鬼滅の刃 〜星空を舞う蝶〜 作:ありす(旧名:紅茶・ルミエール)
宇髄天元、星柱・胡蝶あげは、そして竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助の一行は、夜通し歩き続け、ようやく吉原遊郭に近い、藤の花の家紋の家へとたどり着いた。
家主の老夫婦に迎えられ、広い部屋に通された一同は、疲れを癒す暇もなく、任務の最終確認に入った。
「まずは、この度の任務の全容を、お前たち三人に伝えておく」
宇髄は、胡坐をかきながら、三人に告げた。あげはは、彼の隣で静かに座っている。
「俺の嫁が、遊郭のある店に潜入していた。だが、数日前から連絡が途絶えている。これは、上弦の鬼が潜んでいる可能性が、極めて高いと見ている。場所はときと屋、荻元家、京極屋だ」
宇髄の言葉に、炭治郎は真剣な表情で頷いた。伊之助は、ただ早く鬼と戦いたそうな顔をしている。
「随分と多いですね。かなり長い期間潜入されていたのですか?」
「3人いるからな、よめ」
宇髄はさらっと答えた。しかし、善逸は、宇髄の言葉に、過剰なほどに反応した。
「3人!?嫁さ…3!?テメッ…テメェ!!なんで嫁3人もいるんだよざっけんなよ!!」
善逸は、ヒステリックな叫び声を上げ、宇髄につかみ掛かろうとした。
「うるさいぞ、善逸! 落ち着け!」
炭治郎が、善逸を羽交い絞めにする。
「フン。派手に騒がしい奴だ」
宇髄は、善逸の反応を鼻で笑った。
あげはは、宇髄の嫁が上弦のいる可能性のある場所に潜入していたという事実に、改めて宇髄の抱える重圧を感じた。
「宇髄さん……嫁さんたち、きっと無事だよ。私たちが、必ず見つけ出す」
あげはは、宇髄に力強く言った。
「ああ。当然だ。俺様の嫁たちだ。簡単にやられるわけがねぇ」
宇髄は、そう答えたが、その瞳の奥には、妻たちへの深い心配が滲んでいた。
「さて。本題に入る。潜入方法だが、遊郭という特殊な場所だ。そこの3人、お前らは男だから、店に近づくこともできねぇ」
宇髄は、そう言って、ニヤリと笑った。
「つまり、お前たちは、女装して潜入する」
その言葉に、善逸は再び絶叫した。伊之助は、意味が分からず首を傾げ、炭治郎は、宇髄の指示を真面目に聞こうとしていた。
場面は変わり、吉原遊郭へ。
遊郭の賑わいは、夜の闇を華やかに照らしていた。宇髄天元は、すでに入念な変装を施していた。普段の派手な化粧を落とした彼の顔は、端正で非の打ち所のない優男の顔立ちになっていた。その整った顔立ちは、遊郭の中に入れば、誰もが振り返るほどの美丈夫だ。
「さあ、お前たち。行くぞ」
宇髄は、そう言って、三人の少年に振り向いた。
その姿は、一言で言えば滑稽だった。
宇髄あげはが協力して、どうにか化粧を施された炭治郎、善逸、伊之助の三人は、女性の着物を着せられていた。
化粧で肌を白く塗られ、目元を紅で彩られていたが、かろうじて女性と見えるくらいで、遊郭ですぐに買い取ってもらえるほどまともに仕上がってはいない。
あげはは、三人の姿を見て、思わず宇髄に耳打ちした。あげは自身は、遊郭の女中を装うため、装飾を外し、地味な着物を着ていたが、それでも彼女の持つ華やかな美貌は隠しきれない。
宇髄も目立たない為にいつもの化粧は落としているが、元が美丈夫なのでかなり目立っていた。
「宇髄さん! 私たち、本当にこれで大丈夫なの!?」
「いや、俺も派手に心配だ。最悪、タダで渡すことも視野に入れなけりゃならねぇかもな」
宇髄は、そう言って、三人を連れて、遊郭の大通りへと繰り出した。
宇髄は、、妻たちが潜入していた三つの店へ、三人を売り込んでいった。
まず、炭治郎が、妻の一人が潜入していた「ときと屋」へ向かった。
宇髄の美丈夫ぶりと、炭治郎の真面目で素直そうな表情が功を奏したのか、ときと屋の女将は、炭治郎を「気の利く子になりそう」と、二束三文で買い取ってくれた。
次に、伊之助が、別の妻が潜入していた「荻本屋」へ向かった。
宇髄の必死の売り込みが女将の心に響いたのか、伊之助もすぐに買い取って貰えた。
そして、善逸の番になった。
「お前、本当に売れねぇな…」
善逸は恨めしそうな顔をしているが、宇髄は気にしていなかった。
京極屋の女将は、善逸を見るなり、露骨に顔を顰めた。
「うーん、流石に酷すぎやしないかい?うちではちょっとねぇ……」
女将は、善逸の恐怖で引きつった顔を見て、明らかに拒否反応を示した。
宇髄も、さすがにこれには困った表情を見せた。
「フン……派手に失敗か。まぁ、そうだろうな」
宇髄がそう言い、あげはの袖を引っ張った。
「宇髄さん、何?」
宇髄はニヤリと笑った。
宇髄は、女将に向かって、自信満々に言った。
「おい、女将。分かった。安くていいんで、便所掃除でもなんでもこき使ってやってください。代わりに、この子を無料で差し上げます」
宇髄は、そう言って、あげはを指差した。
「ええっ!?」
あげはは、驚愕した。宇髄に抗議しようと口を開いたが、宇髄は、それをさせまいと、有無を言わさぬ目力で、あげはを牽制した。
女将は、その言葉を聞き、あげはの顔を見た。あげはは、地味な装いではあったが、その華やかな美貌と、品の良さは隠しようがなかった。
「この美しい娘が、おまけ…? しかもタダで?」
女将は、目を輝かせた。遊郭の基準から見ても、あげはは、すぐにでも遊女として大成するほどの逸材に見えた。
「よ、よろしい! この二人、まとめて貰い受けましょう!」
女将は、そう言って、ニヤリと笑った。
こうして、宇髄天元は、炭治郎と伊之助の潜入を成功させ、そして、善逸とあげはを、思わぬセットで京極屋へと送り込むことになったのだった。