鬼滅の刃 〜星空を舞う蝶〜 作:ありす(旧名:紅茶・ルミエール)
機能回復訓練が始まって約一ヶ月。竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助の三人は、その驚異的な回復力と、持ち前の根性で、怪我をする前と遜色のない動きを取り戻していた。全集中・常中を完全に習得し、その動きは見るたびに洗練されていった。
蝶屋敷での訓練は、単に機能回復に留まらなかった。彼らは、空いている時間にカナエやあげはの訓練にも積極的に加わった。
稽古場で、炭治郎がカナエと、伊之助があげはと打ち合っている。
「炭治郎くん、もっと、体の軸を意識して!」
「はい!」
最初のうちは炭治郎の振るう木刀は悉く空振り、カナエの木刀は炭治郎に当たるだけだった。しかし、何度も訓練を繰り返すうちに、炭治郎も何度か、カナエに木刀を当てられる様になった。
「伊之助くん、太刀筋が曲がっているよ!もっと真っ直ぐ振り下ろして!」
「うぉぉぉぉ!猪突猛進!」
伊之助はあげはに果敢に詰め寄るが、どれだけ木刀を振り回しても全て弾かれるだけだった。しかし、何度も繰り返すうちにあげはが伊之助の木刀に押し返される回数も多くなっていった。
二人の柱の実力は、炭治郎達とは天と地の差があった。そんな圧倒的力量差のある剣士との稽古が、彼らの動きを飛躍的に向上させた。
任務への出発を二日後に控えた日。炭治郎は、最終的な体調の確認のため、胡蝶しのぶの診察を受けていた。
「体調は万全のようですね、竈門くん。しかし、無理は禁物ですよ。まだ、体は完全に回復したわけではありません」
しのぶは、そう言って、優しくも厳しく炭治郎に告げた。
「ありがとうございます、胡蝶さん。もう、体は全く問題ありません。それより、胡蝶さんに聞きたいことがあるんです」
炭治郎は、意を決して、以前から抱えていた疑問を口にした。
「はい、なんでしょう?」
「あの、胡蝶さんは、『ヒノカミ神楽』というものをご存知ないでしょうか? 」
「知りません」
炭治郎の問いに、しのぶは、キッパリと告げた。
「『ヒノカミ神楽』、ですか? 残念ながら、聞いたことがありませんね。神楽であれば、鬼殺隊とは関係のない、ただの舞いではないでしょうか」
しのぶは、首を横に振った。
「じゃあ、火の呼吸とか…」
「火の呼吸、についても、私は知りません。ですが…」
しのぶは、そこで言葉を区切り、真剣な表情になった。
「『炎の呼吸』を、『火の呼吸』と呼ぶことは、絶対に避けるべきだと、代々言われていることは知っています」
「どうしてですか?」
炭治郎は、身を乗り出して尋ねた。
「分かりません。ただ、炎柱の家系に、『火の呼吸』と『炎の呼吸』は全くの別物である、と強く言い伝えられているそうです。間違えて呼んではいけない、と」
しのぶの言葉は、炭治郎の心に、強い衝撃を与えた。やはり、父から受け継いだ「ヒノカミ神楽」と、何らかの呼吸法には、深い関係があるに違いない。そして、それが、鬼殺隊の歴史の、もっと古い部分に触れているのではないか。
「ありがとうございます、胡蝶さん」
炭治郎は、そう言って、深々と頭を下げた。
「いえ。もし何か調べたいことがあるなら、煉獄さんに聞いてみるのはどうでしょうか。彼は、炎の呼吸の使い手ですから、何か知っているかもしれません」
そして、出発の朝。
炭治郎、善逸、伊之助の三人は、蝶屋敷の皆に見送られながら、無限列車へと向かう準備を整えた。
「炭治郎くん! 頑張ってね!」
カナエが、優しく微笑んで、炭治郎に声をかける。
「炭治郎! 伊之助! 善逸! 頑張ってきてね !また一緒に訓練しよう!」
あげはが、力強く三人にエールを送った。
カナヲは、何も言わなかった。ただ、炭治郎の目をじっと見つめていた。その瞳には、彼の無事を願う、強い思いが宿っていた。
「行ってきます!」
炭治郎は、そう言って、深く頭を下げた。
次に向かうは、煉獄さんが向かっている任務、とある列車だ。
三人は、それぞれの思いを胸に、無限列車へと向かう。
訓練のシーンの2人の改善点については、完全に私の想像です。
無限列車編は本作品と直接関わらないので書かない予定です。
原作と同じ、と思ってくれれば大丈夫です。