遊戯王ARC-V -依代の決闘者-   作:白狼天狗

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その15

 

 

 

デュエルを終えた途端、俺の体がぐらついた。

 

「大丈夫でござるか、千影殿?」

「───あぁ、まあ、大丈夫、かな? ありがとう、えっと、日影さん?」

 

俺の安否を心配してくれたのは先ほどオベリスク・フォースに倒された日影だった。回復したのか俺の体を支えながら頷いた。

 

「左様。危ないところでござった。助太刀、感謝する」

 

まあ、あと少しでカード化されるところだったもんね。

 

───ってか、なんださっきのデュエルは!?

 

───“依代”!? “我”!? 

 

───あの野郎、簡単に精神の主導権奪っていきやがった!!

 

先ほど起きたショッキングすぎる事実に体が震える。

復活が近い……? だからこんな簡単に乗っ取られたのか?

 

「顔色が悪いが、本当に大丈夫でござるか? 千影殿」

 

思考の海で溺れていたところに日影から声をかけられた。

俺は体にしっかりと力を入れて体勢を正して日影さんに向き合う。

 

「ああ、本当に大丈夫だ。さっきのは、ちょっと考え事を、ね。まあ、なんとかなるよ」

「そうでござるか」

 

と、その時だ。光の粒が世界を書き換えた。いや、本来の姿に戻っていく。

 

『バトルロイヤル終了の時間時刻でーす!』

 

ニコ・スマイリーのアナウンスにより、バトルロイヤルは終了を告げた。

 

「遊矢! 素良!」

「権現坂!」

 

上層でオベリスク・フォース達と対峙していた権現坂達は無事奴らを撃退したようだ。

一方、遊矢は素良と決着はつかなかった様に見える。

まだ、二人の間にわだかまりがあるのを感じたからだ。

 

おっと、何やら向こうが騒がしくなって来た。

柚子そっくりな子が柚子の服を着て柚子柚子となにか言われている。

 

……もしかしてあの子、融合次元の柚子のそっくりさん?

 

「私は柚子ではない」

 

案の定、彼女から否定の言葉が。

柚子は結局見つからなかった訳か。柚子の安否を確かめたい遊矢は仲間に聞くが誰も見つけてはいないと。

 

「まさか……!?」

 

遊矢が素良を見る。

その直後、素良はデュエルディスクを操作し光の粒になって消えてしまった。

十中八九、次元転移してアカデミアに帰ったのだろう。

 

「君達のデュエル、見せてもらった」

 

と、その時、高い位置から声がかけられた。この声は……社長(赤)?

 

「赤馬 零児!」

 

遊矢が叫ぶ。なんか最近叫んでばっかだな、遊矢。

で、なんか沢渡が語りだす。

どうしたの?

 

なんでも、このバトルロイヤルはアカデミアに対抗するためのデュエル戦士選抜試験でもあった様だ。

騎士の槍の様に、外敵を刺し穿つ戦士たち。故に名前はランサーズ。

 

皆で社長(赤)の元に行ったら一悶着。

どうやらアカデミアが襲撃してくるのを予見していたのにバトルロワイヤルを続行していたのだから、遊矢、激おこである。

しかもこのバトルロワイヤル。アカデミアの先兵を打ち倒すための舞台でもあったらしく、正しくランサーズ足りえるかの試験だった訳だ。

 

「ふざけるなっ!!」

 

再び遊矢が叫ぶ。

こんな事の為に大切な友人たちがカード化されて怒り、そして柚子ももしかしたら……。

その気持ち、分からなくもない。

社長(赤)の今回の一手は最良手では無かったが妥当、と言えなくもなくもない

チェスの戦略にサクリファイスってあるもんね。

これもコラテラル・ダメージってやつなんだ。

 

「お前のせいで皆は……! 柚子は!」

「零児のせいではない。柚子がアカデミアに倒されたなら、それは私のせいだ」

「自分のせいとはどういう事だ。そもそもお前は何者だ?」

 

遊矢の言葉を否定する少女に権現坂が問う。

 

「私はセレナ。アカデミアのデュエリストだ」

「何!?」

 

ああ、うん。やっぱりね。

そして、色めき立つ一同。敵がこうも堂々と居れば驚きもするよね。

ここぞとばかりにイチャモンを付ける沢渡だが、日影の弟の月影に阻まれる。

 

「セレナはスパイではない。彼女はアカデミアに追われている」

 

と、社長(赤)の言葉。

 

「そうだ、オベリスク・フォースは私を追ってきた。柚子は私と間違われて……」

 

セレナの口から語られるここまでの経緯。

エクシーズ次元の生き残りの黒咲の話を聞かせるために囮を買って出たらしい。

がそれでも怒りが収まらない遊矢は社長(赤)に喰ってかかかる。

 

まあ、そこからデュエルするのは当然の流れ。

そして結果から言うと遊矢は奮戦空しく敗北を喫した。

 

遊矢の初手ペンデュラム召喚はデフォルトですか、そうですか。

ペンデュラム融合、それも連続融合。そしてペンデュラムエクシーズを駆使するも、ペンデュラム融合・シンクロ・エクシーズを自在に操る社長(赤)には一歩及ばなかった。

ってかあれ?

《DDD疾風王アレクサンダー》追撃効果どうした。エラッタされたの?

OCG化されちゃったのかな?

 

にしても《DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク》の登場や《DDD双暁王カリ・ユガ》VS《覇王黒龍オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》の対決は見物でしたね。

デュエルタクティクスが段違いだな。

しかたない、敗北イベントだと思えばいいよ、遊矢。

 

自分の無力さを噛みしめ慟哭する遊矢を権現坂達に任せ、俺は兄さんとかなみと合流する。

そして、今の遊矢のデュエルを見て確信した。

 

───遊矢、お前はやっぱり……

 

「大丈夫か? 千影」

「うん、こっちは平気。そっちは?」

「問題ないよ。仮面の集団、オベリスク・フォースって言うんだっけ? 3人組であの強さなら私たちの敵じゃないかな?」

 

遊矢に懸念を抱いていると俺の安否を確認する兄さんに随分と心強い事を言ってくれるかなみ。

嬉しい事言ってくれるじゃない。

そうそうこの後、色々とカードを貰う手段は考えてあるからそれで2人のデッキを強化しよう。そうしよう。

 

頼りにしてるぜ? 社長(赤)。

 

「千影、さっきのアレはなんだ?」

「……なんの事かな?」

 

おおっと。ここで兄さんから追及が。

まあ、その、何だ。思いっきり見せつけちゃったもんね、異常性を。

 

「ロールプレイがイキすぎちゃったかな?」

「誤魔化しは聞きたくないな。俺は」

「本当の事、話してくれないの? 千影」

 

おうふ。

超マジ顔の兄さんと少し涙目のかなみ。

こいつはもう限界かね?

 

「分かった、詳しく話すよ。俺の身に何が起こったか」

 

と、そうしているとこちらに近づいてくる人が。

 

「土野 千影、と言ったか」

「そう言うお前は黒咲 隼だね?」

 

変質者や黒クロワッサンのあだ名で良くネタにされる腹パン(受ける側)の人だ。

 

「貴様の使うランクアップマジック……、ヌメロン・フォース。あれらのカードを何処で手に入れた?」

「それを君に話す必要が?」

「この世界でエクシーズは未発達。当然ランクアップマジックは存在していない。さらにエクシーズモンスターをカオス化だと? 一体何者だ、貴様は!」

 

おお、怖い怖い。しゃーない、少し脅かして帰ってもらおう。

 

「神だよ、異世界の」

「何?」

「世迷言と断じるのなら、挑むが良い。その身に刻むか? 神のデュエルの恐ろしさを」

 

自分の中にある異常な“力”を意識し、覇気を込めて言い放つ。

色々浸食されててもしかして今の俺、赤と青のオッドアイになってるかも。

そう思えちゃう感じ、俺も相当キてるね。

CV松岡 禎丞からCV宮本 充になりそう。マジでやばい。

 

「……ッチ。今は引くべきか」

 

どうやら引いてくれるらしい。

 

「いずれ聞かせてもらうぞ、カードの事を含め貴様の事をな」

「君がそれに値すれば、ね」

 

そうして、黒咲はLDSの方に消えていった。

 

さて、問題はこっち。

 

「異世界の神だと?」

「これはじっくり話をしなくちゃね」

 

兄さんとかなみが怖いです。

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

帰って来て俺の部屋。

俺は自分の勉強机の椅子に座り語った。

それを聞くはベッドに腰掛けるかなみと床に座る兄さん。

 

「ドン・サウザンド……だと?」

「アストラル世界にバリアン世界?」

 

生まれ変わり云々は面倒なのでカット。

記憶が逆流してきたと言う事で、遊戯王ZEXALのストーリーを掻い摘んで話したところ、兄さんとかなみから信じきれてない感じのお言葉が。

 

「まあ、すぐには信じられないか。すでに次元戦争なんて不可解なものも起きているっていうのに、パラレルワールドの悪神が俺に憑りついてるなんてさ」

 

そう悪態ついた後、付け足す。

 

「証拠になるかどうか分からないけど……」

 

そう言って俺はさっきみたいに自分の中にある“力”を意識し活性化させる。

 

「っ!? 千影、その目は……?」

「右目が青くて、左目が赤くなってる!?」

 

───やっぱりそうか。そこまで浸食してきてるのか。

 

「この目の色はドン・サウザンドと同じモノだよ。まあ、比喩じゃなくマジで目の色変わってる事で既に普通じゃないよね、今の俺って」

 

んで、締め。

 

「そんで俺がデュエルする度にエネルギーが溜まって一定量溜まるとその悪神が俺の体を乗っ取って復活します」

 

いわゆる爆弾投下。

案の定、兄さんとかなみは俺の発言に驚き言葉を荒げる。

 

「ええ!? どういう事!?」

「説明しろ、千影!」

 

驚くかなみに声を荒げる兄さん。

いやあ、まあ、ねえ?

 

「事の始まりは舞網チャンピオンシップの始まる前日の朝。目覚めた俺は見覚えのないデッキが机の上にあるのを発見。おもむろに手を取れば、あら不思議、ドン・サウザンドの魂の欠片に憑りつかれちゃいましたとさ」

 

ふう、一息休息を入れてから続ける。

 

「んでコイツの呪いで基本【ヌメロン】デッキでしか戦えなくなっちゃったんだ」

 

その俺の言葉にかなみは疑問を投げかけた。

 

「え、でも、私とデュエルした時は千影のデッキ……【ジャンヌ】デッキだったよ?」

「幼馴染にあんな鬼畜デッキ使えるわけないからね? かなり無理して戦いました、はい」

「そ、そんなそぶり全然……」

「ハハハ……。今だから言うけど、デュエル中、何回吐きたくなったか覚えてねーわ。我慢した俺、超えらい」

「……千影」

 

あれぇー? 軽く話してるのに皆の顔色が沈んでいくんですけど、どういう事?

 

「なんでそんな重要な事を黙っていた!!」

「そうだよ! 今日から千影はデュエル禁止ね!!」

 

と、お2人から叱責の声が。かなりマジモード。

 

───デュエル禁止ねぇ……。できたら良いんだけど。

 

「うん、心配してくれる兄さんとかなみには悪いんだけど、デュエル禁止は無理なんだ」

「……訳を聞こう」

 

兄さんの言葉に、内に秘めていた呪いの内容を告白する。

 

「浸食がさ、かなりヤバいところに食い込んでるらしくてさ。デュエルしないと頭がおかしくなるんだ。欲求がさ、止まんないんだよ。デュエルしたくてたまらないんだ」

 

そう、これが呪い。

人をデュエル狂いに変えるモノ。

それこそ1日中デュエルし続けろ、という強迫にも似た欲求。

 

「多分、デュエルしないでいたら気が狂って誰彼構わず襲うデュエルバーサーカーになり果てると思う。そうなればエネルギーは溜まり続けてあっという間に悪神復活。そうなればこの世界はドン・サウザンドの脅威に晒される事になる。それだけは絶対に阻止しなければならないんだ」

 

バタフライエフェクトかどうか分からないが、エクシーズ促進のテストタウンである心園市がランドマークであるハートランドタワーの完成を機に市名をハートランドシティに変える事がニュースでやっていた。

 

つまり、そう遠くない内にアストラルがやってくる恐れが多大にあり得るのだ。

 

主人公、九十九 遊馬とその相棒アストラル。そしてその仲間達で繰り広げられるナンバーズを巡った戦い。

それが始まれば、俺の持つコピーのナンバーズが本来の力を取り戻しかねない。

《ゲート・オブ・ヌメロン》と《ロード・オブ・ヌメロン》。

そして《夢幻虚王ヌメロニア》。

 

始まるストーリーがアニメ版なのか漫画版なのか分からないが、アストラルが来れば確実に【ヌメロン】デッキのエクシーズモンスターはナンバーズ化する。

そうなれば、憑りついてるコイツの力も強くなり浸食が早まる。

確定に近い予測が頭をよぎる。

 

これも全部ドン・サウザンドの仕業なんだ!

はいはい、我のせい我のせい。

 

このテンプレが冗談抜きで本当に起きてるのだから困る。

 

───困るからさ。

 

「だからさ、俺が万一精神が乗っ取られる瀬戸際になったらさ」

 

決意を込めて2人に誓う。

 

「自分で自分のケリはつける。悪神も乗っ取るはずの体が死んでたらどうしようもないだろうしね」

 

俺の発言に息をのむ音が聞こえた。

しばらくの静寂が続いた後、それを切り裂いたのはかなみだった。

 

「そんなのってないよ! あんまりだよ!」

 

涙を流して、叫んでいた。

 

「かなみ……」

 

溢れ出る濁流の様に言葉を吐き出していくかなみ。

 

「千影は私たちに色んなカードの使い方を教えてくれた! 小さい子供たちには分かりやすくデュエルを教えてた! デュエルモンスターズを悪用してみんなに迷惑かけるゴロツキたちだっていっぱい倒して更生させた! そんな千影が、どうして……、どうして千影なの!? 千影、なんにも悪い事してないのに!!」

 

きっついね、これ。幼馴染をここまで泣かした事無かったから。

ていうか、泣かした事自体少なかったし、そのつもりも毛頭なかったんだけど。

 

「……」

 

兄さんもかなみにかける言葉が見つからないみたい。

 

「……うぅ、ぐすっ……」

 

ただただ、かなみのすすり泣きが響く俺の部屋。

どうやってなだめようか……。

 

「かなみ」

「……なに? 千影」

 

できるだけ優しさを込めた声色でかなみの名を呼ぶ。

 

「ただ、間が悪かっただけなんだ。こうなったのも」

「間が悪かった……?」

 

呆然と聞き返すかなみ。

 

「そう。間が悪くて、歯車が変に噛み合っちゃった。今の状況は運が悪かった、としか言えない」

「そんなことで片付けられる状況じゃないでしょう!?」

 

うん、かなみの言う通りなんだけどさ。

 

「無理かもしれないけど、でも、安心してくれ。俺は最後まであがき続けるよ。“俺”という存在があり続けるまで」

 

一泊置いて、続ける。

 

「コイツも悪神とはいえデュエリストだ。どういった形かは分からないけど最後にはデュエルを挑んでくると思う」

「デュエルを?」

 

俺の予想に疑問を投げかけたのは兄さんだ。

 

「ああ、俺の意識を封印または消滅させてこの体を乗っ取り、完全復活するための“依代”として使うために。要はそのデュエルで俺が勝てば良いんだよ」

「勝てばいい、って勝てるのかソレに?」

 

そう言って俺のデッキケースを指さす兄さん。

そう、この超鬼畜デッキ【ヌメロン】に真っ向勝負を挑んで勝たなければならない。

 

原作アニメの様に3人タッグで挑めば勝率は上がるんだけど、たぶん、一騎打ち。

 

OCG環境なら《励輝士ヴェルズビュート》や《鳥銃士カステル》。敵モンスター絶対戦闘で殺すマンこと《CNo.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》や《SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング》等の汎用エクシーズが存在しない。

 

前者はともかくナンバーズはまだ存在すらしてないから土台無理な話なんだけどね。

 

シンクロなら【決闘竜】が良い線行くんじゃないかな? 月華竜とか琰魔竜とか。

 

他にもいろいろ除去カードで対処できるんだけどね。でもそうはいかない。

LDSを頼れば、ある程度強力なカードを融通して貰えそうだけど、基本カードプールはこっち準拠。これは辛いね。

欲しいカードが軒並み万単位の値段なんだもん。

 

……すっごく【シャドール】デッキ使いたい。

でも【シャドール】まだ存在してないんだよなー。どうにかして作れないものか?

 

「色々と対策はするけど、ともかく、今は俺を信じてくれ。本当に、それしか言えない」

 

俺は兄さんとかなみを見て、そう宣言した。

 

「……分かったよ。私、千影の事、信じる」

「ああ、お前がそう簡単にやられる様なヤツじゃないって事は兄の俺がよく知っている」

「かなみ……、兄さん……」

 

帰ってきたのは万感の信頼。これに応えずして何が男か!

 

「ありがとう、本当に、ありがとう」

 

───絶対にドン・サウザンドに負けない!

 

改めて、そう決意をした。

相手は世界を作り上げた神。挑むは一介の少年。

元OCGプレイヤーの根性見せたるもんね!

 

 

 

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