【オーバーロード】食事処もふキッチン【異世界編】   作:野神 汰月

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 本日はたっち・みーの息子……もとい娘のキャッチ・ミーちゃんがご来店です。
 最近寒くなってきたのであったかぁいものをどうぞ☆

 それではもふキッチン開店です。



十四人目 キャッチ・ミー様がご来店です。

 冬の寒さが近づきつつある今日この頃なアームスヴァルトニル湖(もふキチがGM権限で調整している)に、一人のコボルトがもふキッチン目当てにやってきた。

 

 ルンルンステップをきざみながら彼女は彼女のお爺ちゃんであるもふキチのいるもふキッチンへと向かっていった。

 

 向かう途中、顔見知りの町人の元NPCやもふキチの家族であるセトやセクメトに挨拶しながら彼女はもふキッチンへと到着する。

 

 

 「おじいちゃまこんにちわ!」

 

 

 店の引き戸を優しく開けて(最近勢いよく開けられてる)暖簾を潜って挨拶をする。

 

 もふキチは丁度奥のキッチンに居たので「はいよー」と大きな声で返事をしながらカウンターへと戻ってきた。

 

 

 「おや、チィは今日は一人かの?」

 

 「うん、おじいちゃまに会いたくて一人で来ちゃった☆」

 

 

 いつもは両親であるたっち・みーかテル・ミーが一緒に付いてくるのだが今日は一人のようだ。

 

 

 「来る途中で町の人とかセトお兄さんやセクメトお姉さんに心配されちゃったけど、わたしもう八歳だもの。一人でここに来るくらい平気だよ」

 

 

 ちょっとみんな心配性だよねと言いながらカウンター席によっこいしょと座るキャッチ・ミー。黒柴犬系コボルトのキャッチ・ミーはぷくっと頬を大きくふくらませながら、文句を垂れた。

 

 今日は少し寒い気温に設定していたもふキチが、寒かったろ?と言いながらあったかいココアを淹れてサーブする。

 

 キャッチ・ミーは「ありがとうおじいちゃま♪」と一言礼を言って、いきをふーふーとし冷ましながら一口飲んだ。

 

 

 「あったかい、甘くておいしい♪」

 

 「そうか、それは良かった。それで、今日はどうして一人で来たんじゃ?」

 

 

 ほっと一息ついたところでもふキチはキャッチ・ミーに尋ねた。キャッチ・ミーはもう一口ココアを飲んでからもふキチに理由を答える。

 

 

 「もうすぐクリスマスでしょ?おじいちゃまどうするのかなって」

 

 「そうするかとは?」

 

 「多分ナザリックでもクリスマスのパーティすると思うんだけど、おじいちゃまはどっちでするのかなって。リングヴィのみんなとお祝いするのか、うちでするのか気になっちゃって」

 

 

 キャッチ・ミーの質問にもふキチは「ああ」と一言頷くとその問いに答えた。

 

 

 「多分二五日は儂はうちでやることになると思うぞ。そちらには申し訳ないが顔を出せんのう…。まあ前日のイブにナザリックまで行ってプレゼントと多少の料理を提供することにはなるじゃろうが…」

 

 「そっかぁ…」

 

 

 キャッチ・ミーはもふキチの言葉に少し残念そうに肩をすくめた。もふキチがまだ入院する前はずっと一緒にクリスマスを楽しんでいたから、久しぶりに一緒に祝えると思ったのだ。

 

 そんな残念そうなキャッチ・ミーにもふキチは少し考えてそれならという。

 

 

 「まだ決まりではないがイブに少しパーティをしようかの?ギルメンオンリーで。まあ、みゆきも参加するじゃろうから完全にとはいかんだろうが」

 

 

 その言葉にキャッチ・ミーの目がパァッと明るくなる。まだ決まりではないが大好きな爺と一緒にクリスマスを祝えるのが相当嬉しいらしい。

 

 そこで何が食べたいか聞くと、ターキーを食べてみたいという。昔の映像作品で見ておいしそうだと思ったとか。

 

 

 「ターキーか…まあ何とかしてみるかのう」

 

 「ありがとうおじいちゃま、大好き!!」

 

 

 キャッチ・ミーは喜びのあまりカウンターを飛び越えてもふキチの頸に抱きつくのだった。

 

 

 ※※※

 

 

 ターキー…ターキーかぁ。丸鳥肉ドロップするMobおったかのう?

 

 儂は抱き着いてくるチィをあやしつつ考える。大体Mobが落とす肉って部位ごとだったりするから難しいんじゃよなぁ。そう思いつつ脳をフル回転させて丸鳥がドロップする鳥系Mobを検索する。

 

 いや…現実になったこの世界でもドロップするがそれはダンジョン産のみ……他では斃したモンスターはその場に残る。ならばGM権限でよさそうな鳥型Mobをポップして斃せば行けるのか?今度検証が必要じゃのう…。

 

 

 「さて、折角可愛い孫娘が来てくれたんじゃ。何か食べていくかの?」

 

 「ならハンバーグがいい!!」

 

 「そうか、ならハンバーグを拵えようかの」

 

 

 儂は少し違和感を覚えながらも孫娘の為に厨房へと入るのじゃった。

 

 

 ※※※

 

 

 私には前世の記憶がある。その記憶は最近自覚したもので恐らくお爺様は違和感を覚えながらも転生体であることは分かっても子の事は分からないだろう。

 

 前世の記憶が蘇ったのはナザリックが異世界に転移したときだった。あの時一気に前世の記憶が……と言いたいところだけど日数をかけて蘇ってきた。

 

 前世の私、如月 千尋はなんと愚かだったのだろうか。聞けば如月家はみな恋愛結婚で、貴賤は関係なかったらしい。

 

 私は許されないだろうと完全に思い込み、あの人…鈴木 敬臣さんと駆け落ちした。理由は簡単。恋愛小説の読み過ぎによる誤解だった。間違いなく愚かで恥ずべきな行動原理だった。

 

 だって、普通はそう思うでしょ?私は如月家という世界でもトップクラスの家の出で、彼はスーシェフだったとしても貧民層の出だ。許されるわけがないと思い込んでも仕方ないと思うのだ。

 

 今は何の因果か従姉妹の輝美さんの子供に転生し、お爺様の玄孫になっている。どんな確率よ…な〇う系小説でもあるまいに。

 

 どうやら輝美さんと幹久さんは私が千尋の転生体だとお爺様に聞いて知ったらしい。が、まさか記憶まで持ってるとは思わないだろう。本当に最近輝美さんと幹久さんにどう接していいか分からなくなってきている。

 

 さらに最近はお爺様は私に前世の記憶を持っているのではと勘ぐってる様子がある。あたりです…でも正直に言いだせません。どうしようか悩んでいたら急にお爺様が「何か食ってけ」と言われたのでとっさにハンバーグと言ってしまった。

 

 あれは、前世の私がいまくらいの頃の誕生日にお爺様お手製のハンバーグをふるまってくださったことがある。その時のハンバーグは如月グループで育てた天然物の肉を使ったものだった。

 

 恐らく今作ってくださってるハンバーグに比べたら味は格段に落ちるのだろうが、当時はすごく美味しくて感動した覚えがある。だから咄嗟にハンバーグがいいと言ってしまったのだろう。

 

 キッチンの方からジューっという焼ける音と香ばしい香りが漂ってくる。ちょっと恥ずかしいけどよだれが出てきてしまいそうだ。楽しみでしょうがない。

 

 

 ※※※

 

 

 ハンバーグ…それはまだ千尋が小学校入学したての頃の誕生日に凰翔自らが手塩にかけて作ったことがある料理だ。

 

 若い頃から凰翔……もふキチはいろんなことに挑戦していて、趣味として定着したのは料理だった。オンラインゲームでも前衛職と生産職を両方やっていた。

 

 そんな彼にとって当時の千尋の誕生日には特別なものをと思い、どんどん世界が荒廃していく中で天然物の肉を使ったハンバーグを拵えたことがある。

 

 それでもふキチは確信した。千尋は転生しただけでなく生前の記憶も持っていると。人間咄嗟に出てくるものは本心だったり本音だったりすることが多い。もちろん思い出も。

 

 もふキチはアイテムボックスからそれなりのレア度の牛肉を取り出し、それをミンサーでミンチ肉にしていく。今回作るのはつなぎ無しの純一〇〇パーセントのハンバーグだ。当時もそうしたので今回もそうすることにした。

 

 ミンチ肉に塩コショウ、そしてナツメグに少量の白ワインを加え粘り気ば出るまでこねる。粘り気が出てきたところで少し大きめに手に取りお手玉をするようにしてミンチの中の空気を抜く。

 

 そして空気を抜いた肉を楕円形に整形すると中央部を少しへこませて、強火で温めていたフライパンにサラダ油を敷いたものにゆっくりと入れる。強火で表面を一気に焼き上げ肉汁が出るのを阻止する方向だ。

 

 両面焼き目が作くらいに焼いた後、肉にも使った白ワインを少量淹れて蓋をして蒸し焼きにする。

 

 焼きあがったハンバーグを取り出し、そのフライパンで今度はソースを作る。

 

 バターを溶かして醤油を小さじ一、赤ワインとケチャップを入れて少し水気が飛ぶまで加熱する。そうしてできたソースを加熱しておいた鉄皿に事前に用意していたフライドポテトと人参のグラッセを添えたハンバーグにかけて完成だ。

 

 ソースをかけた瞬間にじゅわぁと蒸気が上がるこの瞬間がもふキチは好きだ。

 

 正直まだ小学生に上がったばかりの子供に食べさせるような代物ではないが、もふキチは何か考えがあって出すのだろう…。「できたぞ~」とカウンターに座っているキャッチ・ミーに声をかける。

 

 アツアツのそれをナイフとフォーク、それと丸パンを添えて提供した。

 

 先ほどからするいい匂いに待ちきれなかったキャッチ・ミーはナイフとフォークを早速手にして「いただきます!」と言ってハンバーグにナイフを入れる。その瞬間にじわっと溢れる肉汁が加熱されていた鉄板で蒸気となり香ばしい香りを放つ。

 

 少し熱そうなので少し息を吹きかけ冷ました後に口に入れると、先ほどの肉汁とソースが相まって今まで食べてきた肉料理の中で一番だと思えるほどに美味しかった。

 

 

 「美味しい!!」

 

 

 自然に零れる言葉と笑顔が何よりもそれを物語っていた。そこにもふキチが問いかける。

 

 

 「昔食べたものより美味いじゃろ?なぁ、千尋」

 

 「ええ、とってもおい…し…」

 

 

 その問いかけに反応してしまったキャッチ・ミーは徐々にしりすぼみになって行った。

 

 「なんで…?」と問うもふキチに、彼は「簡単なことじゃよ」と前置きをして語り始める。

 

 

 「お前さんが千尋の転生体だというのは即分かった。儂は魂の色を見分けられるからの…。でここからが本題。前世の記憶は?……最初はないと思っておったがナザリックの皆の話を聞いておるとな…」

 

 

 キャッチ・ミーは最初はおぼろげで曖昧な記憶しかなかったが徐々に思いだしていくにつれ、子供らしさを演出しようとしてる大人にしか見えなくなっていた。それをナザリックの面々は頭にはてなマークをつけながら「まあ、早い思春期だろ」で済ませていた。

 

 が、もふキチは違った。完全に確信したのはさっきの【ハンバーグ】だ。人は思い出の味を持っている。咄嗟に「何食べたい?」と聞かれると自分の思い入れのあるものか「なんでもいい」が出てくるのだ。

 

 もふキチはそこに違和感を覚えた。前世の記憶が生えてくる前はどんなものを好んでいたのかはわからないが、これくらいの年の子だとオムライスやナポリタンなんかが好きそうである。そこに出てきたハンバーグ。

 

 彼は一度見聞きしたことを忘れることはできない。なので脳内で記憶を精査した結果、キャッチ・ミーは前世の記憶を持っていると確信したのだ。

 

 

 「私、そんなに変だったんでしょうか…」

 

 「多少違和感がある、程度じゃろうけどな」

 

 

 冷めないうちにと食べ進めながら項垂れるという器用なことをしつつキャッチ・ミーはもふキチに問いかける。

 

 

 「まあ、皆には黙っておいてやるわい。それより食事しながら項垂れるなんて器用なことしてないでしっかり味わってほしいの?」

 

 「はぁい」

 

 

 もふキチにそう言われて、しっかり味わうようにキャッチ・ミーは食事を再開するのだった。

 

 記憶にあるあのハンバーグの味より断然このハンバーグの方が美味しいが、どうしても昔の味の方が勝るのは何故なんだろうか…。彼女はそんな疑問を抱きながら食事を終えた。




 というわけでな〇うあるある転生系キャッチ・ミーちゃんのお話でした。


 それではまた次回お会いしましょう。See you next story,バイバイ☆

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