梁山泊の同門者 黒崎相介   作:rOOd

10 / 17
強さの定義とは曖昧である。
天賦の才、強靭な肉体、生まれ持った天運。
強さはさまざまな形となり、世界に存在する 
だが、心の強さだけは自分自身を信じぬいた
証である。
それは自分を信じるため、日々少しずつ努力
を続けた先にあるのだから。


BATTLE08 最強剣士への決闘申し込み

        【陽春 昼過ぎ】

 

      [裏新宿 Honky Tonk]

 

 「「・・・・・・・・・・・・」」

 

 なに言ってんだ・・・・・・こいつ。

 夏彦と違って不安定なところがあるが、ここま

でぶっ飛んでいたとは・・・・・・アホくさ〜。

 

「銀次、帰るぞ!」

「ば、蛮ちゃん!」

 

 バカらしくなった俺は席を立ち、店の玄関に向

かうが、銀次は俺の右腕を掴んで止めたから声を

荒げて怒鳴った。

 

「付き合いきれねぇだろが!寝言は棺桶の中で言

 えや、メガネ!!」

「・・・・・・僕はふざけていません」

 

 メガネくんの言葉で激昂した俺はさらにデカい

声で怒鳴った。

 

「ア゙ァァー!!パラレルワールドだ!?ふざけん

 な〜〜!!?」

「・・・・・・・・・・・・」

「話をまとめると異世界からてめぇに弟子入りし

 た黒崎相介ってヤツがいるだ〜?」

「えぇ」

「そんで、『神の記述』が弟子の世界で何か騒動を

 起こすかもしれねぇだ〜?」

「その通りです」

「なら、てめぇがその異世界に乗り込んで片付け 

 ればいいだけの話だろうが!!?」

 

 オレも蛮ちゃんと同じことを考えていた。

 そうだよ。 雪彦くんならば、どんな異世界の

正体不明な敵でも圧倒的に勝てるよ。

 

「蛮ちゃんの言う通りだよ。なんで、雪彦くんが

 行かないの?」

「僕では“行けない”のです」

「えっ?」

「僕では“行かない”のではなく“行けない”のです

 よ、銀次くん」

 

 オレは何を言ってるのかわからないので困惑し

たが、頭の回転が速い蛮ちゃんはすぐにピンとき

たのか、雪彦くんの言葉の意味を理解したっぽか

ったので疑問をぶつけた。

 

「・・・・・・銀次はともかく俺も同じようにできるの

 か?」

「それは無限城のアーカイバの許可をもらってい

 ます」

「あの神様気取りでオンボロ時計が許可ぁっ〜?

 信じられねぇ」

「?・・・・・・?」

「今回はそれだけ非常事態ということです」

 

 蛮ちゃんは雪彦くんの話の続きを聞こうと席に

戻り、さらに疑問を口に出した。

 

「『神の記述』自体は使えるとしてアレを使いこ

 なせるヤツがパラレルワールドにいるのか?」

「あ、たしかに!?オレらでも苦労したもんね!

 特に蛮ちゃんが・・・・・・」

「うるせー!?」

 

“ゲンコツ!!”

 

「いぃった〜〜!!」

「余計なことを思い出すな!?」

「ホントのことじゃん!」

「うるせーっんてんだよ!」

 

“ゲンコツ!!” “ゲンコツ!!” 

 

“ゲンコツ!!” “ゲンコツ!!” 

 

「・・・・・・・・・・・・」

「ハァッ〜、ハァッ〜」

 

 殴る疲れた俺はたんこぶだらけの頭で意識がな

い銀次を床に寝転がせて話の続きをした。

 

「んで、どうなんだよ!?」

「・・・・・・それはわかりません」

「あ゙あ゙〜〜!?」

「『神の記述』のことはご存じでしょ?アレは本来

 誰でも使えるんですよ」

「そうだがよ、普通のヤツは固定概念とかが邪魔

 して使える手前であきらめるだろうが!?」

「相介がいるの世界には普通じゃない人が多いか

 ら困っているんですよ」

 

 俺はこいつの意味深な言葉で首を傾げた。

 

「あっ?どういう意味だ?そりゃ!?」

「相介の世界は武術が発展した世界なのです」

「武術が発展した世界?」

「はい」

 

 こいつの言葉がいまいち理解できねぇ。

 だいたいよ、武術ならイト巻きやドリフとかの

イロモノが多いのはこっちの世界だろ?

 

「おいおい、武術なんてどの世界でも共通なんじ

 ゃねぇのか?」

「えぇ、その通りです」

「つーか、黒崎相介って変わり者はなんで異世界

 まで来るんだよ。どうやって、てめぇの流派を

 知ったんだ?」

「それは神様特典を使ったと言ってました」

「神様特典?」

「黒崎相介は異世界転生したんです」

 

 メガネの言葉で俺は何を言っていいか分からな

くなった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   

  

       【厳冬 夕暮れ】

 

    [京都 天地無真流古武術道場] 

 

「・・・・・・死神代行?」

「ただの肩書きですよ」

「ずいぶんと物騒な肩書きだね」

 

 私は目の前にある信じられない事実に対し・・・

・・・だた驚くことしかできなかった。

 黒崎相介と名乗った少年・・・・・・彼の気迫は

まぎれもなくマスタークラス。

 この若さで“武”の到達点である“達人”なのだ!

 さらに、この少年はおそらく私と同等の力を持

っている!! 

 常に可能性を求めて鍛錬をしてきた私が絶対否

定する言葉を叫ぼうとしている・・・・・・ありえない 

 私とて若手の方だが、特Aクラスの実力を身に

着けたのは25歳を過ぎてからだ。

 天賦の才のみでは絶対たどり着けない。

 そう、生か死かの戦場で生きぬいた先に常人を

超えた強さを手に入れる。

 彼はどのような過酷な人生を歩んできたのだ?

 考えれば考えるほどわからなくなる。

 私の思考がオーバーヒート寸前の時、御堂の娘

と黒崎くんに人影が近づいていた。

 

「ま、まゆっー!!?」

「あ、やっと来た」

 

 サラリーマン姿の男は瀕死の状態の御堂の娘に

黒崎くんから受け取り、床に寝かせて必死に声を

かけ続けた。

 

「まゆっ!?まゆっ!?まゆっ!?」

「落ち着いて、奥さん生きてますよ!」

「で、でも身体中に傷が!!?」

「確かに重症だけど、命は取り留めてますって!

 ただ御堂さんの方はもう・・・・・・」

 

 彼女の夫らしい男は黒崎くんの言葉でハッと気

づいてあたりを見渡し、息絶えた御堂 戒を見つ

けた瞬間、絶望の表情に変わり、悲痛の叫び声を

上げた。

 

「し、師範!?師範!!?」

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 そういえば、御堂には一人だけ残った弟子がい

ると風の噂で聞いたな。

 御堂は自分に時間が無いと焦り、門下生たちに

厳し過ぎる地獄の修行を課して誰も着いてこれず

次々とヤツの元を去っていき、最後に残ったのが

田中 務という男だ。

 田中は一人娘の御堂真結と恋仲になり、のちに

結ばれて田中が正式な後継者に選ばれたらしいが

ヤツを見た限りでは妙手の手前か。

 御堂も不憫だな。あのような男を後継者にしな

ければいけないとは・・・・・・。

 むっ!あの男、私に殺意を向けるか。

 恩師の命を奪い、最愛の妻を殺されかけた・・・

至極当然のことだな。

 もし、あの男も御堂の娘同様に私へ牙を剥くの

ならば、武術家としての敬意を示そう。

 

「き、きさま〜「ストップッ!」」

 

 黒崎くんは憤怒を纏う田中の左肩を右手で押さ

えつけて止めた。

 

「止めるな!」

「落ち着いて。アンタの役目は目の前の師匠の敵

 討ちよりも重症の奥さんを病院に一刻も早く連

 れていく方が優先だろ」

「しかしっ!?」

 

 黒崎くんは興奮状態の田中の右手に左手をそっ

と置いてこう言った。

 

「アンタの手はアイツと戦うためじゃないよ」

「っ!?」

「奥さんと生まれてくる子どもを守るためにある

 んだろ・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「だからさ、今は・・・・・・」

 

 そう言われて冷静さを取り戻した田中は彼女を

背負い、この場を立ち去ろうとした。

 

「・・・・・・黒崎くん、本当にありがとう」

「家族をお大事に」

「・・・・・・・・・」

 

 田中が道場の外に出るまでの間、私たちはお互

いの顔を見ながら無言を貫いた。

 長い沈黙の中、先に口を開いたのは彼だった。

 

「意外ですね」

「・・・・・・何が意外なのかな?」

「田中さんたちを簡単に見逃したことですよ」

「私があの二人を追い詰めて殺すと思っていたの

 かな?」

 

 その問いに黒崎くんが頷くので私は少し心外だ

と思い、彼の認識を訂正した。

 

「黒崎くん。君は勘違いをしている」

「勘違い?」

「私は快楽殺人者ではない」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「私は殺人拳の武術家だ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「そこを間違えないでほしい!!」

「つまり、アンタは自分に対して敵意を向け、戦

 いを挑んだ者のみを殺るってことッスか?」

「そうだ。私は快楽で人を殺めたことなど一度た

 りも無い!」

「・・・・・・・・・オレの認識不足でした。誠に申し訳

 ありません」

 

 黒崎くんの謝罪を私は素直に受け止めた。

 殺人拳、いや私の本質を理解してくれたようだ

 そう、私の目的は純粋なる武術の真髄を極める

ことこそが私の全てだ。

 そこを理解してくれた黒崎くんは贖罪のために

ある提案を言った。

 

「拳聖 緒方一神斎殿」

「なんだい、死神代行 黒崎相介」

「あなたに決闘を申し込みます」

「ずいぶんと恥知らずな申し出だね」

「わかっています。だが、あなたの武術への純粹

 を穢す発言をしたオレができる贖罪はコレしか

 ないと思ったのです」

「ならば、見せてもらおう。君の“武”を!」

 

 そうして、私と黒崎くんの決闘が始まり、三日

三晩戦ったが・・・・・・決着はつかなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

〜現在〜

 

「これが黒崎相介との出会いだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「はっきり言って、彼との決闘は私の人生の中で

 一番楽しい出来事であった」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「また、黒崎くんと一戦を交えたいものだ」

 

 拳聖様がここまで楽しく語るのは聴いたことが

ない・・・・・・・・・。

 しかし、なぜか肝心のところをぼやかしている

拳聖様に僕は質問をした。

 

「あの、拳聖様・・・・・・」

「なんだい、オーディン?」

「肝心の決闘の内容は?」

「・・・・・・・・・・・・」

「なぜ、決闘の内容を言わないのですか?」

「・・・・・・一言で言うと奇想天外かな?」

「へ?」

「ともかく、そうとしか言えないのだ。これ

 以上は直接本人に会えばわかると思うよ」

「本人って・・・・・・黒崎相介に直接会えと!?」

「だって、まだ彼とは敵対してないのだろ?」

 

 ・・・・・・拳聖様の言う通りだ。

 確かに現時点では相介と敵対していない。

 今のうちに会えば、僕たちの味方になってくれ

るかもしれない。

 それを断られても、中立の立場になってもらえ

ばいいか。

 

「はい、おっしゃる通りです。相介と一度会って

 話し合いをします」

「うん、そうしなさい。私から“再戦を望む”と

 伝えておいてくれ」

「・・・・・・はい、必ず伝えます」

 

 そう言って僕は無線を切った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

       【陽春 深夜】   

 

      [都心 廃屋敷]

 

「・・・・・・決闘?」

「はい、どうかお願いします」 

 

 ジロジロ、こちらを見ているよ〜。

 この人、裏表がない・・・・・・・・・はっきり言って

感情が読みにくいんだよな。

 たぶん、剣士として乗ってくれるだろうけど。

 そう思っていると香坂さんは口を開いた。

 

「・・・・・・・お前・・・・・・決闘で負けたほうが・・・・・・

 命令を聞けとか・・・・・・言う気か?」

「まぁ、察しの通りです」

 

 常に無感情、及び無表情の香坂さんはオレの言

葉で怪訝な表情に変わり、ジト目でこちらを見て

くる香坂さんはドスの効いた声で呟いた。

 

「・・・・・・お前・・・・・・馬と同じか・・・・・・」

「へ?」

「・・・エロい・・・・・・命令をする気・・・・・・だろ?」

「ち、違います!?違いますよ!!?」

「・・・・・・男の性は・・・・・・みな・・・・・・同じ」

「そこは否定できませんけど、今回は純粋な決闘

 の申し込みです!」

 

 オレが色欲を否定すると香坂さんは右手の人さ

し指を顎に置いて目を閉じてしばらく考え、閉じ

ていた目を開けて返答した。

 

「・・・・・・いいよ」

「えっ!?あ、ありがとうございます」

「けど・・・・・・剣を交える前に・・・・・・聞きたい・・・

 ・・・ことがある」

 

 な、なんだ?あっさりと承諾したと思ったら

聞きたいこと?

 やることなすことが突拍子過ぎてヘタなことを

言うとヤバすぎる事態になるからな〜、この人は

 しかし、OKもらったんだから答えられるもんは

答えるか。

 

「それで聞きたいこととは?」

「お前の・・・・・・流派だ」

「えっ!?」

「弥勒流とか・・・・・・言ったか?」

「は、はい!?」

「ボク・・・・・・聞いたことが・・・・・・ない流派。秋雨

 も・・・知らないと・・・・・・言っていた」

「・・・・・・・・・・・・」

「弥勒流に・・・・・・ついて・・・・・・教えろ」

「・・・・・・わかりました。オレの剣技、弥勒流のこ

 とを説明いたします」

 

 オレは香坂さんに弥勒流についての話し始めた

 

「そもそも、弥勒流は日本古来の剣術ではありま

 せん」

「・・・・・・・・・・・・」

「弥勒流はかつて古代ヨーロッパに存在したとい

 う伝説の『魔女の王国』を守護する騎士の一族

 だけに受け継がれてきた剣技です」

「『魔女の王国』?・・・・・・騎士の剣技??」

 

 かつて、古代ヨーロッパには強大な魔力を持つ

魔女たちが治める『魔女の王国』があった。

 その国では好奇心旺盛な魔女たちが魔法の研究

を深めながら暮らしていた。

 けれど、武力を持たない魔女たちは常に周囲の

外敵から自分たちの魔法の研究と知識を狙われて

続けていた。

 そのため、魔女たちの秘密を護り、討ち滅ぼす

屈強な騎士の一族が『魔女の王国』に存在した。

 その一族が日夜鍛錬により日進月歩をさせなが

ら受け継がれてきた剣技こそ・・・・・・・・・

『弥勒流古剣術』の源流だと。

 香坂さんはオレの説明を聞き終えると質問をし

てきた。

 

「・・・・・・その・・・・・騎士の剣技が・・・・・・・なぜ・・・

 日本に?」

「それは『魔女の王国』が滅んだからです」

「っ!?」

 

 強大な敵国に『魔女の王国』を滅ぼされた。

 流浪の民に追いやられた王族と魔女たち、騎士

の一族は安亭の地を求めて長い時の旅を強いられ

世界各地転々と歩き続け、『魔女の王国』の生き

残りが散り散りとなり、絶望の旅の末にこの日本

へとたどり着いた。

 オレの説明を聴いた香坂さんは悲しそうな目で

質問をした。

 

「・・・・・・なぜ・・・・・・その歴史を・・・・・・ボクたち・・・

 ・・・知らないんだ?」

「それは魔女たちによる隠ぺいが完璧だったから

 です」

 

 『魔女の王国』の生き残りは時の権力者に自分た

ちの力を悪用されないように人里離れた山奥にコ

ミニティを作り、強力な認識阻害の魔法により自

分自身を隠ぺいした。

 それにより関係者以外の人間に知られることが

なかったと。

 

「認識・・・・・・阻害?」

「うーん、例えばオレが試合の時、風林寺に使っ

 た技もその魔法の応用なんです」

「ふーん」

「あの〜、質問はもうこの辺でいいすか?」

「うん・・・・・・納得した」

「なら、そろそろ・・・・・・」

「うん・・・・・・やろうか」

 

 香坂さんはそう言うとオレに対して常人ならば

簡単に気絶する気当たり、いや剣気を放った。

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

 とてつもない剣気を目の前にして平然と立つオ

レをマジマジと見た香坂さんは呟く。

 

 

「やはり・・・・・・お前・・・・・・マスタークラスか?」

「そうです。やっぱり皆さんお気づきですか?」

「うん・・・・・・」

 

 オレの問いに頷く香坂さんは右手で背中に背負

う日本刀を鞘から抜き、まっすぐ前面で持った構

えでオレの出方を待った。

 

「お前・・・・・・武器は?」

「・・・・・・お待ち下さい」

 

 オレは異空間収納魔法ボックスの穴を出現させ

その中に右手を入れてアレを取り出そうとすると 

香坂さんが目を点にして尋ねた。

 

「・・・・・・それは・・・・・・何だ?」

「異空間収納ボックスです」

「それも・・・・・・魔法か?」

「はい、そうです。あ!あったあった!」

 

 オレは初めて魔法を見て驚きを隠せない香坂さ

んを観察しながら、直径10cmで中心に直径5

cmの穴が開けられた金属製の円盤型の投擲武器

を二本取り出し、それを両手に持って構えた。

 オレの得物をマジマジと観察した香坂さんは奇

妙なものを見たと目で語りながら呟いた。

 

「・・・・・・チャクラム・・・いや戦輪か?」

「コレは円月剣『空月』です」

「円月剣・・・・・・『空月』」

「弥勒流の基本は剣術ですが、自分に相性がいい

 武器を使うのが流儀なんです」

「ふーん」

 

 ・・・・・・なんか期待外れと顔に出てるよ。

 まぁ、当然だな。けどさ、香坂さん。

 達人が見かけで判断するのは命取りだよ。

 

「こちらの用意もできましたから、香坂さんそろ

 そろ始めますか」

「うん・・・・・・けど・・・・・・その前に」

「な、なんですか?」

「・・・・・・名前」

「えっ?」

「ボクを・・・・・・名前で呼んで・・・・・・ほしい」

「えっ?なぜ?」

「なんと・・・・・・なく」

「・・・・・・わかりました。しぐれさん」

「うん・・・・・・ありがとう」

「いえ、ヨシ!それでは」

「うん」

 

 オレとしぐれさんはお互いに中段の構えとなり

しぐれさんが開始の合図を口に出した。

 

「・・・・・・相介に・・・・・・先方を譲る」

「・・・・・・それが開始の合図だと?」

 

 しぐれさんはオレの言葉にコクッと頷いた。

 

「わかりました」

 

 オレはしぐれさんの期待に応えるために今まで

表に出さなかった剣気を解放した。

 

「ムッ!?」

「どうですか?オレの剣気は?」

 

 先ほどのしぐれさんの剣気の度合いに合わせて

挑発したら、しぐれさんの口角が上がった。

 オレを睨見つける両眼からは“ほぉ〜、このボク

に敵意をぶっつけるとは・・・・・・いい度胸だ・・・!

ならば、望み通りお前をぶった切ってやる!?”と

いう心の声がビシビシ伝わってきた。

 

「・・・・・・全力では・・・・・・ないな」

「だいたい一割ぐらいです」

「ふん!?・・・・・・舐めるなっ!!」

 

 しぐれさんはそう言うと挑発するオレを超える

剣気を放った。

 

「・・・・・・どうだ」

「・・・・・・わざわざ張り合わなくても〜」

 

 しぐれさん、なんか楽しそうだ・・・・・・。

 でも、最強と謳われる剣士がオレを認めたっ

てことだ。

 なら、こっちも最高の敬意を表するか。

 

「・・・・・・しぐれさん」

「・・・・・・うん」

「オレの全力を見せます」

 

 そう宣言したオレは全ての剣気を解放した瞬間

屋敷内、いや町中の寝ていた全ての野鳥が身の危

険を察知し目覚め、飛び去った。

 地を這う大量のネズミや蜘蛛などの虫は我先に

脅威から生き残ろうと一勢に町から逃げ出した。

 

ーto be continuedー

 




次回 弥勒流
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。