鬼滅の刃 〜星空を舞う蝶〜   作:ありす(旧名:紅茶・ルミエール)

36 / 37
遊郭(5)

宇髄天元が任務の中断を命じた後、嘴平伊之助は、一緒に行動しようと思っていた炭治郎が到着しないことに、悶々とした時間を過ごしていた。

 

「もう日が暮れるのに来やしねぇぜ!惣一郎の馬鹿野郎が!俺は動き出す!」

 

伊之助は、善逸達の捜索の為に、炭治郎を置いて1人、鬼を探すことにした。

 

動きづらい着物を脱ぎ捨て、身体に馴染んだ獣の毛皮でできた服を纏う。布面積が少なくなることで、いつもの鋭い感覚が、戻ってきた。

 

そして、伊之助は高くジャャンプし、天井を突き破って、天井裏に顔を出した。

 

「オイ!ネズミども!刀を渡せ!」

 

伊之助の言葉に応じて、暗闇から2匹のネズミが、姿を現した。

 

尤も、そのネズミ達は筋骨隆々で、1匹ずつ伊之助の日輪刀を持ち上げていた。

 

宇髄の忍獣、「ムキムキねずみ」だ。

 

「よし、行くぜ!猪突猛進!」

 

ネズミ達から刀を受け取った伊之助は、早速鬼の居場所を探そうと動き回った。

 

突然現れた猪頭の化け物(伊之助)に、荻元屋の人々は皆、パニックになった。

 

京極屋の内部は、依然として華やかな賑わいを見せていたが、伊之助には、その下に潜む異様な気配が感じ取れた。

 

伊之助は、店の隅々を嗅ぎ回り、獣の直感で、鬼が移動に使った痕跡を探し続けた。

 

そして、遂に床の裏に隠れた、小さな穴を見つけた。

 

「グワハハハハ!遂に見つけたぞ鬼の巣に通じる穴!鬼の気配がビンビンするぜ!」

 

伊之助は意気揚々として、穴の中に飛び込もうとした。

 

しかし、穴は思ったよりも小さく、頭しか入ることができなかった。

 

「ハハハ、どうやら頭しか入らないようだな!甘いんだよ。俺は全身の関節を外せる男、誰にも止められやしねぇ!」

 

伊之助は、腕や脚の関節を外して、全身の関節をあり得ない角度に曲げた。

 

この状態なら、いくら狭い隙間でも、強引に中に入ることができる。伊之助は、先程は頭しか入れなかった穴へ、吸い込まれるように入っていった。

 

「グワハハハ!猪突猛進!誰も俺を止められねぇ!」

 

 

曲がりくねった穴の向こうには、薄暗い地下の空間が広がっていた。そして、その空間全体が、極彩色の帯で埋め尽くされていた。

 

「ここが鬼の巣ってわけか。食糧庫みたいなものなのか?」

 

地下空間は、大きく開けた巨大な地下空間のようになっていた。辺りには、幾つもの帯が掛かっており、中には鬼に捕えられたであろう、女性達が、閉じ込められていた。

 

そのなかには、善逸とあげはの姿もあり、特に善逸は、気持ちよさそうに寝ている顔をしている。

 

「何してんだコイツら。特に紋逸、なに気持ちよさそうに寝てんだ!」

 

伊之助が呆れたような目をしていると、後ろから何者かの気配がした。

 

「お前が何してんだよ。人様の食糧庫に勝手に入ってきて。汚い、汚いね。汚い、醜い。」

 

「何だこの蚯蚓、キモっ!」

 

伊之助は、現れた帯の鬼の姿に、つい正直な言葉が出てしまった。

 

「『獣の呼吸』 伍ノ牙・狂い裂き!」

 

伊之助は、両手の日輪刀を振り上げ、周囲の帯に、猛烈な斬撃を浴びせた。帯の中に閉じ込められていた人々は、中から解放されたようだ。

 

伊之助は、解放された人々に構わず、帯鬼へ向かって、さらに突進した。帯鬼の不規則な攻撃を避けながら、何度も刀を振るう。

 

「グネグネ気持ち悪いんだよ、蚯蚓帯!人を取り込み過ぎて、動きが鈍くなってんじゃないのか?」

 

伊之助は、果敢に帯鬼へ攻撃を仕掛けるが、帯鬼の身体はしなやかで、全ていなされる。更に、刀を絡め取られそうになることもあった。

 

伊之助は、人を守りながら戦うのは、あまり得意ではない。攻撃に集中しすぎて、帯鬼の別の部位が、せっかく解放した人達を、再び取り込もうとした。

 

その時だった。二つの苦無が突如として投げられ、帯鬼の身体を拘束した。

 

「蚯蚓帯とは、上手いこと言うもんだ!」

 

「ほんとです気持ち悪いです。後で天元様に言いつけてやります」

 

苦無を投げた者の正体は、宇髄の妻、まきをと須磨だった。彼女達も、帯鬼に囚われていたようだ。

 

「私達も加勢するから頑張りな、猪頭!」

 

2人は苦無で、帯鬼を弾いて、ほかの人々が再び取り込まれるのを防いだ。

 

帯鬼の攻撃は更に苛烈になっていく。身体をくねらせ、伊之助に襲い掛かろうとする。

 

「『雷の呼吸』壱ノ型・霹靂一閃・六連」

突如雷のような轟音が鳴り響き、帯鬼の身体を無数の斬撃が襲う。意識を取り戻した善逸が、攻撃を加えたのだ。相変わらず、寝たままではあるが。

 

「お前、ずっと寝てた方が強いんじゃねぇの?」

 

「醜い食糧が抵抗してんじゃな…」

帯鬼は善逸の攻撃に怒りが頂点に達したのか、再び伊之助達に襲いかかる。

 

「『星の呼吸』・肆ノ型・星雲」

 

目を覚ましたあげはが、帯鬼に突撃した。帯鬼の帯の体のしなやかさも貫通して、その体を大きく吹き飛ばした。

 

壁に打ち付けられ、地面に落ちた帯鬼は、今の状況が不利であることを、察知していた。

 

(この状況だと、折角の食料が無くなってしまう。あの猪頭は、柱では無いにしろ、感覚が鋭い。眠っている不細工も、動きが速かった。そして、そこの美しい女。あいつは柱だ。真正面から戦ったら負ける)

 

そして、帯鬼は善逸の雷の如き鋭い音、そしてあげはの隕石の如き重い音の他に、もう一つ音を感じていた。

 

その位置は、上から。上から響き渡る、巨大な爆発音。

 

ドオオォォォォン!

 

突如天井が、”轟いた“。爆発の余波が、帯鬼に只者ではないことを感じさせる。

 

爆発で生まれた土煙が晴れ、中から現れたのは、音柱、宇髄天元だった。

 

「なんで柱が2人もいるんだよ!」

 

宇髄は、皆の方へ振り向いて、こう言った。

 

「待たせたな。ここからは、ド派手に行くぜ」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。