頸を斬っても死なないのならズタズタにするべし。   作:雨漏り

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第一章 首を斬ろう
絶望の始まり(0)


 

 

━━真菰、必ず生きて戻れ

鱗滝が真菰の小さな体を抱きしめて言った。

 

 

真菰は孤児だった。母親の形も父親の声も何も分からなかった。孤児院はボロっちく今にでも壊れそうで貧乏な場所、まともな食事は取れず暖かい布団もない。風邪を引いても誰も看病してくれない、誰も近づかない、しまいには出て行けと言われる。そんな場所で真菰は育ったのだ。

 

きっとそのせいで真菰の中身が幼く、幼児のように頭が柔らかいのだろう。

 

真菰が鱗滝に拾われる前、孤児院が何者かに襲われたのだ。真菰は厠へ行くと言って数分いなかった。その数分の間に孤児院が襲われ、建物の中にいた者は至る所から血を吹き出し息を止めていた。

真菰が戻った時、野犬のような狼のような生き物が子供達を貪り食っていた。幸いにも血にまみれた生き物は真菰に気づいてはおらず子供達の四肢を静かに咀嚼する。

 

 

足がうごかない、ここで死ぬのか。

真菰は無意識に息を止めていた。

耳がキーンとして、鳥肌が立っている。

冷や汗が止まらなかった。

 

 

突然、生き物が子供達を咀嚼するのを止めた。

ギ、ギ、ギ、とゆっくり頭を動かし真菰の方を見た。真菰の目と瞳孔が縦長で猫のような目が、交わった。

 

そこで真菰は自分が息をしていないことに気がついた。突然息を吸ったせいで咳が止まらなかった。真菰は息が荒くて今にでも死にそうだと思った。

それでようやく足が動いたのだ。足がブルブルと震え、おぼつかない足取りでゆっくりと歩く速度を上げていった。

 

あの人食いは追っては来なかった。途中で後ろを見ようか迷って見なかった。

もし後ろを見てあの生き物と目が合ったら、今度こそ足がすくんで立てなくなってしまう。

 

 

こわい、目が乾いて痛い。

足が震える。握った手が白くなっている。

どこまで走ればいい。どこまで行けばいい。

足が動かなくなるまで? 気絶するまで?

誰か人を呼んで。大きな熊をころせるくらい強い人、猟銃を持ってる人、誰でもいいたすけてください。

 

真菰は来たことがない道を走った、誰も居なくても、暗くて前が見えなくても。

 

真菰の走る速度が段々と遅くなっていく、息が荒く止まってしまった。でも、目の前には人がいる。

 

「あのっ! たすけて、くださいっ!! 孤児院がおそわれ、て」

真菰は掠れた声を出しながら助けを求めた。

「おね、おねがいっ、…このままじゃっ、ころされる」

呼吸困難になっても。目眩を起こしていても。

真菰の目は天狗の面に向いている。

 

鱗滝はそっと手を伸ばし真菰の頭に触れると、そのまま優しく撫でた。

 

真菰は吃驚はしたが手の暖かさに安心を感じそっと、ゆっくりと目を閉じていった。

 

 

 

鱗滝は真菰を木のほとりに寝かせ羽織を優しくかけた。真菰が指を指していた方向には小さな足跡があった。

これをたどっていけば孤児院につけるだろうか…それにしてもこんな小さな体でよくここまで走れたものだ。

 

鱗滝は鼻が良かった。真菰の周りからは血の匂いが染み付いていた。それと焦り、恐怖、悲哀。

 

 

夜は鬼の時間。

真菰はそれを知らなかった。真菰が住んでいた村はしょぼっちぃ村で、藤の鼻の香炉をたく人もいない。鬼に食べてくださいと言うようなものだ。

 

真菰は‪‪‪”‬‪運が良かった‪‪”‬‪‪、だから鬼追われず、ずっと走り続けることが出来たのだ。

 

 

 

 

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真菰が次目を開けた時は、孤児院が襲われてから二日経った頃だった。

異様に足が痛く体が動かなかった。

それにしてもここはどこだろうか。確か私は……孤児院が襲われて、走り続けて、それで…それで…

そこから記憶が無い。頭は重く痛い。まるで風邪をひいてるみたいだ。

 

真菰は声を出そうとしたが、二日寝ていたということもあり舌が張り付いて、腹が減っていて、出そうにも出せなかった。

誰かが近くに居るということは分かる。ちょっとだけ聞こえるパチパチという音。布が擦れる音。

真菰は眠くなっていた。瞼が言うことを聞かず閉じようとしている。

誰の家かも分からないところで寝かされているのにこんなに、呑気に寝てもいいのだろうか。

静かな音が真菰を安心させ二度目の眠りについた。

 

 

 

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鱗滝は真菰が二度寝をしたことを確認してご飯を炊くことにした。

真菰は腹が空いているだろう、きっとまたすぐ目を覚ますだろうと思い米をとぎ、釜に米を入れ、かまどの火を強くした。

 

あの子は帰る家が無くなってしまった。

それと同時に鬼という存在を知った。

もう普通の日常には戻れないかもしれない。あの子が弱ければ、一生あの夜のことを忘れられず壊れてしまうかもしれない。

 

真菰がどうするかは真菰次第。

もし鬼狩りになりたいと言うなら鱗滝はそれを了承し、弟子にする。

ならないなら、真菰が安心して暮らせる場所を探す。

鱗滝が出来るのはそれだけだ。

 

 

 





私は真菰ちゃんが魔性の女だと思っています。
ゆっくりとのんびりとしながら投稿していきます。

真菰ちゃんの過去が孤児ということしか分からないので捏造しました。
他にも年齢や身長、最終選別時の年齢が分からないので捏造させていただきます。
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