【オーバーロード】食事処もふキッチン【異世界編】 作:野神 汰月
本日は中学二年生(もふキチ談)なウルベルト様がご来店です。ちょっと重い話が入りますがご了承くださいますようお願い申し上げます。
それではもふキッチン開店です。
前回の茶釜の来店した後の夜、アームスヴァルトニル湖リングヴィにあるもふキッチンに一人の来客があった。その風貌はどっかのロボットアニメに出てきたロン毛イケメンな超兵さんそのもので―――。
「ちょっともふキチさん、これどういうことですかねぇ!?」
「夜にうるさいぞ中学二年生!!」
「誰が中学二年生ですか!!」
もふキッチンに入店するなり騒がしい第一声を発したのはもふキチ的あだ名でベルトさんと呼ばれるウルベルト・アレイン・オードルだった。
入店して即どういうことだと言われてもピンとこなかったもふキチはとりあえず煩いので口撃(笑)してみた。
「で、何がどういうことだって?」
もふキチが少しダルそうに尋ねるとウルベルトはまたヒートアップして「この姿の事ですよ!!」と騒ぐ。もふキチ的にはそのロン毛イケメンの何が問題なのかさっぱりわからなかった。
現実世界での彼も相当イケメンだったのだしイケメン引き当てたんだから別にいいじゃないかと思う。イケメンまじ滅べばいいのに…(作者の本音)
「なんで〇レルヤ・ハプ〇ィズムなんです!?絶対垣〇帝〇だと思ったのに!!」
「…えぇ……そこぉ…?」
昔まだYGGDRASILで営業してた頃に彼が来店したとき、もふキチが「万年第二位かよ」と揶揄ったことがあったが、まさかそれが影響してそんなことを言うとは思わなかった。
第一彼が配った人化アイテムは装着者に合わせて勝手に容姿をジェネレートする代物なので、もふキチに文句を言っても仕方がないのだが…。だってもふキチがキャラクリしたわけじゃないんだもの。それを説明した後もふキチが
「気に入らんのだったら儂がていとくんキャラクリして後日渡そうか?儂んとこならクリエイトコンソール起動できるし…」
と言うと、ウルベルトはしばし考え込んで「いや、それもなんか違う気がする…」とか言い出した。面倒くさい奴だと正直もふキチは思ったとか。うん作者もそう思う…どうしてこうなった?(メタやめろや)
「まったく…これが現実世界で世間を騒がせてたテロリストの頭とは、誰も思わんじゃろうな?」
「―――へぇ」
もふキチの言葉にウルベルトの雰囲気ががらりと変わった。さっきまでのおバカな空気感からピリピリとした刺すようなものへと。
そう、ウルベルトは現実世界で弁護士をしている裏で法で裁けないものを武力で消し去るテロリストだった。その正体を知るものはほぼ居ないのだが…。
「流石は天下の如月財閥の総帥様ってか?いつ知ったんだよ」
「ん?ああ、モンちゃんが儂の曾孫じゃと知った後にの。あの子の周りにヤバいのがおったら大変じゃし」
すっかり口調も乱暴なものへと変わったウルベルトには何も感じていないようで、もふキチは彼がテロリストだと知った経緯を苦笑気味に話す。
ウルベルトこと吉祥寺 裕行は、たっち・みーこと橘樹 幹久や妻でありモモンガと同じくもふキチの曾孫である橘樹(旧姓:如月) 輝美の幼馴染で親は吉祥寺コーポレーションというそこそこ大きな会社を経営する上流階級の人間だった。
もふキチ自身、本来身内が誰と付き合いをしようが基本気にすることはなかったのでそれまでは裕行のことを調べたりはしなかった。だが、事情が変わった。
もふキチの孫娘の一人で行方知らずだった如月 千尋(結婚して姓は鈴木になっていた)の遺した子供であるモモンガこと鈴木 悟の事を知ったのと、自分の寿命が尽きようとしていたからだ。だから彼の代わりにモモンガの側に居てやってほしいと頼めるだろうアインズ・ウール・ゴウンのメンバー全員の素性を調べた。
その時に引っかかったのがウルベルトの正体だった。本当に偶然ではあったのだが―――
「俺の正体知ってたのに何でテメェの大事な曾孫の側に居てやってほしいだなんて頼んできた?」
ウルベルトはもふキチの話を聞き疑問に思ったことを素直にぶつけた。
そう、普通ならそんな危ない奴を大事な家族の側に置いておこうとは思わないだろう。しかし、詳細を追っていく過程で分かったことがあり、それならモモンガが危ないとき助けてくれるだろうと確信を持てたのでもふキチはウルベルトを大事な曾孫の側に居ることを許した。
ウルベルトはもふキチの思う【正義の味方】の定義に合致していた。
彼は弱者を虐げ私腹を肥やすクズだけを狙い、絶対に一般市民には被害を出さなかった。それは下の者にも徹底されており彼の行いを肯定する一般市民が多くいたほどだ。
もふキチは以前たっち・みーにした話をウルベルトにもしたことがある。正義とは力を持たぬ者のことだと。一方的に搾取され力の前には無力なもののことだと。その無力な正義を守らんと力を振るえばもうそれは悪なのだと。どんな事情があれ力を振るえばもうそれは悪党であると。だからたっち・みーには名乗るなら【正義の味方】と名乗れ。正義を掲げ正義を語るなと。
ウルベルトはそのもふキチの言葉に感化され、テロリストではあるが決して一般人には被害が出ない方法で武力を行使し、悪を…いやクズどもを始末してきた。力を自分の為だけに使う奴は悪ではなくただのクズなのだ。だからウルベルトは誇りを持って自らを極悪の悪党であると胸を張る。
そんなウルベルトだから、もふキチは彼の正体を知っても変わらず接したのだった。
「お前さんは確かに人道には外れているだろう。だが本質は守護だ。テミスの天秤を身につけながら悪党であるお前さんはまさしく正義の味方だよ」
そんな二面性のあるお前さんにはその姿はきっと似合っているのだともふキチは言った。
話しながらも何かごそごそとやっていたもふキチは、ウルベルトにグラスに注いだ飲み物をサーブする。
「儂んとこで作ってるウィスキー…その六十年ものだ。飲んでいきな」
途中から無言だったウルベルトは、どうも…と一言礼を言ってからグラスに口を付けた。
※※※
俺は最初は幹久と同じで弁護士として司法を内部から殴り込み変えていこうと思っていた。必死に勉強をし司法試験に合格しいざ蓋を開けてみたら―――そこは地獄の閻魔も真っ青な世界だった。
金での買収は当たり前、権力の前に法は無意味であり、弁護の意味をなさなかった。検察側も裁判官も裁判員も…権力と金の前では無力な存在だった。
金という力、そして権力がすべてものをいう世界。これでは内部から変える事なんてできやしないと悟った。だから俺は―――
『クズどもには死を。金と権力に媚び諂う者に正義を語る資格なし…地獄に堕ちろ』
弁護士を続けながらテロリストとして武力で解決する方法を選んだ。
弁護士という職業はクズな人間を見つけるには最適な職業だ。罪を犯したやつはもちろん、それを無罪にする俺以外の弁護士や裁判官、検察などの情報を簡単に手に入れることができる。
中には冤罪を掛けられて、それを助けるべく動いたこともあったが検察と裁判官がグルになってちゃ助けられるものも助けられなかった。どんなに無罪の証拠を提出しても裁判長がそれを却下してきやがる…。腐っている…本当に。
幹久は警察内部から変えてやると…真の正義を取り戻すと張り切っていた。現実を見れないお子様め。だが―――あいつのそんな姿を見ていると昔の自分も同じ道を歩んでいたと見せつけられ…だから
『俺はお前(橘樹 幹久)が嫌いだ』
『私もお前が嫌いだ。何故弁護士でありながら無実の人を助けない?確実に罪を犯してるものを救う?お前は正義ではない』
弁護士として弁護するも無実の人間を助けられない俺に対し、奴は辛辣だった。俺だって無罪の人間は助けたい。けどそれができねぇんだよ…。
昔は仲が良かったのに、いつの間にか俺とあいつは顔を合わせるたびに険悪になるようになった。
同じ幼馴染の輝美が仲裁によく入ってくれていたが…それでも俺たちの中は拗れるばかりだった。
そんな幹久と輝美が結婚した。素直に祝福できなかった。なんであんな正義バカと結婚したのだろうか…。俺の方がまだ―――
そこまで考えて俺は自分の初恋を知り、同時に失恋していた。
「―――美味い」
昔を思い返しながら、もふキチ…現実世界では世界的財閥のトップだった人間、如月 凰翔が差し出してくれたウィスキーを口に含む。豊かなスモーキーフレーバーを感じながら強い酒精が喉を焼く。その強い酒精に反して味はまろやかでいくらでも飲めてしまいそうだった。
現実世界ではもう絶対に作れないであろう木の香りをもつ強いその酒は、更に俺に昔を思い出させる…。
最初に殺ったのは政治家だった。そいつは一般市民を食い物にしたクズ野郎だったが裁判の結果無罪になった。司法の制度的に一度無罪になってしまえばもうその事件でそいつを追い詰めることは二度とできない。本来なら控訴で最高裁まで争えるはずなのに、裁判所はすべて棄却するだろうし、控訴もされなかった。
だから、俺が―――。
『はっ……はははっ……あーっはっはっは!!』
初めての殺しの後、俺は狂ったように笑った。法で裁けないクソ虫を俺が、この手で、この世から消してやった!そんな陶酔感と人をこの手にかけたことによる恐怖で、狂ったように…いや狂ったんだ。その時に、俺は。
その夜のことは覚えている。部屋に戻った後ずっと声を殺して笑い、布団の中で震えていた。それからしばらくは警察が来ないかと怯えたが、すぐに慣れた。幹久に探りを入れたが犯人の特定には至っていなかったし、特定されることはないだろうと言っていた。そらそうだ…バレねぇように綿密に計画したんだ。成功してよかった!!……そう思ったのも束の間だった。
―――その後政治家殺害の犯人として無実の人間が逮捕された。
何故だ…どうしてそうなった…。犯人は俺だ。だが俺とは絶対わからないように犯行に及んだ。だから俺は無事なのだ。なのに、何故…。
『マジで腐ってやがる…この世界は…この国は…っ!!』
何とか俺はその捕まった無実の人間を弁護して無罪を勝ち取ろうとしたが―――弁護はすべて棄却され、異様の即日結審が言い渡された。死刑だった…。理由は【政治家だけでなく運転手含む一般人を大量に巻き込んだ】為だった。
それからしばらく俺はふさぎ込んだ…。俺のせいで罪のない人が冤罪で死刑になり、一般市民も巻き込んでいたことが分かった。クズ野郎を消して世の中をよくしたいという思いで起こしたことが、逆に悲劇を呼んでしまった。狂った、壊れたなんて嘘だ……そう思い込んで、自分をごまかしていたに過ぎなかったんだ。
その頃に俺は幹久に誘われYGGDRASILを始めた。ゲーム、しかもフルダイブ型のDMMO-RPGなんて初めてだったが何もかも忘れて打ち込んだ。
ゲームなのに…いやゲームだからか、クズどもが多くて嫌になりそうだったが、そこで出会った一人の男の言葉にほれ込んだ。そう、今目の前にいる男。【優しく非常な白狼】【
※※※
「ご馳走様、美味かったですよ…ウィスキー。こんな美味い酒は初めてです」
「まあ、現実世界じゃ合成アルコールしかなかったからのぅ」
礼を述べるウルベルトにもふキチは苦笑しながら返した。何やら長いこと自分の世界に浸っていた様子ではあったが、ウィスキーを飲み終わる頃には何かすっきりとしていた。もふキチにテロリストであった事がバレたときのようなピリピリとした空気は消え去り、いつもの口調で穏やかな表情をしていた。
やっぱり二面性あるよな、コイツ…と、内心で独り言ちりながらもふキチが「いつでもおいで。基本的に毎日やっとるから」と言うと、ウルベルトは軽く右手を上げて店を後にした。
「―――あ、あいつ無銭飲食していきおった……ま、いいか」
どうせYGGDRASILのゲーム内硬貨であるユグドラシル金貨置いてかれても仕方がない。現実となった今外では使い物にならないのだし…まあ、リングヴィの町では使うのだが。
いつかまた来た時に何かしらで支払ってもらおうともふキチは思ったのであった。
クッソなげぇベルトさんの過去振り返り回になってしまった…(´・ω・`)
さて、次回は正義バカか…もしかしたら特別ゲスト回になるかもしれません。
それと、また間隔があくかもしれないのでよろしくお願いします…(リアル事情と多世界食事処編も構築しださないとなので…)
それではまた次回お会いしましょう。See you next story,バイバイ☆
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