頸を斬っても死なないのならズタズタにするべし。   作:雨漏り

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絶望の始まり(1)

 

 

目の前にいる天狗の面を被った人は、鱗滝左近次さんという人で、ここは鱗滝さんの家らしい。私は走り続けた後、疲労で気絶してしまい、そのまま二日程寝ていた。

 

鱗滝さんが孤児院を襲った生き物は野犬でも狼でもない『鬼』という人を食う生き物と教えてくれた。

鬼は日光に弱く、日中の間は活動しない。鬼は老いない、日光以外では死なない、人間を食べ力を得る。

 

「鱗滝さん、孤児院を襲った鬼はどうなったんですか…?」

「儂が日輪刀という特別な刀で鬼の頸を切った。鬼は、日輪刀で頸を切られると体が灰化して、消滅する」

 

鱗滝さんは鬼について詳しかった。

どうやら、人食い鬼狩るために出来た鬼殺隊の元柱、凄い人だったそうだ。

鬼殺隊は政府非公認の組織で、鬼殺隊の中心産屋敷一族が纏めている。

 

 

鬼には始祖がいて名は鬼舞辻無惨。鬼舞辻無惨に血を注がれた人間が鬼となる。鬼は元人間。

 

「真菰は鬼を恨んでいるか」

鱗滝さんははっきりとした声で、私の目を見て言った。

鱗滝さんはきっと大切な人を鬼に殺されたのかもしれない。でも、私は大切な人はいないから恨むことも憎むことも出来ない。孤児院の人達は私の生活を保護してくれる人であって親でも友達でもない。

 

 

鬼は存在してはいけないと思う、私は恨んでいない。

「ううん。うらんでない。でも…でも、私は」

あの時何も出来なかった、子供達が鬼に食われている所を見ていることしか出来なかった私を、恨んでいる。

 

もっと、強ければ、身長が大きくて強ければ、何か出来るのに……まだ生きていたかもしれない、一人だけでも救えたかもしれないのに。

 

 

「強くなりたいか……真菰━━「鱗滝さん! お腹が空いてちからが出ませんっ…!」米と魚、山菜がある沢山食べなさい」

真菰が下唇を噛んで、話の途中ですみませんっ! というような表情をしながら言うもんだから鱗滝は茶碗に米をこんもり盛って、魚も沢山焼いて真菰に提供した。

 

真菰は目をキラキラさせながら食べ物にがっついた。女の子らしくないと言われてしまうかもしれない。行儀が悪いと言われるかもしれない。でも、ご飯が美味しくて仕方なかった。

まともな食事なんて取ったことない。自分が、もうお腹いっぱいと言える食事なんて、夢でしか見られないものだった。

真菰は涙が止まらなかった。箸を止めることも出来なかった。

誰かと一緒に食事をするとご飯が美味しくなるということは本当なのだな、と真菰は思った。

 

そんな真菰を見ながら鱗滝は、仮面の下の優しい顔を、鬼には舐められてしまう顔をもっと暖かく柔らかくなって、微笑んでいた。

 

 

 

真菰はご飯を何杯もおかわりして、魚を三匹たべ、山菜は皿に盛られたものが全てなくなった。真菰自身もこんなに食べれるのかと吃驚した程だ。

鱗滝は真菰に水を渡し再び話し出した。

「真菰。お前はどうしたい。」

これはさっき聞きたかったことだろう。真菰がお腹を空いたと言って鱗滝の言葉を止めてしまった。

鱗滝は真菰に色々な選択を出した。儂が言った事じゃなくてもいい、真菰がしたいことをすればいい、とも言った。

真菰がいいのならここで一緒に住まないか? 人里で暮らしたいのなら匿ってくれる人を探すか? 強くなりたいなら…儂の弟子にならないか?

真菰は強くなりたい。どう強くなりたいかは分からないが、出来ることがあるのなら協力させて欲しい。

 

鱗滝さんの弟子達は幸せなんだろうな。こんなに優しい人の傍で強さを学べるなら弟子にしてくださいと申す人しかいないだろう。

帰る家もない、学もない、行儀が悪い、孤児で身長も小さくて、強くなるのは諦めろと言われそうなこんな子供に色々な選択を出して人生の道を教えようとしている。

私は額を床に押し付け、床に穴が開きそうな大声で言った。

「弟子にしてください! 強くなるためなら何でもします!!」

 

鱗滝は真菰の肩に手を伸ばし優しく、ぽん、と叩いた。真菰は顔を上げた。

その時見た鱗滝さんは、面を被って顔は見れないけど、とてつもなく優しい表情をしていたと思う。

 

 

それから、地獄のような山下りや、気絶するまで木刀を素振りする修行が始まった。

 

真菰は、強くなるためなら死ぬまで修行しろと言われても厭わないだろう。

何故そこまでするのか、一体何処からその熱意が出てくるのか、真菰自身もよくわかっていなかった。

 

 

 

 

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真菰が三、四歳の頃、真菰には姉という存在がいた。肉親ではなかったがそれほどまでに親しい仲だった。

学が無かった真菰に、そこら辺に落ちていた棒で地面に文字や数字を書き教えたり。食べれる草や、きのこ、木の実を拾って真菰にあげたり。

真菰にとってその人は大切な人で、居なくなったら困る、寂しいなというくらいには依存していた。

一番姉が得意なことは花の冠を作ることだった。毎日と言っていいほど真菰を連れ出しては、花が咲いている水辺の近くに座り込んでずっと花の冠を作っていた。そんな姉をずっと見ていたからなのか真菰は自分でも花の冠が作れるようになった。形は少し歪で姉より綺麗には作れないが、姉に見せてみると、姉は喜び頭を沢山撫でてくれた。

 

姉はふわふわしていて、すぐどこかに行って静かに消えてしまいそうな人だった。小柄で、足が早くて、体力が多くて。

 

 

でも、姉は突然消えてしまった。

何日も待っていたのに、来なかった。周りから死んだんじゃないのかと言われたが信じられなかった。

 

大人に聞いても分からないと言われた。名前は分からないの? どんな見た目をしていた? と聞かれてもすぐに答えることが出来なかった。姉がどんな名前で、どんな人で、いつもどこで何をしていたか記憶が曖昧で分からない。

思い出そうと思って、唯一覚えている花が沢山咲いた水辺の所へ走った。何かわかるかもしれない、姉がいるのかもしれない。

 

だが、水辺に着いても姉はいないし何も思い出せなかった。どんどん姉についての記憶が薄れていく気がする。

 

頭が痛く、重く、上手く脳が機能しない。

目が回って、足も上手く動かせなかった。

そんな状態だったから、私は馬鹿をしてしまったのだ。

 

「あ、」

 

崖の近くまで来てしまって、足を滑らせ頭から落ちてしまった。

 

視界が暗くなる中で、僅かに見えたのが目から涙を流し信じられない、といったような表情をした姉だった。

 

 

段々と目を閉じていき視界が真っ黒になった。

 

 

 

 

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その子は私が思うより、ずっと大人だった。

何かを見透かしているようで、誰にでも敬語を使って、もしかしたら私より年齢が高いんじゃないかと思った。

 

たまに、私が知らない事を教えてくれたり、ちょっとだけ役に立つ豆知識を沢山知っていた。

私が文字を教えると、飲み込みが早く最初からわかっていたんじゃないかと思った。

でも、年相応な遊びをするのだけは得意じゃなくて、子供に遊んでと言われてもいつも同じ内容でかけっこか隠れんぼかのどっちかだった。

それが意外で、なんだか可愛いなと思った。

私が手を差し出すと手を見つめて首を傾げたり、頭を撫でられるともっと撫でてというように頭を擦り付けてきた。

可愛いくてしょうがない、妹のように可愛がって、周りからは本当の姉妹みたいねと言われた程だ。

 

大切で、どこにも行ってほしくない。

私が守ってあげたかった。

 

本当に本当に大事な子。

 

 

 





絶望はもうとっくの前に始まっていたのかもしれませんね……

真菰ちゃんて何歳なんだろうか、11歳くらいかな?
なんであんなにも可愛らしいんだろうか。
魔性の女、真菰ちゃん!!!
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