せいにし、その中身がからっぽの男が
虚しさを嘆いていた。
しかし、運がない男は責任逃れたい神
様により転生させたが、自分を見直し
次の人生こそ価値ある生き方をすると
心に誓う。
【西暦21世紀】
[日本]
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・ここはどこだ?』
気づいたら、なぜか白い世界にいた。
まるでアニメやマンガに出てくる死んだ人間が
立ち止まる空間の狭間のようだ。
『・・・・・・・・・オレ・・・死んだのか?』
なんで死んだ?過労死?交通事故死?
分からんな。思い当たる節が多すぎる・・・。
『死んだか・・・。なら死神が迎えに来るよな』
死神か。死神だったら『BLEACH』。
『BLEACH』だったら、黒崎一護。
黒崎一護だったら、ハイブリッドチート。
『・・・むなしい。なんか、もうどうでもいいな・・・
けど、ライトノベルならここで神様や案内人
とか出てきて強制転生させるんだよな』
まぁ、そんなことはないよな。
どうせ、死んだんだし、望みを叫ぶか!
『黒崎一護と同じチートをくれ!』
い、言った!言ってやった!!ふはははは!
・・・しかし、これでは普通だ。つまらん。
負け豚のブサ男のオレが絶対言わない言葉を!
それこそ、誰も言わない思いつきを!
・・・・・・・・・・・・そうだ!!
『転生先は“史上最強の弟子ケンイチ”!!
しかも“白浜兼一”の親戚で親友だ〜〜!!』
ふふふっ!わはははははっー!!どうだ。
これならば!どんな神様でも叶えられない
だろうー!!はははははっー!!!
勝ち誇ったように高笑いしていたら・・・
「承りました。あなたの転生先をそのように
設定しいたします」
『へ?』
後ろから声が聞こえ、振り向くと美少年が
立っていた。
『あ、あなたは?』
「神様です。では転生を開始します」
神様がそう言うと俺の足元に円が形成していき
ぽっかりと穴が空いた。
「現世は私のせいで申し訳ありません。来世を
頑張って生きて下さい」
『ちょ、ちょっと待てーーー!!!?』
俺は文句の一つも言えず、転生の穴に真っ逆さ
まに落ちていった。
「ふー、よし!なんとか誤魔化せたかな?」
私は地面の穴に合掌した・・・神様なのに。
「堪忍して、神様もいろいろと大変なんだよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【真夏 夕方】
[日本 とある産婦人病院]
「・・・まだか?」
分娩室の前でウロウロと動き回っている高級ス
ーツを着こなす紳士 黒崎恭介は異常に苛立って
いた。
「お、落ちつけ、恭介」
「これが落ち着いていられるか!元」
俺を心配してその場に立ち会ってくれた従兄弟
の白浜元次は落ち着かせようと座っていたソファ
から立ち上がり、恭介の肩を右手で掴む。
「もう30分は経っているんだぞ!!」
「まだ30分しか経ってない!!」
「しかし「幸子さんと赤ん坊も頑張っているんだ
君が苛立っても仕方ないぞ。ソファに座り、待
つんだ!」
元次が言葉を遮り、正論を言われたおかげで少
し落ち着いたのか、俺はソファに腰を掛けた。
「すまん、元。見苦しいところを見せた」
「全くだ。日本を代表するIT企業の社長として
威厳と名声に傷がつくぞ、恭介」
「フン、なら、お前の番の時は楽しみしとけ。
そのセリフをそっくりそのまま返してやるよ」
「フッ!望むところだよ。大仏の如くこのソファ
に座り、愛する妻と息子を待つさ」
「ホー!言うな、元。お前んところは男の子か?
事前に知っていたのか?」
「いや、性別は先生から聞いてない」
「・・・なら、なんで断言できるんだ?」
「ははは、それは父親の直感だよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
こいつは天然でどこか心配症な面を持つが、家
族思いで面子や立場よりも大切な人を大事にする
ところを気に入っている。
だからこそ、俺はこいつのことを誰よりも信頼
しているんだ。
そう、家族を失った俺にとって元は苦しい時も
そばで喝を入れてくれる俺のたった一人の兄弟な
んだから。
親友に感謝の意を思っていると分娩室から赤ん
坊の鳴き声が聞こえた。
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
「「っ!!!?」」
俺たちは咄嗟に立ち上がり、お互いに顔を見合
わせた。
「き、恭介!」
「あ、あぁ!う、生まれた!!俺の子が!!」
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
分娩室の自動ドアが開き、看護師さんが俺に報
告した。
「黒崎さん、おめでとうございます」
「あ・・・あ・・・あ・・・ありがとうございます!」
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
俺はテンパっていて感謝の言葉を叫んでしまっ
たが、看護師さんは平然と話の続きを言った。
「元気な男の子です。奥さんも無事です。さぁ早
く中へ!」
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
看護師さんがそう言ったが、俺は感動のあまり
身体が動けなかった。
けど、元が強引に俺の右腕を掴み、分娩室の中
へ一緒に歩き出した。
部屋の中には産後でぐったりし、ベッドに寝て
いる幸子と看護師に抱かれ、白い布に包まれた泣
いている生まればかりの赤ん坊がいた。
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
「・・・あ、あなた」
「さ、幸子」
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
「見て、私たちの赤ちゃんよ」
俺は赤ん坊を見ようと近づき、そっと俺の子の
顔を覗いた。
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
「・・・よく泣くな」
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
「えぇ、元気な証です。抱いて下さい」
看護師さんの言葉通りに俺は両腕で優しく赤ん
坊を抱いた。
「・・・あ、温かいな」
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
「お父さんに抱かれて嬉しいんですね。よく泣いて
います」
「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」
俺は看護師にそう言われて思わず涙を流す。
「そ、相介。お前の名前は黒崎相介。生まれてき
てくれてありがとう。ずっと一緒だぞ・・・」
俺はわんわんと大泣きをし、幸子と元も大粒の
涙を流して見守っていた。
今日ほど生きていて嬉しいと感じた時はない。
これから俺は家族を大切にすると心に誓った。
この感動の場面で転生者のオレだけが戸惑った
(さっきからはなせって言っただけだよ・・・けど
悪くない気分だな)
オレは今の父親を見て心の中でこう呟いた。
(父さん、ありがとう)
訳わからず転生したが、この時オレはこの家族
とともに生きると決めた。
(前世のようにヤケクソなんかじゃない。投げや
りなんかじゃない。真剣に、懸命に生きる)
そう、オレの名前は黒崎相介。
オレは大切な人たちを守る為に強くなる。
どんなヤツラも倒せるほどに強くなるんだ。
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【真夏 昼過ぎ】
[東京 郊外住宅地]
「遅いぞ、兼一、龍斗」
「待ってよ、そうちゃん」
「そうだ。君が速いんだよ、相介」
転生してから5年が経ち、オレは再従兄弟で甘
えん坊の白浜兼一と幼稚園から一緒にいるカッコ
つけたがりの朝宮龍斗と遊び回る日々だ。
「駄菓子屋まで誰が一番になるかマラソンしよう
と言い出したのは龍斗だぞ」
「ハァッハァッ、そうだけどさ、もう一度言うよ
君が速いんだよ、競走馬か!」
「ハァッー、ハァッー、そうそう、速すぎだよ」
“失礼な、オレは普通です”と言いたいが、生ま
れつきのチートのおかげで見た目は5歳児だけど
身体の性能は大人と同等の能力値なんだよ。
「わかったよ、少しペース落とすから」
「な、真剣勝負に手を抜くのか!?」
「龍斗君、このままだと僕たちの方が倒れちゃう
よ〜」
負けず嫌いの龍斗を体力がない兼一がなだめな
がら歩いていると行きつけの駄菓子屋に着いたが
なんだか騒がしいかった。
「?なんだ?」
「怒鳴り声が聞こえるな?」
「ど、どうしよう。警察に通報した方がいいよ」
「待て、まず状況確認が先だ」
オレがそう言うと2人は頷き、3人で息を止め
ながら駄菓子屋の出入り口まで忍び足で移動して
中を覗くと駄菓子屋のおばあちゃんにガラの悪い
3人のオッサンたちが脅していた。
「オラッ!ババァッ!?」
「さっさとこの紙に印鑑押せや!!」
「血印でもいいんだぞ!指出せや!!」
「・・・・・・地上げ屋か?」
そういや、父さんがこの辺り一帯が再開発指定
地になったと言ってたな。
その為、極道が頻繁に歩き回っているから近づ
くなと注意されたっけ。
「ど、どうしよう〜!!?」
「いや!どうしようと言われても!?」
「・・・一旦ここを離れよう」
「「ッ!?」」
オレが冷静な口調で言うと動揺する2人は驚い
ていた。
「み、見殺しにするのか?」
「違う、ここを離れて交番に通報するんだよ」
「けど、その間におばあちゃんが!?」
「子どものオレたちに何ができるんだよ?ヘタし
たら、巻き込まれて大怪我するぞ」
「そ、そうだけど」
「そうなったら、一番悲しむのは・・・ばあちゃん
だぞ」
オレの言葉で2人は黙り込むとゆっくり後退し
ていた最中、突然ヤクザ相手に怒鳴り声を散らす
のが聞こえた。
「な、何をやっているんですか!!?」
「あー!!なんじゃ、ガキャ!!?」
「お兄さんたちは仕事中なんだよぅ!!」
「駄菓子が欲しけりゃ、他へ行きな!!」
オレたちはもう一度中を覗くと金髪のロングヘ
アな女の子がヤクザたちの前に立っていた。
「大の大人たちがお年寄りをよってたかって脅す
お仕事などありませんわ」
「うるせぇー、ガキャー!」
「売り飛ばすぞッ!」
ヤクザたちが女の子の腕を掴もうとすると目に
も止まらない動きで目の前にいた細身のヤクザの
背後に回った。
バキッ!!!?
後頭部に子どもとは思えない強力な蹴りをお見
舞いし、細身のヤクザは蹴りの威力で店外へと吹
っ飛んだ。
「ぐあああぁぁぁぁ!!ゲボッ!!?」
バダン・・・・・・・・・・・・。
そのまま、駄菓子屋の反対にある壁に激突して
気絶した。
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
オレたちは物陰で立ち尽くしていたが、他のヤ
クザたちは女の子へ一斉に襲いかかった。
「く、クソガキャー!!」
「こ、殺すっ!!」
だが、女の子はまるで鳥のように空中で回避を
した後、ヤクザたちを外へと誘導するように逃げ
回った。
「クソッ、ちょこまかと逃げやがって!!」
「外に出たぞ、逃がすかっ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
店内にヤクザたちがいなくなったのでオレたち
はばあちゃんの安否を確認するために店の中を入
った。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「アンタラ、どうして?」
「偶然、ここにきたんだ。で、店がヤクザに荒ら
させていてびっくりしたよ」
「あ、アンタラ怪我は?」
「大丈夫だよ、ばあちゃんは?」
「あたしゃも大丈夫だよ。けど、あの子が!」
ばあちゃんな言葉でオレたちはハッと顔を見合
わせ、すぐさま道路の方に移動したら、女の子は
自分何倍も大きいヤクザたちと戦っていた。
「す、すごい!」
「あの子何者だ?」
「・・・多分忍者の末裔だよ」
「「えっ!?」」
「父さんに聞いたことがあるんだ、今も忍者が
いるって」
ここからは原作知識だが、ウソは言ってない。
忍者の末裔たちは秘伝の古武術を継承しながら
世界中の国の裏で活動していてると。
日本の裏では特に忍者たちが多いからこちらで
ちょっかいとかを出さない限りはまずお目にかか
れないと父親にキツく警告させたと説明した。
兼一は聞き慣れない言葉を質問した。
「古武術?」
「ボクシングとか空手みたいな?」
「いや、スポーツの武道ではなくて本物の戦闘技
術である武術の方だ」
オレの説明でまたあの子を見る2人は納得した
表情に変わったが、どこか困惑していた。
「で、でもあの子さ、どうして堂々と戦っている
の?」
「うん、普通忍者ってさ、隠れるものだろ?」
「・・・天然なんじゃないか?忍者の掟とかを忘れ
ているんだよ」
「「・・・・・・・・・・・・」」
オレの言葉で苦笑いし、何となく理解した2人
はあの子の戦闘に釘付けとなる。
「あ、また一人倒した!」
「すごい!縦の空中回転蹴り!しかも、あごに
クリーンヒット!!」
あの子の戦い方は文字通り蝶のように舞い、蜂
のように刺す!
天衣無縫の我流だと素人のオレたちでもわかる
「あと一人か。ビビってるよ。さっきまでの威勢
がウソのようだ。情けないなー」
「うん、あ、あれ?」
「どうした、けんちゃん?」
「龍斗君、そうちゃん、あれ」
兼一の人差し指の方向にはさっきヤラれて気を
失ったヤクザがヨロヨロと立ち上がった。
「あ、あの人気絶していたんじゃ?」
「あの子、殺さないように手加減したんだな」
「マ、マズイ、ちょうどあの子が背後にいる」
あの子が目の前の敵に集中しすぎて背後のヤク
ザに気づいていない。
「は、早く知らせないと」
「バカ、今出ていったらオレたちが捕まって人質
だぞ」
オレたちが言い争っているうちにヤクザは隠し
ていた刃物を右手に握り、息を殺してあの子に気
が付かれないようにゆっくりと死角に入りながら
近づいていった。
「で、でもさ、このままじゃ」
「そ、そうだ!」
龍斗はポケットの中にあった穴あきラムネ飴で
汽笛のような音を出した。
ピーーーーーーーーー!!!
その音にビビり、背後のヤクザは一斉に襲いか
かったが、あの子の猫以上の反射神経と身体能力
により一階の高さを超えるジャンプで回避。
ドッーーーン!!!
武器を持ったヤクザはあの子の落下の加速度に
よる空中蹴りをもらい、目の前の同僚に正面衝突
をしてどちらも気絶した。
「すごいジャンプ・・・その後のキックも」
「うん、あの子・・・相介の言う通り忍者かも」
「忍者・・・正確にはくノ一か?しかしヤクザたち
もある意味で気の毒だな。脅しで大怪我するハ
メになるとは」
オレたちが呆然としているとあの子が近づいて
きて頭を下げ、お礼を言った。
「危ないところを教えていただき、ありがとうご
ざいます」
「あ、いや、こちらこそ駄菓子屋のばあちゃんを
助けてくれてありがとう」
「うん、ありがとう」
「ありがとうございます」
「当然のことをしただけです。そうだ、これは助
けていただきたお礼です。受け取って下さい」
その子はそう言うと陰陽太極図の形をしたバッ
チを兼一に手渡した。
「え、あの?」
「あ、えっと!」
「えっ!?いや?」
「?どうしました?」
「あ、助けたの「アンタラ、大丈夫かい!?」」
オレが説明しようとしたら、心配の表情で現れ
たばあちゃんが割り込んできた。
「「「おばあちゃん!!」」」
「えっ!?はい、悪い人たちはあそこで伸びてい
ます」
その子の人差し指の先にはピクリとも動けない
ヤクザたちがいたのでばあちゃんは安心したのか
へたり込んだ。
「そうかい、よかった!警察に通報したから安心
しな。嬢ちゃん本当にありがとう!」
「い、いえ、あのわたくしはこれで失礼します」
その子はそう言ってものすごくスピードで走り
去っていった。
「・・・なんで逃げるの?」
「多分やり過ぎたからか?」
「うん、確かにヤクザ相手でもやり過ぎだね」
颯爽とその場から消えたその子・・・風林寺美羽
この出会いがオレたちを武術の谷を転がり落ち
るフラグになるとは・・・・・・・・・。
人生とはわからないものだ。
ーto be continuedー
次回 10年後