ってふと考える。別段外出を規制してはいないがこの二匹は外へ出たことがない。ならばと儂は「ふたりとも一緒に来るか?」と尋ねると即「はい(うん)!!」と元気な返事が返ってきた。
ということで儂は二匹を引き連れ地上へと繋がるポータル(塒の裏にある)を使用して地上まで飛ぶのだった。
※※※
俺の名はセト。混沌の神とか戦の神だとか言われてるけど、ぶっちゃけ俺なんて大したものじゃないと思う。俺と同じエジプト神の一柱であるバステト姉さん(アレを姉と呼びたくはないが…)やセクメト姉さんにさえおそらく俺は負ける。実の姉じゃねえけど。…いやバス姉にはギリ勝てるんじゃね?とか思わないでもないが。いや他の神たちがとんでもないのが多いのがいけないんだよなぁ。俺が最弱なのも仕方ないってもんだ。
普段リングヴィ中央神殿地下第一階層を守護してるが、一〇〇年ほど前に突如として現れた謎の転移門を町の連中が勝手に潜らないようにみんなで持ち回りで番をしているのだが、今週は俺の番なんでこうして見張っている。すごく暇だ。たまにバス姉が揶揄いに来るけど、基本立ったままで何も起きないからな。食事は町の人間や異業種たちが持ってきてくれるが、やっぱじーちゃんの飯が一番だ。あ~、思いだしたら腹減ってきた…またじーちゃんの飯食いたい。
じーちゃん急に一年ほど来なくなったと思ったら、突然帰ってきて一〇〇年も寝たまんまなんだもん。起こそうとしてもちっとも起きねえし…どうなってんだか。生死を司る二柱の神、天照姐さんと月詠姐さん曰くほんとただ寝てるだけらしいが―――。毎週やってきていた侵略者ども(イベント参加者の事)もあれ以来めっきり来なくなったし、暇で暇で仕方ない。じーちゃんを狙う侵略者どもを破壊するのは楽しかったなぁ。セク姉も高笑いしながら斃してたっけ。
―――そんな風に気を抜きすぎてたから俺は気付くのが遅れた。中央神殿地下からものすごい力の塊が上がってきていることに。一瞬でぞわっと全身の毛が逆立ち、振り向いた先には
「「セ~ト~さ~ん(ちゃ~ん)??なにぼぉっとしてらっしゃいますの(してるのかなぁ)??」」
白と黒の暴力の権化と一〇一年ぶりなのに何とも言えない表情の俺たちの親が立っていた。あ、俺今日が俺の命日かも…。
※※※
地上に出るとぼけっと思考に耽る黒い獅子獣人の姿が見える。それを認識したとたん狼姫と白夜から怒りの黒いオーラが立ち上る。そんなに怒ってやるなと宥めるもふキチではあるが、そんなのお構いなしに白と黒の巨狼(今は普通の大型犬並みに縮小している)が懇々(笑)と説教して黒獅子がしゅんとして正座をしている様はなんだか見ていてほのぼのとしてしまう。
一刻(二時間)ほど説教をされたのち、いくら何事もなかろうと決められた仕事をきちんと行うことを約束させられたセトは痺れた足を「いてて…」と涙目になりながら立たせると、自分たちの親(として定められている)のもふキチに改めて挨拶をする。
「じーちゃん、やっと起きたのかよ…おそよう様だな」
「うむ…まあなんじゃ。迷惑と心配をかけたようじゃの?すまなんだな」
はにかむセトにもふキチも柔らかく微笑み黒い鬣のある頭を優しくモフモフとなでつける。その感触にセトは普段はきりっとした表情を崩し、ほにゃぁと笑む。それを羨ましそうに、嫉むように狼姫と白夜は横で見ていた。
「他の兄弟にはもう会ったのか?」
ひとしきりもふキチの撫でを受けたセトは表情を改めて尋ねる。
セトの問いかけに「いや…」と返し、まずはこの急遽現れたという転移門について調べるために来たと答えた。そんなもふキチの視線の先には装飾の施された扉の外枠に空間が黒々と渦巻くものが存在していた。
ぱっと見は魔法の転移門のそれに似てはいるが、外枠があるので魔法ではなさそうだ。
「ふむ…道具上位鑑定でも詳細不明じゃな。どうしたもんか」
「一応どこに飛ぶかわかんねえから誰も入ってないぜ。さらに言えばこっから何かが出てきたこともねえ」
さくっと魔法で鑑定をかけるもふキチ。その特性上YGGDRASILにあるあらゆるの魔法を使用できるもふキチだが、そんな彼にも詳細は不明だった。ならば―――
「儂がさくっと確認するほかあるまいな」
そう言ってもふキチはその門を潜ろうとするが狼姫と白夜、さらにセトに止められる。
「なんじゃ、今の儂は制限かけておらんからフェンリル形態と変わらん戦闘力はあるんじゃぞ?」
YGGDRASILでは無敗のフェンリル様なのだから心配はいらないというが、それでも三人(二匹と一人)は危ないという。ならばともふキチは妥協案を提示する。セトを護衛にすれば問題ないだろうと。
「「問題大ありです(だよ)!!セトさん(ちゃん)は私(僕)たちの中でも最弱なんですから(だから)!!」」
自分でもそう思っていたが姉たちにもそう言われてしまうセトは泣いていいと思う…。
だが、もふキチはそんな二匹に「大丈夫じゃ、問題ない」ときりっとした顔でネタをぶち込み、これは命令だと言えば二匹も引かざるを得なかった。
気を取り直してセトを共にして転移門を潜るもふキチ…。その先で目にしたのは―――
モモンガたちが転移してくる一〇〇〇年前のトブの大森林の湖中心部にある浮島だった。
はい、もふキチはワールドマップごと転移しましたがなにやらモモンガさんたちとは事情が異なるようです…。
えっと、一応補足というか言い訳を少し。このシリーズは原作視聴(読了)済み前提に作られています。なんじゃこりゃ?ってなる方は是非原作(または原作準拠の二次創作)を視て(読んで)からもう一度読むといいかもしれません。
前年前の異世界にきたもふキチですが、話は一気に飛んで次回はモモンガさんとの再会シーンになります。それではまた次回お会いしましょう。See you next story,バイバイ
※できれば感想と評価よろしくお願いします。また、通常話にどんな料理や登場人物を出してほしいかなどのリクエストも受け付けますのでどしどしご応募くださいませ
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