鬼滅の刃 〜星空を舞う蝶〜   作:ありす(旧名:紅茶・ルミエール)

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お待たせしました。


花の呼吸

蝶屋敷に来てから、私の生活は大きく変わった。温かい食事、清潔な着物、そして何よりも、私を気にかけてくれる人々の存在。皆、私に言葉を投げかけ、優しく接してくれた。

 

言葉を話すことは、まだ苦手だ。コインを投げ、裏か表かで物事を決める。そうしないと、どうすればいいのか分からなくなるから。でも、少しずつ、自分の気持ちを伝えることもできるようになってきた。

 

 

 

 

そんな私の日課は、姉様たちの稽古を見ることだった。特に、カナエ姉さんとあげは姉さんが二人で稽古をする時は、いつも以上に真剣に見つめてしまう。

 

二人の剣は、まるで別々の花が咲き乱れるようだった。カナエ姉さんの剣は、優雅で流麗。まるで風に舞う花びらのように、美しく、そしてどこまでも力強かった。あげは様の剣は、力強く、そして輝かしい。まるで夜空に瞬く星のように、見る者を惹きつける。

 

「『花の呼吸』 弐ノ型・御影梅!」

 

カナエ姉さんが、流れるような剣技で木刀を振るう。その動きは、無駄な力が一切なく、ただただ美しかった。

 

「『星の呼吸』 壱ノ型・流星!」

 

あげは姉さんが、光のような速さでカナエ様へと斬りかかる。その動きは、私の目でも捉えるのがやっとだった。

 

二人の稽古は、いつも私に、強烈な感動を与えてくれた。私は、ただ、その動きを目に焼き付けるように、じっと見つめていた。私の目は、他の人よりも、ずっとたくさんのものを見ることができた。カナエ姉さんが剣を振るう時の筋肉の動き、足の運び、そして呼吸のリズム。あげは姉さんが剣を振るう時の、重心移動と、体幹のブレない様。その全てが、私には、スローモーションのように見えた。

 

二人の稽古が終わると、私は、誰もいなくなった稽古場へと向かった。

 

私は、壁に立て掛けてあった木刀を拾い上げた。少し重い。でも、これを振ってみたいと思った。

 

私は、カナエ姉さんが剣を振るう時の動きを、脳内で再生した。そして、その動きを、そのまま真似てみた。

 

「……っ!」

 

木刀を振るう。カナエ姉さんの動きとは程遠く、私の剣は、ぎこちなく、そして力もなかった。しかし、私は、諦めなかった。

 

何度も、何度も、木刀を振るう。カナエ姉さんの動きを思い出し、その動きを、正確に再現しようと試みる。

 

私の目は、姉さん達が剣を振るう時の、手の角度、腕の筋肉の動き、そして、足の重心のかけ方まで、全てを記憶していた。私は、その記憶を頼りに、自分の体を動かす。

 

始めた頃はぎこちなく、まだ剣先はふらついていたけど、少しずつ、私の剣は、滑らかになっていった。

 

「『花の呼吸』 壱ノ型・初桜……」

 

私は、か細い声で、その型名を呟いた。これは、カナエ姉さんが、稽古の時に、見せていた型だった。私は、その動きを、真似てみる。

 

木刀が、弧を描くように、流れるように振られる。その動きは、まだ不完全だったけれど、確かに、カナエ様の剣と、同じ軌道を描いていた。

 

私は、嬉しかった。今まで、自分には、何もないと思っていた。ただ、生きているだけの存在だと思っていた。でも、私は、姉様たちの剣を、真似ることができた。

 

私は、毎日、人知れず、稽古を続けた。2人の稽古を、時間をかけて観察し、誰もいない稽古場で、それを再現する。

 

「弐ノ型・御影梅……」

 

「参ノ型・乱華の衣……」

 

私は、一つずつ、花の呼吸の型を覚えていった。

 

ある日の夜、稽古を終えて部屋に戻ろうとすると、後ろから優しい声が聞こえた。

 

「カナヲちゃん、そんな遅くまで、何をしてたの?」

 

振り返ると、そこに立っていたのは、しのぶ姉さんだった。

 

私は、何も言えず、ただ、木刀を握りしめていた。

 

 

「もしかして、姉さんたちの真似事をしてたの?」

 

問い詰めるように聞いてくる。私は、また、何も言えなくなった。

 

「しのぶ、駄目よ」

 

その時、もう一人、部屋から出てきたのは、カナエ姉さんだった。

 

「カナヲちゃん、見せてくれる? あなたが、私たちの真似事をしていた、その剣を」

 

カナエ姉さんは、優しく私に尋ねた。私は、その言葉に、ゆっくりと頷いた。

 

私は、再び木刀を手に取り、誰もいない夜の稽古場で、剣を振るった。

 

「『花の呼吸』 壱ノ型・初桜!」

 

私の剣は、夜空の下で、一輪の花が咲くように、静かに、そして美しく振るわれた。

 

2人は私の剣を見て、驚きと、信じられないという表情を浮かべていた。

 

「カナエ……これは……」

 

しのぶ姉さんが、震える声で呟いた。

 

「ええ、しのぶ。この子は、私たちが稽古をするのを見て、私たちの動きを、そのまま真似て、呼吸を習得したんだわ」

 

カナエ姉さんは、そう言って、私の頭を優しく撫でた。

 

「すごいわ、カナヲちゃん。知らない間に、呼吸を覚えるなんて。本当に、すごい。あなたには、こんな才能があったのね」

 

カナエ姉さんの言葉に、私の胸は、温かい光で満たされていくようだった。

 

「…ありがとう」

 

私は、小さく、しかし、はっきりと、そう言った。

 

 

私は、もう、ただ生きているだけの存在ではなかった。鬼殺隊士として、姉様たちを守るために、強くなりたい。そう、強く願うようになった。




はい、原作に近づいてきましたね。

次回で、原作の時間軸になりますよ〜。
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