【オーバーロード】食事処もふキッチン【異世界編】 作:野神 汰月
しかもリレー方式…。混沌の魔法使い様のほうの(調理編)は本日18:00に混沌の魔法使い様のほうで投稿されます。
それでは本日も聖夜の軌跡が起きるもふキッチン開店です☆
「はぁ…もうすぐクリスマスか。今年はどうするかねぇ?」
アームスヴァルトニル湖のリングヴィにあるもふキッチンに入店直後にそうため息をついたのは最近自由に行き来できるようになったカワサキだった。
【二度ある事は三度ある】が実際に起きてもふキチが無限の背負い袋にポータルとなるどこd(言わせねぇよ?)簡易版異世界への扉を入れて渡したためだ。
本日は珍しくカワサキの世界の方のモモンガも一緒に来店している。
カワサキは頼んでいた少し冷めてきたコーヒーを一気に飲み干しお代わりと告げる。もふキチはそれに対して「あいよ」と言って空になったカップにコーヒーサーバーから注いでいく。ちなみにモモンガはオレンジジュースをストローでちびちび飲んでいる。
「もふキチさんとこはいつもどんな感じなんだ?」
「儂んとこか?多分お前さんたちの所と変わらんよ」
そう言って説明するもふキチの所のクリスマスはカワサキたちとそんなに変わらず、町をクリスマスデコレーションして町民に料理を振る舞い守護者たちは守護者たちでフェンリルの塒に集まり飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎをするのだとか。
もふキチの所にはキリストと相反する伝承の神(という名のワールドエネミー)もいるが、昨今のクリスマスなんざ家族や恋人とパーティしてクリスマスプレゼント交換してというのが普通になってるので参加もしている。
「そっかぁ…でももふキチさん町の元NPCにも料理ふるまってんだな?」
「そりゃそうじゃよ。あの子たちはもうNPCじゃない、生きとる人間なんじゃから。それに彼ら彼女らも畑や田んぼで働いておるんじゃから労ってやらんとの?」
アームスヴァルトニル湖には周囲の草原や山々までフィールドに設定されていたからか一緒に転移してきている。その山々の麓や草原には村や集落がつくられており、そこでは畜産農業を生業としている元NPCがいる。
店の外を行きかう人々も生きて生活をしているのだ。普段はそんな町の人たちももふキッチンで食事することもある。今日のように来客があるときは皆の暗黙の了解として来店することはないが…。
「あの…」
「ん?なんじゃ、ガッちゃん」
弱々しく手を上げたカワサキの所のモモンガ(もふキチが区別つくように向こうのモモンガにはガッちゃんとあだ名をつけた)。何か案があるのかともふキチが尋ねると―――
「イブの日にお互い交流会という名の下でそちらのアインズ・ウール・ゴウンの面々と私とカワサキさんとでどういう料理出すのか出してみるっていうのはどうです?あとガッちゃんはどこかのなんでも食うキャラじゃないんでやめてほしいんですが…。」
「お~、それはいいな。俺ももふキチさんがどんな料理作ってんのか気になるしよ」
カワサキは(自分の所の)モモンガがガッちゃんと呼ばれるのに弄りがいがあるので賛成派らしい。そしてそのモモンガの提案に乗っかる。
「いや、儂は本当に趣味でやっとるだけで本職のサッキーみたいなもんは作れんぞ?基本特殊技能(スキル)に頼っておるしの」
「いいんだよそれは。使えるもんは何でも使う、これ鉄則だぜ?俺には合わないから自力でやってるだけ。それに他人の料理を食べるってのも一つの勉強なんだ。現実世界(リアル)がああなる前の世界を知ってるもふキチさんだからこそ作れるもんもあんだろ?」
「まあ、サッキーもやる気なら吝かではないが…二日連続になるぞ?いっとくが儂、
そう肩を落とすもふキチに、前日までこっちで一緒に作ればいいだろと提案をするカワサキ。まあ、それはそれでありなのだが…。
「儂の店のキッチンそこまで大きくないぞ?動線も儂一人が動く前提で作ってあるし」
「俺のシークレット・グリーンハウス出すか?」
そのカワサキの提案にそういえばと思いだす。まだゲームのYGGDRASILLで前衛やめて生産職(笑)になったばかりの頃、飯を作るのに周りのMobがうっとおしかったので重課金してMobを寄せ付けないキッチンしかないシークレット・グリーンハウスを持っているのを思い出す。
「という、トイレもシャワーもなんも料理以外の設備がない奴なら持っておるよ」
「「……あんたバカぁ?」」
ぶっ飛んだものを所持しているもふキチに流石のモモンガもカワサキもア〇カになってしまう。せめて赤い服を着てから言ってほしいものだ(そういう問題ではない)
一回そのもふキチのシークレット・グリーンハウスを見せてもらったが最新式の設備(調理系のみ)がそろったそこそこにでかいものだった。これなら二人で作業してても問題はないだろう。
「そんじゃやるって方向性で」
「わーかった分かった。儂も腹をくくるとするかのう…。二、三日徹夜になりそうじゃが」
がっくりと肩を落とすもふキチ。そこにカワサキが提案を出す。
「俺ももふキチさんの料理手伝うからよ。な?それで勘弁してくれ」
「……まあ、やると言ったからには全力を尽くすが、手が欲しい時には頼むとするかのう…」
そういうことでイブにはギルメンだけで、本番の二五日はそれぞれのギルドでNPCを踏まえてやることになった。そこにさらにもふキチが爆弾発言を落とす。
「食材は全部儂が持つから欲しいものあったら何でも言うてみ?出してやるわい」
「え、マジかよ!!もふキチさん太っ腹だなぁ!!!」
「なんか以前の青の薔薇のメンツとか国王と皇帝の時よか凄いことになりそうだ…」
モモンガはテンションの上がってるカワサキを見て少し胃が重くなった。
―――
それからカワサキの方のモモンガ(ガッちゃん)は、「じゃあ私は戻って向こうの守護者たちにカワサキさんはしばらく籠るって伝えてきますね」と言って元の世界へと帰って行った。
こちらでも取っている措置だが、お互いを行き来するためのポータルを設置してる部屋は守護者含め自分とカワサキしか入れないよう厳命している。
ポータルの転移位置はリングヴィ中央神殿前なので、モモンガは
「―――二人きりになってしまったのう、川崎 雄二君?」
「……なんであんたがその名を知ってるのかは知らねぇが、俺はただのカワサキだよ」
もふキチがカワサキの本名を口にすると、途端にカワサキの気配がピりついたものに変わる。
「いや、なに。二度目の邂逅の時じゃったかな……ちょいと思いだしたんじゃよ。儂の世界にもあった川崎家のことをの?」
「……あんたはいい人だよ。うちのモモンガさんにも爺さんとして接してくれている。最近大分精神が安定していていい兆候だ。だからよ―――」
―――あの家のことを持ち出して俺を怒らせねえでくれや。
ぶわっとカワサキからさっきが放たれる。だがもふキチはそれを柳に風とばかりにどこ吹く風だった。
「話は最後まで聞くものじゃぞ、サッキー。別にお前さんを怒らせる目的であの川崎の家の話をしたわけではない。覚えておるかの?以前に話した並行世界の話を」
「……ああ、覚えてるよ」
少しまだピりついてはいるが殺気をしまい込むカワサキ。そして先ほどまでモモンガがいた席を見やり説明を始める。
もふキチとカワサキの世界の差異はどこなのかという話にまずは遡る。もふキチが言う通り正史ではアインズ・ウール・ゴウンのメンバーは四一人しかいないはずだった。もふキチ自身はアインズ・ウール・ゴウンのメンバーではないが、関わっている。そのかかわりで自分が失ったと思われる家族の遺した子に再会できた。
カワサキの世界の方は、どうやらもふキチはおらず、ギルドメンバーも正史通り誰もいなくなった。【カワサキ】以外は……。
「儂の知ってる川崎のぼんぼんは、ネジくれた貴族権威な帝王学に染まりみんなが知ってる富裕層の人間そのまんまじゃった」
その言葉を聞いてカワサキは今度こそピリついたものをなくしうげぇ…となっていた。もしかしたら自分がそうなっていたのかもと思うとことさらだ。
「最初儂の所のカワサキのぼんぼんは確か…山瀬 舞子という女性と婚約関係にあった。が…それが破棄されとある富裕層の女性と望まぬ結婚をした…とだけしか知らんがな。その後ぼんぼんの話を全く聞くことはなくなった」
山瀬 舞子の名を聞いたときにピクリと反応を見せ、その後の望まぬ結婚とやらでぞわりとした悪寒を感じて(今は人化している)鳥肌が立った。きっともふキチの世界のカワサキは例のあの女性に捕まったのだろう。
俺もふキチさんとこの俺じゃなくて本当によかった……。そう心の底から安堵するカワサキだった。
「……まあ、怒らせたお主に儂からの謝罪として一ついいものをやろう」
そう言ってもふキチはアイテムボックスから重箱を取り出した。そこに入ってるのは―――
「もふキチさん、あんた本当にどこまで知ってんだ?」
「知らないことは知らない。知っていることならいつまでも覚えていられる。それだけの事じゃよ」
重箱に綺麗に鎮座していたのは漬物寿司だった。千枚漬けと柴漬け、それにすぐき漬けの寿司。そしてもう一品。地方は違うが同じ漬物寿司であるめはり寿司も入っていた。
「たしか川崎家の奥方は早いうちに亡くなったと聞いている。だがお前さんの料理への熱意を感じると……のう。じゃからそれは謝罪の品で思い出の品じゃよ」
もふキチはそう言って、カワサキに番茶と寿司の入った重箱を渡すのだった。
※※※
俺は最初千枚漬けの寿司に手を伸ばした。以前リ・エスティーゼの王様とバハルス帝国の皇帝の会合の時に出したのもと見た目はそう違わない。大きさも一口で行けるものだから思い切って一口で食べる。
「―――うめぇ」
それは俺が出したやつより昔の…おふくろの作ってくれた寿司の味に近かった。……いや、それよりも美味かった。
もふキチさんは俺らのいた時代から一〇八年前に生まれたらしい。その頃は大気汚染もそんなに酷くなく、食生活も今と違って豊富な時代だったのだろう。
これはそんなもふキチさんが実際に食べたものに近いものだろう。だからこそ本物の味を作れるのだ……。羨ましいと思った。昔を知る、大気汚染でマスクが必須なあのクソったれな世界よりまともだったろう時代を生きたこの爺さんが。
俺は他の寿司も味を覚えるためにもゆっくりとかみしめるように食べた。柴漬けは赤紫色をしていてちょっとビビったが、その味と香りに感激した。すぐき漬けは乳酸発酵されたみたいな少しすっぱいものだったが美味かった。
もふキチさんは道楽で趣味だと…特殊技能に頼ったものしか作れないと言っていたがそんなことはない。彼の生きた時代…今では失った味を再現できる凄い人だ。
尊敬できる人がまた一人、できたような気がした。
※※※
漬物寿司を出したのは正解だったようじゃ。儂も若いときに京旅行(妻のみゆきも一緒に)行った時に食べたあの寿司の味を忘れずにいれたから作れた。歴史の話でその漬物の作り方を聞いておいてよかったとさえ今思う。
サッキーの目じりに涙が浮かんでいたが、儂は気付かないふり、見ないふりをして彼をおいて厨房に入る。
うちの子らは滅茶苦茶食うからの。下ごしらえも大変じゃ。儂は今まで封印していた維持する指輪を指につけ、サッキーより先に料理の下ごしらえを始めるのじゃった。
―――
しばらくしてサッキーが儂の出した料理専用のシークレット・グリーンハウスに駆け込んできた。
「おい、もふキチさん。先に行くなんてずるいぜ?」
「……どうじゃった?儂の握った寿司は」
先ほどとは違い穏やかな空気を纏ったサッキーに儂は尋ねた。いや…若干拗ねた子供のような感じもするが、彼は一呼吸おいて「すげぇ美味かったよ」と笑顔で返してきたのだった。
「あれはな、若い頃に旅行に行った京都で出されたものを再現したもんじゃ。お前さんのお袋さんとは違うじゃろうが、思い出の味じゃったか?」
「ああ、久しぶりに自分が感動できるものに出会えてよかったよ」
そう言ってくれるなら、儂の能力も捨てたもんではないな。
「さて、仕込みだ。何から始める?」
「うちは人数多いし作るの大変じゃからすごく手を借りることになるぞい?」
「いいよ、元々手伝うって話だったしな」
そう言って儂らは健啖家な連中の腹を満たすためにそれぞれ料理を始めるのじゃった。
儂は色々と材料を次々に出していく。乳製品は豊穣の雌牛から採れたミルクに、それを使った加工品類。サッキーが使うかはわからんがGM権限で作りだした豊穣の雌牛の肉の各部位(ちなみにこれはGM権限でジェネレートしただけでうちにいる豊穣の雌牛の肉じゃない)。
他にもSランクやEXランクのものまで大量に。
儂の嫁であるみゆきも参加するじゃろうし、あ奴の分も含めてからおばんざいの材料もそろえていく。黄金大豆から作られた豆腐とか、現実にあった野菜やら。
そういえばアテナのオリーブもあったの。それも出してついでにリッターでオイルも出す。
次々に出てくる食材などのサッキーは目をまん丸くして唖然としておった。そりゃそうじゃろ、ほとんどがSもしくはEXランクの食材なんじゃから。
「……なぁ、もふキチさん。あんたんとこに豊穣の雌牛いたよな?まさか―――」
「いやあの子とは違う固体のものじゃから安心せい。他にも使いたい食材があれば何でも言うてみ?今みたいに出してやるぞ」
そういうと若干引き気味だったサッキーは目を輝かせた。これでどうやらさっきの地雷踏み抜いた件はチャラにしてくれそうじゃな。
「豊穣の雌牛のミルクやチーズなんて初めて見たぜ……アテナのオリーブもオイルもあるし…」
「この世界では文字通り儂神じゃからのう。大抵のことはGM権限使えばできる。まあ、普段は気候変化とかにしか使わんが」
今回だけ特別じゃよ?というとサッキーは嬉しそうに何をどう使うかを考え始めるのじゃった…。
ということでリレー小説の頭を張らせていただきました。
カワサキさんの過去を掘り出して地雷を踏み抜くもふキチェ…。
調理編はこの後18:00に混沌の魔法使い様のほうで投稿されますのでお楽しみに。
それでは後編のパーティー編まで一反のお別れです。See you next story,バイバイ☆
もふキッチンを
-
定期で配信する
-
不定期でもいいから書きあがったら即うp