鬼滅の刃 〜星空を舞う蝶〜   作:ありす(旧名:紅茶・ルミエール)

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遊郭(1)

 

 

炎柱・煉獄杏寿郎の訃報から、鬼殺隊全体に緊張が走っていた。特に、煉獄でさえ勝てなかった上弦の鬼の強さは、柱たちの間に強い警戒心を生んでいた。

 

そんな中、星柱・胡蝶あげはは、蝶屋敷の庭で、日輪刀の手入れをしていた。彼女の瞳は、煉獄の死を経験してからというもの、以前にも増して強い光を宿している。

 

その時、頭上から、派手な声が降ってきた。

 

「よう、あげは! 派手に探し回ったぜ!」

 

見上げると、音柱・宇髄天元が、屋敷の屋根の上から、こちらを見下ろしていた。

 

「宇髄さん! 屋根の上から登場するなんて、いつものこととはいえ、心臓に悪いよ」

 

あげはは、日輪刀を鞘に納めながら、宇髄へと声をかけた。宇髄とは、以前一緒に戦った時から何度か交流があった。屋敷に来る時は、屋根の上からだったり、突然前に現れたりするなど、驚かされていたのだ。

 

宇髄は、屋根から軽やかに飛び降りると、あげはの前に立った。その表情は、いつもの不敵な笑みながらも、どこか真剣な色を帯びていた。

 

「おい、あげは。重要な任務がある。お前に同行を頼みたい」

 

宇髄の言葉に、あげはは即座に反応した。

 

「同行? 宇髄さんから直々に頼まれるなんて、光栄だね! どんな任務なの?」

 

「吉原遊郭に、鬼が潜んでいる。それも、上弦の鬼の可能性が高い」

 

宇髄の言葉に、あげはの顔が引き締まった。上弦の鬼。煉獄を討った、恐るべき存在。

 

「上弦……! 分かったよ、宇髄さん。もちろん、承諾する! 私も、煉獄さんの仇を討ちたい」

 

あげはは、力強く頷いた。彼女にとって、煉獄の死は、決して忘れられない出来事だった。

 

「うむ、助かるぜ。やはり、お前は話が早い。その派手な勘と剣技は、上弦の相手には不可欠だ」

 

宇髄は、あげはの能力を高く評価していた。あげはの「星の呼吸」の予測不能な動きと、童磨との遭遇で培った上弦に対する警戒心は、宇髄にとって最も信頼できる要素だった。

 

 

 

 

「で、任務の内容なんだが……潜入捜査だ。遊郭に潜り込む」

 

「潜入捜査? それは面白そうだね!」

 

「ああ。そこでだ。本来なら、俺様の派手な嫁たちが同行する予定だったんだが、連絡が途絶えた。だから、今、嫁の捜索と鬼の調査をかねて女隊士を数人連れて行きたい。だが、連れて行けそうな隊士がほとんどいないから、ここに来たってわけだ」

 

宇髄の言葉に、あげはは一瞬、考え込んだ。カナエとしのぶは、別の重要な任務で屋敷を留守にしている。女隊士と言えば、アオイやカナヲがいるが、カナヲも任務があるし、アオイは任務に同行できる力があるわけでは無い。

 

「分かった。でも、女隊士は限られているよ。アオイは屋敷の雑務で忙しいし、カナヲは中だ」

 

「なら、そこにいる3人娘でも連れて行けばいいだろう」

 

宇髄は、そう言って、三人の少女たちを指差した。

 

「え、私たちをですか!?」

 

キヨ、スミ、ナホの三人は、驚きの声を上げた。

 

「やることは、ただの潜入だけだ。戦うのは俺様達だけでいいだろう。なら、誰を連れて行こうと変わらん」

 

「ええええええっ!? 嫌です! 私たち、隊士じゃないなのに!」

 

スミとナホが、顔を真っ青にして叫んだ。キヨもまた、顔を隠して嫌がっている。

 

「宇髄さん、それは無いよ!3人は任務を受けた経験は無いし、そもそも隊士ですら無いんだよ!?」

 

「なら、他に連れて行ける隊士がいるなら教えてくれよ。いないんだから、しょうがねぇだろ」

 

「うう……でも……」

 

 

 

三人が嫌がっているところに、別の声が響いた。

 

「待ってください! それなら、俺たちが代わりに同行します!」

 

声の主は、機能回復訓練を終えたばかりの竈門炭治郎だった。彼の隣には、我妻善逸と嘴平伊之助も立っている。

 

「炭治郎くん! 善逸くん、伊之助くん!」

 

あげはは、驚きの表情を見せた。

 

「あの、宇髄さ。見てください。彼女たちは、あんなに嫌がっています。それに、彼女達を危険な目に遭わせるわけにはいきません!」

 

炭治郎は、強い意志の目で、あげはと宇髄を見つめた。

 

「ほう、この柱である俺様に意見するとは、いい度胸じゃないか」

 

「俺たち、機能回復訓練のおかげで、もう完璧に動けます! 俺たちを連れて行ってください!」

 

善逸は、顔は引きつっているが、炭治郎に釣られて、必死に訴えた。

 

「そうだ! 俺様が行って、派手に鬼の頸を斬ってやるぜ!」

 

伊之助は、得意げに胸を叩いた。

 

「お、俺はお前が筋肉ムキムキの大男だったとしても、一歩も引いたりしないぜ…!」

 

善逸は、震えながらも宇髄の前に立ち塞がった。

 

宇髄は、三人の少年を、じっと見つめた。そして、フッと、不敵な笑みを浮かべた。

 

「俺様は上官だぞ?お前らの様な下っ端隊士なぞの意見など聞くか」

 

そう言って、宇髄は3人を連れて蝶屋敷を出ようとすると、後ろから宇髄の服を引っ張る者がいた。

 

カナヲだった。何かを口に出すことは無いが、訴える様に宇髄の隊服を引っ張っている。

 

「おい、地味に引っ張ってるんじゃねぇぞ。大体、お前は先刻任務を受けただろうが」

 

カナヲは無言で引っ張り続ける。

 

「おい、何か言ったらどうだ。速く離してくれよ、早く出発したいんだよ!l」

 

「宇髄さん、カナヲも嫌だって示しているし、炭治郎君達を同行させようよ。私からのお願いだから」

 

宇髄は、キヨ、スミ、ナホの三人を一瞥すると、素っ気ない口調で言った。

 

「しょうがねぇ。こいつらなら、潜入はどうか知らねぇが戦力にはなるだろう」

 

宇髄は、そう言って、あっさりと炭治郎たちの同行を許可した。キヨ、スミ、ナホの三人は、安堵の表情を浮かべた。

 

「ありがとうございます!」

 

三人が喜んでいるのを見て、炭治郎は、宇髄に深々と頭を下げた。

 

 

 

「じゃあ、あげは。早速だが、準備をしろ。遊郭という名の戦場へ、派手に行くぞ!」

 

4人は、宇髄の言葉に力強く頷いた。

 




しばらくは遊郭編が続きます。次回もお楽しみに!
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