頸を斬っても死なないのならズタズタにするべし。   作:雨漏り

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第二章 学ばない子はすぐ死ぬ
人間の中身は(1)


 

 

 

 

懐かしい。伸ばした手の指の隙間から見える景色は、私がまだ大分幼い頃の姉との大切な思い出の一つだった。

辺り一面に菜の花が広がっていて空は青く雲一つなかった。姉は私の手を引っ張って花を踏まないようにずんずんと進んでいく。

「姉さん……こんなに遠くまで来ていいの? 大人の人達に怒られちゃうよ……」

私が心配して声を掛けても姉は私をチラッと見るだけで足はとめなかった。でも、少しだけ見える姉の顔は私が大好きな幸せそうな笑顔をしていたのだ。そんなのだから私も姉につられて口角を上げ姉に着いていくのだった。

 

「じゃあここで問題(クイズ)! 私が好きな物はなんでしょう? 」

「えっ? き、急だよ……えっと 、菜の花……?」

「正解だけど……あともう一つあるんだよね〜」

姉の言葉はいつも突然で、いつも私を困らせる。私の反応を見てよく面白がっていた。

菜の花畑の中心で止まって振り返り曇りない笑顔で質問を出てきた。私は質問の意図が分からなかった……姉の好きな物など知り尽くしているし、今更こんなことを聞いてどうするのだと。

「うーん……花の冠?」

「ぶっぶー、違いマース。助け舟(ヒント)出そうか?」

助け舟(ヒント)じゃなくて答えを教えてよ……花の冠でもないなら私知らない。」

「えぇ、答えを教えたら問題の意味が無くなっちゃうじゃん。仕方ないなー、答えは……」

 

「私の大切な妹でしたー!!」

そうあまりにもにっこり言うので私は少し引いてしまった……多分だけど太陽にも負けない明るさだったと思う。……こんな日がいつまでも続けばいい、孤児院なんかに帰らないで姉と一緒に何処かへ逃げ出したい。私は照れるように俯いて私の視界には菜の花でいっぱいになった。

「ほら手を出して……私は花の冠を編むのも得意だけど他のことも出来るんだよ」

私は姉に両手を差し出した。姉は左手だけをとって薬指に触って何かを嵌めた。私は俯いた顔を上げ指を広げ見てみると……そこには可愛らしい菜の花の指輪が嵌めてあったのだ。

「ね、ねえさん……これって……指輪だよ、ね?しかもこの位置…………」

偶然でも、わざとでもどちらでもいい私は凄く恥ずかしかった……すごく照れていたのかもしれない。多分顔面が真っ赤で姉には見せたくないほど。

「ふふっ、やっぱり私の妹がこの世でいちばん可愛い」

伸ばした指の隙間から見える姉は目と口角を緩め頬少しだけ赤くし笑っていた。でも……なんとなくだけど、姉が見せる笑顔は泣いているようにも見えた。

 

「……もう時間だね、もう戻ってきちゃダメだよ」

「何言ってるの? 姉さん? 姉さん!」

菜の花が私の足に絡みついて離れない。手を伸ばしても姉には届かず空を切ってしまう。

「だから……早く起きてあいつを倒すの」

起きる? あいつって? 何言ってるの?

あぁ、そうだ……私大切なことを忘れてたんだ。足に絡みつく菜の花が嫌な記憶を思い出させる。あの沢山の手を纏った鬼が、私の四肢をもいだ……あいつは何人も人を殺して鱗滝さんを悲しませることを沢山した。

許せない。あいつは絶対に殺す。私が何度死のうとあいつだけは絶対に私が殺してみせる。

 

 

「姉さん! ありがとう!! 私が次忘れてもまた記憶を叩き起こしてね!!!」

 

 

 

「うん!」

 

 

 

 

あぁなんでこんなこと忘れてたんだろう。ずっと前から始まっていたじゃないか……私が覚えていないだけでもう何回も死んでいる。姉さんだけは覚えていて、私が死ぬ度に起こしてくれる。ありがとう……ありがとう!

‪”‬真菰姉さん‪”‬ありがとう!!!

 

 

 

 

 

目を覚ますと菜の花畑は無くなっていて私がいるのは森の中だった。

頭が重い痛い、記憶の一部にもやがかかって思い出せない……誰かと話をしていたはず大切なことを話してはずなのに、どうして思い出せない‪”‬いつも‪”‬こうじゃないか……! 今は試験中だ鬼を倒せ、憎い相手がいるんだろ?どうしても殺したいヤツがいるんだろ? 何でもいいから刀を振って鬼を殺せ!!

 

真菰は必死に走った。所々だけ思い出せる記憶を頼りに殺したい相手の元へ走る。どんな形でどんな声をしていたか思い出せないが真菰の感情だけは素直だ。

真菰の頭の中で何度も‪ぶちり、ぶちりと四肢がもがれる音がする。気持ち悪くて吐きそうで今にでも足を止めたいほど真菰にとって嫌な記憶。前の記憶で殺されてしまったのは感情に任せ全集中の呼吸を使えなくなってしまったことが悪かったのだ。だからそこを直せば、と真菰は解決策を小さな頭で必死に考える。

また殺されるかもしれない、また怖い思いをするかもしれない……死にたくない……いやだ、怖い。でも真菰は足を止めることが出来なかった。

 

見つけた、この先にあの鬼がいる……。呼吸をちゃんと使えば殺せる、あんな鬼ただでかいだけ。怖くない……ちゃんと息を吸って、鱗滝さんに習ったこと思い出して。

邪魔な手を切ってその後に頸を斬る!

━━水の呼吸 参ノ型 流流舞い

真菰は鬼に見つかる前に素早く鬼の沢山の手を切り高く飛ぶ。

「なァっ!その面は鱗滝め!!」

聞きたくない、あんたの声は二度と聞きたくない。さっさと死んでくれ、死んで地獄でもう一度死ね。

━━壱ノ型 水面斬り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキッ!!!!

 

 

 

 

その音は真菰が今いちばん聞きたくない音だった。刀が折れる音……鬼の頸が硬く刀が耐えきれなかった。

動きが遅く見える、しぬ、死んでしまう

まただ、またやってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ 、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐしゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






また振り出しに戻ってしまいましたね。
なんだか死に方に見覚えがあると思ったら錆兎ですね。
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