LDS地下情報管理調査室。
そこでは舞網市で行われるデュエルのデータが常時観測、記録され今後の新規カードの開発などのためにデータ収集及び解析を主に行われる場所だ。
部屋は大きく、大中小様々な大きさのディスプレイには多岐に渡る情報が表示され、常に10人以上の職員が解析についていた。
「昨日のデュエルでの土野 千影のデータは?」
「はい、その前のデータも含めて精査し纏めてあります」
零児と部下である男性職員との会話。
「召喚方法エクシーズ。召喚エネルギー、測定不能。やはりか・・・・・・」
零児は専用のパソコンで千影のデュエルデータを確認していた。
「土野少年の使っていたエクシーズモンスターを含むカードですが、今の所、同じものは見つかっておりません」
「だろうな。私も【ヌメロン】というカテゴリーは始めて聞く」
現在、2試合で使用された【ヌメロン】デッキ。
そのデッキの強力さを考えれば同じデッキを使用しているデュエリストも存在するはずだ。
しかし、過去に【ヌメロン】と名のつくカードが使用された事は無く。
現存するカード23651種類全てを記録してあるデータベースに照合をかけても該当しない。
つまり・・・・・・。
「カテゴリー【ヌメロン】は彼しか持っていないカード群という事だな」
「ありえるのでしょうか? 土野少年の経歴はいたって普通。我々のように新規カードを開発できる環境に居た形跡もありません」
「まるで、突然現れたカードを使用している様だな」
「はい。信じられない事ですが、仰るとおりです」
零児の出した結論は昨日出したものと同じだった。
◇ ◇ ◇
いやあ、今日の試合は白熱しましたね。
不動のデュエリストの権現坂VS元兄弟子の少年(?)名前は忘れた。
ペンデュラム対決の遊矢VSシンゴ戦。
エクシーズ使いの隼VS融合使いの素良。
ARC-V本編じゃあ、ネタキャラされつつあった隼さんだけど、やっぱり出身はZEXAL世界なのかな?
デュエルの舞台になったフィールド魔法《未来都市 ハートランド》に過剰に反応してたし。
そして、《RUM ラプターズ・フォース》に《RUM レヴォリューション・フォース》ねぇ。
やっぱりランクアップしたか。
時間軸的にどうなんだろう。
アストラル世界の危機に奮闘している遊馬不在の時の地球が襲われたのか、それとも何十年も先の事なのか。
ZEXAL本編終了直後なら、遊馬先生一行がいて早々に悪意の侵攻を許す事はないはずなんだけどなぁ。
もしかしてアストラル世界と地球の同時侵攻だったから対応できなかったって感じなのかもしれない。
ずっと未来の話なら、アークライト一家が協力してたのかね。
そして素良くんのゲス顔。
これが遊戯王名物の顔芸か……。直で見れるとは。
完全に悪役じゃないですかやだー。
ハンティングゲームの獲物だとか、愚民だとか。
まさに思想がGX初期のアカデミアだな。
まあ、本当の所は実際に本人から聞いてみないと分からないんだけどね。
それはそうと、どういう事だっ!?
今日の試合のスケジュールが終わって帰宅しようと思っていたら見知らぬ一室、ってかLDSの応接室に招待されていたでござる。
いや、怪しい黒服の男性に声をかけられて、LDSって言われて案内されたんだけどね。
応接室らしき場所に通された俺の前には4人のボディガードらしき黒服の男女に囲まれる長机に座った青年が1人。
何で目の前に社長(赤)がいらっしゃるんですかねぇ?
気持ちよくデュエルさせない俺にファンサービスしちゃうんですか?
「用件は?」
「なに、簡単な事だよ。土野 千影君」
話を切り出す俺に簡単な話だと返す社長(赤)。
「単刀直入に言おう。君の持つ【ヌメロン】カードを我々に預けて貰えないだろうか?」
「お断りします」
即断即決大否定!
これは俺以外触っちゃいけない物(多分)なんだよ! いろんな意味で!
「勿論、それ相応の報酬を渡そう」
「お断りします」
こんな摩訶不思議カード群を他人が手にすれば世界がヤバイ。
解析しよう!→素晴らしい!→新規開発だ!→量産しよう!
この図式がこの人の場合、成り立ってしまう。
実際、遊矢のペンデュラムカードでそうしたし。
「何も今すぐという訳ではない。この大会が終わってからで良い。報酬は300万に加えて、そうだな、君は天使族デッキを使っていたね。天使族のレアカードを30枚だ。悪い話ではない筈だ」
「そうでしょうね、むしろ破格の条件です。・・・・・・だが、断る」
しつけぇよ! 社長(赤)! 貸さねぇって言ってるだろって!
「・・・・・・そうか、ならば仕方あるまい」
そう言って立ち上がる社長(赤)。嫌な予感しかしない。
「デュエルだ。私が勝ったら条件を飲んで貰う」
ですよねー!
安定のデュエル脳。
「俺が勝った場合は?」
「迷惑をかけたお詫びに、先程提示した報酬を送ろう」
「それでも断ると言ったら?」
「今後の大会の出場は諦めて貰う」
大会には固執してないけど、自重しないって決めたしなー。
まあ、こういう展開を予想しなかったわけでもないしさ。
「今後、俺のデッキに関わらないという追加で条件を付けられるなら受けよう」
「良いだろう。では案内する」
俺達は空間閉鎖の行われたLDSのデュエルスペースへと移動を開始した。
◇ ◆ ◇
相対する零児と千影。
すでに準備は整っていた。
『ランダムセレクト。アクションフィールド、オン。フィールド魔法《忌まわしき城 ホロウ・バスティオン》発動』
ソリッド・ビジョンが起動し、風景を古めかしくも劣化していない洋風の巨大な城のエントランスへと塗り替えた。
「戦いの伝道に集いしデュエリスト達が」
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い」
「フィールド内を駆け巡る」
「見よ、これぞデュエルの最強進化系」
「「アクション」」
「「デュエル!」」
Reiji LP4000
VS
Chikade LP4000
あー、めんどい。さくっと《シニューニャ》で焼いて終りにしたいけど、
そう言えば相手のデッキ【DD】だろ? げ、アイツいるじゃん。
いや、まだ出来ていない可能性が微粒子レベルで存在する!
千影はどうデュエルするか思考をめぐらせていた。
「先攻は君の様だな、千影君」
「私のターン」
先攻は千影。
普段の一人称は“俺”だがこのデッキを使う時は“私”になるのは仕様である。
と手札を確認した千影は顔をしかめた。
げぇ!? なぁにこれぇ?
手札事故である。
デッキのギミックであるパーツカードが揃っていないのである。
キーカードである《ヌメロン・ネットワーク》もサーチカードの《ヌメロン・ウィンドウ》も手札に無い。
「私はモンスターをセット。カードを1枚セットしてターンエンド」
「随分と消極的だな」
「私は貴方を強者と見ている。強者を相手に迂闊な事はしない」
「それは光栄だ」
千影のはただの張ったりだ。伏せカードもブラフである。
そして、ターンは零児に移る。
「私のターン、ドロー!」
千影を見据える零児。その眼光は見定める者のソレだ。
「私は永続魔法《地獄門の契約書》を発動し効果を使う。1ターンに1度、デッキから【DD】モンスター1体を手札に加える。更にこのカードが私にフィールド上に存在する限り私のスタンバイフェイズ毎に1000ポイントのダメージを受ける」
零児のフィールドに現れた永続魔法が光り、効果を発動する。
「私はデッキから《DDリリス》を手札に加える」
サーチ効果を持つ永続魔法。これにより手札損失は0。
「更に永続魔法《魔神王の契約書》を発動し、《融合》の魔法カード無しで融合召喚を行う。しかし、デメリットとして私のスタンバイフェイズ毎に1000ポイントのダメージを受ける。私は手札の《DDケルベロス》と《DDリリス》を融合!」
3つ首のワードッグとマゼンタを纏う女悪魔が1つ混じり合わさる。
「牙むく地獄の番犬よ、闇より誘う妖婦よ!」
左手に持つは長方形の紅のタワーシールド。
「冥府に渦巻く光の中で、今ひとつとなりて新たな王を生み出さん!」
右手に持つは両刃の紅のロングソード。
「融合召喚! 生誕せよ、レベル6! 《DDD烈火王テムジン》!」
紫の軽鎧を身に付けた業火の王が姿を現す。
その名は古代モンゴル帝国の初代皇帝と同名のモンスター。
《DDD烈火王テムジン》
☆6
ATK/2000
「更に私は《DDナイト・ハウリング》を通常召喚。このカードが召喚に成功した時、墓地に存在する【DD】モンスター1体を特殊召喚できる。私は墓地から《DDリリス》を特殊召喚する」
《DDナイト・ハウリング》
☆3
ATK/300
召喚されたのは牙の生えた大きな口だけのモンスター。
その効果により墓地より舞い戻るは妖艶な女悪魔。
《DDリリス》
☆4
DEF/2100
「そしてこの瞬間《テムジン》の効果発動。1ターンに1度、このカード以外の【DD】モンスターが自分フィールド上に特殊召喚された時、墓地から【DD】モンスターを特殊召喚できる。この効果で《DDケルベロス》を墓地より特殊召喚」
先程融合素材となったモンスターのもう片方、3つ首のワードッグが現れた。
《DDケルベロス》
☆4
ATK/1800
続々と現れる【DD】モンスターの軍勢。
だが、まだ終わらない。
「私はレベル4の《DDリリス》にレベル3の《DDナイト・ハウリング》をチューニング!」
《DDナイト・ハウリング》が3つの光の輪と成り、《DDリリス》の4つの星がその中へ入り、先攻に包まれる。
「闇を切り裂く咆哮よ」
光より現れるは薄緑のマント翻す白き騎士。
「疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!」
黄の剣を握り、体に纏う鎧に幾つもの宝玉が埋め込まれている。
「シンクロ召喚!生誕せよ、レベル7!《DDD疾風王アレクサンダー》!」
その名は古代マケドニアの征服王と同じモノ。
《DDD疾風王アレクサンダー》
☆7
ATK/2500
零児のフィールドには3体のモンスター。
その内2体は上級と最上級モンスター。
2枚の手札を残し、この盤面を築き上げた零児のデュエルタクティクスは押して知るべし。
「バトルだ。《DDケルベロス》でセットモンスターを攻撃!」
主の命を受け、攻撃を仕掛ける《DDケルベロス》。
それにより表側になる千影のセットモンスター。
《ヌメロン・ランプ》
☆1
DEF/0
誘導する灯火は3つ首の猛獣によって呆気なく砕かれた。
「《ヌメロン・ランプ》の効果発動。効果は知っているだろう? デッキより《ヌメロン・リフト》を特殊召喚」
《ヌメロン・リフト》
☆1
DEF/0
「《ヌメロン・リフト》の特殊召喚成功時効果発動。墓地の《ヌメロン・ランプ》を特殊召喚」
《ヌメロン・ランプ》
☆1
DEF/0
「《DDD疾風王アレキサンダー》で《ヌメロン・リフト》に攻撃!」
その名を体現する様な素早い動きで接近し《アレキサンダー》は《ヌメロン・リフト》を斬り刻んだ。
「《DDD疾風王アレキサンダー》の効果。このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した時、もう1度だけ攻撃できる。追撃せよ、《アレキサンダー》!」
呆気なく破壊される《ヌメロン・ランプ》。
「《ヌメロン・ランプ》の効果発動。デッキから2体目の《ヌメロン・リフト》を特殊召喚。そして2体目の《ヌメロン・リフト》の効果発動し、墓地から1体目の《ヌメロン・リフト》を特殊召喚。同じく効果を発動し《ヌメロン・ランプ》を墓地から特殊召喚」
《ヌメロン・リフト》1
☆1
DEF/0
《ヌメロン・リフト》2
☆1
DEF/0
《ヌメロン・ランプ》
☆1
DEF/0
千影のフィールドのモンスターは減るどころか1体から3体に増えた。
しかし、零児は攻撃できるモンスターをを残している。
「《DDD烈火王テムジン》で1体目の《ヌメロン・リフト》を攻撃!」
またしても抵抗できず破壊される《ヌメロン・リフト》。
これで千影のフィールドのモンスターは2体。
「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
零児が1ターンでプレイしたカードの枚数は8枚。
手札を使い切ったが、フィールドにはモンスター3体に伏せカード2枚。
千影はこの布陣を破れるのか?
「私のターン、ドロー」
千影の手札は4枚。
しかし、活用できるカードは今ドローしたモンスターカードのみ。
「私は《ヌメロン・フロア》を通常召喚。そして、レベル1の《ヌメロン・フロア》《ヌメロン・ランプ》《ヌメロン・リフト》3体でオーバーレイ。3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
千影の3体のモンスターが黒い光の球と成り、地面に渦巻く宇宙に飛び込む。
「それは大いなる門の礎! エクシーズ召喚! 現れよ、ランク1! 《ゲート・オブ・ヌメロン-チャトゥヴァーリ》!」
《ゲート・オブ・ヌメロン-チャトゥヴァーリ》
★1
ORU:3
DEF/100
「私はこれでターンエンド」
千影のターンは《チャトゥヴァーリ》をエクシーズ召喚しただけ。
千影の手札では零児のフィールドを打破する事は出来ないと判断し、戦闘で破壊されない《チャトゥヴァーリ》で防御に徹する様だ。
「私のターン、ドロー」
ドローカードを確認する零児。確認したそれは魔法カード。
「戦闘では破壊されないモンスター、《チャトゥヴァーリ》か……。少々厄介か」
呟く零児だが、やるべき事はする。
「私はスタンバイフェイズに速攻魔法《ダブル・サイクロン》を発動する。フィールド上の自分と相手の魔法・罠カードを1枚を破壊する。私は《魔神王の契約書》と君のセットカードを破壊する」
黄色と赤色の2つの竜巻がフィールドに発生し、零児が指定したカードを破壊した。
千影の伏せカードは《ヌメロン・リライティング・リチュアル》。
「そして、《地獄門の契約書》の効果により1000ポイントのダメージを受ける」
Reiji LP4000→LP3000
「《地獄門の契約書》の効果発動しデッキから《DD魔導賢者ガリレイ》を手札に加える」
スタンバイフェイズに発生するダメージを最小限にしつつ、相手の伏せカードを排除。
そして、再び使われる《地獄門の契約書》のサーチ効果。
「戦闘をしても無意味だな。私はこれでターンエンド」
5ターン目。千影のターン。
「私のターン、ドロー」
引いたカードは《ヌメロン・ピラー》。はっきり言って、今の状況では使えない。
内心で舌打ちをする千影。
「何もせず、ターンエンド」
完全に固まり、ドローゴー状態になってしまった千影。
一方、零児は着々と盤面を築いていく。
「スタンバイフェイズ《地獄門の契約書》の効果により1000ポイントダメージを受ける」
Reiji LP3000→LP2000
「《地獄門の契約書》の効果により《DD魔導賢者ケプラー》を手札に加える」
三度目のサーチ効果。
「このままでは面白くないな。しかしこれも嵐の前の静けさという物か。私はこれでターンエンド」
「私のターン、ドロー」
引いたカードはまたもやモンスターカード。
しかし、このカードは“当たり”だ。しかし、今は動けない。
「私は何もせず、ターンエンド」
8ターン目。零児のターン。
「私のターン、ドロー!」
引いたカードを確認して、零児は動き出す事を決めた。
「私は、スタンバイフェイズに永続罠《戦乙女の契約書》を発動、さらに罠カード《契約洗浄》をチェーン発動!」
「……!?」
千影は内心で焦った。零児が動きだす、と。
「《契約洗浄》の効果は自分の【契約書】を全て破壊し、破壊した枚数分ドローする」
《契約洗浄》が一瞬光ると、《地獄門の契約書》と《戦乙女の契約書》が破壊される。
そして、零児は破壊されたカードの枚数、2枚をドローする。
「さらに、ドローした数×1000ポイント、私のライフは回復する」
Reiji LP2000→LP4000
零児のライフが初期値の4000ポイントまで回復した。
さらに零児の手札は5枚。このまま制圧する事も出来るやもしれない。
「座する者には退場願おうか。私は《シールドクラッシュ》を発動。守備表示モンスター1体を破壊する」
「何ッ!?」
これには千影も驚きを禁じえなかった。
《シールドクラッシュ》よりも《地割れ》や《地砕き》の方が使い勝手良いだろう。
しかし、零児はプロデュエリスト。観客を魅せる戦い方をしなければならない。
戦う意思を持たぬ者に王の裁きを。
効果破壊耐性を持たない《チャトゥヴァーリ》は抵抗できずに破壊され、千影のフィールドはがら空きとなった。
「私は、スケール1の《DD魔導賢者ガリレイ》とスケール10の《DD魔導賢者ケプラー》でペンデュラムスケールをセッティング!」
零児のフィールドに2つの光の柱が出現しそれぞれの中に機械仕掛けを体に埋め込んだ2体の賢者が現れた。
「これにより、レベル2から9までのモンスターを同時に召喚可能」
「……ペンデュラム召喚か」
「いかにも。行くぞ、土野 千影!」
零児の上空に現れる光の粒子が煌き舞う。
「我魂を揺らす大いなる力よ! その身に宿りて、闇を引き裂く新たな光となれ!」
光の粒子は集まりゲートを生み出す。
「ペンデュラム召喚! 出現せよ、私のモンスター達よ!」
降臨するは体の大半が結晶で出来た逆三角形のモンスター。
赤く光るその眼光は王の威厳を沸々と感じさせた。
「全ての王を統べる2体の超越神。《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》!!」
《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》1
☆8
ATK/3000
《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》2
☆8
ATK/3000
「バトルだ。1体目の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》でダイレクトアタック!」
《ヘル・アーマゲドン》の胸から下の結晶体にあるコアが輝き、強力な光線を放つ。
千影のフィールドは空。防ぐ手段は無い。
「ぐふぉッ……!!」
爆発と衝撃に吹き飛ばされる千影。辛うじて立っていたの彼の意地なのだろうか。
立ち上る煙が零児から千影の姿を隠していた。
Chikage LP4000→LP1000
「2体目の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》でダイレクトアタック!」
───しかし。
「ッ!? 何故、攻撃しない!」
「それはバトルフェイズが終了しているからだ」
煙から千影の声。
煙が晴れるとそこには暗系色の壁を人型にした様なモンスターが存在した。
《ヌメロン・ウォール》
☆1
DEF/0
「私が戦闘ダメージを受けた時、手札の《ヌメロン・ウォール》の効果を発動させた。効果はこのカードを手札から自分フィールド上に特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる」
「手札から発動するモンスター効果……。流石に一筋縄には行かないか。私はこれで、ターンエンド」
窮地。まさに千影は窮地に立たされている。
だが、千影の眼は死んではいなかった。
「私の、ターン。ドロォー!」
静かな裂帛の気合と共にデッキからカードを引き抜く。
「私は3体目の《ヌメロン・リフト》を召喚する!」
幾度と無くその姿を現す《ヌメロン・リフト》。
「その効果により2体目の《ヌメロン・リフト》を、さらにその効果で《ヌメロン・ランプ》を特殊召喚!」
《ヌメロン・リフト》1
☆1
DEF/0
《ヌメロン・リフト》2
☆1
DEF/0
《ヌメロン・ランプ》
☆1
DEF/0
「そして、手札から《ヌメロン・ピラー》を特殊召喚!」
《ヌメロン・ピラー》
☆10
DEF/0
「……! この布陣はっ!」
零児は感づいたが、止める術は無い。
覚悟する。千影のエースモンスターが来るという事に。
「《ヌメロン・ピラー》の効果発動! ターン終了時までフィールド上のモンスター全てをこのカード以外の【ヌメロン】と名のつくモンスター1体と合計したレベルにする!」
《ヌメロン・ウォール》
☆1→11
《ヌメロン・ランプ》
☆1→11
《ヌメロン・リフト》1
☆1→11
《ヌメロン・リフト》2
☆1→11
《ヌメロン・ピラー》
☆10→11
「レベル11となった《ヌメロン・ウォール》《ヌメロン・ランプ》《ヌメロン・リフト》2体、合計4体でオーバーレイ! 4体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
黒い光の球となった4体のモンスターが地上に渦巻く宇宙に飛び込む。
「誉れ高き叡智に触れる虚ろの王よ! 夢は幻、希望の光を絶望の闇へ!」
浮上するは夢幻を課す虚ろの王。
「エクシーズ召喚! 来たれ! ランク11! 《夢幻虚王ヌメロニア》!」
その存在は他を圧倒し、フィールドを支配する。
《夢幻虚王ヌメロニア》
★11
ORU:4
ATK/5000
「来たか、しかし……!」
「まだ、終りではない」
「何?」
千影は零児に告げた。まだ終りではないと。
そして、手札から1枚のカードを手に取る。
それはデュエル開始時、初期手札にあったカードの1枚。
今、そのカードが開示される。
「私は《RUM ヌメロン・フォース》を発動!」
「ランクアップマジックっ!?」
【RUM】は今日の試合で黒咲 隼が使用した魔法カード。
エクシーズモンスターを上のランクのエクシーズモンスターに進化させる効果を持つ。
「このカードは自分フィール上のエクシーズモンスターをランクが1つ上の【CX】に進化させる魔法カード」
「なんだそのカードは……!?」
「私は《夢幻虚王ヌメロニア》でオーバーレイ! 1体のモンスターでオーバオーレイ・ネットワークを再構築!」
《夢幻虚王ヌメロニア》が黒い光の球となり、天に渦巻く宇宙に飛び込む。
「現れろ!カオスエクシーズ!」
「カオスエクシーズ!?」
エクシーズエフェクトが放つ閃光と衝撃。
リアル・ソリッドビジョンで表現されるソレを遥かに超えていた。
「混沌の憂えは、浅ましき人の業」
黄昏の時が来た。
「天壌の夢は、無窮の幻」
雄雄しき翼を翻し。
「虚ろの神よ、闇をもて、光に鉄槌を!」
叡智に近い虚ろなる神。
「ランクアップ・カオス・エクシーズチェンジ!」
フィールドを圧倒し支配するモノを超越した存在。
「ランク12! 《夢幻虚神ヌメロニアス》!」
《CX 夢幻虚神ヌメロニアス》
★12
ORU:5
ATK/10000
降臨するは夢幻を司る虚ろの神。
デュエルモンスターズ界の伝説に残る【三幻神】【三邪神】【三幻魔】、それらのオリジナルすらをも超える存在。
「ランク12!? 攻撃力、10000だとッ!?」
零児は戦慄した。
ランク12の攻撃力10000のエクシーズモンスター。
それだけではない。
零児が従える【DDD】、ディファレント・ディメンション・デーモン。
異次元の王達の存在が路傍の石とも思える程の常識を超えた存在感。
───喉が渇く。
───肌が焼ける。
───心が恐れる。
《CX 夢幻虚神ヌメロニアス》からそれ程の“力”を魂で感じ取っていた。
そして理解した。自身の敗北を。
今の零児のフィールドに伏せカードは無く、手札も無い。
攻撃力10000で攻撃されれば最低でも7000ポイントのダメージを受ける。
……が、その時だった。
リアル・ソリッドビジョンが解除される。
徐々に消えていくのでは無く、プッツリと前触れも無く。
まるでブレーカーが落ちた停電の時の様に。
「何が起きた!!」
『申し訳ありません、社長。恐らくソリッドビジョンの回路が焼き切れた様です』
突然のソリッドビジョンの故障。
その原因は過負荷。
ソリッドビジョンシステムが《CX 夢幻虚神ヌメロニアス》の力に耐え切れなかったのだ。
「耐え切れなかったか……。《ヌメロニアス》でもダメという事は、やはり《ヌメロニア》までしか使えないか」
ふと、千影がそう呟くのを零児は聞き逃さなかった。
なん……だと……?
“アレ”の上が存在するとでも言うのかッ!?
零児の渦巻く思考の最中、千影が声をかけた。
「どうします? デュエルの結果」
そんなモノ、零児の中では決まっていた。
しかし、彼はプロデュエリストである事を辛うじて思い出して言葉を紡いだ。
「ソリッドビジョンの故障とは、整備部門の者達に言わねばならない事が出来た様だ」
そう言うと零児は時間を確認する。
「済まない、土野 千影君。私もなかなかに多忙でね、これ以上は執務に関わる。呼び出しておいて大変失礼だと思うのだが、ここで失礼させて貰う」
足早に立ち去ろうとしたが、千影に振り返り零児は言う。
「今回のデュエル、預けさせて貰いたい。私自身、この言い分は自分勝手だと思っている。事実、あのまま続けていれば私は負けていただろう。しかし、それでも、この勝負は何も言わずに私に預けて欲しい」
零児はあんな終わり方を善しとしなかった。
負けるなら相手に止めをさして貰わなければならない。
きっちりと己の敗北を身に刻み、次の糧にするために。
「……分かった、預けよう」
「感謝する。帰りは送らせよう、ウチの者に従ってくれ。では、失礼する」
零児は黒服の1人に命令を出し、残りを引き連れてデュエルスペースを去っていった。
残った千影もLDSの黒服に案内され、自宅まで車で送ってもらった。
その時、礼として天使族のレアカードを30枚を貰ったのだった。
To be Next───
●今日の最強カード●
《CX 夢幻虚神ヌメロニアス》
ランク12 光属性
悪魔族 エクシーズ 効果
レベル12モンスター×5
①:バトルフェイズ終了時に、相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
その後、このターン墓地へ送られたモンスター1体を自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する事ができる。
②:このカードが破壊される場合、代わりに自分フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する事ができる。
③:1ターンに1度、フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、このカードのX素材1つを取り除いて発動する事ができる。
選択したモンスターを破壊する。
ATK/10000 DEF/1000
本当の名を失った王が神に至った姿。何故、その名を失ったかは分からない。
ステータスは攻撃力10000と脅威だが守備力1000と心もとない。
そして効果は強力無比の一言に尽きる。
デュエルに勝ちたいのであればこいつの召喚を許さない事と言っても過言では無いのかもしれない。