遊戯王ARC-V -依代の決闘者-   作:白狼天狗

13 / 15
その13

 

 

「くはぁっ・・・・・・!」

 

大きく息を吐き、その後俺は深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

遊矢とタッグでの対アカデミアの尖兵戦で俺の精神は大きく消耗した。

原因は間違う事無くアイツからの精神侵攻。

 

「思い・・・・・・出した・・・・・・!!」

 

今まで存在自体に霞が掛かった様に思い出せなかった存在。

 

それは遊戯王ZEXALの物語終盤において遊馬達の暮らす人間世界とアストラル世界、その2つに干渉する第3の世界、バリアン世界。

その創造神にしてラストボス。

 

自分の世界の住人を策謀の上で非業の死を遂げさせ、記憶を改ざんし自分の手駒であるバリアン七皇を生み出し、人間世界とアストラルを破壊しバリアン世界と融合させ自身の望む真の世界を創造せんが為に万能の“ヌメロン・コード”を求めた。

 

性格は狡猾にして慎重。さらに未来予知に近い洞察力を有しその策謀が果たされない事が無かったと言い切れる程。

“吐き気を催す邪悪”“全ての元凶”と呼ぶに相応しい存在。

 

しかし、最後とするための“神のデュエル”において遊馬、ナッシュ、カイトの3人の絆の力の結束の前に敗北。消滅したかに思われたが、ナッシュにバリアン世界存亡の為に人間世界を滅ぼす様に仕向けていた事もあった、まさしく邪悪そのもの。

 

そして、最終決戦は遊馬の辛勝となり、本当の意味で野望は打ち砕かれた。

 

その存在の名は邪悪なる神、ドン・サウザンド。

 

マジかよ・・・・・・

 

俺は思わずそう悪態つくしかなかった。

何? フラグなの? 俺の名前がフラグなの?

千影って千の影でしょ?

ドン・サウザンドの影ってあぁんまぁりだぁああああっ!!

 

俺に取り付いて居るのが遊戯王シリーズ屈指の悪役、ドン・サウザンドなんて酷いよう・・・・・・。

なにより、今になってこうもはっきり行動に移してきたって事は復活が着々と進んでいる事になる。

 

・・・・・・失った力を取り戻すには力が必要だ。

その力とは?

 

聞くまでも無かろう。遊戯王世界共通の万能謎エネルギー“デュエルエナジー”。

このARC-Vの世界においては召喚エネルギーとして一部に認知されているモノを吸収していたのだろう。

だから、俺は【ヌメロン】デッキで違和感を感じずにデュエルしていたんだ。

デュエルを行いデュエルエナジーを吸収する為に。

 

「まだだ・・・・・・!」

 

遊矢がそう零す。

まだ? まさか素良にデュエルを挑みに行く気か?

くっ・・・・・・!!

今後の対策を練りたいが今は現状を収集するのが先か?

俺は行きよい良く飛びつき遊矢を押し倒す。

 

「しっかりしろ、遊矢!」

 

と、その時だ。

 

「遊矢!」

「ダーリン!」

 

俺達に駆け寄る男女。あれは権現坂 昇と方中 ミエルだったか。

 

「ぐぅ! がぁああああっ!!」

 

暴れる遊矢を俺1人で押さえつけるのには無理がある!

 

「済まない、遊矢を落ち着けるのに手伝ってくれないか!?」

「任せろ!」

 

快く承諾してくれた昇に感謝し、俺達は古代遺跡エリアから移動する事にした。

後ろで柱が倒れる音がしたが、そんな事を今は気にしてられないんだ。

 

昇が胴体、俺が足を拘束しながらの移動は疲れたが、何とかジャングルエリアまで来る事ができた。

道中、自己紹介をして名前を交換する事も忘れずに。

そして俺達は兄さんと兄さんとデュエルしていた未知夫と合流し、暴れる遊矢を拘束していた。

 

「がぁああああっ!!」

 

獣の様に叫ぶ遊矢。

そんな遊矢を俺達は3人がかりで押さえつけていた。

 

「一体、なんでこんな事に?」

 

未知夫が権現坂に問う。

 

「分からん。まるで何かが遊矢に取り憑いている様だ。」

「取り憑く、だって? まるで意味が・・・・・・」

「その答えは俺が話そう。今は遊矢を落ち着かせるのが先決だ」

 

昇と未知夫の会話に俺はそう切り込んで、遊矢を落ち着かせる作業に集中させる。

既に簡単な自己紹介はお互いに終えている。

 

「分かった。今は遊矢が落ち着くのを待とう」

「千影、お前は大丈夫なのか?」

「俺は大丈夫だよ、兄さん」

 

ふと、兄さんから気遣う言葉が。アレの事はまだ黙っていた方が良さそうかな。

そうしている時にミエルは動きを見せた。

リンゴの形をした水晶玉を遊矢にかざす。

 

「私なら直に見ることができるわ。ダーリンに取り憑いているモノの正体を」

「話だけでは不十分か・・・・・・。頼めるか、ミエルちゃん?」

「私は占いの館でナンバーワンの実力を誇る占いデュエリスト。その力を持ってすれば・・・・・・!」

 

そう言うミエルの持つ水晶玉が光りだす。

 

「見える、見えるわ。ミエルには見える!」

 

だが、ミエルは水晶に浮かび上がったモノに驚きを禁じえなかった。

 

「どうした!?」

「何が見えたの?」

 

ミエルから告げられる現実。

 

「ダーリンの中に2つの心が・・・・・・!」

「「「2つの心!?」」」

 

俺を除く、兄さん、昇、未知夫が驚く。

無理も無い。いきなり遊矢が二重人格です、みたいな事言われたら驚くさ。

 

「いいえ、2つだけじゃないわ。その奥にまるで2つの心を覆い尽くすようなナニかが・・・・・・!」

 

2つの心を覆い尽くすナニかだって?

まさか遊矢の怒りが生み出した《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》が関係しているのか?

 

「ナニかって何?」

「分からない。分からないけど何かとても恐ろしい存在」

「恐ろしい存在?」

 

未知夫、ミエル、昇の会話が続く。

そんな中、俺と兄さんは目配せをしてお互いに自体をおぼろげながら理解する。

 

この事件の中心に位置する遊矢の身に何か起こっている、と。

 

「がああああああっ!!」

 

突如吼えた遊矢は糸の切れた人形の様に気を失った

 

「遊矢!」

「遊矢くん!?」

「ダーリンっ!!」

 

 

 

◇   ◆   ◇

 

 

 

日も落ち、周りが薄暗くなった頃。

 

「う・・・・・・、う、ん・・・・・・」

 

遊矢が、目を覚ます。

 

「遊矢!」

「遊矢くん!」

 

それに気がつき遊矢に声をかける昇と未知夫。

 

「未知夫、権現坂・・・・・・」

 

そして遊矢の視界一杯に1人の少女の顔が映る。

 

「ダーリンっ!!」

「お前は、ミエル?」

 

その反応にミエルは確信した。

 

「戻ったー!! ダーリンが元のダーリンに戻ったわ!!」

 

遊矢に膝枕をしていたミエルが感極まり、そのまま抱擁する。

 

「遊矢が目を覚ましたんだ、これまでの話をしよう。皆、いろいろな事が起きて混乱しているだろうからね」

 

千影のこの言葉を合図にした様に、遊矢が語りだす。

 

「俺が覚えているのは、突然現れたアカデミアの奴らがナイト・オブ・デュエルズの3人を・・・・・・」

「デュエルで倒した者をカード化!?」

「そんな!?」

 

遊矢が語る真実に疑心せざる得ない昇と未知夫。

だが、遊矢が気絶している間に、粗方今起きている事件に関する事を千影から聞いていた2人は信じざる得なかった。

 

「その後、また訳が分かんなくなって・・・・・・。奴らは俺が倒したのか?」

「ああ。見たことも無い竜をエクシーズ召喚してな」

「見たことも無い竜?」

 

遊矢の問いに昇が答える。

そんな中、ミエルは水晶玉を通して再び遊矢の中を覗こうとしていた。

 

「やっぱり見えない。今のダーリンは何時ものダーリン・・・・・・」

 

それに気がついた遊矢は視線をミエルに移す。

 

「さっきは見えたの。もう1つの心が、その奥に潜む黒い影のようなモノも」

「俺の中にもう1つの心!?」

 

遊矢には心当たりがあった。しかし、皆から自信の変貌振りを聞かされている遊矢は信じられないでいた。

取り出した《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を見ながら思う。

 

俺の中にお前が? 想いを託してくれたユートがそんな事を?

 

だから、あんな。アレはエクシーズ次元の人々・・・・・・。

お前の怒りが俺を・・・・・・。

遊矢の脳裏に掠めるユートの記憶。逃げ惑う人々がカードにされていく光景。

 

──デュエルで、笑顔を・・・・・・。

 

でも・・・・・・。そう言って俺にこのカードを託したお前が、何故?

 

その遊矢の疑問に答える人間が1人居た。

 

「それは多分、遊矢。お前に原因があると思うぞ?」

「っ!? どういう事だ、千影!!」

 

千影の発現に反発する遊矢。

 

「遊矢、エクストラデッキを良く見てみろ」

「え?」

 

遊矢は言われた通り、もう1度自分のエクストラデッキを確認する。

1枚目《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。

2枚目《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。

3枚目《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》。

そして、4枚目。

 

「何だこのカードは!?」

 

遊矢が見つけた有るはずの無い4枚目のカード。

エクシーズでありながらペンデュラム。まさに見た事の無い竜。

 

そこで察する。このカードでアカデミアの刺客、オベリスク・フォースを殲滅した事を。

 

「《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》!?」

「それは恐らく、長い間遊矢の中に眠っていた負の感情がユートの心に触れた事で感じた強い怒りで発露し生み出したカードだと、俺は推測する」

「俺の中に眠っていた負の感情?」

 

千影の話は続く。

 

「遊矢の過去は昇から聞いたよ。随分と辛い幼少時代を過ごしたそうじゃないか」

「それは・・・・・・」

 

遊矢は、嫌な記憶を掘り返され顔をしかめる。

遊矢の変化を説明に必要と少し無理をして千影は昇から遊矢の過去を聞いていたのだ。

 

「ミエルちゃんの言っていた黒い影ってのは多分ソレの事だろう」

「なるほど。ダーリンは気丈に振る舞っていたけど、人間の感情はそう簡単なものじゃないわ。長年蓄積した負の感情が爆発したのね」

 

昇には遊矢の心情が理解できた。幼少時代を一緒に過ごしてきた中で兄貴分だ。

分からない筈が無い。

遊矢が虐げられどんなに苦しく悔しい思いをしてきたか。

 

「遊矢はペンデュラムを生み出した。今後も新しいカードを生み出していくんだろう」

 

千影の言葉で思い出すはストロング石島とのデュエル。

初めてペンデュラム召喚をしたデュエルだ。

自分のしているペンデュラムが輝き、手札のカード達が書き換えられていくのを覚えている。

それに《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はミエルとの戦いで生まれた融合モンスター。

昇との戦いでは《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を生み出している。

 

何故今までその事に疑問を感じなかったんだ?

 

「カードを生み出すなんてそんな事・・・・・・」

 

昇が千影の話に異を唱えた。

 

「だが、現に見ただろう? あの異質なエクシーズモンスターを」

「うむぅ・・・・・・」

 

そう切り返されては肯定するしかない。

実際に、《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》の誕生の瞬間を見ていたのだから。

遊矢のさっきの反応から見て今まで持っていなかったと用意に想像できる。

 

「遊矢、今後の気の持ち様でお前のデュエルはどんどん進化していくだろう」

 

そこで一旦溜め、重々しく続きを告げる。

 

「正の方向にも、負の方向にも」

「・・・・・・」

 

負の方向の進化。その化身が今、遊矢の手に在る。

それが《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》。

 

「と、長々と語ったが今までのは全て推測だ」

「え?」

 

思わぬ千影の言葉に遊矢は初め一同は間の抜けた声を出す。

 

「当たり前だろ? 未来を見通す事なんて普通は出来ないんだから。あくまでも今までの情報で推測できうる可能性で一番真実に近いモノを語ったに過ぎない」

 

その言葉に皆は納得した。それもそうだと。

千影の話に異常に説得力があった為、まるで真実の様に思ってしまっていたのだ。

 

「だが、1つ確実な事がある。遊矢がこの次元間の戦いの中心人物の1人だ。それだけは断言できる」

 

遊矢はその言葉に返す事はできなかった。

現に今まで融合、エクシーズ、シンクロ。3つの次元の人物と接触し、更にエクシーズ次元の人間であるユートの心を比喩では無く受け継いでいる。

 

「俺が・・・・・・?」

 

困惑する遊矢。

しかし、彼を取り巻く運命は着々と次のステージを用意する。

 

───そう、融合次元から力を秘めた竜を従えて。

 

 

 

To be Next───

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。