鬼滅の刃 〜星空を舞う蝶〜 作:ありす(旧名:紅茶・ルミエール)
宇髄天元が任務の中断を命じた後、嘴平伊之助は、一緒に行動しようと思っていた炭治郎が到着しないことに、悶々とした時間を過ごしていた。
「もう日が暮れるのに来やしねぇぜ!惣一郎の馬鹿野郎が!俺は動き出す!」
伊之助は、善逸達の捜索の為に、炭治郎を置いて1人、鬼を探すことにした。
動きづらい着物を脱ぎ捨て、身体に馴染んだ獣の毛皮でできた服を纏う。布面積が少なくなることで、いつもの鋭い感覚が、戻ってきた。
そして、伊之助は高くジャャンプし、天井を突き破って、天井裏に顔を出した。
「オイ!ネズミども!刀を渡せ!」
伊之助の言葉に応じて、暗闇から2匹のネズミが、姿を現した。
尤も、そのネズミ達は筋骨隆々で、1匹ずつ伊之助の日輪刀を持ち上げていた。
宇髄の忍獣、「ムキムキねずみ」だ。
「よし、行くぜ!猪突猛進!」
ネズミ達から刀を受け取った伊之助は、早速鬼の居場所を探そうと動き回った。
突然現れた猪頭の化け物(伊之助)に、荻元屋の人々は皆、パニックになった。
京極屋の内部は、依然として華やかな賑わいを見せていたが、伊之助には、その下に潜む異様な気配が感じ取れた。
伊之助は、店の隅々を嗅ぎ回り、獣の直感で、鬼が移動に使った痕跡を探し続けた。
そして、遂に床の裏に隠れた、小さな穴を見つけた。
「グワハハハハ!遂に見つけたぞ鬼の巣に通じる穴!鬼の気配がビンビンするぜ!」
伊之助は意気揚々として、穴の中に飛び込もうとした。
しかし、穴は思ったよりも小さく、頭しか入ることができなかった。
「ハハハ、どうやら頭しか入らないようだな!甘いんだよ。俺は全身の関節を外せる男、誰にも止められやしねぇ!」
伊之助は、腕や脚の関節を外して、全身の関節をあり得ない角度に曲げた。
この状態なら、いくら狭い隙間でも、強引に中に入ることができる。伊之助は、先程は頭しか入れなかった穴へ、吸い込まれるように入っていった。
「グワハハハ!猪突猛進!誰も俺を止められねぇ!」
曲がりくねった穴の向こうには、薄暗い地下の空間が広がっていた。そして、その空間全体が、極彩色の帯で埋め尽くされていた。
「ここが鬼の巣ってわけか。食糧庫みたいなものなのか?」
地下空間は、大きく開けた巨大な地下空間のようになっていた。辺りには、幾つもの帯が掛かっており、中には鬼に捕えられたであろう、女性達が、閉じ込められていた。
そのなかには、善逸とあげはの姿もあり、特に善逸は、気持ちよさそうに寝ている顔をしている。
「何してんだコイツら。特に紋逸、なに気持ちよさそうに寝てんだ!」
伊之助が呆れたような目をしていると、後ろから何者かの気配がした。
「お前が何してんだよ。人様の食糧庫に勝手に入ってきて。汚い、汚いね。汚い、醜い。」
「何だこの蚯蚓、キモっ!」
伊之助は、現れた帯の鬼の姿に、つい正直な言葉が出てしまった。
「『獣の呼吸』 伍ノ牙・狂い裂き!」
伊之助は、両手の日輪刀を振り上げ、周囲の帯に、猛烈な斬撃を浴びせた。帯の中に閉じ込められていた人々は、中から解放されたようだ。
伊之助は、解放された人々に構わず、帯鬼へ向かって、さらに突進した。帯鬼の不規則な攻撃を避けながら、何度も刀を振るう。
「グネグネ気持ち悪いんだよ、蚯蚓帯!人を取り込み過ぎて、動きが鈍くなってんじゃないのか?」
伊之助は、果敢に帯鬼へ攻撃を仕掛けるが、帯鬼の身体はしなやかで、全ていなされる。更に、刀を絡め取られそうになることもあった。
伊之助は、人を守りながら戦うのは、あまり得意ではない。攻撃に集中しすぎて、帯鬼の別の部位が、せっかく解放した人達を、再び取り込もうとした。
その時だった。二つの苦無が突如として投げられ、帯鬼の身体を拘束した。
「蚯蚓帯とは、上手いこと言うもんだ!」
「ほんとです気持ち悪いです。後で天元様に言いつけてやります」
苦無を投げた者の正体は、宇髄の妻、まきをと須磨だった。彼女達も、帯鬼に囚われていたようだ。
「私達も加勢するから頑張りな、猪頭!」
2人は苦無で、帯鬼を弾いて、ほかの人々が再び取り込まれるのを防いだ。
帯鬼の攻撃は更に苛烈になっていく。身体をくねらせ、伊之助に襲い掛かろうとする。
「『雷の呼吸』壱ノ型・霹靂一閃・六連」
突如雷のような轟音が鳴り響き、帯鬼の身体を無数の斬撃が襲う。意識を取り戻した善逸が、攻撃を加えたのだ。相変わらず、寝たままではあるが。
「お前、ずっと寝てた方が強いんじゃねぇの?」
「醜い食糧が抵抗してんじゃな…」
帯鬼は善逸の攻撃に怒りが頂点に達したのか、再び伊之助達に襲いかかる。
「『星の呼吸』・肆ノ型・星雲」
目を覚ましたあげはが、帯鬼に突撃した。帯鬼の帯の体のしなやかさも貫通して、その体を大きく吹き飛ばした。
壁に打ち付けられ、地面に落ちた帯鬼は、今の状況が不利であることを、察知していた。
(この状況だと、折角の食料が無くなってしまう。あの猪頭は、柱では無いにしろ、感覚が鋭い。眠っている不細工も、動きが速かった。そして、そこの美しい女。あいつは柱だ。真正面から戦ったら負ける)
そして、帯鬼は善逸の雷の如き鋭い音、そしてあげはの隕石の如き重い音の他に、もう一つ音を感じていた。
その位置は、上から。上から響き渡る、巨大な爆発音。
ドオオォォォォン!
突如天井が、”轟いた“。爆発の余波が、帯鬼に只者ではないことを感じさせる。
爆発で生まれた土煙が晴れ、中から現れたのは、音柱、宇髄天元だった。
「なんで柱が2人もいるんだよ!」
宇髄は、皆の方へ振り向いて、こう言った。
「待たせたな。ここからは、ド派手に行くぜ」