鬼滅の刃 〜星空を舞う蝶〜   作:ありす(旧名:紅茶・ルミエール)

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日曜日が一番時間があるので、日曜日が主な投稿日になりそうです。


カナヲとあげは

最終選別から一ヶ月が過ぎた。

 

栗花落カナヲは、正式に鬼殺隊士となり、自分の日輪刀と隊服を受け取った。蝶屋敷での訓練は変わらず続いているが、夜になれば、隊士として割り当てられた任務に向かうことになる。

 

今夜、カナヲに割り当てられた任務は、ある特異な町での鬼の掃討だった。その町は、古くから夜になると鬼が出没する地域だったため、町中の家々が藤の花の香を焚き、町全体が甘い香りに包まれていた。その濃密な香りゆえに、鬼は町の中に踏み込めない。

 

しかし、その代わり、町から外へ出ようとする人間を狙って、町の外周に鬼が待ち伏せしているという報告が上がっていた。

 

今回の任務には、指南役として星柱・胡蝶あげはが同行することになった。

 

「カナヲ、緊張している?」

 

町へ向かう道中、あげはが明るい声で尋ねた。あげはの顔は、いつものように自信と活気に満ちている。

 

カナヲは、自身の隊服の袖を握りしめ、小さく頷いた。

 

「はい…」

 

「大丈夫。私がついてるから。それに、カナヲはもう立派な鬼殺隊士だよ。最終選別を生き抜いたんだから、自信を持って」

 

あげはは、そう言って、カナヲの頭を優しく撫でた。その手の温もりに、カナヲの緊張が少しだけ和らぐ。

 

やがて、二人は目的の町へとたどり着いた。夜の帳が下りた町は、まるで夢の中にいるかのように、濃い藤の花の香りに包まれていた。

 

「この町じゃ、鬼は入れないね。でも、逆に言えば、私たちは町の外に出るしかないってことだ」

 

あげはは、町の様子を確認すると、日輪刀の柄に手をかけた。

 

「カナヲ、町の境界線を越えたら、すぐに鬼の気配が濃くなる。準備はいいんw?」

 

「はい」

 

カナヲは、強く頷いた。

 

二人が町の境界線を越えた瞬間、藤の花の香りが薄れ、代わりに、湿った土と、鬼の放つ腐敗したような臭いが混ざり合った、不快な臭いが鼻を突いた。

 

そして、すぐに、複数の鬼の気配が二人を包囲した。

 

「やっぱり待ち構えていたね…。じゃあ、始めようか!」

 

あげはがそう言った瞬間、木々の間から、奇妙な姿をした鬼たちが姿を現した。

 

一体は、全身が黒い毛皮に覆われ、鋭い爪と、獲物を狩る犬のような姿勢をした鬼。もう一体は、巨大な翼と鋭い嘴を持ち、上空から二人を狙う鳥のような鬼。さらに、地面を低く這い、蛇のように素早い動きをする鬼など、その特徴は多岐にわたっていた。

 

「いろんな姿の鬼がいる…、厄介だね。カナヲ、落ち着いて。無理に攻撃を仕掛けなくていい。私が道を切り開くから、あなたは私についてきて」

 

あげはは、そう指示すると、即座に「星の呼吸」を構えた。

 

「『星の呼吸』 壱ノ型・流星!」

 

あげはは、一瞬で、犬のような姿勢をした鬼の懐へと飛び込んだ。その速さは、カナヲの目でも捉えるのがやっとだった。

 

「グギャア!」

 

鬼は、あげはの動きに反応できず、あげはの木刀が鬼の頸を切り裂いた。しかし、その斬撃は、鬼の頸骨に阻まれ、完全に斬り落とすことはできなかった。

 

「チッ、硬い!」

 

あげはが舌打ちをする。その隙を突き、上空の鳥のような鬼が、鋭い嘴で二人へと突っ込んできた。

 

「『星の呼吸』 肆ノ型・天ノ川!」

 

あげはは、素早く体勢を変え、空へと向かって連続で斬りつける。その斬撃は、まるで天の川のように、鳥鬼へと降り注いだ。斬撃を浴びた鳥鬼は、悲鳴を上げ、体制を崩して地面へと墜落する。

 

「カナヲ! 今だよ!」

 

あげはの指示に、カナヲは反応した。この瞬間を待っていた。

 

カナヲの目には、あげはが道を切り開いた、その一瞬の隙、そして、鳥鬼が地面に墜落した際の衝撃で、その体が僅かにブレる様子が、はっきりと見えた。

 

「『花の呼吸』 弐ノ型・御影梅!」

 

カナヲは、流れるような剣技で、墜落した鳥鬼へと斬りかかる。彼女の剣は、迷うことなく、鬼の頸を正確に捉えた。

 

「グアアアア!」

 

鳥鬼は、断末魔の叫びを上げ、塵となって消滅した。

 

カナヲは、初めて自分の刃で鬼の頸を斬り落とした。その感触は、重く、そして確かなものだった。しかし、彼女の呼吸は乱れていない。

 

「…すごい。完璧だよ、カナヲ!」

 

あげはが、カナヲの剣技を称賛する。

 

その間にも、残りの鬼たちが、二人へと襲いかかってきた。特に、地面を這う蛇のような鬼の動きは、素早く、そして予測が難しかった。

 

「『星の呼吸』 漆ノ型・星羅雲武!」

 

あげはは、高速で移動しながら、連続で斬りつけた。彗星の尾を引くかのような斬撃が、蛇鬼へと襲いかかる。蛇鬼は、その素早さを生かして斬撃をかわすが、あげはの斬撃は、まるで意志を持っているかのように、蛇鬼を追い詰めていく。

 

「『花の呼吸』 陸ノ型・渦桃!」

 

カナヲは、あげはの動きと連携し、高速で回転しながら刀を振るう。渦巻く斬撃が、蛇鬼の逃げ道を塞いだ。

 

蛇鬼は、二人の連携に、焦りの表情を浮かべた。

 

「くそっ! 二人がかりなんて、卑怯だぞ!」

 

鬼は、そう叫びながら、二人へと向かって突っ込んできた。

 

「卑怯? あなた達もたくさんいるじゃない!」

 

あげはは、そう言い放つと、剣の速度をさらに上げた。

 

あげはの斬撃が、蛇鬼の動きを僅かに鈍らせる。その隙を、カナヲは見逃さなかった。

 

「『花の呼吸』 壱ノ型・初桜!」

 

カナヲは、体を低く落とし素早く肉薄し、鬼の頸を捉える。桃色の斬撃が、蛇鬼の頸を正確に切り落とした。

 

これで、鬼は残り一体。

 

残りの鬼は、最初に現れた犬のような鬼だった。この鬼は、他の鬼たちとは違い、一対一での戦闘を好むようで、他の鬼たちが斬られている間も、静かに二人を観察していた。

 

犬鬼は、唸り声を上げながら、あげはとカナヲへと向かって突進してきた。その動きは、驚くほど俊敏で、まるで一筋の黒い影のようだった。

 

「速い…!」

 

カナヲは、その速さに、僅かに動揺した。

 

「『星の呼吸』 壱ノ型・流星!」

 

あげはは、一気に間合いを詰め、渾身の一撃を繰り出した。しかし、犬鬼は、その攻撃を、まるで最初から分かっていたかのように、わずかに体を傾けてかわした。

 

「勘が鋭いね!」

 

あげはは、すぐに体勢を立て直すが、犬鬼は、その隙を突き、あげはへと斬りかかる。

 

「『花の呼吸』 伍ノ型・徒の芍薬!」

 

カナヲが、高速で犬鬼へと斬りかかる。その斬撃は、犬鬼の攻撃を妨害し、あげはを守った。

 

「カナヲ、ありがとう!」

 

あげはが、カナヲの援護に感謝する。

 

犬鬼は、二人の連携に、苛立ちの表情を浮かべた。

 

「邪魔だ、小娘ども!」

 

犬鬼は、そう叫ぶと、再びカナヲへと向かって突進してきた。そのスピードは、先ほどよりも増している。

 

カナヲは、動じない。彼女の目には、犬鬼の動きが、はっきりと見えていた。

 

(速い…。でも、この動きには、癖がある…!)

 

カナヲは、犬鬼の動きのパターンを、瞬時に読み取った。

 

犬鬼が、カナヲへと斬りかかる。その鋭い爪が、カナヲの体を狙う。

 

カナヲは、ギリギリまで攻撃を引き付けた。そして、犬鬼の爪が、カナヲの体に触れる寸前、カナヲは、体をわずかに傾け、犬鬼の攻撃をかわした。

 

「『花の呼吸』 肆ノ型・紅花衣!」

 

カナヲは、くるりと身を翻し、優雅な動きで犬鬼の懐へと飛び込む。その刃は、犬鬼の頸を正確に捉えた。

 

「ば、バカな…! 見切ったのか…!?」

 

犬鬼は、信じられないという表情を浮かべた。しかし、すでに遅い。

 

「『花の呼吸』 陸ノ型・渦桃!」

 

カナヲは、渾身の力を込めて、刀を振るった。犬鬼の頸が、正確に切り落とされ、その体は、塵となって消滅していった。

 

静寂が、夜の森を包み込んだ。

 

「やったね、カナヲ! 完璧な連携だったよ!」

 

あげはが、カナヲに駆け寄り、その肩を抱いた。

 

カナヲは、少し照れくさそうに微笑んだ。

 

「…あげは姉さんのおかげです。ありがとうございました」

 

「私の力だけじゃない。カナヲの『花の呼吸』は、本当に綺麗だよ。カナエ姉さんの優雅さと、しのぶの鋭さが混ざっているみたい」

 

あげはは、カナヲの剣技を心から称賛した。

 

夜空には、満月が輝いていた。二人は、鬼の気配が完全に消えたことを確認すると、藤の花の香りが漂う町へと、静かに戻っていった。

 

彼女の進む道は、まだ長く、そして険しい。しかし、二人の心の中には、確かな希望と、互いへの信頼が宿っていた。

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