鬼滅の刃 〜星空を舞う蝶〜   作:ありす(旧名:紅茶・ルミエール)

4 / 37
最終選別です。しのぶとカナエと再会します。



最終選別での再会 

約一年半にも及ぶ、岩嶋玄斎の元での厳しい修行を終えた胡蝶あげはは、新たな決意を胸に、藤襲山へと向かっていた。

 

「あげはよ、本当に頑張ったのう。ワシに教えられることはもう何もない」

 

出発の際、玄斎はそう言って、優しくあげはの頭を撫でた。その目には、教え子の成長を見守る、温かい光が宿っていた。

 

「玄斎様、本当にありがとうございました! 私、玄斎様が教えてくれたこと、絶対に忘れません!」

 

あげはは深々と頭を下げた。玄斎はただにこやかに頷くと、小さく呟いた。

 

「お主なら、きっと、己の道を見つけるじゃろう。そして、大切なものを、その手で守るのじゃ」

 

その言葉を胸に、あげはは最終選別の地、藤襲山へと足を踏み入れた。

 

季節は春。山には藤の花が咲き乱れ、夜にもかかわらず、その妖しい光があたりを照らしていた。しかし、この美しい光景が、鬼を閉じ込めるための檻であることを、あげははよく理解していた。

 

「……ここから、七日間。生き残れば、鬼殺隊士の証が与えられる」

 

選別の始まりを告げる産屋敷の子供たちの声が、静かな山に響き渡る。あげはは深く息を吸い込んだ。体中の血液が沸騰するように熱くなるのを感じる。これが、玄斎から教わった『星の呼吸』。普段は静かに、しかし有事には流星の如く爆発的な力を生み出す、彼女だけの呼吸だ。

 

山に入ってすぐ、低級な鬼が襲いかかってきた。「グヘヘ……、うまそうな奴が来たなぁ……」陰惨な笑みを浮かべる鬼に、あげはは落ち着いて日輪刀を抜いた。それは玄斎から借りた、彼女の体格には少しだけ幅の広い刀だ。

 

「『星の呼吸』壱ノ型・流星!」

 

地面を強く踏み締める。全身の力が足の裏に集中し、次の瞬間、あげはの体は地面を弾丸のように蹴り出し、流星の如き速度で鬼の懐へ飛び込んだ。逆袈裟に振り抜かれた刀が、鬼の首を正確に斬り飛ばす。

 

ドシュッ、と不気味な音がして、鬼の頸が宙を舞った。それは、玄斎の教えと、あげは自身の研ぎ澄まされた勘が融合した、初めての実戦だった。

 

(よし……いける!)

 

手応えを感じながら、あげははさらに山の奥へと進んでいく。次々と現れる鬼たちを、流星の如き速さで捌いていく。疲労は蓄積していくが、精神は研ぎ澄まされ、その度に『星の呼吸』が体に馴染んでいくのを感じていた。

 

 

選別が始まって三日目の夜。あげはは、深い森の中で、複数の鬼に囲まれている二つの人影を見つけた。そのシルエットに見覚えがあり、あげはの心臓が大きく跳ねた。

 

「カナエお姉ちゃん! しのぶ!」

 

あげはは思わず叫びながら、その場へ駆け出した。

 

「あげは!?」

 

先に気づいたのは、胡蝶カナエだった。彼女の藤色の瞳が、驚きに見開かれる。その隣で、胡蝶しのぶもまた、信じられないものを見るかのようにあげはを見つめた。二人の顔には、数日間の選別の疲労がにじみ出ていたが、その眼差しには確かな光が宿っていた。

 

「なんで……あげはがここに!?」

 

しのぶが驚きに声を上げる。その声には、驚きと、ほんの少しの安堵が混じっていた。

 

「私も、鬼殺隊に入るって決めたから! 二人について行きたかったんだもん!」

 

あげははそう言いながら、躊躇なく二人の間に割って入った。鬼は四体。どれも異形な姿をした、そこそこの強さを持つ鬼だ。

 

「あげは、危ない!」

 

カナエが叫ぶ。その声には、妹を案じる気持ちが強く込められていた。しかし、あげはは既に刀を構えていた。

 

「大丈夫! 私、もう弱いあげはじゃないよ!」

 

そう言い放つと、あげはは迷いなく一体の鬼へと飛び込んだ。

 

「星の呼吸! 壱ノ型・流星!」

 

あげはの体が瞬く間に鬼の懐に潜り込み、鋭い逆袈裟が鬼の頸を正確に捉えた。しかし、鬼もただではやられない。最後の足掻きで、鋭い爪が彼女の腕を狙う。

 

その瞬間、ひらり、と一陣の風が舞った。

 

「『花の呼吸』 肆ノ型・紅花衣!」

 

飛び込んできたカナエの刀が、あげはの腕を狙った鬼の爪を弾き飛ばし、そのまま流れるような一撃を鬼の胴に叩き込む。その優雅な動きは、まるで天女が舞うかのように美しかった。

 

「助かった、カナエお姉ちゃん!」

 

「無茶しないで!」

 

カナエは心配そうな声を上げながらも、すぐに別の鬼へと向かう。あげはの援護を受け、彼女の動きはより洗練されていた。

 

もう一体の鬼には、しのぶが対応していた。

 

「『蟲の呼吸』蝶ノ舞・戯れ」

 

しのぶが、蝶のように舞い、鬼の視界から一瞬で消える。そして、鬼の背後に回り込んだ時には、鬼の体に幾つもの突きが撃ち込まれていた。毒が鬼の身体に浸透し、その動きを鈍らせていく。

 

「くそっ……! なんだ、この毒は……!」

 

鬼が苦悶の声を上げ、その体は崩れていった。

 

しかし、まだ戦いは終わっていなかった。しのぶの後ろから、もう一体の鬼が飛びかかってきたのだ

あげはは、それを見逃さずに飛び込んだ。

 

「『星の呼吸』 参ノ型・天降!」

 

あげはは、鬼の頭上へと一気に跳躍する。重力すらも味方につけたかのような落下突きが、隕石のごとき勢いで鬼の頭部に迫る。鬼は必死に腕を上げて防御しようとするが、あげはの一撃はそれを易々と貫き、深々と突き刺さった。

 

ドゴォッ!

 

という鈍い音と共に、鬼の身体が地面に叩きつけられる。瞬く間に、三体の鬼の動きが止まった。

 

残る一体の鬼は、カナエとしのぶが協力して仕留めた。カナエの優雅な斬撃と、しのぶの精密な毒が、完璧な連携を見せていた。

 

夜の森に、再び静寂が訪れた。

 

三人は、息を整えながら互いを見つめ合った。あげはの目には、涙がにじんでいた。

 

「カナエお姉ちゃん……しのぶ……!」

 

「あげは……本当に大きくなったね」

 

カナエはあげはを抱きしめ、優しく頭を撫でた。しのぶもまた、複雑な表情を浮かべながらも、そっとあげはの背中に手を回した。

 

「馬鹿ね……心配したんだから……!」

 

口ではそう言いながらも、しのぶの目にも、安堵の光が浮かんでいた。

 

 

残りの選別期間も、三人は協力し合いながら生き抜いた。あげははカナエとしのぶの援護を受け、自身の『星の呼吸』をさらに磨いていく。カナエとしのぶもまた、あげはの想像を超える成長と、時に見せる天賦の才に目を見張った。

 

 

七日間の選別が終わり、藤襲山を出た時、三人の顔には、深い疲労と、それ以上に確かな達成感が満ちていた。合格者は、数十人いた候補者のうち、わずか五人。胡蝶あげは、胡蝶カナエ、胡蝶しのぶ、もその中に含まれていた。

 

「これで、私たち、鬼殺隊士だね……!」

 

しのぶが感慨深げに呟く。カナエは、朝日の昇る空を見上げ、静かに微笑んだ。

 

「うん。でも、これからが本当の始まりだね」

 

あげはは、二人の手をそっと握った。彼女の髪飾りにある、星屑のような光が、月の光を受けてかすかに瞬いた。それは、三人が共にいることの誓いの輝き。

 

「うん! 私たち三人で、鬼からたくさんの人を守ろうね!」

 

あげはのまっすぐな言葉に、カナエとしのぶは強く頷いた。

 

「ええ、もちろんよ」カナエの優しい声が響く。

 

「……当然でしょ」しのぶの、いつものぶっきらぼうながらも、どこか嬉しそうな声が続いた。

 

まだ少し暗い空には、無数の星々が輝いていた。

 

まるで、これから鬼殺隊として共に戦っていく三人の未来を、祝福しているかのように。

 




はい、独自解釈盛り盛りの最終選別でした。
ここで、3人が再開するんですね。最後の方に、蝶の写真髪飾りに関する描写があると思いますが、これは3人に共通する髪飾りが、3人の繋がりを表しているって感じです。(原作でもカナヲに関する描写であったような……)
間違ってたら、ごめんなさい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。